企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」㉑

 

前回はこちら

 

 

企業の衛生委員会における産業医の「衛生講話」


第20回:特論⑨カスタマーハラスメント対策(その4)


<令和6年7月18日(木)の杉並区役所安全衛生委員会産業医講話資料から>
テーマ「カスハラに対する有用な対応策や、職員がとるべき行動」


杉並区役所統括産業医 飯嶋正広

 


私は、このテーマに取り組みはじめてから、カスタマーハラスメント問題は、一部の人々の課題ではなく、個々人が広く社会全体の問題として受け止め、共有し、話し合って、一定のコンセンサスを築いていく道筋が必要だと考えるようになりました。今回は、総まとめになります。


想定質問5:

いろいろな問題点や課題があることはわかりました。それでは、実際に、杉
並区役所としては、どのような取り組みをしていったらよいでしょうか?

 

回答:

率直に申し上げれば、杉並区役所単独で解決できる課題ではなく、都や国、そして、杉並区民をはじめ国民全体が真剣に取り組まなければならないテーマであると認識しております。


しかしながら、まずは実施可能性があり、有効な方法と考えられることを僭越ながらまとめてみることに致しました。

 

<杉並区役所における総合的な対策の提言>


これらの課題を克服するためには、カスタマーハラスメントの問題を社会全体で理解し、解決していく必要があります。以下、具体策を列挙します。


① 区職員への教育や研修の充実


➁ 適切メンタルヘルスサポート(区職員のみならず、当該ハラスメントをもたらした区民を含める)


③ 法的対応の整備(これは、条例では難しいので、都や国との協議が必要か?)


④ 区民への広報活動

 

ついで、より詳細な説明を追加させていただきます。

 

1.事例収集と会議の開催:あらゆる機会を活用して、カスタマーハラスメントの事例報告集をまとめ、区全体の課題として取り組むための対策を協議し、具体的な対応マニュアルを他の自治体に先駆けて策定する。


2.研修と教育:職員に対する定期的な研修と教育プログラムを設け、特性を持つ区民への理解と対応力を向上させる


3.専門家との連携:精神保健福祉士、カウンセラー、手話通訳者、文化専門家など、専門家との連携を強化し、適切なサポートを提供する体制を整える


4.多様な支援体制:バリアフリー環境の整備、多言語対応の強化、障害者支援機器の導入など、多様な支援体制を構築する


5.メンタルヘルスサポート:職員自身の精神的な健康を保つための支援体制を確立し、過度なストレスや負担を軽減する。


東京都特別区の中でも先進性が期待されている杉並区は、以上の対策を組み合わせて講じることで、様々な特性を持つ区民に対してより適切で効果的な対応ができるようになるのではないでしょうか。

 

8月19日PDF