日々の臨床 7月26日水曜日<アルコール性肝障害の特徴について>

消化器系の病気

 

テーマ:アルコール性肝障害の特徴について

 

<重症型アルコール性肝炎(SAH)>

 

 

アルコール性肝障害は大量かつ常習的なアルコール摂取に基づく肝障害です。

 

 

アルコール性肝障害の基準は、5年以上の長期にわたる過剰な飲酒

 

(エタノール換算で60g以上、3単位)が主体ですが、

 

女性、肥満者、アセトアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)に変異がある場合には、

 

それ以下の飲酒でも肝障害となります。

 

 

疫学的にはアルコール性肝障害は男性に多いです。

 

しかし、女性では男性より少ない飲酒量(エタノール換算で40g程度、2単位)でも

 

アルコール性肝障害を引き起こすことが知られています。

 

問題飲酒者は増加を続け300~400万人以上とされます。

 

気を付けないとすぐに2単位や3単位を越して問題飲酒者になってしまいます。

 

 

お酒の1単位(純アルコールにして20g)の換算表

 酒

 

 

5病型があります。

 

まずアルコール性脂肪肝、アルコール性肝線維症、アルコール性肝炎などの病態を示しますが、

 

最終的にはアルコール性肝硬変、アルコール性肝がんに至ります。

 

 

アルコール性脂肪肝では、肝小葉の30%以上にわたる脂肪化、大滴性脂肪肝が特徴です。

 

CTで評価可能です。肝臓のCT値が低下し、L/S(肝臓CT値 / 脾臓CT値)比が0.9以下になります。

 

 

アルコール性肝線維症では、中心静脈や肝細胞の周囲などでの線維化が特徴です。

 

 

アルコール性肝炎では、小葉中心部の肝細胞膨化・壊死、

 

マロリ小体(アルコール小体)の出現の他、多核白血球の浸潤がみられます。

 

 

アルコール性肝炎の一部では、禁酒しても炎症や肝腫大が続き、

 

多くは1ヶ月以内に死亡する予後不良な病型が存在します。

 

これは重症型アルコール性肝炎(SAH)と定義されます。

 

この重症型アルコール性肝炎(SAH)の認識は医療関係者の中でもまだ低く、

 

単なる急性肝炎と診断され、肝性脳症、感染症、急性腎不全、

 

消化管出血、エンドトキシン血症などの合併症が

 

出現してあわてることが多いようです。

 

 

SAHは白血球除去療法、顆粒球除去、

 

ステロイドや血漿交換(凝固因子の補充、過剰なサイトカインの除去)、

 

持続血液濾過透析(有害物質の除去、腎機能の代償)、

 

エンドトキシン吸着療法、肝移植などの集学的治療の導入で

 

救命率が上昇しているとはいえ、致死率は40%に達する重篤な病態です。

 

50歳以上でのリスクは高いです。生体肝移植の際には6か月以上の禁煙が必要です。