消化器系の病気

 

テーマ:胃がん検診(その2)

 

<胃がん検診の意義と目的>

 

 

胃がんの一次検診では:問診、胃X線検査、胃内視鏡検査が勧められています。

 

「ペプシノゲン検査」や「ヘリコバクターピロリ抗体検査」については

 

死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるため、

 

検診としての実施は勧められていません。

 

「検診」ではなく、「リスク評価」だとされています。

 

 

日本対がん協会が2015年度に全国の支部で行った胃がん検診の結果では、

 

胃がんが発見されたのは1万人中12人という割合になりました。

 

この数字をどのように判断するかは、個人の価値観によって異なるのではないかと思います。

 

ただし、高円寺南診療所のポリシーとしては、

 

1万人中9988人の方のメリットも同時に考慮するようにしています。

 

今回は、その観点を含めて、国の指針では進めていない

 

「ペプシノゲン検査」や「ヘリコバクター・ピロリ抗体検査」の

 

意義についても再検討してみたいと思います。

 

 

 

 

  1. 「ペプシノゲン検査」

 

胃がんの有無を直接検査する方法ではありません。

 

胃がんになる前に萎縮性(いしゅくせい)胃炎という病態が見られることがあります。

 

萎縮性胃炎になると、ペプシノゲンという物質が血液中から減少するため、

 

血液検査によってこの物質の濃度を計ることで萎縮性胃炎を見つけ、

 

胃がんに備えようという検査です。

 

陽性と判定された人は、定期的に検診を受診することで

 

早期がんに備えることができます。

 

血液検査のため、身体には大きな負担がかかりません。検査が比較的安価に行えます。

 

 

  1. 「ヘリコバクターピロリ抗体検査」

 

血液検査によって、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べる検査で、

 

胃がんの有無を直接検査する方法ではありません。

 

胃がんになった日本人の多くからピロリ菌が発見され、

 

胃がんや胃潰瘍との関係が指摘されています。

 

ただし、ピロリ菌に感染した人のなかで胃がんになる人はごく一部です。

 

身体に大きな負担がかかりません。検査が比較的安価に行えます。

テーマ:患者の皆様からのメッセージ・ボード創設(その2)

 

 

医療に必要不可欠なのは信頼関係であるといわれますが、まさにその通りだと思います。

 

その信頼関係を築くための要となるのがコミュニケーションです。

 

関係性も良好なコミュニケーションと同様に、一方通行のままでは実現不可能です。

 

双方向性であってこそ、コミュニケーションが促進され、

 

望ましい関係性、すなわち信頼関係が気づけることになります。

 

 

ここであらためて日常の診療を振り返ってみますと、

 

患者-医師関係は、最初から信頼関係が前提として存在していると考えてよいでしょうか。

 

皆様は、どのようにお考えでしょうか?

 

 

私自身は、近頃、とみに現実的になり、慎重になりつつあるせいか、

 

単純にYESとは言えなくなりつつあります。

 

 

初診の患者の皆様は、高円寺南診療所に、

 

きっと何か期待するところがあって来院されるはずではあるとは考えています。

 

 

ところで期待とは信頼でしょうか?

 

残念ながら期待の多くは一方向性のもののようであるようです。

 

たとえ一方向性の期待であっても、患者として当然の期待であれば、

 

それは、ごく当然に尊重されなければなりません。

 

 

期待があり、その期待を発信して表明する一方で、

 

その期待のもつ実質的な意味を十分に理解し、

 

それを再度、ご本人に向けて返信して確認する、

 

という双方向性のプロセスは、信頼関係の樹立にとって不可欠だと思います。

 

 

少数例ではありますが、中には理不尽で的外れな期待というものが混在しています。

 

第一の例は、

「家族のことで相談があります。本人は受診の意思がないので、代わりに来ました。

 

私はどうしたらよいでしょうか。」といって、家族の健康保険証を持参される方。

 

患者さんとは、自分の病気で困っている人です。

 

いくら困っていることがあるとはいっても、

 

自分ではなく他人の病気で困っている人は、来談者というお客様に過ぎません。

 

患者さんの代わりに診察するわけにもいきません。

 

また、病気に罹っていても、受診する意思のない方は

 

病人ではあっても患者ではないということになります。

 

受診する意思のない方の健康保険証を持参されても、保険医療は成立しません。

 

 

第二の例は、

「私はタバコの御蔭で何とか生きている。

 

だから、タバコを止めずに狭心症と喘息をすぐに治してほしい」というものです。

 

病気の原因である喫煙を放置して、症状のみを除去する治療をすることが、

 

どれだけ非効率的であり、危険を伴う考え方であるのかをきちんと理解していただく必要があります。

 

「患者のニーズに応えてこそ望ましい医療なのではないか」とすごまれても困惑せざるを得ません。

 

 

これらのケースではあっても、

 

双方向性であって生産的なコミュニケーションを育成していくことは絶対に不可能ということはありません。

 

 

第一のケースでは、健康管理士やカウンセラーに対応していただくことで、

 

問題点がより明確になることがあります。

 

家族の心配にかまけて、相談者自身の健康管理に様々な問題点が発見された、

 

などということも少なくありません。

 

悩める人は病める人、その病める人の悩みが、

 

自分以外の誰かに向けられていたとしても、

 

それを自分の問題として目をむけることができるようになると、

 

支援が容易になることがしばしばあります。

 

 

第二のケースでは、

 

そもそもなぜタバコが無ければ生きていけないと信じるに至ったかの歴史を知ること、

 

それが共感的で双方向的なコミュニケーション、

 

そして信頼関係の樹立に繋がるのではないか、

 

そう思えるような経験をしばしば繰り返しております。

 

血液・造血器の病気

 

テーマ:再生不良性貧血

 

   ( 悪性貧血より悪性な貧血 )

 

 

貧血の女性は多いです。大抵は、鉄欠乏性貧血ですが、

 

中には手ごわい貧血が紛れ込んでいることがあります。

 

 

一般に、貧血というと、赤血球の減少であると理解されていますが、

 

それにとどまらず、白血球や血小板も不足する貧血があります。

 

その代表は再生不良性貧血です。

 

 

白血球が減少すると易感染性といって感染症に罹り易くなります。

 

血小板が減少すると出血傾向を生じます。

 

 

そもそも、血液は骨髄で作られます。

 

骨髄には血液となる元となる細胞(造血幹細胞)があります。

 

再生不良性貧血は、この造血幹細胞が減少して、その結果、

 

末梢血の汎血球減少(赤血球、白血球、血小板のすべての減少)を来す病気です。

 

 

これには、先天性のものと、後天性のものに二大分されます。

 

先天性のものでは、常染色体劣性遺伝をするファンコーニ貧血があります。

 

これは、学童期の再生不良性貧血で、心・腎・骨格系の先天異常を伴います。

 

 

後天性は、さらに特発性、二次性、特殊型に細分類されます。

 

特発性のものは、免疫機序による造血抑制で発症するもので、

 

ふつう再生不良性貧血といえば、この特発性のものを指します。

 

 

二次性のものとして、クロラムフェニコールなどの薬剤、

 

ベンゼンなどの科学物質、放射線の他、妊娠が原因となることもあります。

 

 

特殊型として、肝炎後に発症するもの、夜間血色素尿症を合併するものなどがあります。

 

 

再生不良性貧血では、肝脾腫・リンパ節腫大が無いことが特徴なので、

 

これを確認することが重要になります。

 

これは、汎血球減少を来す他の疾患

 

(発作性夜間血色素尿症、急性白血病、骨髄異形成症)などの除外に役立つからです。

 

また骨髄低形成は特異的といわれています。

 

しかし、実際にはその因果関係の証明は難しいです。

 

エリスロポイエチンの上昇を認めますが、これは骨髄異形成症候群でも認められます。

 

その際、同時に、骨髄巨核球の減少や血漿トロンボプラスチンの高値が確認できれば、

 

骨髄異形成症候群はほぼ否定できます。

 

 

造血能低下による鉄の利用障害のため血清鉄は増加します。

 

炎症反応であるCRPは陰性ですが血沈が亢進します。

 

ただし、血沈の亢進は炎症のためではなく、貧血のためです。

 

 

一部は発作性夜間血色素尿症(PNH)に移行します。

 

また5%の症例でHLA-Aアレル欠失血球や

 

GPIアンカー膜蛋白欠失血球(PNH血球)が相対的に増加します。

 

これらが陽性の患者では免疫抑制療法の奏功率が高いです。

 

 

治療には、重症度の判定が不可欠です。

 

造血幹細胞移植が第一選択の標準治療です。

 

ただし、40歳未満の重症例(ステージ3~5)で、

 

HLA適合同朋ドナーがいる場合に限られます。

 

ステージ3(やや重症)とは、網状赤血球60,000 / μL未満、

 

好中球1,000/ μL未満、血小板50,000 / μL未満の3条件のうち、2項目以上を満たすものです。

 

 

40歳以上では、免疫抑制療法を優先し、

 

抗胸腺細胞グロブリン(ATG)やシクロスポリンによる治療を選択しますが、

 

無効の場合にはじめて造血幹細胞移植が検討されます。

 

 

輸血が必要な場合は、新鮮血などの全血輸血は行わず、必要な成分のみを輸血します。

 

高度な貧血の場合は、濃厚赤血球を用い、

 

出血傾向が顕著な場合は濃厚血小板を用います。

 

凝固因子は欠乏しないため、新鮮凍結血漿は不要です。

 

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

テーマ:ニコチン中毒

 

   ( 喫煙者のメンタルに対する偏見)

 

 

偏見1.精神を病む者にとって、タバコ使用は自らを癒す行為として不可欠である

 

ニコチンは精神疾患の有無にかかわらず、強力な毒物です。

 

体に取り込まれると一時的に集中力と注意力を増加させます。

 

しかし、繰り返し使用することですぐに耐性ができます。

 

精神疾患(うつ病、統合失調症、注意欠陥性障害など)の治療に

 

タバコ使用を加えても、効果がないことが明らかになっています。

 

これは、精神疾患患者がタバコを使用しても、病気はよくならず、

 

かえってほとんどあらゆる病気の増悪を招くだけです。

 

 

禁煙を勧めない医療者は、適切な医療を放棄して、

 

病気を長引かせ、悪化させているということになります。

 

 

 

偏見2.精神を病む者は禁煙しようという気持ちがないということ

 

精神科の外来および入院患者さんの調査によると、

 

禁煙を希望する率は、一般住民と差がなかったようです。

 

さらに、精神疾患を持つ喫煙者の禁煙希望率と、

 

精神疾患の種類、重症度、他の薬物依存症の有無との

 

関係はなかったとされています。

 

 

禁煙を希望している喫煙者は、薬物依存症の治療を求めている患者さんである

 

という認識を、医療者は明確に持つべきだと思います。

 

 

 

偏見3.精神を病む者は禁煙をすることができない

 

喫煙者、すなわちニコチン依存症は、他の依存症と同様、

 

その治療は簡単ではないと考えられています。

 

 

しかし、タバコを吸う精神疾患患者を対象とした治療研究と

 

系統的レビューを見ると、禁煙は不可能ではありませんでした。

 

 

禁煙を希望するうつ病患者に合わせた段階的治療を施すと、

 

18ヶ月後に 25%が禁煙しており、その成功率は一般住民の禁煙成功率と同じでした。

 

 

喫煙者には理解を、愛を、そして希望を持って禁煙していただけるよう、

 

支援を惜しんではなりません。

 

 

 

偏見4.タバコをやめると、ストレス対処できなくなり、メンタルヘルスが悪化する

 

精神疾患の治療も同時に受けている喫煙者を対象とした

 

禁煙に関する無作為試験がいくつかあります。

 

 

それらによれば、禁煙に成功したことで、うつ病や PTSD が悪化したり、

 

精神科への入院率が増加したり、

 

アルコールや他の薬物乱用が増えるようなことはありませんでした。

 

 

タバコをやめるまでの意識形成、態度決定および行動変革という

 

一連のプロセスを経験することは、身体の健康回復のみならず、

 

その後の人生におけるストレス対処、メンタルへルスの安定に寄与します。

 

 

 

偏見5.急性の症状や精神的な悩みで苦しんでいる方にとり、禁煙は二の次でよい

 

喫煙者のほとんどが喫煙には病気や病死を増やす危険があることを知っています。

 

そして、専門家から禁煙の支援を受けたいとも思っています。

 

 

タバコ使用の問題を患者さんに提起した場合、

 

精神疾患のない方と同じように禁煙したいと思っており、また、実際に禁煙しても、

 

精神疾患の改善を妨げる心配はないことが次第に明らかになっています。

 

禁煙開始こそが、心身の病や苦悩を解決するための近道であり、

 

これを避けることは問題解決の先送りになります。

神経・精神・運動器

 

テーマ:臼蓋形成不全

   (意外な発見!慢性疼痛患者の股関節異常)

 

 

高円寺南診療所は、リウマチ専門医外来を柱の一つとしているので、

 

女性の整形外科疾患の診療経験は豊富です。

 

最近は高齢社会となったため、特に明らかな原因となる病気に罹ったことが無くても

 

年齢とともに股関節症を発症してくることがあります。

 

 

近頃、頻繁に聴くようになったのは

 

<立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。>という訴えです。

 

これは、まだ変形性股関節症の初期症状です。

 

これらは、もともと股関節の症状であると気づくことが大切です。

 

 

股関節は鼠径部(脚の付け根)にあるのですが、

 

正確な位置を理解している患者さんは少ないです。

 

股関節症の主な症状は、関節の痛みと機能障害です。

 

しかし、こうした初期症状を無視していた方の多くは、

 

<その痛みが次第に強くなってきました>、

 

<その痛みが持続痛(常に痛む)するので通院が困難です>とか、

 

<夜間痛(夜寝ていても痛む)のため不眠傾向です>といって悩むことになります。

 

 

問診や診察などのあとで、股関節の可動域制限やX線写真をみて診断します。

 

これだけで多くの場合は治療を開始できます。

 

もちろん、比較的まれではありますが手術が必要な場合は

 

CTとMRIなどの検査のため提携医療機関に紹介しております。

 

 

患者さんの多くは女性ですが、その場合原因は発育性股関節形成不全の後遺症や

 

股関節の形成不全といった子供の時の病気や発育障害の後遺症が主なもので

 

股関節症全体の80%といわれています。

 

 

高円寺南診療所は、変形性関節症や関節リウマチの他に、

 

医学界では治療困難な難病とされる(高円寺南診療所では難病とは考えていません!)

 

線維筋痛症という全身性機能性慢性疼痛の患者さんを多数診療しています。

 

この病気は機能性、つまり、検査等で異常が見いだされないものと認識されていますが、

 

ほとんどがストレートネック(より重症のスワンネックも含む)で、

 

さらに股関節異常(とくに、臼蓋形成不全)を見出すことがあります。

 

 

写真

さて、変形性股関節症の病気の進行についてですが、

 

ごく初め(前期関節症)では関節がきゃしゃであったり変形していたりするだけです。

 

しかし、関節症がすすんで初期関節症になると、

 

関節の隙間が狭くなったり(軟骨の厚さが薄くなる)、軟骨下骨が硬くなったり(骨硬化)します。

 

さらに進行期関節症、末期関節症となると、

 

関節の中や周囲に骨棘とよばれる異常な骨組織が形成されたり、

 

骨嚢胞と呼ばれる骨の空洞ができたりします。

 

最終的には体重がかかる部分(荷重部)の関節軟骨は消失し、

 

その下にある軟骨下骨が露出します。

 

股関節

引用:公益社団法人日本整形外科学会公式HPより

https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hip_osteoarthritis.html

 

 

  以下は、日本整形外科学会のHPで推奨されている治療に関する記事の抜粋です。

 

<痛みがあるとどうしても歩かなくなり筋肉が衰えてしまいますので、

 

できれば水中歩行や水泳(平泳ぎを除く)を週2,3回行っていただくと理想的です。

 

運動療法はその他の方法もありますが、

 

運動療法はどうしても疼痛を誘発してしまう可能性がありますので、

 

慎重に始めて徐々に強度を高めていくことがポイントです。>

 

 

高円寺南診療所では、水氣道®を推奨しています。

 

これは水中歩行を中心とする、温水プールでの団体的有酸素運動です。

 

これは全身運動ですが、股関節機能回復に有効なプログラムを充実させていますので、

 

ご興味のある方は、いつでもお声を掛けてください。

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「血海(けっかい)」です。

IMG_1874

場所は膝の内側から少し上で筋肉の隆起したところにあります。

 

 

 

「月経不順」「月経痛」「機能性不正出血」「子宮内膜炎」「湿疹」「蕁麻疹」「皮膚掻痒症」「膝痛」に効果があります。

 

 

 

月経に問題がある方はこのツボに強い痛みがあります。

 

 

 

マッサージしてみてください。

 

 

 

<参考文献>

 

 

 

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

内分泌・代謝・栄養の病気

 

テーマ:潜在性クッシング症候群

    (メタボの症状だが、生活習慣病ではない病気)

 

 

潜在性クッシング症候群(subclinical Cushing Syndrome)とは

 

クッシング症候群の臨床症状を示していないが、

 

コルチゾールの自律的な分泌

(中枢性の上位ホルモンのコントロールを受けないので、

生理的なホルモン分泌の日内変動が消失)

 

がある状態のものです。

 

 

副腎偶発腫瘍(副腎インシデンタローマ)の発見により指摘されることが多いとされます。

 

これは、他の理由で行われた画像診断で偶然副腎に腫瘍が発見されたものの総称です。

 

 

副腎偶発腫瘍の中では非機能性副腎腺腫が約半数で最多ですが、

 

自律性にホルモンを分泌しているもの

 

(コルチゾール産生腫瘍、褐色細胞腫、アルドステロン産生腺腫など)もあります。

 

ホルモンの過剰分泌がある場合や悪性が疑われる場合(直径3cm以上)では外科的摘除も考慮します。

 

 

副腎偶発腫瘍の中で、臨床症状はなくても

 

コルチゾールを自律性に分泌しているコルチゾール産生腫瘍の例があり、

 

これを潜在性クッシング症候群(subclinical Cushing Syndrome)と呼びます。

 

 

血中コルチゾールは日中正常値であることが多いため、

 

血中副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の測定、

 

少量デキサメサゾン抑制試験、副腎シンチグラフィなどを行います。

 

血中ACTHとコルチゾールの採血は早朝約30分間の安静後に行います。

 

尿検査も早朝尿ないし朝のスポット尿で血中遊離コルチゾールを計測し、クレアチニン補正を行います。

 

 

持続的なコルチゾールの過剰分泌により、高血圧、脂質異常症、耐糖能異常、

 

骨粗しょう症などを合併することが多いです。

 

これに伴う高血圧、糖尿病は自律性に分泌されるコルチゾールに依存します。

 

また過剰に分泌されたコルチゾールのミネラル・コルチコイド作用により、

 

低K血症を来すことがあります。

 

 

これらの大部分は顕性のクッシング症候群には移行しません。

 

しかし、外科的切除により改善がみられる場合があるため、

 

個別の患者さんの状況を総合的に判断して手術を考慮します。

 

ちなみに、副腎腫瘍を摘出後の改善率は50~80%です。

 

 

片側性副腎腫瘍によるクッシング症候群では、

 

健側副腎はコルチゾール分泌過剰によるACTH抑制のため萎縮し、

 

術後半年以上のグルココルチコイド補充療法が必要です

心臓・脈管 / 腎・泌尿器の病気

 

テーマ:心不全の予防と治療(その2)

 

<心臓カテーテル検査を行わずに心不全の評価をする>

 

 

本日ご紹介する症例は、M.Yさん77歳の独居の男性です。

 

彼の主病は、慢性心不全ですが、高血圧、慢性心房細動、リウマチ、痛風の合併例です。

 

 

身長174㎝、体重80㎏、BMI26.4(肥満度Ⅰ)

 

2017年7月1日現在での肥満度はⅠで、BMI25を減量目標とすると76㎏弱なので、

 

さらに4㎏の減量努力中です。

 

2010年5月31日の体重94.4㎏⇒31.3(肥満度Ⅱ)でしたので、

 

すでに14kg以上の減量に成功しています。

 

そのため、血圧や血中尿酸値は正常化し、リウマチもコントロールされています。

 

ただし、慢性心房細動は持続しています。

 

 

 

日常生活では、急いで階段昇降をすると、動悸、息切れを感じる他は、

 

日常生活に支障は来していない、とのことです。

 

4段階で評価するNYHA(ニューヨーク心臓協会)心機能重症度分類ではⅡ度に相当します。

 

NYHA(ニューヨーク心臓協会)心機能重症度分類

 

I 度:

心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく、

日常労作により、特に不相応な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの。

 

II 度:

心疾患があり、身体活動が軽度に制約されるもの; 安静時または軽労作時には障害がないが、

日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)によって、上記の愁訴が発現するもの。

 

Ⅲ度:

心疾患があり、身体活動が著しく制約されるもの;

安静時には愁訴はないが、

比較的軽い日常労作でも、上記の主訴が出現するもの。

 

IV 度:

心疾患があり、いかなる程度の身体労作の際にも上記愁訴が出現し、

また、心不全症状、または、狭心症症候群が安静時においてもみられ、

労作によりそれらが増強するもの。

 

 

このNYHA分類は、問診により簡便かつ短時間に、

 

心機能障害の程度を、大まかに知ることができます。

 

しかし、その重症度判定が主に自覚症状によって行われるため、

 

心機能の定量的・客観的評価には適していません。

 

 

とくに、M.Yさんのように高齢の慢性心不全では、

 

より定量的・客観的な評価が必要になります。

 

そこでフォレスター(Forrester)分類

心不全1

 

フォレスター分類とは、心係数と肺動脈楔入圧の

 

2つの定量的・客観的データに基づいて心不全の程度を分類するものです。

 

このうち心係数は心臓超音波検査で容易に計測できますが、

 

肺動脈楔入圧はスワン‐ガンツという心臓カテーテルを用います。

 

超音波検査は、患者さんに苦痛を与えず、繰り返して検査できるので、

 

実際の現場の臨床では、心係数の確認が重要です。

 

カテーテル検査が実施できない日常の外来診療においても、

 

この係数だけで、末梢循環不全の有無を鑑別できることができます。

 

 

心係数2.2以であれば末梢循環不全のないⅠ群【死亡率3%】もしくはⅡ群【死亡率9%】、

 

心係数2.2未満であれば末梢循環不全でⅢ群【死亡率23%】もしくはⅣ群【死亡率51%】です。

 

 

M.Yさんの心臓超音波検査で得られた心係数は2.76でした。

 

2.76>2.2ですから、M.Yさんは末梢循環不全を伴わないⅠ群もしくはⅡ群です。

 

ただし、Ⅰ群は心機能正常群ですから、明らかな心不全であるM.YさんはⅡ群、

 

すなわち、末梢循環不全を伴わない肺うっ血タイプの心不全(うっ血性心不全)であることが推定されます。

 

 

 

左心不全

 

<身体所見>

 

心濁音界の拡大、心拍拍動の左方変異、心尖部でⅢ音とⅣ音聴取(ギャロップ・リズム)など、

 

M.Yさんには明らかな左心不全の所見がありました。

 

ただし、同じく差心不全の所見である肺野での連続性ラ音(水泡音)は聴取しませんでした。

 

<胸部エックス線>

レントゲンまえ2

正面像:心拡大 心・胸郭比増大

 

レントゲンよこ2

側面像:心拡大 左心房の拡大も顕著です。

 

肺水腫の所見の検索

 

心陰影の拡大(心・胸郭比↑)CTR=75.8%(基準:50%未満)

②上肺野の血管陰影の増強

③肺門部を中心としたうっ血(バタフライ陰影)

 

 以上を認めましたが、胸水貯留をはじめKerley’s B line,vanishing tumorなどの所見は認めませんでした。

 

 

<心臓超音波>

エコー5

心臓超音波Bモードによる左心室機能評価

 

 

エコー票

左心室機能計測値

 

    左室径短縮率(%FS)0.38 (基準:0.26~0.55)

 駆出率(EF)0.67(基準:0.64~0.75)

 

 左心不全では上記のデータはいずれも低下しますが、M.Yさんのデータはいずれも基準範囲でした。

 

 

<血液検査>

 血漿BNP 73.8pg/mL (基準値18.4以下)

 

 この検査データは、左心室の拡張末期圧をよく反映するので左心不全の診断意義が大きいとされます。

 

M.Yさんの血漿BNPは、前回が46.1でしたので、

左心室の拡張末期圧が上昇し、

左心不全が悪化していることを疑わなければなりません。

 

 

 

<M.Yさんの心不全の評価>

 

自覚症状による心不全の重症度はNYHAⅡ度で、比較的安定していました。

 

客観的な評価尺度である超音波検査による心係数計測により、

 

フォレスター分類に当てはめると末梢循環不全を伴わない

 

Ⅰ群もしくはⅡ群に相当しました。

 

また、心臓カテーテル検査を行うまでもなく、

 

うっ血性心不全に対するコントロールは万全でないことが、

 

胸部X線、血液検査等により判明し、

 

フォレスター分類Ⅱ群の末梢循環不全を伴わない肺うっ血タイプの左心不全と評価することができました。

 

 

<M.Yさんの心不全の治療方針>

 

フォレスター分類は心不全の治療方針の決定に有用です。

 

Ⅱ群の心不全の場合、治療の基本戦略は前負荷の軽減です。

 

具体的な治療戦術としては利尿薬や血管拡張薬です。

 

 

<M.Yさんの現在の治療薬>

 

木防已湯

(漢方薬:体に溜まった不要な水分をさばく「利水剤」の一つで、

 

体力が中程度よりあって、みぞおちがつかえて顔色がさえない人の、

 

むくみや動悸、息切れなど、心不全症状があるときに用います。)

 

ジゴキシン(心不全治療薬:ジギタリス製剤)

 

ミニプレス(降圧薬:α遮断薬)

 

ブロプレス(降圧薬:ARB)

 

バイアスピリン(抗血栓薬:抗血小板薬)

 

アザルフィジン(抗リウマチ薬:低分子抗リウマチ免疫調整薬)

 

ザイロリック(痛風治療薬:尿酸生成抑制薬)

 

 

以上のうちで、慢性心不全の治療において予後改善の証拠が得られているのは、

 

ARBのみです。

 

現在、治療強化のために利尿薬の導入を検討していますが、

 

スピロノラクトン(アルダクトンA®)も慢性心不全の治療において

 

予後改善の証拠が得られているので、有力な候補であると考えております。

 

<第5ステップ> その2

 

第5ステップは「助けを求める人を決める」段階です。

 

自分が抱えている、今ある大事な問題について、

 

周囲のサポーターたちの誰に助けを求めるのが適切か、引き続き考えていきましょう。

 

複数の人の力を借りることも大きな助けとなるでしょう。

 

 

しかし、上のような考えを巡らせ、助けを求めることが苦しくなったり、

 

ためらわれることもあったりすると思います。

 

特に、きわめて個人的な問題の場合や、

 

もっと自分の苦しみをわかってほしい場合はそうです。

 

どんなに親しい間柄でも、親しいからこそ、打ち明けにくいこともあるのです。

 

 

臨床心理士は第一に、来談者の皆さんの「しんどさ」「苦しみ」に寄り添い、

 

受け止めることに努めます。

 

そのために、皆さんの心の中で、周囲で、

 

何が起こっているのかを皆さんがお話しできる範囲でお聞きしていきます。

 

事情をしっかり伺った上で、今の苦しみから脱していく方法を

 

ともに真剣に考えていきます。

 

もちろん、守秘義務がありますので、

 

お話したことが外部に漏れる心配はありません。

 

 

臨床心理士に相談する、カウンセリングを受ける、

 

というのは、「自分は病気なんだ」ということではありません。

 

第24,25回でお話ししたように、「自己スティグマ」、

 

つまり「こんな自分は周囲に受け入れられない(病気だ、変だ)というレッテルを

 

自分自身に貼ってしまうこと」によって自尊心や自己評価が下がり、

 

助けを求めることをためらわせるのです。

 

 

誰もが必ず人生の中でライフイベント、重大な問題にぶつかることがあります。

 

つい、「他の人にとっては大した問題じゃないだろう、こんなことで人に相談するのは…」

 

とためらう気持ちが起こるかもしれません。

 

しかし、自分と他人の悩み、苦しみの重さは天秤で測れるものではありません。

 

誰にでも弱点があって、たまたまそこに問題が発生したと思ってくださってよいと思います。

 

「自分が弱いから」ではありません。

 

 

臨床心理士は、「その人にとって」重大な問題である、

 

ということをよく理解している専門家なのです。

 

 

* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

 

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

テーマ:テーマ:アナフィラキシー・ショック対策(その2)

 

<エピペンの使い方®について>

 

蕁麻疹

 

アナフィラキシーショックの症状には悪心(おしん)と嘔吐(おうと)がみられます。

 

<原因> 

抗菌薬などの薬剤、食物(そば)、虫刺症(ハチ毒)、物理的刺激など多岐にわたります。

 

たとえば、お好み焼き粉などの粉製品を開封後、

 

長期間室温保存することで混入したダニが繁殖し、

 

その製品を摂取したことによるアナフィラキシーが報告されています。

 

 

アナフィラキシーショックは、IgE抗体を介する免疫学的抗原・抗体反応であり、

 

2回目以降に強く起こることが重要です。

 

 

<症状> 

起因物質投与後、数分で粘膜浮腫、気管支痙攣(けいれん)、

 

血圧低下などの広範な症状を呈します。

 

早期の対応のためには前駆症状についての知識が役に立ちます。

 

気分不快感、違和感、唇や手足のしびれ、

 

心悸亢進(動悸)などから始まることが多いです。

 

症状は次第に、血圧低下、頻脈(脈拍数の増加)、皮膚紅潮、

 

蕁麻疹(じんましん)、顔面蒼白(顔が真っ青になる)、

 

喘鳴(呼吸がゼイゼイする)、呼吸困難、下痢などが生じます。

 

 

違和感として、悪心・嘔吐があります。

 

胃内容物(ときに十二指腸・小腸内容物)が不随意に逆流し、

 

食道・口腔から体外に排泄されることを嘔吐といい、

 

嘔吐したくなる差し迫った感覚を悪心(嘔気、吐き気)といいます。

 

なお、重症になると意識が消失し、死に至ることがあるため緊急対応が必要です。

 

 

<治療>

迅速な処置が決め手になります!

 

①アドレナリン自己注射用キット(エピペン®)を携帯していれば、それ使用します。

 

②エピペン®をもってなければ、呼吸、循環(脈拍数など)の状態を直ちに把握して、

 

援助者(救急隊、可能であれば蘇生チーム)に連絡する。

 

③医療機関でアドレナリンを大腿部(中央前外側)に筋注し、

 

患者を仰臥位(あおむけ)にして下肢を挙上する。

 

ここまでは、原理的には①と同じです。

 

 

その後、必要に応じて酸素投与、静脈ルート確保、心肺蘇生を行います。

 

 

補足説明)専門的な話になりますが、アドレナリンを投与するのは、

 

血圧を回復させるだけでなく、c AMPを介して

 

アナフィラキシー反応を抑制に直接役立つことが知られています。

 

 

<検査>

症状が落ち着き、投与薬剤の影響を受けなくなった時期に行います。

 

そこでアレルゲンの同定検査を行います。

 

①血清特異的IgE抗体検査

 

②プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト

 

高円寺南診療所では①のみを実施しています。

 

感度は低いもののアナフィラキシー反応を誘発するリスクがないからです。

 

②は感度が高いのですが、アナフィラキシー反応を誘発するリスクがあります。