診療実践 賢い患者さんは、まずは自覚症状の説明から。

「喘息の発作で息苦しいので喘息のお薬をください。」と受診された30歳の女性。

 

気管支喘息(自己判断で治療を中断)、食事の問題はなく、のどの痛みもありません。

不自然な胸式呼吸。

下唇が若干タラコ状にむくんでいるように見えたので、

改めて御本人に確認すると違和感があるとのこと。

 

脈拍90/分、血圧120/70mmHg、経皮的動脈血酸素飽和濃度SpO₂(血液中にどの程度の酸素が含まれているかの指標)98%。

次第に血圧が高くなってきたので循環器内科で降圧剤を処方されのみはじめたことが問診により判明。⇒喘息特有の喘鳴ではないが、呼吸音が荒い印象。

念のため喉頭をミラーで観ると氣道粘膜むくみがありました。

 

内服薬を確認したところ血管性浮腫を引き起こしやすいタイプの降圧剤でした。

この降圧剤を中止して慎重に経過観察するように同居人の彼氏にも依頼しておいたところ

呼吸困難は消失した。

ただし血圧が急上昇したため、別のタイプの降圧剤に変更し、やっと落ち着きました。

 

その後、喘息の治療を計画的に続けていただいたら、血圧が安定し、降圧剤も不要となりました。

 

 

 

診断:降圧剤(ACE阻害薬)による血管性浮腫(クインケ浮腫)

 

病態:降圧剤(ACE阻害薬)による喉頭の浮腫⇒呼吸困難⇒窒息死のリスク

 

教訓:

#1.患者さんの自己診断は参考にするが惑わされない。

⇒もし、患者さんのリクエスト通りに喘息の薬を処方していたら、窒息死していたかもしれません。

患者さんには、特に本人でしかわからない自覚症状についてなるべく具体的に伝えていただけるように

支援していきたいです。

 

#2.普段から医師としての五官(+第6感)を鍛え、センスを磨いておく命に係わる異常は

    案外目立たず微妙なもの。

⇒視覚(不自然な胸式呼吸。下唇が若干タラコ状にむくんでいる?喉頭鏡による観察)

⇒聴覚(喘息特有の喘鳴ではないが、呼吸音が荒い印象。)

⇒第6感(何か変だぞ!普通の喘息とは違う。そもそも喘息なのだろうか?何かわけがありそうだ!!)

 

#3.やはり問診による診察が大切。

⇒患者さんが気づいていない異変を発見する。喉頭鏡検査により呼吸困難の直接の原因が確認でき、

こちらも命拾いした思いがしました。