診察室から 7月18日<患者の皆様からのメッセージ・ボード創設(その2)>

テーマ:患者の皆様からのメッセージ・ボード創設(その2)

 

 

医療に必要不可欠なのは信頼関係であるといわれますが、まさにその通りだと思います。

 

その信頼関係を築くための要となるのがコミュニケーションです。

 

関係性も良好なコミュニケーションと同様に、一方通行のままでは実現不可能です。

 

双方向性であってこそ、コミュニケーションが促進され、

 

望ましい関係性、すなわち信頼関係が気づけることになります。

 

 

ここであらためて日常の診療を振り返ってみますと、

 

患者-医師関係は、最初から信頼関係が前提として存在していると考えてよいでしょうか。

 

皆様は、どのようにお考えでしょうか?

 

 

私自身は、近頃、とみに現実的になり、慎重になりつつあるせいか、

 

単純にYESとは言えなくなりつつあります。

 

 

初診の患者の皆様は、高円寺南診療所に、

 

きっと何か期待するところがあって来院されるはずではあるとは考えています。

 

 

ところで期待とは信頼でしょうか?

 

残念ながら期待の多くは一方向性のもののようであるようです。

 

たとえ一方向性の期待であっても、患者として当然の期待であれば、

 

それは、ごく当然に尊重されなければなりません。

 

 

期待があり、その期待を発信して表明する一方で、

 

その期待のもつ実質的な意味を十分に理解し、

 

それを再度、ご本人に向けて返信して確認する、

 

という双方向性のプロセスは、信頼関係の樹立にとって不可欠だと思います。

 

 

少数例ではありますが、中には理不尽で的外れな期待というものが混在しています。

 

第一の例は、

「家族のことで相談があります。本人は受診の意思がないので、代わりに来ました。

 

私はどうしたらよいでしょうか。」といって、家族の健康保険証を持参される方。

 

患者さんとは、自分の病気で困っている人です。

 

いくら困っていることがあるとはいっても、

 

自分ではなく他人の病気で困っている人は、来談者というお客様に過ぎません。

 

患者さんの代わりに診察するわけにもいきません。

 

また、病気に罹っていても、受診する意思のない方は

 

病人ではあっても患者ではないということになります。

 

受診する意思のない方の健康保険証を持参されても、保険医療は成立しません。

 

 

第二の例は、

「私はタバコの御蔭で何とか生きている。

 

だから、タバコを止めずに狭心症と喘息をすぐに治してほしい」というものです。

 

病気の原因である喫煙を放置して、症状のみを除去する治療をすることが、

 

どれだけ非効率的であり、危険を伴う考え方であるのかをきちんと理解していただく必要があります。

 

「患者のニーズに応えてこそ望ましい医療なのではないか」とすごまれても困惑せざるを得ません。

 

 

これらのケースではあっても、

 

双方向性であって生産的なコミュニケーションを育成していくことは絶対に不可能ということはありません。

 

 

第一のケースでは、健康管理士やカウンセラーに対応していただくことで、

 

問題点がより明確になることがあります。

 

家族の心配にかまけて、相談者自身の健康管理に様々な問題点が発見された、

 

などということも少なくありません。

 

悩める人は病める人、その病める人の悩みが、

 

自分以外の誰かに向けられていたとしても、

 

それを自分の問題として目をむけることができるようになると、

 

支援が容易になることがしばしばあります。

 

 

第二のケースでは、

 

そもそもなぜタバコが無ければ生きていけないと信じるに至ったかの歴史を知ること、

 

それが共感的で双方向的なコミュニケーション、

 

そして信頼関係の樹立に繋がるのではないか、

 

そう思えるような経験をしばしば繰り返しております。