最新の臨床医学 7月4日(木)リウマチ・膠原病・運動器疾患

関節リウマチ診療ガイドライン2014(RA診療GL2014)の包括的原則


RA診療GL2014には、治療を遂行するための包括的原則が示されているので紹介します。


治療目標:

・臨床症状の改善のみならず、関節破壊の抑制を介して長期予後の改善、特に身体機能障害の防止と生命予後の改善を目指す

 

 

治療方針:
・関節炎をできるだけ速やかに鎮静化させて寛解に導入し、寛解を長期間維持する
     

・合併病態の適切な管理と薬剤の適切使用によって有害事象の発現を予防あるいは低減し、もしも生じた場合には適切に対応する
     

・関節破壊に起因する機能障害を生じた場合には適切な外科的処置を検討する
     

・最新の医療情報の習得に努め、日常診療に最大限適応する
     

・治療法の選択には患者と情報を共有し、協働的意思決定を行う

 

治療原則:

・RA診療は最善のケアを目指すものであり、患者とリウマチ専門医の協働的意思決定に基づく
     

・リウマチ専門医はRA患者のケアを行うスペシャリストである
     

・RA治療は個人的、社会的、医療費的に大きな負担を生じるものであり、リウマチ専門医はこれらすべてを勘案して治療に当たらねばならない

 

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以上の要点は、関節リウマチの治療は、関節のみを標的としていてはいけない、ということです。関節リウマチは、さまざまな合併症を伴いやすい全身性疾患であるため、合併症にも気を配り、患者さんの生活の質の維持・向上をはかることによって、生命予後の延長を治療目標とすることです。
 

治療方針として、タイトコントロール(厳格な水準での治療コントロール)することと、いったん治療目標に達したら、それを維持することの重要性が強調されています。なお、治療方針が医師の自己満足にならないよう協働的意思決定の大切さにも触れられています。
 

治療原則では、社会経済的観点にも言及していて、多数の薬剤を使いこなすことができる必要性から、関節リウマチは専門性の高い疾患とされています。
     

以上の原則を振り返って感じられることは、RA治療は個人的、社会的、医療費的に大きな負担が患者本人のみならず、彼らを支える家族や医療機関、あるいは社会全体にとっても負荷が大きいということの意味と、そうした現実に対する具体的な取り組み方についてのヴィジョンが示されていないということです。

 

個人的負担の軽減のために必要なことは、身体機能障害の防止と生命予後の改善のみで果たせるものではありません。心理社会的サポートが不可欠なはずですが、そうした言及がないことは残念です。

 

また、リウマチ専門医がRA患者のケアを行うスペシャリストであることを高らかに宣言するのであるならば、リウマチ治療のための薬物療法や手術療法以外の、非薬物療法、すなわち、リハビリテーションや精神心理的ケアの必要性と有効性についても十分な見識と経験のある、真のリウマチ専門医が活躍できなければならないのではないかと思われます。