日々の臨床 7月28日金曜日<感染症によって引き起こされる腎障害>

心臓・脈管 / ・泌尿器の病気

 

テーマ:感染症によって引き起こされる腎障害

 

<Ⅲ型アレルギー(免疫複合体症)について>

 

 

<かぜは万病の元>と言いますが、本当のことです。

 

風邪をひいて、治療をはじめ、症状が軽くなり始めた頃に油断して

 

病気をこじらせてしまう方が、後を絶ちません。

 

なぜ、感染症には油断大敵なのかについて、お話をいたしましょう。

 

 

 さてアレルギー・リウマチ専門医は、心療内科専門医と同様に、

 

一般の皆様の理解が進んでいない領域であることを常日頃感じています。

 

特別な限定された専門領域であると思いきや、決してそうではありません。

 

むしろ、現代医学のほとんどの領域に密接にかかわっている

 

扇の要となる医学領域だと言えます。

 

 

 たとえば、感染症と腎臓病、これだけでもややこしいのですが、

 

この両者をつなげるのが免疫異常、

 

つまり、アレルギー・リウマチ医学の専門領域になります。

 

 

感染症によって免疫複合体が産生されることがあります。

 

この免疫複合体が二次性に腎障害を来すことが多いのです。

 

 

さて、免疫複合体とは抗原と抗体が結びついてできた抗原・抗体複合体のことで、

 

これを免疫複合体と呼びます。

 

感染症に関与する病原体などが抗原であり、

 

これに反応して病原性を中和するために身体で生成されるタンパクが抗体です。

 

免疫複合体とは、いわば外来の病原体と体内のタンパクが結合したものなのですが、

 

これで感染症を終息させるどころか、新たな病気をもたらしてしまうことがあります。

 

これが免疫複合体病です。アレルギー学の立場からはⅢ型アレルギーといいます。

 

 

Ⅲ型アレルギー(免疫複合体症)は、

 

抗原と抗体が結びついた抗原抗体複合体(免疫複合体)により

 

活性化された補体は、好中球を局所に集めます。

 

その好中球が免疫複合体を貪食(どんしょく)する際に

 

タンパク分解酵素や活性酸素を放出します。

 

これらが正常な組織までも障害してしまいます。

 

また免疫複合体が血小板に結合し、血小板を凝集させると小血栓ができますが、

 

それが血管壁に付着して血行を妨げ組織を障害します。

 

 

このように、病原体や毒素による免疫複合体産生によって、

 

腎障害を来すことが多いのです。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌),

 

溶血性連鎖球菌、緑色連鎖球菌、ヒトパルボウイルスB19,

 

HIV(エイズウイルス),肝炎ウイルスなどによる腎症が知られています。

 

 

・黄色ブドウ球菌はメチシリン耐性菌あるいは透析中のシャント腎炎のような場合、

 

スーパー抗原による反応で免疫複合体を産生します。

 

これがメサンギウム増殖性糸球体腎炎、管内増殖性糸球体腎炎などを発症させます。

 

これは臨床的にはMRSA腎炎と診断されます。

 

 

・溶血性連鎖球菌は感染性心内膜炎を引き起こすほか、

 

免疫複合体が腎臓の糸球体に沈着し、補体活性を高め、炎症を誘発し、

 

毛細血管内を閉塞し、管内増殖性糸球体腎炎を引き起こします。

 

これは臨床的には溶連菌感染後急性糸球体腎炎と診断されます。

 

 

・緑色連鎖球菌は、巣状分節性糸球体硬化症、膜性増殖性糸球体腎炎、

 

半月体形成性糸球体腎炎(管外増殖性糸球体腎炎)など様々な糸球体腎炎を引き起こします。

 

 

・ヒトパルボウイルスB19は小児科医にとっては

 

伝染性紅斑の原因ウイルスとしておなじみですが、

 

成人でも管内増殖性糸球体腎炎を発症することがあります。

 

 

・B型肝炎ウイルス(HBV)はB型肝炎ウイルスの

 

e抗原(HBe抗原)を抗原とする免疫複合体が関与していると考えられています。

 

セロコンバージョンに際して大量の免疫複合体が産生され、

 

これが腎臓の糸球体に沈着して発病します。

 

膜性腎症をはじめ膜性増殖性糸球体腎炎、メサンギウム増殖性糸球体腎炎などが生じます。

 

臨床てきにはHBV関連腎症と診断されます。

 

なお、C型肝炎ウイルスが関与するHCV関連腎症もあります。

 

 

その他、悪性リンパ腫(ホジキンリンパ腫)、HIV(エイズ)関連腎症、悪性腫瘍など

 

Ⅲ型アレルギー(免疫複合体症)に関連する主な疾患としては、次のものがあります。

 

・血清病

 

・全身性エリテマトーデスSLE(ループス腎炎を含む)

 

・慢性関節リウマチ

 

・糸球体腎炎