学会2日目のシンポジウムのテーマは「腸内細菌と疾患」でした。

 

 

 

 

胃腸というと、私たちは体の中心に位置する、まぎれもなく体の中心にある体内の臓器であると

考えがちです。

しかし、ここで、ちょっと待ってください。

 

たとえばミミズにも口‐消化管‐肛門があります。

そこで、私たちの胃腸は消化管といって口から肛門に至る管状の構造をしているストローの内側であるとイメージしてみましょう。

消化管の内側の壁を消化管内腔と呼びますが、これは外部の皮膚と連続しています。

さらにいえば、私たちの体を穴あきドーナツと見立てれば、ドーナツの穴の部分は境界なく

外部の皮に連続していることに気づくことでしょう。

 

そうすると腸管内腔が体外の臓器であると理解することが可能になります。

この腸管内腔は腸内細菌を中心として腸管内代謝産物と腸管細胞で構成されています。

 

 

腸内細菌は、腸管腔内で摂取した食物から短鎖脂肪酸の産生し、腸管内に分泌された胆汁酸を代謝し、腸管粘液層のムチン(粘性糖タンパク)を分解するなどをします。

それらの働きを通して、宿主である私たちのエネルギーの獲得・分配・消費を変化させ、

エネルギーの安定供給のために大きな影響を与えています。

また腸内細菌が腸管免疫系のバランスを維持するうえで必要であることは良く知られています。

 

腸管内腔は腸内細菌を中心として腸管内代謝産物と腸管細胞で構成される

体外の代謝臓器だということが、現代医学の新しい視点である、ということができるでしょう。

 

 

 

 

シンポジウム『睡眠関連障害と全身性疾患をめぐって』のダイジェストの最終回です。

 

 

 

ひとの睡眠パタンを決定するのは生物時計睡眠ゲート時刻】と睡眠恒常性【必要睡眠量】ですが、

いずれも遺伝的素因が関連します。そのため、睡眠に関する個人差は大きくなります。

 

 

時間栄養学的研究から、夜型生活者の社会的ジェットラグ(睡眠習慣と社会時刻のミスマッチ)に多い

遅い食事時刻や栄養素の日内分布の偏りが肥満リスクを増大させます。

 

またこれは短時間睡眠に直結し平日の睡眠負債を週末の寝だめで解消するパタンに陥りがちです。

しかし、この週末の寝だめでは結局、睡眠負債は解消できずに蓄積してしまいます。

 

初期には“眠気”や仕事のミスの増加、中長期的にはうつ病やイライラなどの気分障害や癌を含む

生活習慣病のリスクを増大させます。

 

 

 

高円寺南診療所では、初診時に【生活リズムに関する健康調査票】をお渡しして記入していただいたり、

また通院中に【生活習慣改善に向けての行動療法】の記録票を活用して役立てていただいたりして

心身調律のノウハウを蓄積してきました。

 

 

 

人体には生体時計というメトロノームが内在しています。

 

ひとは楽器です。

 

毎日、心身をみずから正しく調律し、自分自身を健康的に演奏し、社会参加できるようになるための

知識・技術を身に着け、健康的な習慣を形成していくことが必要です。

 

 

 

診療所内での医療をはじめ、水氣道、聖楽などを楽しみながら、

皆で養生法と鍛錬法を勉強しつつ、みずからの心身の調律を実践していきましょう!

<痛みと苦悩の間で  その1>

身体の「痛み」さえ無くなれば、全て解決するとお考えの皆様へ

 

私は高円寺南診療所で多くの経験をするまで患者の皆様の身体の「痛み」を取り除けば、全ての問題が解決し、皆が救われるものと固く信じていました。

 

しかし、「痛み」が軽くなっても救われない方が多数いらっしゃることに気付かされました。

 

例えば、「痛み」が軽くなっていくのもかかわらず、眉間のシワがむしろ深くなっていくことを数多く観察したのです。

 

なぜこのようなこと不可解はことが起こるのでしょうか?

次回(4月23日)に続きます。

昨日に引き続きシンポジウム『睡眠関連障害と全身性疾患をめぐって』のダイジェストです。

 

 

睡眠時には内分泌(ホルモン)や免疫のシステムの変動が激しくなります。

睡眠深度が深くなると脳の活動性亢進がみられるノンレム睡眠(総睡眠時間の85%)と

身体に休息をもたらすレム睡眠(総睡眠時間の15%)という2種類の睡眠がみられます。

 

 

ノンレム睡眠中は、交感神経活性が低下し、副交感神経活性が亢進することで、代謝、血圧、心拍数などが低下し、心血管系において重要な休息時間となります。

この睡眠が量的・質的に障害を受けると高血圧、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)などを引き起こしやすくなります。

 

これに対してレム睡眠時には自律神経活動の変動が激しく不安定になることに伴い、

呼吸、循環、中枢神経、内分泌代謝機能がよりダイナミックに変化します。

 

 

 

問題となる睡眠不足は量的不足(生体リズムの乱れによる)と

質的不足(睡眠分断と深睡眠の欠落とによる)によっておこります。

 

睡眠の量的不足は免疫機能の変調により炎症をひきおこします。

 

また睡眠の質的不足の代表例が睡眠時無呼吸症候群です。

 

これらは生活習慣病すなわち高血圧、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、糖尿病のほか癌、

不安抑うつなどの気分変調などとの関連性までもが注目されています。

有楽町の東京国際フォーラムでの3日間のシンポジウムのテーマについて、

最初に私の印象をご報告しましょう。

 

今年の日本内科学会は総合内科や心療内科の方向へのシフトを感じました。

 

 

初日のテーマは『睡眠関連障害と全身性疾患をめぐって』

これは高円寺南診療所開設以来の臨床実践課題にピッタリと重なっています。

 

 

睡眠は生命維持には不可欠で、能動的に引き起こされることがわかってきました。

(昼夜の環境変化など受動的な刺激で睡眠のリズムは影響を受けますが、睡眠現象自体は能動的)

 

そのメカニズムは、恒常性維持【必要睡眠量】や体内時計の機構で説明されています。

しかし、「眠気(ねむけ)」という自覚症状の本体はいぜんとして謎に包まれています。

ただし、眠気は生体防御のために重要な現象であると認識されています。

 

 

不安や緊張が強いストレスフルな状況や躁的興奮状態では

「ねむけ」や「疲労」を感ないまま覚醒し活動し続けます。

 

その異常に気付かないままでいると、睡眠不足が慢性化し、睡眠負債が蓄積し、

慢性疲労や慢性疼痛を引き起こされたと思われる症例は高円寺南診療所では多数経験しています。

 

鍼灸治療・心理療法・薬物療法など治療の種類を問わず、

「ねむけ」や「だるさ」や「疲労」の自覚は心身の緊張緩和(リラックス反応)です。

 

この症状を否定的にとらえてしまうと自然治癒の妨げとなりますが、

肯定的に受け止めて受け入れることが望ましい養生の姿勢であり、治療効果が促進されます。

ペンネーム 「さっちゃん 」さんより、

「日常腰痛が時に起きるので、専門的なアドバイスをいただき、今後の習慣にしようと思う。

今後も是非アドバイスをお願い致します。」

 

分からないことがありましたら、ぜひ質問をお寄せ下さい。

理解して習慣にしてもらえれば、腰痛が楽になることでしょう。

 

最後に、ペンネーム「ブンブン」さんより、

「なるほどと思う事が色々あって楽しかったです。」

 

僅か30分の時間でしたが、楽しんでもらえて嬉しいです。

私も楽しかったです。

今後ともよろしくお願いします。

ありがとうございました。

 

また、

2016年4月16日(土曜日) 午後1時

2016年4月20日(水曜日) 午後5時30分

2016年4月23日(土曜日) 午後1時  

にストレッチ教室を開催します。

 

詳しくは

http://www.suikido.jp/?p=192  

まで、よろしくお願いします。

 

「喘息の発作で息苦しいので喘息のお薬をください。」と受診された30歳の女性。

 

気管支喘息(自己判断で治療を中断)、食事の問題はなく、のどの痛みもありません。

不自然な胸式呼吸。

下唇が若干タラコ状にむくんでいるように見えたので、

改めて御本人に確認すると違和感があるとのこと。

 

脈拍90/分、血圧120/70mmHg、経皮的動脈血酸素飽和濃度SpO₂(血液中にどの程度の酸素が含まれているかの指標)98%。

次第に血圧が高くなってきたので循環器内科で降圧剤を処方されのみはじめたことが問診により判明。⇒喘息特有の喘鳴ではないが、呼吸音が荒い印象。

念のため喉頭をミラーで観ると氣道粘膜むくみがありました。

 

内服薬を確認したところ血管性浮腫を引き起こしやすいタイプの降圧剤でした。

この降圧剤を中止して慎重に経過観察するように同居人の彼氏にも依頼しておいたところ

呼吸困難は消失した。

ただし血圧が急上昇したため、別のタイプの降圧剤に変更し、やっと落ち着きました。

 

その後、喘息の治療を計画的に続けていただいたら、血圧が安定し、降圧剤も不要となりました。

 

 

 

診断:降圧剤(ACE阻害薬)による血管性浮腫(クインケ浮腫)

 

病態:降圧剤(ACE阻害薬)による喉頭の浮腫⇒呼吸困難⇒窒息死のリスク

 

教訓:

#1.患者さんの自己診断は参考にするが惑わされない。

⇒もし、患者さんのリクエスト通りに喘息の薬を処方していたら、窒息死していたかもしれません。

患者さんには、特に本人でしかわからない自覚症状についてなるべく具体的に伝えていただけるように

支援していきたいです。

 

#2.普段から医師としての五官(+第6感)を鍛え、センスを磨いておく命に係わる異常は

    案外目立たず微妙なもの。

⇒視覚(不自然な胸式呼吸。下唇が若干タラコ状にむくんでいる?喉頭鏡による観察)

⇒聴覚(喘息特有の喘鳴ではないが、呼吸音が荒い印象。)

⇒第6感(何か変だぞ!普通の喘息とは違う。そもそも喘息なのだろうか?何かわけがありそうだ!!)

 

#3.やはり問診による診察が大切。

⇒患者さんが気づいていない異変を発見する。喉頭鏡検査により呼吸困難の直接の原因が確認でき、

こちらも命拾いした思いがしました。

 

腰痛、肩こりでお悩みの皆様は 「ストレッチをして下さい。」とのアドバイスを親身で熱心な治療者から受けることが多いと思います。  

 

しかし、「どのようにしたら良いのだろうか?」と迷ってしまうのではないでしょうか。

 

また、気になる部位をいきなり伸ばして、不快になって止めてしまった方も多いと思います。

 

治療者である私自身、短時間でストレッチの指導をする難しさを感じてきました。

 

そこでストレッチの講座を行うことにしました。

 

 

 

  この講座を受講すると

 

1.どの部位をどのような手順でストレッチしていけば良いのか分かるようになります。

 

2.市販のストレッチの本を参考に自分なりの方法を工夫することができるようになります。

 

3.自分で腰痛、肩こりを軽くすることができます。  

 

理屈は簡単ですので、不安を感じる方も安心して参加してみてください。

 

気になる部位をいきなり伸ばすようなことをしなくても、楽になることに驚くことでしょう。  

 

 

 

対象

1.水氣道に参加されている方

 

2.腰部に軽い痛みのある 方

 

3.肩こりがつらいと感じる方  

 

 

日時

2016年4月16日(土曜日) 午後1時

 

2016年4月20日(水曜日) 午後5時30分

 

2016年4月23日(土曜日) 午後1時  

 

 

時間  30分

 

 

定員  4人

 

 

参加費 2,000円

 

 

場所   高円寺南診療所 リハ室  

 

 

参加希望は野口まで

 

動きやすい服装でおいで下さい。

アレルギー症状の改善には免疫の最前線である皮膚・消化管を含む粘膜、

および免疫機能を常に最適状態に維持しておくことが大切です。

この皮膚・粘膜などはタンパク・ヘム鉄・ビタミンC・亜鉛などを材料に造られます。

貧血があると赤血球の材料でヘモグロビンを構成するタンパク・ヘム鉄が不足し、皮膚や粘膜の

修復にまでまわらなくなる結果、体調も気分も不安定で改善しにくい状態になるので注意を要します。

 

 

Y.Iさんは36歳女性。胃腸の調子がすぐれず、またアレルギー体質で湿疹もあり、

消化性潰瘍治療薬と抗アレルギー剤を内服中です。

問診により、階段を上るときに息切れすること、

起床がつらく、朝はエンジンがかかりにくいことが確認できました。

 

潜在性鉄欠乏性貧血の治療のため食事からの鉄分摂取を励行中ですが、

4か月前と比べても鉄欠乏状態が改善しないため外来栄養食事指導とともに当面は鉄剤を内服して

いただくことになりました。

貧血の改善とともに不快な腹部症状や湿疹などのアレルギー症状の改善が期待できると思います。

その結果もYさんにインタビューする予定です。

 

さて、Yさんのような鉄欠乏状態は困ったことに医師さえ気づかないことが多いです。

その理由は、一般の健康診断では、血清鉄、総鉄結合能、血清フェリチン等を測定せず、

ヘモグロビン値が11g/dl以上ということだけで貧血なしと判定されてしまいがちだからです。

 

Yさんの一般血液検査データもヘモグロビン値が11.2g/dlで11g/dlを超えていましたが、

MCV(赤血球の容積)が81flで85fl 以下なので赤血球のサイズが小さい小球性貧血を疑いました。

血清生化学検査のデータでは、血清鉄(Fe)が32μg/dlで50μg/dl 以下なので血清中の鉄欠乏状態。

血清フェリチン値4μg/ml 以下(検出以下)で貯蔵鉄の欠乏状態。総鉄結合能(TIBC)が372μg/dlでした。

 

そこで総鉄結合能(TIBC)と血清鉄(Fe)から鉄飽和度(トランスフェリン飽和度)を計算してみます。

すると血清中の鉄飽和度(トランスフェリン飽和度)=Fe/TIBC=32/372=8.6%、

これは20%以下なので明らかに貧血状態。

以上より、Yさんは鉄欠乏による貧血が認められます。

 

 

また下記の症状がいくつかあれば鉄欠乏の疑いがあります。

 

身体症状 

① 全身症状:疲れやすい 倦怠感

② 局所症状:頭痛 めまい 立ちくらみ 動悸 息切れ

 

精神症状:気持ちが沈む いらいらが強くなった

 

行動・生活習慣異常:氷をかじりたくなる(氷食症) 朝寝坊・朝食の欠食・遅刻

 

客観的所見:爪が割れやすい(二枚爪)、髪や肌のつやが悪くなった、抵抗力低下(風邪をひきやすいなど)、湿疹ができやすく治りにくい

 

鉄欠乏の原因の大半は出血によるものなので、胃や十二指腸の潰瘍・炎症・痔・癌などによる消化管からの出血や月経による出血を疑います。

治療と並行しながら原因検索を計画的に進めていくことが必要です。

 

 

 

参考文献:高円寺南診療所の院長および管理栄養士が執筆したテキストです!

 

#1 食物と栄養学シリーズ10  <第二版> 臨床栄養学 

     吉田勉 監修、飯嶋正広・今本美幸 編著中田美砂恵ら著 

     学文社2016.4.10、193ページ以降を御参照ください。

 

#2 わかりやすい臨床栄養学 第4版 

     吉田勉 監修、飯嶋正広ら著

     三共出版2015.3.31、174ページ以降を御参照ください。

 

ペンネーム 「匿名希望」さんより、

「ストレッチと一言で言っても何をやれば良いか分からないですが、このストレッチは全身まんべんなく伸ばすことができるのでとても参考になりました。」

 

ペンネーム 匿名希望 さんより、

「ストレッチというと、痛い箇所にするものと思いこんでいたので、びっくりしました。

しかし、同時に「なるほどなぁ」と納得もできました。

 

今までTV等で知ったストレッチは「〇〇に効くらしい」としかわかっていませんでしたが、今回教えていただいた方法を基本にすれば、痛い箇所だけでなく、全身で調子をみることができますし、他のストレッチもパワーアップするのではと思います。

 

とても楽しかったです。」

 

私の願いが通じたかのような感想、ありがとうございました。

なぜそのポーズなのか、理解してもらえたら嬉しいです。

 

これからもよろしくお願いします。

 

次回のストレッチの感想の掲載は4月16日の予定です。

 

また、

2016年4月16日(土曜日) 午後1時

2016年4月20日(水曜日) 午後5時30分

2016年4月23日(土曜日) 午後1時  

にストレッチ教室を開催します。

 

詳しくは

http://www.suikido.jp/?p=192  

まで、よろしくお願いします。