最新の臨床医学2019 7月6日(土)東洋医学・伝統医学

皆様、「快便」ですか?

 

 

 ―杉並国際クリニック方式:ブリストル便形状スケールによる快便漢方処方―

 

ブリストル便形状スケールは便のタイプ(硬さ)を7種類に分類した世界共通の尺度です。 あなたの便はどのタイプですか?

 

英国ブリストル大学のHeaton博士が1997年に提唱した大便の形状と硬さで7段階に分類する指標であり、便秘や下痢の診断項目の一つとして使用されています。英語表記はBristol Stool Form Scale。

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(表をクリックで拡大)

 

英国生まれのこのスケール、実は、漢方医学との相性がとても良いです。
 

Heaton博士が提唱した20年後の2017「慢性便秘症診療ガイドライン」は、便秘と下痢を無関係に取り扱っていますが、それが現代西洋医学の相場であります。

 

しかし、実際には、心身に対するストレスが原因で便秘と下痢の間を行ったり来たりする過敏性腸症候群に悩んでいる多数の患者さんに対しては、これは、ほぼ無力なガイドラインです。
  

 

そして、日常診療でとりわけ難しいのが、便通に関する問診です。
 

私は簡単に「快食ですか?快便ですか?・・・」とお尋ねしていますが、これはきっかけにすぎません。

日本人の民族性のためか、便通についての情報はタブーという程ではないにせよ、尾籠(びろう)な話題として回避されやすいのが悩みの種でした。そのうえ、一般的な日常用語である「便秘」や「下痢」についての認識の仕方には個人差が多く、なかなか正確な情報を得ることができませんでした。そこで、登場してくれたのが英国生まれの「ブリストル便形状スケール」だったということです。


このスケールが便利なのは、患者さんとの認識のずれを最小限にしてくれることと、その確かで具体的な情報のもとに、ただちに対処法が示せることです。

私は、このスケールを用いて、便秘や下痢の漢方処方を決定することを考えています。

この発想は、まだ世界中でも前例がないため、おそらくオリジナルでのパイオニア臨床応用です。

これをお読みの皆様は、世界初のリポートを読んでいることになります。
  

便形状のタイプ別に適した漢方薬があります。下痢の場合には、急性下痢と慢性下痢症では背景が異なりますので、それぞれに応じた処方を工夫してみました。

 

タイプ❶~❷は硬便(便秘症)、タイプ❻~❼は水様便(下痢症)の目安となります。 まずは正常便とされる❸~❺をめざしましょう。

 

つぎに、可能であれば理想の正常便である❹に近づけるように調整していきましょう。

 

タイプ❶ (コロコロ便) 

麻子仁丸(ましにんがん)

成分:大黄4.0など

 

タイプ❷ (硬い便)   

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

成分:大黄4.0、甘草2.0など

 

タイプ❸ (やや硬い便) 

潤腸湯(じゅんちょうとう)

成分:大黄2.0、甘草1.5など

 

タイプ❺ (やや軟らかい便)

急性:五苓散(ごれいさん)
成分:茯苓6.0、沢瀉4.0など

慢性:啓脾湯(けいひとう)
成分:茯苓4.0、沢瀉2.0など

 

タイプ❻ (泥状便)    

急性:附子理中湯(ぶしりちゅうとう)
成分:甘草3.0、人参3.0、白朮3.0、乾姜3.0、附子1.0
             

慢性:半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
成分:半夏5.0、甘草2.5など

 

タイプ❼ (水様便)   

急性:黄芩湯(おうごんとう)

成分:黄芩4.0、甘草3.0など

慢性:柴苓湯(さいれいとう)
成分:半夏5.0、甘草2.0、沢瀉5.0、茯苓4.0など