今月のテーマ「神経疾患の最新医療」
<代表的な認知症とその特徴>
認知症は、国内患者数 460 万人、軽度認知障害を含めると 800 万人とも言われます。
代表的な認知症は、二大別すると、変性性認知症と血管性認知症です。
まず、血管性認知症の特徴は、
基礎疾患(高血圧、糖尿病、心疾患など)を有していることが多く、
病状が段階的に進行するが、末期まで人格が保たれることです。
障害部位は様々ですが、なかでも前頭葉の障害が多いため、
情動失禁、感覚・運動障害、まだら認知症などの症状がみられます。
これに対して、変性性認知症の一般的特徴は、基礎疾患が特になく、
病状は緩徐であっても常に進行し、やがて人格が崩壊することです。
この変性性認知症は、アルツハイマー病、レヴィー小体型認知症、
前頭側頭型認知症(Pick病を含む)などがあります。
アルツハイマー病の特徴は、女性に多く海馬の萎縮をはじめ
大脳の全般的萎縮(頭頂葉・側頭葉)がみられ、
神経原線維変化、老人斑など脳の病理組織変化を生じ、
アミロイドβ、タウ蛋白などの異常蛋白が蓄積します。
記憶障害(病初期から)、見当識障害、物盗られ妄想、周囲への無関心などの症状がみられます。
前頭葉症状は進行例でみられます。
レヴィー小体型認知症の特徴は、
パーキンソン症状と幻覚(特に幻視)などが現れ、後頭葉の血流・代謝低下、
基底核ドパミンの再取り込み低下が観察されることです。
脳組織病理ではレヴィー小体、異常蓄積蛋白は、α-シヌクレインです。
前頭側頭型認知症(Pick病を含む)の特徴は、
人格変化(脱抑制、常同行為、感情鈍麻、自発性低下)や滞続言語です。
主に前頭葉と側頭葉が障害され脳が委縮します。
脳組織病理ではピック球があればピック病です。異常蓄積蛋白は、タウ蛋白やTDP-43です。
脱抑制とは、
「状況に対する反応としての衝動や感情を抑えることが不能になった状態」のことです。
患者は外的な刺激に対して衝動的に反応したり、
内的な欲求を制御することができず本能のおもむくままに行動します。
常同行為とは「特定の行為、行動を繰り返す状態」です。
繰り返し膝をこすったり、パチパチと手を叩くような単純な運動を繰り返したりする症状から、
「いつも同じ服を着たがる」「デイルームの決まった椅子に座りたがる」
のような比較的まとまった行動まで幅広いです。
滞続言語はpick病などに見られ、
行為の統制が取れないために何に対しても同じ返答をしてしまう症状です。
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