中毒・物理的原因による疾患、救急医学
<老年病は内科の延長で診ることが危険なワケ!>
その2.高齢者の不眠治療の落とし穴
高齢者の不眠治療は混乱しています。
私がかつて、今はなき東大分院心療内科に研修を受けていた時、超短時間作用型の睡眠薬であるトリアゾラム(ハルシオン®)、ゾピクリン(アモバン®)の処方は制限されていました。
その理由は、もうろう状態、睡眠随伴症状(夢遊病症状)の発現と中途覚醒時の物忘れ(健忘)が出現しやすいからです。
また、東大以外の病院でも、薬物依存、離脱症状、日中不安、激越に注意しながら、継続投与は避け、短期間に留めることは添付文書にも記載されています。
ところが、高齢者の不眠症に、長時間作用型の睡眠薬を第一選択としてはならないことも、また事実です。
その理由は、長時間作用型の睡眠薬では、体外への薬剤排泄が遅いため、高齢者では譫妄、記銘力低下、歩行失調、言語障害、転倒などが起こりやすいからです。
ベンゾジアゼピン系製剤ではフルラゼパム(ダルメート®)、ハロキサゾラム(ソメリン®)、バルビツール系製剤ではバルビタール、フェノバルビタールがこれに相当します。
そこで、長短時間作用型の睡眠薬を少量より開始することを推奨する指導医がいますが、私としては頗る疑問を感じます。
高齢者の不眠の多くは、<眠れていない病>ではなく<眠れていないという思い込み病>、あるいは<毎日熟睡できなければ死んでしまうに違いない、という熟睡囚われ病>です。
あるいは、<つらい現実から解放されたい、という睡眠逃避病>も少なくありません。
そのくせ、彼らは<これ以上生きていたくない、いつ死んでもいい、死なせてほしい>と言って家人を悩ませることがしばしばです。
高齢者の不眠の訴えには、謙虚に耳を傾けつつ、その根底にある、寂しさ、虚しさ、悲しさ、不安、不満、抑うつ、希望のなさ、
あるいは怒りや憤りなどの感情に気づいた上で、家族や周囲のコミュニティと共に適切なケアを工夫していくことにこしたことはない、と考えています。
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