呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病
<鑑別困難な膠原病>その2
広義の膠原病を分類してみます。
1)いわゆる膠原病(狭義)
全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性強皮症(SSc)、
多発筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)、混合性結合織病(MCTD)、
シェーグレン症候群(SS)
2)血管炎群
3)関節炎を主徴とするもの
関節リウマチ(RA)、悪性関節リウマチ(MRA)、
フェルティ症候群、若年性特発性関節炎(JIA)、成人スティル病、
血清反応陰性脊椎関節症(強直性脊椎炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎)など
<どのような検査が必要か>
膠原病は全身性の自己免疫疾患であり、
抗核抗体・リウマトイド因子(RF)などの自己抗体が検出されます。
症例50代女性
関節の腫脹と痛みを訴え受診されました。
近医より順天堂大学を紹介され入院精査を勧められたがご本人のご事情で拒否されました。
順天堂大学医学部付属 順天堂医院 膠原病内科のデータを持参されました。
抗核抗体抗体価40倍 (Homo型40倍、Speckled型40倍)
RF定量7.3(上限値15.0mg/dL)
⇒ 関節炎を主徴とし、かつ抗核抗体が検出され、膠原病を疑います。
<一般検査>
膠原病は慢性炎症性疾患であり、原則として以下の所見がみられます。
①貧血(赤血球↓)⇔赤血球数3.83(下限3.8)、
Hb10.6g/L↓(下限11.1g/L)
Hct33.2%↓(下限35.6%)
②赤沈↑⇔77mm↑(上限20mm)
③CRP↑⇔2.4mg/dL↑(上限0.2mg/dL)
④血清アルブミン↓⇔3.5mg/dL↓(下限4.0mg/dL)
⑤血清フィブリノーゲン↑➡未確認
⇒ 概ね炎症性疾患としての所見を認めますが、慢性炎症かどうかは判断できません。
<比較的特異的な検査>
a.リウマトイド因子(+)⇒RF(-)⇒HLA-B27を確認する
SLE(70~80%)、SSc(50~60%)、MCTD(50%)、EGPA(30~50%)
血清反応陰性脊椎関節症(強直性脊椎炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎)
b.抗核抗体(+)
⇒抗核抗体抗体価40倍(Homo型40倍、Speckled型40倍)
⇒Homo型:
SLE>SS,SSc,(JIA)
抗DNA⁻ヒストン抗体 2.0IU/mL(上限6.0 IU/mL)
Speckled型:SLE, MCTD,SS, SSc, PM/DM
抗Sm抗体
➡未確認 SLE関連
抗U1-RNP抗体(-)
抗トポイソメラーゼⅠ抗体(抗Scl-70抗体)
➡未確認 SSc関連
抗Jo-1抗体(抗ARS抗体)
➡未確認 PM/DM関連
抗SS-A抗体(-)
抗SS-B抗体(-)
C.補体
C3、134mg/ⅾL↑(上限128 mg/ⅾL)
C4,37mg/dL↑(上限36mg/ⅾL)
CH50 53.5 mg/dL (上限54mg/ⅾL)
⇒補体↑の場合、関節リウマチ,リウマチ熱,ベーチェット病
ただし、数値より疾患活動性は低い
ⅾ.抗好中球細胞抗体(ANCA)➡未確認
e.抗CCP抗体 0.6U/ml(上限4.4 U/ml)
⇒関節リウマチの可能性は低い
f.血清MMP-3 92.4ng/dL↑(上限59.7 ng/dL )
⇒軟骨破壊など関節病変に深く関与する蛋白融解酵素
g.ヒト白血球抗体(HLA)➡未確認
HLA-B27(血清反応陰性脊椎関節症)
HLA-B51、A26(ベーチェット病)
HLA-B52(高安動脈炎)
HLA-DR4(関節リウマチ)
h.梅毒血清反応(生物学的疑陽性):SLE、APS
特記事項:
経過中に天疱瘡もしくは水疱性類天疱瘡が出現しました。
天疱瘡⇒抗デスモゾーム抗体、水疱性類天疱瘡⇒抗BP180抗体
以上より、次回受診時に予定する検査項目を列挙してみます。
血清フィブリノーゲン
抗Sm抗体、抗トポイソメラーゼⅠ抗体(抗Scl-70抗体)、
抗Jo-1抗体(抗ARS抗体)、HLA-B27、
梅毒血清反応(RPR,TPHA)、抗デスモゾーム抗体、抗BP180抗体