第2節:検体採取などを実施する際は、徹底した感染予防策が必須
同氏は、厚生労働省と相談の上、通知に「インフルエンザなどの場合、検査をせず臨床診断による治療薬の処方をご検討ください」という旨を追加したことを報告。
「迅速診断実施に関する危険性が、北海道の事例で明らかになっている。検査をしないデメリットがないとは言えないが、現場で防護具が不足していることを踏まえれば、必要な措置である」とした上で、医療現場における患者への丁寧な説明を求めた。
迅速検査で検体採取のために鼻を強く刺激することで患者がくしゃみや強い咳をして、新型コロナウイルスに感染していた場合には飛沫感染の可能性が高まる。
釜萢氏によると、北海道で医師が診察した患者が、後になって新型コロナウイルス感染が分かり、その後医師の感染も確認される事例がありました。
日医が情報を確認したところ、新型コロナウイルス感染との直接の因果関係は明らかではないが、この患者にインフルエンザの迅速検査を行っていた。幼い子を連れた親が迅速検査を強く要求し、納得してもらえないことも想定されるが、釜萢氏は「医療機関で新型コロナウイルスの現状もお話しして、リスクについてご理解をいただいた上でないといけない」と述べた。
インフルエンザの流行が終息しつつあると認識しており、そのことも考慮したという。
新型コロナウイルス感染症患者・疑い患者を診察する際は、各地域における感染者の報告状況や帰国者・接触者外来の設置状況などを考慮し、下記に基づいて感染予防策を講じます。
新型コロナウイルス感染症患者に対しては、標準予防策に加えて、飛沫予防策および接触予防策を実施すること
同患者の鼻腔や咽頭から検体を採取する際には、サージカルマスクなど、眼の防護具(ゴーグルまたはフェイスシールド)、ガウンおよび手袋を装着すること
同患者に対し、エアロゾルが発生する可能性のある手技(気道吸引、下気道検体採取など)を実施する場合は、N95マスク(またはそれに準ずるマスク)、眼の防護具(ゴーグルまたはフェイスシールド)、ガウンおよび手袋を装着すること
同患者の診察において上記感染予防策をとることが困難である場合は、最寄りの帰国者・接触者外来に紹介すること
基本的にシューズカバーをする必要はないこと
個人防護具を着用中また脱衣時に眼・鼻・口の粘膜を触れないように注意し、着脱の前後で手指消毒を実施すること
杉並国際クリニックの現状
新型コロナウイルス感染者は、多くの事例では周囲の人にほとんど感染させていないとみられつつあります。しかし、感染源が密閉された(換気不十分な)環境にいた事例において、一人の感染者が生み出す二次感染者数が特徴的に多く、感染を拡大させてきたことが明らかになってきました。
換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間に集団で集まるイベントなど(屋形船、スポーツジムやライブハウスの事例)で風通しの悪い空間や、人が至近距離で会話する環境(医療機関など)は感染リスクが高いことが明らかになってきました。
また、全国の複数の地域で「小規模患者クラスター」(感染経路が追えている数人から数十人規模の患者の集団)が発生しています。
厚生労働省のホームページ<新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)令和2年3月14日時点版>
では、「急激な感染拡大を防ぐためには、小規模患者クラスターの発生の端緒を捉え、早期に対策を講じることが重要です。」と国家としての対策の基本方針を示しています。
ここで、「小規模患者クラスター(5人以上)の発生の端緒を捉え(る)」という文言が具体的にどのような実効性をもつものなのかは判然としません。今後も患者数の増加が見込まれるため、これまで以上に個々の単独発症例の背景について綿密な調査と分析を行なえることはあまり期待できそうにありません。逆にいえば、今後の政府の方針は小規模クラスターごとの対応に主力を注がざるを得ないことを、暗に示唆しているのではないでしょうか。
このような立場での国策の在り方では、個々の国民の側からする対策との隔たりが拡大するばかりであることを感じます。
それは、一人一人の国民の健康と生命を守る第一線の医療機関の立場では、とくに顕著であるといえます。医療機関では、小規模患者クラスターどころか、一人の感染者の発見によってたちどころに機能停止に追い込まれてしまうからです。とりわけ感染リスクの高い医療従事者が感染してしまうことによって、一般集団より免疫力が低下している患者集団に感染を広げてしまうという最悪の事態を招いてしまうからです。
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