皆様あけましておめでとうございます。

 

 

本年もよろしくお願いします。

 

 

私は2年ほど前から6分ほど背骨を揺らす「DRT」という治療法を導入してきました。

 

 

DRTは体の歪みを整えて心身をリラックスさせる効果があります。

 

 

このテクニックを導入してから鍼治療の効果が持続しやすくなっていると感じております。

 

 

本年はこのDRTのテクニックに更に磨きをかけ患者の皆様に喜んでいただけるようにしていきたいと思います。

 

 

また、私は今右肩に痛みを抱え、腕が挙がらない状態になっております。

 

 

過去何度かこういう事がありましたが自力でなんとかできていました。

 

 

しかし今回の痛みは難敵です。

 

 

患者様の辛さを理解できたように思います。

 

 

きっと治療の神様が「肩の治療をもっと身につけろ」と言っているのだと思います。

 

 

肩の治療の研究。今年のテーマです。

 

 

患者の皆様に喜んでいただけるよう頑張ってまいりますので、よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対するCPAP療法は、健康保険の適応がありますが、そのためには条件があります。

 

わが国では、ポリソムノグラフィ(PSG)によるAHI20以上か、簡易診断装置によるAHI40位上の場合に保険適応になります。

 

国民皆保険ではない米国ではAHI15以上であれば自覚症状の有無にかかわらずCPAP療法の適応だということを知ると、保険医療制度というのは制限医療であるということを改めて認識させられます。

 

そして、CPAP療法は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の根本療法にはなりません。根本療法と併用することによって、CPAP療法から離脱できるように導くことが望まれます。

 

そこで閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に対するCPAP以外の治療法にはどのようなアプローチがあるでしょうか。

 

肥満改善のための食事療法、就寝時体位の改善(仰臥位から側臥位へ)、アルコールやベンゾジアゼピン系睡眠薬を控えるなどがあります。その他に、各種の呼吸刺激薬がありますが、根本療法ではなく、効果も限定的なので、あまりお勧めできません。

 

この症例は、水氣道®を開始すると、睡眠の質が改善し、寝酒の習慣を絶ち、また他院から処方されていたベンゾジアゼピン系睡眠薬が不要となりました。また10㎏の減量にも成功し、糖尿病に対して経口血糖降下薬も減量できました。そして、最終的には、ポリソムノグラフィ(PSG)を再度行い、AHIが10以下となったため、CPAPも中止することができました。

 

水氣道®が睡眠時無呼吸症候群の根本療法になる可能性は大いにあるものと考えております。

 

<睡眠時無呼吸症候群-完>

睡眠時無呼吸症候群(SAS)では、中枢性SASか閉塞性SAS(OSAS)かの鑑別も必要となります。

 

中枢性SASでは無呼吸時に胸腔運動が停止しますが、閉塞性SAS(OSAS)では無呼吸時に胸腹逆転運動がみられます。

 

同居の妻の報告では、無呼吸時にいびきをかくほどなので胸腔運動は停止していないことがわかりました。
そこで閉塞性SAS(OSAS)を考えました。

 

閉塞性SAS患者ではレム睡眠と深い眠りが減少します。そして高血圧、糖尿病、不整脈、肺高血圧、脳梗塞、虚血性心疾患などの心血管系疾患を高率に合併します。

 

また慢性的な低酸素血症の代償として、骨髄における赤血球産生亢進により多血症になることがあります。


以上より、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の可能性について説明したところ、ご自身が検査医療機関を探し、さっそくポリソムノグラフィ(PSG)を行なった結果、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(AHI26)と診断され、CPAP療法を開始したとの報告を受けました。


AHI26は重症度をあらわしますが、15~30を中等症としますので、中等症に該当します。


CPAP療法の原理は、寝ている間の無呼吸を防ぐために気道に空気を送り続けて気道を開存させておくというものです。CPAP装置からエアチューブを伝い、鼻に装着したマスクから気道へと空気が送り込まれます。

 

CPAP療法は、気道を確保し、肺容量を増やすことが期待できます。

その他にも、交感神経活性の抑制作用と降圧作用、インスリン感受性改善作用、内臓脂肪と血清レプチン濃度の低下作用、血清の炎症性マーカー(TNF-α、IL-6、CRPなど)の低下作用、血小板活性化や血小板凝集抑制作用などが報告されています。

 

また、血清一酸化窒素を上昇させて血管内非機能を改善する作用もあります。 

さらに、重症のOSASに対してCPAPを使用すると、致死的な心血管イベントの発生率が健常人と同程度まで減少したという大規模試験のデータがあります。

 

しかし、CPAP療法は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の根本療法にはなりません。根本療法と併用することによって、CPAP療法から離脱できるように導くことが望まれます。


<明日に続く>

 

新年おめでとうございます。

 

今日から令和3年が始まります。今年が良い年でありますことを祈るばかりです。

 

線維筋痛症に関する第2回国際会議発表抄録のご紹介は、先月23日までで23演題となりました。

 

他にも口頭発表やポスター発表が多数残っておりますが、年始の休暇の期間中は、どうぞ苦痛や苦悩を忘れて、心安らかにお過ごしくださいますように。

 

私の経験を加えて簡単にまとめてみますと、線維筋痛症の多くは決して難病ではないということです。そして大麻や麻薬を使わなければ生きていけない病気でもありません。

 

ただし、世界中の専門医の意見を大胆に総括してみると、国民健康保険制度が整備された欧州を含む先進国の保険診療制度の枠内での治療は難しそうだということです。

 

生活習慣の改善や、鍼灸、水氣道の実践などで健康を回復し、快適で有意義な毎日を過ごすことができるようになります。

 

しかし、残念ながら、線維筋痛症の患者さんの多くは、保険診療の枠組みから逸脱することに、ことさら強い抵抗感をお持ちのようです。

 

その最大の理由は、いつ治るか先が見えない病気に対して、どれほどの医療費がかかるのか予測がつかないという先行きの不安が絶えずつきまとうからだと思います。

 

また他の理由としては、線維筋痛症は治らない病気であると考えて諦めてしまっている場合であり、さらにもう一つの理由としては、中途半端に治ってしまうと、それまで受けていた支援が断ち切られてしまうのではないかという恐れを抱いている場合です。

 

このコラムは、1月4日(月)から再スタートいたします。

 

なお、外国語旅行は年内無休で毎日発信し続けますので、よろしければごらんになってください。本日は金曜日のイタリア語旅行です。

 

 

それでは、皆様

 

Happy New Year 2021 !

 

症例は40代男性。身長175㎝、体重97㎏。

 

夜間の頻尿があり、また日中も勤務中に高度の眠気を自覚していました。

 

挙児希望なのに性欲が減退し、イライラが募る妻に睡眠時のいびきを指摘されて来院しました。

 

まず身長と体重から体格係数(BMI)を計算してみます。


BMI=97÷1.75÷1.75=31.7;30以上なので肥満度(Ⅱ度)に相当します。


また血液検査の結果は糖尿病型でした。
夜間頻尿は、胸腔内圧の陰圧化による静脈還流量の増加により、心房性ナトリウム利尿ペプチドが増加することが原因となることがあります。


また、慢性的な低酸素血症による末梢神経障害やテストステロンの低下、日中の疲労からインポテンツに陥ることがあります。

 

ここから睡眠時無呼吸症候群(SAS)を疑うことになります。
以下は、日本呼吸器学会のHPからの睡眠時無呼吸症候群についての引用です。

 

【概要】睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、様々な合併症を起こす病気です。
【疫学】成人男性の約3~7%、女性の約2~5%にみられます。男性では40歳~50歳代が半数以上を占める一方で、女性では閉経後に増加します。


【発症のメカニズム】空気の通り道である上気道が狭くなることが原因です。首まわりの脂肪の沈着が多いと上気道は狭くなりやすく、肥満はSASと深く関係しています。扁桃肥大、舌が大きいことや、鼻炎・鼻中隔弯曲といった鼻の病気も原因となります。

あごが後退していたり、あごが小さかったりすることもSASの原因となり、肥満でなくてもSASになります。


【症状】いびき、夜間の頻尿、日中の眠気や起床時の頭痛などを認めます。日中の眠気は、作業効率の低下、居眠り運転事故や労働災害の原因にもなります。


【診断】問診などでSASが疑われる場合は、携帯型装置による簡易検査や睡眠ポリグラフ検査(PSG)にて睡眠中の呼吸状態の評価を行います。

PSGにて、1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)が5以上であり、かつ上記の症状を伴う際にSASと診断します。
重症度はAHI5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症としています。


【治療】AHIが20以上で日中の眠気などを認めるSASでは、経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous posi-tive airway pressure:CPAP)が標準的治療とされています。CPAPはマスクを介して持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げる治療法です。また、下あごを前方に移動させる口腔内装置(マウスピース)を使用して治療することもあります。

小児のSASではアデノイド・口蓋扁桃肥大が原因であることが多く、その際はアデノイド・口蓋扁桃摘出術が有効です。


【生活上の注意】肥満者では減量することで無呼吸の程度が軽減することが多く、食生活や運動などの生活習慣の改善を心がけることが重要です。アルコールは睡眠の質を悪化させるので、晩酌は控える必要があります。 


【予後】成人SASでは高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3~4倍高くなり、特に、AHI30以上の重症例では心血管系疾患発症の危険性が約5倍にもなります。しかし、CPAP治療にて、健常人と同等まで死亡率を低下させることが明らかになっています。

 

<明日に続く>

悪性貧血

 

最近、疲れやすく、頭痛息切れ動悸がする、という症状で来院される方は、とくに女性で多いです。

 

婦人科で更年期障害と診断されていたり、脳神経外科で緊張性頭痛と診断されていたり、整形外科で五十肩と診断されていたり、多数の医療機関を受診してから来院する方が少なくありません。

 

いわゆるドクターショッピングと化しているケースです。複数の身体科の医療機関を受診しても納得がいかないと、心療内科の受診を勧められることが多いようです。

 

注意していただきたいのは、医師が患者さんに心療内科の受診を勧める場合は、「精神科医に診てもらってほしい」と考えている場合がほとんどだということです。

 

 

そこで、患者さんが心療内科の看板(標榜)のある医療機関を受診した場合、どのような顛末になるでしょうか。実際には99%は精神科医が担当することになります。

 

残念ながらほとんどが心療内科専門医ではありません。そこでは、しばしば、自律神経失調症あるいは身体表現性障害、あるいは、うつ病などの診断のもとに薬物療法が開始されることがあり、そうなると良い結果が期待できなくなります。

 

 

検診や人間ドックを受けている方でも、検査データの血色素量(血中ヘモグロビン値)だけで貧血を除外されてしまうと、なかなか正確な診断にたどり着けません。

 

更に、循環器内科を受診して軽度の心不全、とのみ診断された方も過去に拝見したことがあります。

 

更年期障害緊張性頭痛五十肩軽度の心不全、これらの診断は必ずしも誤りではありませんが、本質的な解決に結びつく診断名ではありません。

 

ましてや、身体疾患を見逃して自律神経失調症身体表現性障害うつ病などの見立てを軽々に行うことは、解決を遅らせるだけで有害ですらあります。

 

 

私が経験したケースでは、自覚症状として、しびれ感、軽度の感覚鈍麻があることを問診にて確認しました。

 

診察室の椅子に座るまでの動作で不安定感があることを観察できたので、改めてお尋ねすると、動作時のふらつきが増えてきた、という返事を得ました。

 

毎日のように水氣道®を実践指導していると、こうした異常がたちどころに発見できるようになってきます。

 

次に診察すると、眼瞼結膜(白目の部分)が軽度に黄染していて、舌の表面が赤く、舌苔がまったくみられない(舌乳頭の萎縮)という所見を得ました。

 

問診や診察の過程で、この方の応答が若干鈍く、表情に乏しいため、たしかに、認知症抑うつは認められました。

 

この段階で、貧血とりわけ巨赤芽球性貧血を疑ったのですが、治療のためにはビタミンB₁₂欠乏性(悪性貧血など)なのか葉酸欠乏性なのかの鑑別が必要です。

 

とくに可能性が高い悪性貧血の診断のためにはシリング試験は現在行われておらず、また特異抗体検査(抗内因子抗体、抗壁細胞抗体)の検出は保険適応になっていないために日常診療で実施することが困難です。

 

結局のところ、末梢血検査にて大球性貧血であることから巨赤芽球性貧血であることを確認し、さらに血清ビタミンB₁₂の低下によりビタミンB₁₂欠乏性貧血であることを強く疑いました。

 

そこで、消化器内視鏡専門医に紹介し、胃内視鏡検査を実施したところ、自己免疫性萎縮性胃炎が母体となり、同時に早期の胃がんが発見されました。

 

悪性貧血については、他の自己免疫疾患の合併がしばしば認められますが、特に貧血の原因に直結する胃内視鏡検査は重要です。

 

また、注意すべき合併症として胃がんが挙げられ、巨赤芽球性貧血の診療において、胃がんは常に念頭におくべきとされています。

 

この患者さんは、胃全摘手術を受け、現在では別人のように活発に大きな事業に従事しておられるとのことです。

結核性髄膜炎

50代女性。1カ月前より微熱と頭痛がありました。かかりつけ医で感冒の診断を受け、感冒の治療を続けていたが一向に改善しないため当クリニックをはじめて受診されました。

 

初診時、意識は清明でしたが、体温37.7℃の発熱(平熱36.2℃)、右の顔面神経麻痺も明らかであったため、神経学的検査を行ったところ、項部硬直とケルニッヒ徴候を認めましたが、他には異常を認めませんでした。

 

ケルニッヒ徴候とは、項部硬直と同様に髄膜刺激症状の1つであり、髄膜炎を疑う手掛かりとなります。患者を仰臥位にさせ、一側股関節および同側の膝関節を直角に曲げた状態で膝を押さえながら下肢を他動的に伸展すると伸展制限が出る場合、あるいは下肢を伸展させたまま挙上すると膝関節が屈曲してしまう徴候で、大腿屈筋が攣縮するために起こる現象です。痛みは伴いません。

 

この時点で、亜急性の経過をとる髄膜炎を疑いました。クリプトコッカス髄膜炎や結核性髄膜炎の可能性がありました。とくに、結核性髄膜炎では治療の遅れが死亡に直結するので、疑い次第、早急に結核治療剤を投与することになっています。

 

念のためβ-D-グルカンを含む血液検査を実施し、頭部のMRI検査や脳脊髄液の検査も必要であることを伝えてはじめて午前中に別の病院で頭部のMRI検査を済ませてきたという報告を受けました。結核性髄膜炎の診断は、CTやMRIなどの脳画像検査ではなく、脳脊髄液検査によってなされるため、その病院の担当医宛に脳脊髄液検査の追加を依頼するための紹介状を書きました。

 

後日の報告でβ-D-グルカンの異常は認めませんでした。また細胞性免疫が低下する病態ではHIV(エイズ)感染を疑わなければなりませんが、すでに受診している基幹病院の医師の判断に任せることにしました。幸いHIV(エイズ)感染はなく、結核の治療とともに、脳浮腫の軽減や血管炎の抑制、髄膜の癒着・線維化に伴う脳神経障害や閉塞性水頭症の予防のため副腎皮質ステロイド薬の併用を行なったとのことでした。

 

微熱を伴う頭痛は、ありきたりの症状ですが、本人が気付いていない症状が生命にかかわる重大な病気の手がかりになることがあることがあります。この症例は、その一つの例にすぎません。俗に、『風邪は万病の本』といわれますが、単なる風邪として扱ってはならない重要な病気がたくさんある、ということの戒めでもあるような気がいたします。

発作性片側頭痛(片頭痛や群発頭痛との鑑別が困難であった症例)

 

20代女性。右眼窩部(右目の奥)の痛みがあり、目玉をえぐられるような激しい痛みの発作が出現し、今朝の症状が特に強かったため、片頭痛の治療目的で当クリニックを来院されました。

 

すでに、右目の流涙もあるため眼科を受診したところ、異常は見出されず、右鼻閉もあったため耳鼻咽喉科を紹介されましたが、やはり異常はないとの判断だったとのことです。

 

そこで、さらに脳神経外科を紹介され、頭部・眼窩・副鼻腔のMRI検査を行ないましたが、いずれにも異常はみつからず、おそらく片頭痛であろう、との疑い診断とともに片頭痛の治療薬を処方されたが、かえって症状が悪化したとのことです。

 

症状は半年前から出現し、発作の持続時間は5分程度、発作の頻度は毎日数回であることを確認しました。今期が初発ではなく、1年前にも同様の痛みが1カ月程続いたとのことでした。

 

一見して右の眼瞼下垂があり、観察すると右結膜の縮瞳と結膜充血を認めました。

 

眼瞼下垂、結膜充血と縮瞳は、自律神経の症状です。自律神経症状を伴う発作性の激しい頭痛ということで、一日数回の発作があることから考えて、まず想起されるのは群発頭痛です。

 

しかしながら、典型的な群発頭痛では、男性に多く、発作の持続も1時間ほどに及ぶのが普通です。これに対して、女性に多いのが発作性片側頭痛です。

 

発作性片側頭痛は、このように群発頭痛に似た臨床的特徴をもちますが、発作時間はより短く(2~30分)、発作頻度はより高く、女性に多い疾患です。発作はきわめて限定的に片側性であり、眼窩部を中心に生じます。

 

群発頭痛同様、診断は頭痛が以下の他覚的兆候や自覚的症状(流涙、結膜充血、鼻漏、鼻閉、前頭部または顔面の発汗、縮瞳、眼瞼下垂、眼瞼浮腫)の1つ以上を随伴する場合に確定されます。

 

7日から1年持続する発作が1か月以上にわたる緩解期を挟んで生じる場合に反復性発作性片側頭痛と診断され、慢性発作性片側頭痛は、1年間を超えて発作が繰り返され、緩解期がないもの、または緩解期があっても1か月未満の場合に診断されます。

 

この症例は、群発頭痛でも片頭痛でもなく、片側頭痛であると考えると説明が容易です。

 

しかも、今回は1年間を超えての再発例ですが、寛解期があるため、慢性発作性片側頭痛ではなく、反復性発作性片側頭痛ではないかと考えました。

 

 

上記の診断に基づき、インドメタシンの座薬を予防薬として処方したところ、それ以降の発作頻度は徐々に減少して、症状も軽微になり、3か月後には気にならなくなったとのことでした。

片頭痛?(妊娠希望)

 

30代女性。左眼の奥から広がる頭痛を訴えて受診されました。

 

頭痛は発作的に生じ、肩こりや悪心を伴ない、肩こりがひどくなるときには嘔吐することがあるということでした。

 

その頭痛発作はピークに達するまでに数十分経過し、翌日まで続くことがあるとのことでした。

 

最近の半年間は、同様のパターンの発作が、月に10日位発生し、この他に、後頭部の頭重感を伴う痛みも、月に10日程あるという報告でした。

 

ほぼ連日、頭痛薬を服用していました。

神経学的所見に異常は認められず、すでに脳外科を受診し、画像検査では異常を認めませんでした。

 

妊娠を希望しているのにもかかわらず、希望していたトリプタン製剤ではなく、前医の脳外科医にバルプロ酸を処方されたことに不信感を抱き、当クリニック受診となりました。不妊外来でお金を使い果たしたので、可能な限り低コストで診療してほしいという一方的な要求をされました。

 

たしかに、片頭痛の予防薬の中で、バルプロ酸は胎児に対する危険性が最も高いので内服を避けるべきであることは誤りではありません。しかし、トリプタン製剤も安全性が確立されていないことを説明しました。

 

また、この患者さんは、高血圧治療のため内科循環器科でアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とカルシウム拮抗薬ロメリジンを処方されていました。この点について、本人に質問すると、降圧剤が胎児循環障害を来すものがあることや、また、妊娠中ばかりでなく授乳中も避けるべき薬があることなどは、かつて想像したこともなかった、といって驚いていました。

 

 

このケースは薬物乱用頭痛の疑いがあります。薬物乱用というと誤解がありますが、いわゆる違法薬物ではありません。

 

この場合は主として鎮痛薬です。

薬物乱用頭痛とは典型的には1 ヶ月に 15 日以上起こる片頭痛様頭痛や 1 ヶ月に 15 日以上起こる片頭痛様頭痛と緊張型頭痛様頭痛の混合した状況ですが、その主要原因は,片頭痛の対症療法薬または鎮痛薬もしくはその両方の乱用によるものです。

 

この私の見立てを直接本人に伝えても感情を害するばかりであることが予測されたため、この判断は伏せたまま、別のアプローチによる診療を続けることにしました。

 

本人は不妊外来にも通院中であり、挙児希望は切実な要求であるため、妊娠中にでも投与が可能な発作予防薬を検討してみました。

 

プロプラノロールなどの降圧剤は経験的にではありますが、比較的安心して使用でき血圧コントロールと同時に頭痛発作の予防にも有益であろう、ということで処方しました。

また、同時に、発作頓挫薬としては、「慢性頭痛の診療ガイドライン」でも推奨されているアセトアミノフェンを処方しました。

 

とても早口でヒステリックな印象を与える方であったため、そのことには直接触れずに、抑肝散や加味逍遙散という、いわゆる漢方の精神安定剤を併せて処方したところ、後日、気分が安定して、頭痛の発作回数が顕著に減少した、という報告を受けました。

 

あれほどまでにこだわっていた不妊治療も終了し、水氣道®を開始し、こだわりを捨てて夫と自然体の生活に戻ったところ3カ月後に無事に妊娠されたとの報告を受けました。

 

最初の印象とはまったく異なり、別人のように穏やかで上品な表情になっていました。

 

そこで、漢方薬を安胎薬(胎児の健康な発育を促し、流産を予防する薬)とされる当帰芍薬散を処方したところ、心身共に落ち着いたといって喜んでくれました。

 

水氣道は、妊娠のため中止となり、鎮痛剤も使用しないで済むようになりましたが、その後の消息は不明です。

抗NMDA受容体脳炎

 

20代女性。3週間前に感冒にかかってから頭痛が続きふらつきを感じるようになり、不眠にも悩まされ、心配になった母親に伴われて受診となりました。

 

近所の精神科医にはストレスによる自律神経失調症で、うつ病の初期症状であるとの診断を受けました。しかし、その後、流涎(止めどないよだれ)が出現し、食事も摂取しなくなったとのことでした。

 

不安になっている母親がすべてを説明しようとして譲らないため、やむを得ず、母親からの情報を得ることにしました。

 

杉並国際クリニックとなってから、初診の受付は、原則として患者さん本人の自主的なネット予約によるシステムとなりましたが、前身の高円寺南診療所の時代は、目の前の二人の患者(しかも、二人とも自分自身についての病識がなく、互いに相手を心配している!)を相手にすることは珍しくはありませんでした。

 

母親によると患者は1週間前から話し方が変化し、急に笑ったり騒いだりするようになったとのことで、これは有益な情報でした。

 

本人との対話を確保する必要性を伝え、会話を試みると、会話中に語尾が上がるなど茨城訛の特徴あるイントネーションが出現しました。

 

茨城訛で話す母親に尋ねると、患者は東京育ちで標準語を話し、元来のイントネーションではないことが確認されました。

 

ご本人は、少しぼんやりとした表情で、会話中の様子を観察すると、口舌ジスキネジアを認めました。これは、口腔周囲の顔面表情筋ならびに、あごの運動に関与する筋の異常収縮により円滑な開口・閉口に支障をきたす病状を呈するものをいいます。

 

薬物が原因となることがあり、薬物誘発性ジスキネジアとして、抗精神病薬や抗パーキンソン病薬などの長期服用による遅発性ジスキネジアが広く知られています。

 

ご本人は精神科から睡眠薬と抗うつ剤のみを処方されていましたが、短期間の少量のみの処方であったため、薬剤以外の病気を鑑別する必要性を感じました。

 

 

項部硬直など髄膜炎を疑う所見がなかったため、血液検査のみを実施しました。

 

白血球17,650/μL(総好中球81.8%)、ヘモグロビン12.7g/dL、血小板17.3万/μL、

 

その他、肝・腎機能および電解質に異常なし、甲状腺ホルモンや膠原病の自己抗体なども陰性でした。血液中の好中球数が異常高値であるために何らかの炎症の存在を歌がいました。

 

 

再診時に、意識がぼんやりするとの報告、婦人科で卵巣腫瘍を指摘されているという母親からの情報、前回より項部が硬くなっている印象を受けました。

 

そこで、髄膜炎や脳炎を疑い、脳髄液検査や脳MRI検査のため、婦人科の手術も可能な病院を紹介しました。

 

紹介先の病院から受けた報告によると、この症例は抗NMDA受容体脳炎という診断に至るまでに1カ月を要した模様でした。

 

この病気は傍腫瘍性神経症候群として発症する脳炎です。傍腫瘍性神経症候群とは、担癌者(癌を患っている患者)に自己免疫学的機序により生じる多様な神経症候群です。

 

通常は神経症状出現が腫瘍の発見に先行し、発症初期から病型に特徴的な自己抗体が検出されます。腫瘍原発巣、神経症候、抗体の種類の間に比較的一定の関連があり、抗体検出が本症の診断および腫瘍早期発見に有用とされます。

 

この患者さんは、入院中に痙攣重積発作を起こしたことも、確定診断に繋がったようです。

 

卵巣奇形腫を切除後、副腎皮質ホルモン、血液浄化療法などを経て、経過良好とのことでした。