学会2日目のシンポジウムのテーマは「腸内細菌と疾患」でした。
胃腸というと、私たちは体の中心に位置する、まぎれもなく体の中心にある体内の臓器であると
考えがちです。
しかし、ここで、ちょっと待ってください。
たとえばミミズにも口‐消化管‐肛門があります。
そこで、私たちの胃腸は消化管といって口から肛門に至る管状の構造をしているストローの内側であるとイメージしてみましょう。
消化管の内側の壁を消化管内腔と呼びますが、これは外部の皮膚と連続しています。
さらにいえば、私たちの体を穴あきドーナツと見立てれば、ドーナツの穴の部分は境界なく
外部の皮に連続していることに気づくことでしょう。
そうすると腸管内腔が体外の臓器であると理解することが可能になります。
この腸管内腔は腸内細菌を中心として腸管内代謝産物と腸管細胞で構成されています。
腸内細菌は、腸管腔内で摂取した食物から短鎖脂肪酸の産生し、腸管内に分泌された胆汁酸を代謝し、腸管粘液層のムチン(粘性糖タンパク)を分解するなどをします。
それらの働きを通して、宿主である私たちのエネルギーの獲得・分配・消費を変化させ、
エネルギーの安定供給のために大きな影響を与えています。
また腸内細菌が腸管免疫系のバランスを維持するうえで必要であることは良く知られています。
腸管内腔は腸内細菌を中心として腸管内代謝産物と腸管細胞で構成される
体外の代謝臓器だということが、現代医学の新しい視点である、ということができるでしょう。
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