関節リウマチ診療ガイドライン2014(RA診療GL2014)に準拠した診療の課題

 

 

私はリウマチ専門医の一人としてRA診療ガイドラインに準拠して、関節リウマチの厳格なコントロールを適切な薬剤で行うことが、関節および生命予後の改善につながることを期待しています。しかし、実臨床においては、いろいろな未解決出悩ましい課題が残されています。

 

課題1:

いまだに治療が満足できない場合があること

 

杉並国際クリニックでは、早期の関節リウマチを診断して、即座にガイドラインに沿った治療を開始できる実績をもっています。

しかし、せっかく早期発見・早期治療の開始ができても、多くの薬剤にアレルギー反応が出る方がいらっしゃいます。

抗体製剤にアレルギーがある場合は、有効性の判定の前に、その薬剤の使用することができなくなります。あるいは、最初はスムーズに治療が進んだかに見えて、しばらくすると効果不十分になる難治性の関節リウマチもあります。

これは、関節リウマチが一様な疾患ではなく、患者さんの間でも互いに異なる多様な体質的背景をもつ疾患だからです。つまり、患者ごとの病態に関連するサイトカインや免疫細胞が異なり、多くの患者で原因治療が行えていないことに起因しています。

 

 

課題2:

合併症の多い長期罹患の関節リウマチ

 

生物学的DMARDなどの今日では広く用いられている薬物の恩恵を受けられるようになったのは21世紀に入ってからです。

したがって、今から20年以上前から治療を続けている方は、こうした薬剤の恩恵を受けられず、すでに関節変形が進行してしまっている患者さん、ステロイドの合併症が至る所に表れている患者さん、あるいは肺合併症を有する患者さんでは、強力な免疫抑制療法を行ないにくくなります。

この場合は、治療目標を臨床的寛解ではなく低疾患活動性とすることが多くなります。しかし、患者さんはどうしても痛みや機能障害を訴えることが多いために生活の質は著しく低下することを余儀なくされます。

このような患者さんを、今後増やさないようにするため、早期診断と早期治療は重要です。なお高齢の関節リウマチ患者さんに関しては認知機能の低下が加わると生活の質は一層低下することになるので悩ましい課題であるといえます。

 

 

課題3:

妊娠希望の女性の関節リウマチ

 

関節リウマチ(RA)患者は女性が多く、発症時点で見るとほぼ半数が妊娠可能な年代です。妊娠は計画的に行うことが必要です。妊娠の希望を伝えること、すぐに希望がないとしてもお付き合いしていて妊娠の可能性がある場合は、妊娠可能な薬で治療しているか、避妊が必要かについて、予めリウマチ専門医や産科医と相談し理解を深めておくことも重要でしょう。

妊娠を計画したら、病状が安定しており、寛解(病気の活動性がないこと)や低い活動性で安定した状態を継続していることが重要です。病気の活動性が高いと妊娠しにくくなり、不妊症の率が高くなります。

また、関節リウマチの病状は、6〜7割の患者さんで妊娠期間中に次第に良くなる傾向がありますが、妊娠した時に病気の活動性が高いと良くならない場合も多く、妊娠中に患者さん自身の関節症状が進んでしまったり、妊娠を継続するのが難しくなったりすることもありえます。

炎症の時に上昇する蛋白が胎盤を通って胎児の発達に影響する可能性もあります。 病気を進行させないため早く良くするために、流産や先天異常を起こしやすい薬を一時的に必要とする場合があります。

その場合は、有効性の高い方法で避妊することが必要です。病状が安定して妊娠を計画したら、妊娠に安全な薬で病気をコントロールします。全ての薬を中止してしまって病状が悪くなれば、かえって妊娠しにくい状況になってしまいます。

結婚を目前に控えた女性である場合、精神的に不安定になりやすく、それが関節リウマチの病態をさらに悪化させ生活の質を低下させがちになります。そこでの心理面でのサポートは極めて重要で、特別な配慮が」必要になることが多いです。

 

 

課題4:

医療費の問題

 

生物学的製剤(bDMARD)が使用できるようになってから、関節リウマチ患者の医療費は大きく増大しました。この高価な生物学的製剤をいつまで続けるか、ということに関しては回答が出ていません。

今後、臨床的寛解あるいは低疾患活動性が達成されたら、コストの低い従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)を中心に維持療法を行なうなどといった2段階に分けた関節リウマチ治療が提案される可能性がありますが、容易に解決できる課題ではないと思われます。

脂質異常症とは?その2

 

―脂質異常症のスクリーニングとリスク区分についてー
今回の改訂で、絶対リスク評価ツールが 2012 年版で用いられた NIPPON DATE80 から吹田スコアに変更されました。 この理由として、脳血管疾患を含まない冠動脈疾患をエンドポイントとしているこ と、死亡率ではなく発症率を評価していること、脂質の指標として HDL-C と LDL-C の両方を評価していること、 などが挙げられます。

 

吹田スコアは次の図 2 に基づいて計算します。

脂質異常症スクリーニング

☆管理目標値 冠動脈疾患発症のリスクから設定された、脂質異常症の管理目標値が表2です。

 

 

 

 

※今回の改訂で、100mg/dL 未満とされた冠動脈疾患既往(二次予防)例のうち、表 3 に挙げられる高リスク病態では 70mg/dL 未満とさらに厳格な値が推奨されました。

表3

☆新作用機序の脂質異常症治療薬 本ガイドラインでは、薬物療法の項に新たに PCSK9 阻害薬や MTP 阻害薬が盛り込まれ、家族性高コレステロール血症 (FH)治療におけるこれらの位置づけが明確に示されました。

 

FH は先天的に LDL-R やそれに関連する遺伝子に変異が生じているため、LDL を細胞内に取り込むことができず、血液 中の LDL-C が異常に高くなってしまう疾患です。

 

PCSK9 阻害薬や MTP 阻害薬の登場により、これまで血中 LDL-C 値を十分に下げられなかった FH における治療選択肢が一気に増えました。

 

【PCSK9 阻害薬】 PCSK9阻害薬はPCSK9(※1)を阻害することにより、LDL受容体(LDL-R) の分解を抑制します。

それにより、肝細胞表面の LDL-R の数が増え、より多くの血中 LDL-C を 肝細胞内に取り込めるようになるため、血中の LDL-C を減らします。

 

これまで、スタチンの投与量を増やしても LDL コレステロールがなかな か下がらないといったジレンマがありました。これは、スタチンが肝細胞 内のコレステロール生合成を抑制すると、転写因子の SREBP(※2)が活 性化し、LDL-R を増加させるとともに PCSK9の合成を促進するためです。

 

このスタチンの弱みを補完し相乗効果を発揮 することを狙って、PCSK9 阻害薬は、基本的にはスタチン系薬との併用で用いられます。

 

※1 PCSK9:LDL受容体(LDL-R)の分解に関わるタンパク質

※2 SREBP:HMG-CoA 還元酵素刺激、LDL-R 産生刺激、PCSK9 分泌に働く細胞内センサー

 

慢性腎臓病(CKD)診療の課題と対策

 

慢性腎臓病(CKD)は末期腎不全に至るリスク因子で、患者数は増加しています。2011年当時で、日本では成人人口の約13%、1,330万人がCKD患者と言われております。CKD発症の背景因子として、糖尿病、高血圧などの生活習慣病が挙げられます。CKDは末期腎不全や心血管疾患のリスクが高く、国民の健康を脅かしています。

 

以上の現状を踏まえ、杉並国際クリニックは、定期通院患者の皆様の腎機能の保護に取り組み、慢性腎臓病(CKD)には腎機能は血清クレアチニン値を用いたGFR推算式によって算出したeGFR値で評価しており、eGFR値と尿蛋白量でCKDの重症度を決めています。

 

しかし、血清クレアチニンは筋肉量に影響を受けやすいし、推算式そのものもあくまで推定で患者ごとに腎機能を正しく評価するには課題があると指摘されています。そもそも腎機能評価には、推定値であるeGFRではなく本来は糸球体濾過率(GFR)そのものを使うべきなのだが、これにはイヌリンクリアランスという検査が必要になります。この検査は煩雑で、患者、医療従事者に大きな負担を強いるため、実臨床ではほとんど用いられていません。

 

 

さて、慢性腎臓病(CKD)診療の課題は3つあるといわれます。それは、

(1)予後予測法がないこと、

(2)早期診断法がないこと、

(3)治療法がないこと

 

1つ目は、腎障害患者の腎予後を予測する方法がないことに関して、血圧や血糖値などは腎障害のリスク因子ですが、直接的に腎予後を予測する因子としては弱いです。

 

しかし、関連記事:D-アミノ酸はCKDの腎予後予測に有用であり、推定腎機能(eGFR)高値の患者は低値の患者に比べてD-セリンの血中濃度が高まっていること、透析導入までの期間を検討したところD-セリンの血中濃度が高いほど透析導入が早いことを明らかにされました。

 

 

2つ目の早期診断法につながる、より正確に腎機能を評価できるバイオマーカーとして注目されつつあるのもD-セリンです。GFR値が低いほど血中D-セリン濃度が高いだけでなく、腎障害が進行していると考えられる患者ほど、尿中D-セリン排泄量が高まっていることが明らかとなりました。

とりわけ尿中D-セリン排出量が高まることは、腎機能ではなく腎障害と相関すると考えられる結果が得られたことは注目に値します。

 

例えば、糖尿病性腎症の早期段階では、GFRで示される腎機能は低下していないのに、尿蛋白(微量アルブミン尿)が出始めている病態があります。こうした症例を早期段階で拾い上げようとしてもGFRのみでは難しいです。

しかし、最近、腎障害と腎機能低下が相関しない段階であっても、血中D-セリン濃度は健常人と変わらないが、尿中D-セリン排泄量が高まっていることが明らかになりました。

つまり尿中D-セリン排泄量は、腎障害の早期段階を検出できるバイオマーカーとして有望だと考えられる結果です。

 

D-セリンは大量投与すると腎毒性があることも明らかになってきました。

1検体のD-セリンの測定には、最近開発された液体クロマトグラフィー(HPLC)用のカラムを用いることにより、測定自体は5分で完了できるようになり、血液および尿中のD-セリンを測定することによる臨床検査が保険適応になることが期待されています。

 

 

ただし、3つ目の、慢性腎臓病(CKD)の治療法がないことは相変わらず大きな課題です。

現状では、CKDの予防に力を注ぎ、病気を進行させないことが賢明です。そのため肥満症、糖尿病、高血圧をはじめリスク因子となる生活習慣病のコントロールに際には、可能な限り一般尿検査による尿蛋白のチェックと擬陽性・陽性者には尿蛋白(糖尿病ではアルブミン)定量の重要性を強調していきたいと考えております。

アルコール性肝障害

アルコール性肝障害は、常習飲酒家(エタノール60g/日以上)に発生する肝障害です。これは日本酒換算で3合/日に相当します。わが国の肝硬変の18%を占めます。

男性に多いが、女性はより少量(男性の2/3)で短期間の飲酒で重症化し、肝硬変への進展も早いことが知られています。

 

なおC型慢性肝炎の患者は少量の飲酒でも肝障害が進展しやすくなります。


飲酒に伴う低栄養だけでなく、肥満もアルコール性肝障害進展の危険因子であるため、過栄養に対する注意が必要です。

重症アルコール性肝炎は、連続飲酒発作など過度の飲酒をきっかけに発症し致死率は70%と高率です。

 

アルコールによる肝障害の原因の一つに、アルコールの代謝産物である、肝毒性をもつアセトアルデヒドの蓄積があります。

アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)により酸化されて無害な酢酸になりますが、日本人の約40%は代謝能の弱いALDH2*2の遺伝子多型を持っています。

この遺伝子をもつひとは、代謝能の高いALDH2*1/*1ホモと比較すると、より少ない飲酒量でも肝障害を呈します。

 

アルコール代謝酵素であるアルコール脱水素酵素(ADH)、チトクロームP450(CYP)2E1は、このALDHとともに、いずれも肝小葉の中心部(Zone3)に優位に存在するため、この領域での肝障害が強く現れます。

この領域は、元来、低酸素状態になりやすいため、微小循環障害や酸素消費の増大によって障害が起こりやすいことが知られています。

 

なお、アルコール性肝障害では、肝臓に過剰な鉄沈着がみられます。その機序は、トランスフェリン受容体の発現亢進およびヘプシジンの発現低下によると考えられています。

血清鉄の結合蛋白であるトランスフェリンとへプシジンは、いずれも肝臓で合成されます。トランスフェリンはトランスフェリン受容体を介して、肝細胞内に鉄を供給、蓄積する一方、へプシジンは腸管細胞における鉄取り込み蛋白であるフェロボルチンの発現を低下させることによって鉄蓄積には抑制的に作用するため、へプシジンの発現低下が鉄蓄積を促進する作用を強めることになります。

 

肝病変のそれぞれの段階に対する治療はウイルス性肝炎の治療と違いはありません。ただし、断酒を含めた生活指導を最優先にします。

不安症の種類

以前は神経症というカテゴリーでしたが、WHOが作成したICD-11(国際疾患分類第11版)では、不安または恐怖関連症候群、強迫症、ストレス関連症、解離症群などに分かれました。

 

不安または恐怖関連症候群やストレス関連症と同様に、精神科医に限らず、一般内科医を受診しているケースが多いです。その理由は、身体疾患を伴っていたり、身体症状が前面に表れてきたりすることが少なくないからです。こうした広い意味での心身症をより専門的に扱うのが心療内科専門医です。

 

つまり、総じて心理的要因によって心身の症状が引き起こされた状態を指し、パニック症、身体症状症、また適応反応症なども該当します。

 

身体症状症とは、器質的に異常がないのに身体症状が出現するものであり、また適応反応症とは大きなストレスに適応できないため不調となるものです。

心身医学に精通している心療内科専門医こそが、しっかりとした対応をすべき責任があるものと考えています。
 

 

不安の診療に心療内科医が活躍できる背景としては、例えば、社交不安症(社交不安障害)を例として説明できるかもしれません。
社交不安症の愁訴としては、公衆の面前や人と関わる状況において、不安、緊張、恐怖、羞恥、無力感などとともに、これらの感情に関連する身体反応として赤面、震戦、発汗、顔のこわばり、声の震えなどが出現すること、あるいはそのような心身の反応が起こることへの強い予期恐怖が一般的です。

こうした社交不安症に特異的な検査は存在しないので、類似の症状を呈する身体疾患との鑑別疾患が大切になります。これは日常診療において身体疾患を診ている内科医にとっては難しいことではありません。

 

甲状腺機能亢進症などとの鑑別のためには血液検査が必要ですし、またパーキンソン病との鑑別のためには神経学的検査を実施することが望ましいとされます。内科医としての経験と基礎資格があることを前提としている心療内科専門医は、こうしたケースに対しても的確に鑑別診断手続きを取ることができるという点で強みを持っていると自負しています。

<線維筋痛症 JFIQの経過報告>

(図1)

スクリーンショット 2019-07-01 時刻 22.25.52

JFIQは線維筋痛症の経過観察に欠かせない指標です。

 

 

最高点が100点で、20点未満が正常値になります。

 

 

 (図1)は左側が初期時の点数、右側が現在の点数でその2点を結んだものです。

 

 

 図2)

スクリーンショット 2019-07-01 時刻 22.27.00

 

 

 

(図2)は線維筋痛症の治療効果の割合を表したものです。

 

 

 50以上点数が下がると「著効」です。

 

 

 20以上50未満点数が下がると「改善」です。

 

 

 20未満の点数の低下は「無効」の判定となります。

 

 

<今回の考察>

 

 

正規性の検定で初期値、現在値共に正規性がありました。

 

 

その後、関連2群の検定と推定を行いました。

 

 

1)統計的にみて、JFIQスコアが有意に改善したことが証明されました。P(危険率)=0.001%でした(図1)

 

 

pが0.05以下であれば統計学的優位である。

 

 

pが0.01以下であれば統計学的に極めて優位である。

 

 

2)JFIQスコアの判定基準として、20点以上改善されると治療が有効、50点以上改善されると著効となります。

 

 

  今回、 17名の平均で    35.8点改善していたため、全体として鍼治療は   有効であったと言えます。

 

 

個別でみると、著効5名(29.4%)、有効7名(41.2%)、無効5名(29.4%)でした。(図2)

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

皆様、「快便」ですか?

 

 

 ―杉並国際クリニック方式:ブリストル便形状スケールによる快便漢方処方―

 

ブリストル便形状スケールは便のタイプ(硬さ)を7種類に分類した世界共通の尺度です。 あなたの便はどのタイプですか?

 

英国ブリストル大学のHeaton博士が1997年に提唱した大便の形状と硬さで7段階に分類する指標であり、便秘や下痢の診断項目の一つとして使用されています。英語表記はBristol Stool Form Scale。

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(表をクリックで拡大)

 

英国生まれのこのスケール、実は、漢方医学との相性がとても良いです。
 

Heaton博士が提唱した20年後の2017「慢性便秘症診療ガイドライン」は、便秘と下痢を無関係に取り扱っていますが、それが現代西洋医学の相場であります。

 

しかし、実際には、心身に対するストレスが原因で便秘と下痢の間を行ったり来たりする過敏性腸症候群に悩んでいる多数の患者さんに対しては、これは、ほぼ無力なガイドラインです。
  

 

そして、日常診療でとりわけ難しいのが、便通に関する問診です。
 

私は簡単に「快食ですか?快便ですか?・・・」とお尋ねしていますが、これはきっかけにすぎません。

日本人の民族性のためか、便通についての情報はタブーという程ではないにせよ、尾籠(びろう)な話題として回避されやすいのが悩みの種でした。そのうえ、一般的な日常用語である「便秘」や「下痢」についての認識の仕方には個人差が多く、なかなか正確な情報を得ることができませんでした。そこで、登場してくれたのが英国生まれの「ブリストル便形状スケール」だったということです。


このスケールが便利なのは、患者さんとの認識のずれを最小限にしてくれることと、その確かで具体的な情報のもとに、ただちに対処法が示せることです。

私は、このスケールを用いて、便秘や下痢の漢方処方を決定することを考えています。

この発想は、まだ世界中でも前例がないため、おそらくオリジナルでのパイオニア臨床応用です。

これをお読みの皆様は、世界初のリポートを読んでいることになります。
  

便形状のタイプ別に適した漢方薬があります。下痢の場合には、急性下痢と慢性下痢症では背景が異なりますので、それぞれに応じた処方を工夫してみました。

 

タイプ❶~❷は硬便(便秘症)、タイプ❻~❼は水様便(下痢症)の目安となります。 まずは正常便とされる❸~❺をめざしましょう。

 

つぎに、可能であれば理想の正常便である❹に近づけるように調整していきましょう。

 

タイプ❶ (コロコロ便) 

麻子仁丸(ましにんがん)

成分:大黄4.0など

 

タイプ❷ (硬い便)   

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

成分:大黄4.0、甘草2.0など

 

タイプ❸ (やや硬い便) 

潤腸湯(じゅんちょうとう)

成分:大黄2.0、甘草1.5など

 

タイプ❺ (やや軟らかい便)

急性:五苓散(ごれいさん)
成分:茯苓6.0、沢瀉4.0など

慢性:啓脾湯(けいひとう)
成分:茯苓4.0、沢瀉2.0など

 

タイプ❻ (泥状便)    

急性:附子理中湯(ぶしりちゅうとう)
成分:甘草3.0、人参3.0、白朮3.0、乾姜3.0、附子1.0
             

慢性:半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
成分:半夏5.0、甘草2.5など

 

タイプ❼ (水様便)   

急性:黄芩湯(おうごんとう)

成分:黄芩4.0、甘草3.0など

慢性:柴苓湯(さいれいとう)
成分:半夏5.0、甘草2.0、沢瀉5.0、茯苓4.0など

独法国立相模原病院・アレルギー科

VS杉並国際クリニック・アレルギー科(その4)

 

杉並国際クリニックのアレルギー科が行っているアレルギー専門外来診療の守備範囲を説明する目的で、我が国におけるアレルギー診療の最先端の医療センターである相模原病院との比較してみました。

 

情報源は、同病院のホームページで

 

Q.

アレルギー性鼻炎はアレルギー科で受診できますか?

 

A.

アレルギー性鼻炎に関しては、副鼻腔や鼻ポリープなどでは手術が必要なことや鼻洗浄や鼻ネブライザーなどが有効なこともあることから、耳鼻いんこう科受診をお勧めしております。なお月曜日午前には、耳鼻いんこう科専門医が鼻アレルギー外来を行っております。

 

 

Q.

金属アレルギーの検査はできますか?

 

A.

当科では金属アレルギーの検査は行っておりません。皮膚科へご相談下さい。

 

 

Q.

じんま疹はアレルギー科で受診できますか?

 

A.

じんま疹のみ場合は皮膚アレルギーの診療を行っている皮膚科受診をお勧めいたします。他の皮膚疾患の可能性がないかの確認が必要となるからです。ただし皮膚症状だけでなく息苦しさ、腹痛、意識消失などが重なる場合、アナフィラキシーという全身アレルギーの症状である可能性がありますので、その場合はアレルギー科を受診して下さい。

 

 

<杉並国際クリニックからの視点>

Q.

アレルギー性鼻炎は杉並国際クリニックのアレルギー科で受診できますか?

 

A. 

アレルギー性鼻炎に関しては、副鼻腔や鼻ポリープなどでは手術が必要なケースを除いて、当クリニックで診療していますので、ご相談ください。一般的に、内科領域のアレルギー疾患の代表は気管支喘息ですが、杉並国際クリニックを受診される気管支喘息の患者さんの3分の2近くにアレルギー性鼻炎が合併しています。これを鼻炎合併喘息といいますが、アレルギー性鼻炎と気管支喘息を統合的にお治療することが患者さんの利益にかなうことは学会でも認められているので、アレルギー専門医としては気管支喘息のみならずアレルギー性鼻炎のチェックも必ず行うべきだと考えて毎日実践しております。

 

 

Q.

金属アレルギーの検査は杉並国際クリニックでできますか?

 

A.

当科では金属アレルギーの検査のみを希望される方の初診受付は行っておりません。お急ぎの方は皮膚科へご相談下さい。当クリニックでの金属アレルギーの検査は、アレルギー専門医の立場から必要であると判断した場合のみ実施しております。

 

 

Q.

じんま疹は杉並国際クリニックで受診できますか?

 

A.

じんま疹のみ場合であっても、ご受診ください。30年に及ぶ臨床経験を持っています。とりわけ、じんま疹は他のアレルギー疾患を背景とすることがあります。また皮膚症状だけでなく息苦しさ、腹痛、意識消失などが重なる場合があります。これはアナフィラキシーという全身アレルギーの症状を引き起こす可能性があり、さらにショック状態に至るものをアナフィラキシーショックといいます。生命にかかわることがありますので、放置しないで私共のようなアレルギー専門医に御相談ください。

 

関節リウマチ診療ガイドライン2014(RA診療GL2014)の包括的原則


RA診療GL2014には、治療を遂行するための包括的原則が示されているので紹介します。


治療目標:

・臨床症状の改善のみならず、関節破壊の抑制を介して長期予後の改善、特に身体機能障害の防止と生命予後の改善を目指す

 

 

治療方針:
・関節炎をできるだけ速やかに鎮静化させて寛解に導入し、寛解を長期間維持する
     

・合併病態の適切な管理と薬剤の適切使用によって有害事象の発現を予防あるいは低減し、もしも生じた場合には適切に対応する
     

・関節破壊に起因する機能障害を生じた場合には適切な外科的処置を検討する
     

・最新の医療情報の習得に努め、日常診療に最大限適応する
     

・治療法の選択には患者と情報を共有し、協働的意思決定を行う

 

治療原則:

・RA診療は最善のケアを目指すものであり、患者とリウマチ専門医の協働的意思決定に基づく
     

・リウマチ専門医はRA患者のケアを行うスペシャリストである
     

・RA治療は個人的、社会的、医療費的に大きな負担を生じるものであり、リウマチ専門医はこれらすべてを勘案して治療に当たらねばならない

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 

以上の要点は、関節リウマチの治療は、関節のみを標的としていてはいけない、ということです。関節リウマチは、さまざまな合併症を伴いやすい全身性疾患であるため、合併症にも気を配り、患者さんの生活の質の維持・向上をはかることによって、生命予後の延長を治療目標とすることです。
 

治療方針として、タイトコントロール(厳格な水準での治療コントロール)することと、いったん治療目標に達したら、それを維持することの重要性が強調されています。なお、治療方針が医師の自己満足にならないよう協働的意思決定の大切さにも触れられています。
 

治療原則では、社会経済的観点にも言及していて、多数の薬剤を使いこなすことができる必要性から、関節リウマチは専門性の高い疾患とされています。
     

以上の原則を振り返って感じられることは、RA治療は個人的、社会的、医療費的に大きな負担が患者本人のみならず、彼らを支える家族や医療機関、あるいは社会全体にとっても負荷が大きいということの意味と、そうした現実に対する具体的な取り組み方についてのヴィジョンが示されていないということです。

 

個人的負担の軽減のために必要なことは、身体機能障害の防止と生命予後の改善のみで果たせるものではありません。心理社会的サポートが不可欠なはずですが、そうした言及がないことは残念です。

 

また、リウマチ専門医がRA患者のケアを行うスペシャリストであることを高らかに宣言するのであるならば、リウマチ治療のための薬物療法や手術療法以外の、非薬物療法、すなわち、リハビリテーションや精神心理的ケアの必要性と有効性についても十分な見識と経験のある、真のリウマチ専門医が活躍できなければならないのではないかと思われます。

脂質異常症とは?その1

 

―診断のための基準値についてー

 

 

脂質異常症という言葉に馴染めないでいる患者さんは少なくありません。その理由の一つは、かつて、高脂血症という言葉が一世を風靡した時代があったせいであるかもしれません。

 

この二つの言葉は関連があるのですが、きちんと区別しておくことが必要です。

 

まず、高脂血症ですが、これは血清脂質を構成するコレステロール(C)、トリグリセライド(TG)、リン脂質(PL)、遊離脂肪酸のうち、はじめは、CとTGのいずれか、ないし両方が増加した状態を指しました。

 

ところが、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」にて、HDL‐コレステロール(HDL-C)が低い場合にも動脈硬化を促進することから、CやTGの増加に加えて、脂質異常症と命名されました。

もっとも、最初は低HDL-コレステロール血症も含めて高脂血症と呼んでいたのですが、医学の素人である一般人には不評で、「検査データで、どの脂の数値も高くないのに高脂血症の患者呼ばわりするのか?」と怒りだすような方も続出するありさまでした。

激しい方だと「医者は勝手な病名をこしらえて、患者を飯の種にするのはけしからん」などと言い出す方まで出現する有様でした。

 

ご尤もと言えばご尤もですが、医療の現場は大混乱でした。このような医療敵視・医療不信の方にみられる誤解は高円寺南診療所時代に、ほとんど解決しましたが、医学用語を適切に説明して、理解していただくことはとても大切なことです。毎日のように、こうして医学情報を発信している私の動機の一つになっています。

 

このような経緯を背景として「脂質が高値でも低値でも異常なときは異常である。」と説明することで事なきを得ようとして命名された言葉が、脂質異常症、ということになります。

 

そこでは、脂のすべて悪者にしてしまいがちな思い込みからの脱却が図られています。「善玉コレステロール、悪玉コレステロール」などという表現を用いての補助的説明も一定の効果を挙げることができたように思います。

 

コレステロールの他に、中性脂肪とも呼ばれるトリグリセライド(TG)も血清中の濃度が高くなるとリポ蛋白の質的異常(小型高比重LDLコレステロールやレムナントの増加など)、血液凝固線溶系の異常、善玉コレステロールであるHDL-コレステロールの低下といった動脈硬化に促進的に働く変化が起こります。

つまり、中性脂肪も高値になると高TG血症といって冠動脈疾患(CAD)の重要な危険因子であるということになります。

 

なお、高TG血症のリスク管理には、近年に至って、非HDLコレステロール値が用いられるようになってきました。これは、すべての血清脂質濃度から善玉コレステロールであるHDLコレステロール濃度を除いた残りの脂質濃度です。わかりやすく言えば、善玉コレステロール以外のコレステロールを悪玉コレステロールに見立ててリスクを評価しようとするものです。

 

そこで、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセライドの他に非HDLコレステロールの4つの指標を駆使して脂質管理をすべきという時代の到来となったわけです。

 

ただし、ここで保険医療の現場では困った事態になりました。以上の4項目のすべてを検査することは事実上制限されているのです。最大で3項目までが保険適応です。

 

しかし、幸いなことに、3つのデータがあれば4項目は簡単な計算で導き出せるのです。

 

そのために杉並国際クリニックでは、従来の脂質3セット項目(LDL-コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセライド)を改め、この7月1日から新しい脂質3セット項目(総コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセライド)としました。

 

定期モニターすべき、4項目のうちHDL-コレステロール、トリグリセライド(TG)の2項目だけは直接法でデータを取り、非HDLコレステロール(non-HDL-C)は(TC - HDL-C)つまり、総コレステロール(TC)からHDL-コレステロール(HDL-C)を引くことで求めることができます。

そして、最後の、そして最も重要なLDL-コレステロール(LDL-C)は非HDLコレステロール(non-HDL-C)からトリグリセライド(TG)の5分の1を引くことで求めることができます。

 

本年7月以降に血液検査で血清脂質を調べる予定の方は、以上のようにして血清脂質の4項目のデータを得て、リスク評価した上で、これまで以上に、緻密で、個別かつ具体的な治療管理を行うことになります。