消化器系の病気

 

<心療内科は内科医だから責任重大なのです!>

 

3回シリーズその2

 

 

先週の続きです。

 

50代女性。夫よりDVを受けていることで精神科受診中ですが、

 

ナースである妹に説得され、本人の意思で一人で高円寺南診療所に来院されました。

 

 

診察所見:

(問診)アルコール大量飲酒、(視診)黄疸

 

(触診)腹水肝腫大(嗅診?)肝性口臭⇒肝不全の疑い

 

 <初診後診断>アルコール性肝炎

 

 

 そこで以下の血液検査等を実施しました(結果は後日)

 

血液所見:

赤血球270万、Hb9.7g/dL,Ht28%,白血球数24,500

 

⇒急激な飲酒をするとエンドトキシンを介した全身性のサイトカインの嵐が起こり、

 

白血球数が急上昇することが知られています。

 

この結果を得た段階で、家庭で24時間監視、

 

アルコール完全離脱の約束を緊急に取り付けました。

 

 

血小板18.7万、PT-INR1.9(基準0.9~1.1)

 

⇒肝臓でのタンパク合成機能低下を示唆する

 

APTT47.8(基準対照32)

 

 

血液生化学所見:

アルブミン2.2g/dL, 総ビリルビン8.8mg/dL,直接ビリルビン4.9mg/dL,

 

AST(GOT)248IU/L, ALT(GPT)65IU/L, ɤGTP272IU/mL,

 

コリンエステラーゼ29IU/L(基準400~800)、尿素窒素31mg/dL,

 

クレアチニン1.8mg/dL

 

⇒腎不全の合併はSAHの重症度判定に関与する

 

 

免疫血清学所見:

HBs抗原(-)、HCV抗体(-)、抗核抗体(-)、抗ミトコンドリア抗体(-)

 

⇒ウイルス性肝炎、自己抗体性肝炎、原発性胆汁性胆管炎等は否定的

 

 

便潜血検査(人ヘモグロビン2回法)(-/-)

 

 

<検査結果のまとめと重症度スコア(JAS)>

 

白血球数24,500≧20,000 3点

 

クレアチニン値1.8mg/dL≦1.8 1点

 

プロトロンビン時間(INR)1.9>1.8 2点

 

総ビリルビン値8.8mg/dL≧5 2点

 

消化管出血またはDICの有無 なし 1点

 

年齢(歳)50代≧50 2点

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

各項目を加算:11点≧10 ⇒重症

 

 

アルコール性肝炎の重症度10点以上は重症とされ、

 

積極的な治療が必要となります。

 

一般的な肝庇護療法では救命のチャンスを逸してしまいます。

 

 

<紹介前最終診断>重症型アルコール性肝炎(SAH)

 

重症型アルコール性肝炎の認識は医療関係者の中でもまだ低く、

 

単なる急性肝炎と診断され、肝性脳症、感染症、急性腎不全、消化管出血などの

 

合併症が出現して救急入院となることも少なくないそうです。

 

この女性は、DV夫からの隔離と入院による精密検査が必要であること、

 

この病気が彼女の精神状態を不安定にしていた可能性が高いこと、

 

精神科医から処方されている向精神薬が

 

彼女の肝機能や腎機能をさらに悪化させていた疑いが高いこと、

 

などの理由から、相談の上、母親の実家がある大阪の大学病院に紹介することにしました。

血液・造血器の病気

 

<風邪?をひいて赤血球が溶ける病気>その1(3話連続)

 

そもそも、なぜ血液病の患者さんが血液科を標榜していない

 

高円寺南診療所を受診するのでしょうか?

 

 

答えは簡単です。血液病の患者さんの多くは、御自分が血液病だとは気付かず、

 

しつこい風邪や喘息くらいに考えて受診されるからです。

 

しばしば経験してきた例をご紹介します。

 

 

 

25歳のイケメン男性Mさん。

 

普段は元気いっぱいに働いているという筋肉質の立派な体格の方でした。

 

1ヶ月前に全身がだるく、発熱、頭痛があり、数日後から頑固な乾いた咳が出始め、

 

次第にひどくなったとのことです。

 

解熱後も咳が続くので、子供のころから小児ぜんそくと蕁麻疹で通院していた

 

近くの小児科を久しぶりに受診したところ

 

百日咳か喘息様気管支炎ではないか、と診断されました。

 

気管支拡張剤を処方されたが改善しなかったとのことです。

 

喘息なのであれば専門医を受診したいと思い、

 

内科、アレルギー科でネット検索して

 

高円寺南診療所に辿り着いたとのことでした。

 

 

高円寺南診療所を受診されたことは正解でしたが、

 

Mさんの病気はアレルギーは無関係ではありませんが、

 

別のジャンルの病気でした。

 

 

来週に続く

 

医療のためのヒント:診察室では治せない病気

 

(その1)< 医学体操で治せる病気とその限界 >

 

 

人生いろいろ、病気もいろいろ、したがって、治療法もいろいろあるはずです。

 

 

診察室で治せる病気もいろいろありますが、

 

果たして多くの病気は診察室に居る間に治るのでしょうか。

 

確かに、診察室に居る間に、病気が治るヒントを得ていただいたり、

 

治るきっかけを工夫して差し上げたりすることはできます。

 

しかし、癒されていくプロセスは、ほとんどが診察室の外なのではないでしょうか。

 

 

 診察室外とは、日常の生活の場や職場であったり、あるいは脱日常といって、

 

保養地に出かけたり、温泉療養をしたりする場です。

 

それは自然に身を委ねることによって無理なく癒されていくプロセスであって、

 

こうした囚われのない心での癒しのプロセスが

 

自然治癒に繋がっていくのではないかと思うのです。

 

囚われのない心の状態は、心の健康にとって望ましいだけでなく、

 

体の健康にとっても望ましい作用をもたらします。

 

 

 しかしながら、病気による様々な苦痛に悩んでいる人々に、

 

囚われのない心の状態を説いても、聞き入れていただけることはほとんどありません。

 

むしろ、反感や怒り、場合によっては怒りを招いてしまい、

 

散々な結果をもたらしかねません。

 

 

 

 <どのような状態で毎日を過ごせば良いのか>という心の状態から体の状態へ向けてアプローチ

 

(心身医学的アプローチ)が有効でない場合に、

 

<どのような活動をして毎日を過ごせば良いか>という体の動き(運動生理)によって

 

心の動き(心理)を引き起こすアプローチ(身心医療的アプローチ)に切り替えてみると、

 

興味をもっていただけることがあります。

 

 

 今回のテーマである<医学体操>は、体操という体の動きによって、

 

病気の治療や予防をはかるための具体的なアプローチです。

 

 

 それでは、標準的な医学体操で改善が見込めるとされる代表的な病気を列記してみます。

 

〇肩こり、四十肩、五十肩 〇腰痛、腰背痛 

 

〇側弯症 〇股関節症 〇膝関節症

 

〇骨粗しょう症 〇痴呆予防

 

 

しかし、医学体操の効果は以上にとどまらないはずです。

 

来週は、そのことについてお話いたします。

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

<老年病は内科の延長で診ることが危険なワケ!>

 

その1.高齢者糖尿病の血糖コントロールの難しさ

 

 

加齢にともなって尿糖の排泄閾値は上昇します。

 

つまり、高齢者では同じ血糖値でも尿糖は陽性となりにくくなります。

 

 

これは、何を意味するかというと、血糖コントロールの目安として

 

尿検査をする場合には、高齢者では実際の血糖値に比べて

 

「血糖コントロール状態が低めに評価される可能性があるということです。

 

このことを根拠に、血糖コントロール状態の指標として、

 

尿糖を参考にすることを止める、あるいは尿検査をしないで、

 

毎回血液検査を勧める医療機関もあるようです。

 

 

それでは、尿糖の代わりの血糖コントロール指標としての

 

検査にはどのようなものが使えるでしょうか。

 

 

血糖値、グリコヘモグロビン(HbA1c)値

 

<測定時から1~2か月前の平均血糖値を反映します>、

 

フルクトサミン<測定時から4週間前の平均血糖値を反映します>、

 

グリコアルブミン値<測定時から2週間前の平均血糖値を反映します>

 

 

高円寺南診療所の見解は、それでも尿検査は有益であるため、

 

工夫して活用するという立場です。

 

 

血糖コントロールの指標として、血糖値とグリコヘモグロビン(HbA1c)値を

 

3か月に1回(春夏秋冬の4季に応じて)計測することにしているので、

 

尿糖との関連が把握できます。

 

つまり、尿糖の検出感度が低下しても、相対的な変化は十分に観察可能だからです。

 

 

高齢者に対して頻繁に採血をすることは、できるだけ避けたいと考えております。

 

もっとも、インスリン自己注射を実施している方に対しては、

 

自己血糖測定をしていただくことを原則とします。

 

 

幸いなことに、高円寺南診療所では糖尿病予備軍の早期発見・早期対策が功を奏し、

 

現状でインスリン使用例はほとんどありません。

 

神経・精神・運動器

 

<突然、顔面に生じる耐え難い痛みの正体は?>

 

4回シリーズ(第一話)

 

高円寺南診療所は、救急クリニックではありませんが、

 

発作性の病気で悩む患者さんが多く来院されています。

 

 

身体の部位を上から下へとながめてみますと、

 

まず、頭痛発作、めまい発作、目や鼻などの痒み発作、喘息発作、

 

過換気発作、狭心症発作、胃痛発作、胆石発作、腹痛発作、

 

こむら返り、ムズムズ脚発作、その他、不安発作、パニック発作、

 

過食発作、いわゆる爆買い発作、てんかん様不機嫌発作、ヒステリー発作・・・

 

というわけで、枚挙に暇ありません。

 

その中でも、最近、しばしば相談を受けるのが痛み発作です。

 

 

『先週の月曜日の朝、洗顔し、歯を磨こうとしたら、

 

今まで経験したことが無いような激痛に見舞われました。

 

その痛みは、突然で、えぐられるような、突き刺されるような耐え難い痛みでした。

 

余りの痛さに驚き、冷静さを失い、頭痛なのか、顔面痛なのか、

 

にわかには判別できないほどでした。

 

翌朝は、洗顔の段階で、すぐに痛みの発作が起こりました。

 

昨日のことを思い出して、不安がよぎりましたが、少しは冷静になっていたためか、

 

痛む場所は頭ではなく、顔であることを確認することができました。

 

痛みの持続時間は、数十秒ほどだったかもしれません。』

 

と語るAさんは50代半ばの主婦です。

 

 

さあ、彼女には何が起こっているのでしょうか?

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「崑崙(こんろん)」です。

 

IMG_1878

 

場所は外踝とアキレス腱の中間です。

 

 

「かかとの痛み」「足首の捻挫」「肩背のこわばり」「坐骨神経痛」「腰痛」「頭痛」「めまい」等に効果があります。

 

 

お灸、マッサージが良いでしょう。

 

 

<参考文献>

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

内分泌・代謝・栄養の病気

 

<情緒不安定、易刺激性、うつ状態は内科の病気かも?>

 

4回シリーズ(第一話)

 

 

42歳女性。公務員。情緒不安定でイライラしやすく、

 

部下にうっかり暴言を吐きパワハラを訴えられ、

 

うつ状態になり、某有名病院の神経科を受診していました。

 

 

彼女は通勤の途中で駅の階段で転倒、左橈骨を骨折し、

 

国家公務員等共済の某病院整形外科を受診した際に、

 

血液検査で高カルシウム血症を指摘され、精査と加療のため入院を勧められたが、

 

欠勤を怖れたため、上司に相談して高円寺南診療所を紹介され来院となりました。

 

 

<現病歴>

半年前から倦怠感、疲労感が出現したため、婦人科を受診したところ、

 

早めの更年期障害および骨粗しょう症という診断を受け、

 

活性型ビタミンD製剤と女性ホルモンの処方を受けている。

 

 

その後、勤務中に集中力低下、情緒不安定、易刺激性がみられ、

 

通勤電車では傾眠傾向となり、しばしば乗りこしし、遅刻するようになる。

 

そこで、上司にきちんとした心療内科を受診するように勧められ、

 

都内有名病院の神経科・心療内科を受診。

 

 

双極性障害(躁うつ病)のうつ病相と診断され抗うつ剤を処方されていました。

 

果たして、どのような展開になるでしょうか?

 

心臓・脈管 / ・泌尿器の病気

 

<降圧薬3剤でコントロール不良の高血圧⁻腎臓超音波が鍵!>

 

 

90代女性。50代から高血圧を指摘されているが、

 

薬に頼るのが嫌いなので、降圧薬の服用を不規則に続けていました。

 

3か所の大学病院で、それぞれ別々の降圧剤を処方され、

 

家庭血圧で140~160mmHg台で推移するように

 

自分の判断で飲み分けていた模様です。

 

最近では3剤すべてを定期内服しても家庭血圧は130~150mmHgでした。

 

 

年をとり、3か所の大学病院に通院するのが苦になったため、

 

高円寺南診療所を紹介され、今までと同じ薬を処方してほしい、とのことで来院されました。

 

 

問診:5年程前に腎機能異常の指摘を受けてから、

 

やむを得ず降圧剤を定期内服するようになった、とのことでした。

 

3か所での処方薬を確認したところ、以下の通りでした。

 

A大学のα教授から、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬のテルミサルタン【ミカルディス®】80mg

 

B大学のβ教授から、カルシウム拮抗薬のアムロジピン【ノルバスク®】5mg

 

C大学のɤ教授から、サイアザイド利尿剤のヒドロクロチアジド12.5mg

 

 

尿検査:蛋白(±)、潜血(-)、沈査(硝子円柱1~2/1視野、細胞成分は認めず)

 

 

血液生化学検査:クレアチニン1.8mg/dL, K 5.2mEq/L, eGFR 19.8mL/分/1.73㎡

 

 

腹部超音波検査両側腎臓の対称的萎縮を認める

 

⇒慢性腎疾患を示唆、腎血管性高血圧は否定的

 

 

<臨床診断>

慢性腎臓病(良性腎硬化症の疑い)

 

長い高血圧歴、活動性のない検尿所見、両腎の萎縮から良性腎硬化症を疑います。

 

 

<鑑別すべき疾患>

 

原発性アルドステロン症:

若年で低カリウム血症をともなう高血圧という臨床像とは異なるので否定的です。

 

 

腎血管性高血圧:

難治性高血圧で、腎萎縮は左右不均一であることが多いですが、

 

この症例は降圧が無効ではなく、均一性の腎萎縮であることから否定的です。

 

 

大動脈炎症候群:

腎血管狭窄を惹起すると腎血管性高血圧となることがありますが、

 

腎血管性を疑わせる所見がありません。

 

 

線維筋異形成:

まず若年女性に多い疾患である点、

 

不均一な腎萎縮が認められるなどの点で一致しません。

 

 

 

<治療>

ARB・Ca拮抗薬・利尿薬配合剤であるミカトリオ配合錠®を

 

一日1回1錠を処方に変更しました。

 

 

偶然ですが、これまで内服していた3種類の薬剤と

 

同等の成分配合の合剤を処方することができました。

 

 

<転帰>

血圧はこれまで以上に安定し、比較的良好な経過を維持していました。

 

3か所の大学病院での処方が高円寺南診療所1か所の、しかも1日1錠の内服で済むので、

 

とても安心だし納得して服薬できると感謝してくださいました。

 

しかし、90歳を超える超高齢者であるため、

 

介護認定の必要性や在宅医療の必要性を家族に説明して、

 

彼女の住所近くの医療機関を紹介させていただきました。

 

 

<教訓> 

3つの大学病院の循環器内科の教授の外来を受診し、

 

それぞれ他院での受診歴は伏せたまま、なおかつ、

 

それぞれの大学病院の門前薬局で調剤された薬を内服されていました。

 

 

お薬手帳も3冊持参されていましたが、

 

医療制度のメリットが全く生かされていないのが残念でした。

 

かかりつけ医とか主治医をもつことが大切とは、

 

世間で何十年も言われ続けてきたことでした。

 

かかりつけの開業医から大学病院へ紹介という流れが効率的であるはずです。

 

しかし、高円寺南診療所では逆の流れが圧倒的に多いことから、

 

第一線の医療のむずかしさを感じています。

 

この傾向が続くのであれば、心電図やテレビレントゲン装置の他に、

 

超音波診断装置やなどは必需品です。

 

今回も、腎臓超音波検査が薬剤抵抗性の高血圧症の原因究明に役に立ち、

 

適切な対応決定するための材料が得られたことは特筆すべきだと思います。

<第6ステップ> その2

 

「社会的スキル」は私たちが生活していく上で、生きやすく活動していくために、

 

また他者と円滑な関係を築き、維持していくためにも非常に重要なスキルです。

 

 

このスキルは幼少期から家族や他者と関わっていくプロセスを通して発達していきます。

 

他者とのやりとりがうまくできて要領を得て成功体験を蓄積したり、

 

必要なことができなかったときに謙虚に反省することなどをくり返したり、

 

そうした試行錯誤の中から徐々にスキルアップしていきます。

 

 

しかし、場当たり的に試行錯誤をくり返すだけでは

 

スキルは向上しないということは、指摘しておかなければなりません。

 

 

「社会的スキル」の向上が見込めない具体例を挙げてみましょう。

 

 

・相手のことを考えずに強引に行動してきた。

 

・自分の望ましくない行動について、しかるべき適切な立場の人から指摘されてこなかった。

 

・過去の失敗を恐れて、相手とのやりとりを避ける行動様式を身に着けてしまった。

 

・孤立して他者とのやりとりの機会が極端に奪われてしまった。

 

 

スキルアップには、失敗を恐れず、過去の経験を顧みて、

 

絶えずトライ・チャレンジすることが必要です。

 

 

* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子


 

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

 

<インフルエンザは従来よりも積極的な予防投与が推奨>

 

 

『日本感染症学会提言2012「インフルエンザ病院内感染対策の考え方について

 

(高齢者施設を含めて)」』(日本感染症学会・インフルエンザ委員会)には

 

抗インフルエンザ薬の暴露後予防投与について記載されています。

 

 

そこから、学べることを質疑応答形式でまとめてみました。

 

ただし、抗インフルエンザ薬は、ワクチン接種の代わりになるものではないということ、

 

インフルエンザの迅速診断には限界があることなどを予め念頭に置いてください。

 

 

 

Q1. 病院職員が家庭内で、インフルエンザを発症した人と接触した場合、

 

積極的に予防投与を行う必要がありますか?

 

 

A1. 必要はありません。健康な職員は、ワクチン接種を行っていれば、

 

予防投与は原則として必要はありません。

 

 

高円寺南診療所では非常勤を含め職員全員が

 

インフルエンザのワクチンを毎年早期に接種しています。

 

そして日頃から健康保持に努めるようにしています。

 

健康とは身体的、心理的、社会的、霊的すべての側面で良好な状態であるということです。

 

職員が水氣道®に自主的に参加していることも、

 

インフルエンザ予防対策の一環として大きな意味があります。

 

 

 

Q2.インフルエンザを発症した患者に接触した入院患者に対しては、

 

ワクチン接種の有無に関わらず、抗インフルエンザ薬の予防投与が必要ですか?

 

 

 

A2. 必要です。ただし、本人の承諾が必要です。強制はできません。

 

ただし、実施するのであれば、なるべく早く24時間以内に投与を開始します。

 

発症者の同室者に対して予防投与を実施するのが原則です。

 

 

 

Q3.多床室(個室でない病室)に入院中の患者がインフルエンザを発症した場合、

 

その患者は個室に隔離し、その他の患者は他の病室へ移動しないようにするのは正しいですか?

 

 

A3. 正しいです。インフルエンザを発症した患者は直ちに個室に隔離して治療を行います。

 

同室の患者移動は、潜伏期間を考慮し、

 

3日間は、それまでの病室からの患者移動は行わないようにします。

 

 

 

Q4.高齢者施設では、どのような段階で、フロア全体で予防投与を行うべきですか?

 

 

A4. インフルエンザ様の患者が2~3日以内に2名以上発生して、

 

1名でも迅速診断でインフルエンザと診断されたら、

 

フロア全体の予防投与の開始を考慮すべきです。

 

 

 

Q5. 予防投与はワクチン療法に置き換わるものですか 。

 

また、インフルエンザの予防投与が認められている薬剤について教えてください。

 

 

A5. 予防投与は、いずれもワクチン療法に置き換わるものではありません。

 

10歳以上の未成年者ではハイリスクを除き原則使用は控えます。

 

現在、3剤が予防投与に使うことができます。

 

 

①ザナミビル(リレンザ®):1日1回、7~10日間内服

 

治療目的では症状発現から2日以内に使用します。

 

 

②オセルタミビル(タミフル®):1日1回、10日間吸入

 

慢性呼吸器疾患患者は、使用後に気管支痙攣発現の可能性があり、

 

乳製品に対して過敏症の患者は慎重投与とされるため、

 

アレルギー患者の多い高円寺南診療所では、他の薬剤を選択することが多いです。

 

 

③ラニナミビル(イナビル®):1回完結、単回吸入、2日間吸入も可

 

オセルタミビル耐性ウイルスに有効とされます。    

 

インフルエンザウイルス感染症患者に接触後2日以内に投与を開始します。

 

治療目的のときは、症状発現後、可能な限り速やかに投与開始します。