今月のテーマ<神経の特定内科診療>
重症脳卒中(JSS30以上)」Vol.2
幸いこの男性は、一命を取り止め、少しずつ回復していきました。
しかし、1ヶ月後に、妻からの報告をうかがうと、
「食膳の左側にあるものをまったく食べようとしません。」
ということでした。
患者さんの嫌いな食べ物が左側に配置されているからではありません。
左側にあるものを認識できない状態で、半側空間無視といいます。
この症例の脳梗塞による脳障害が右の頭頂葉に及んでいたためだと判断することができました。
右の頭頂葉障害があると、反対側である左の空間半側無視が生じ、
左側にあるものを認識できなくなることがあります。
この患者さんを診察したところ、ゲルストマン症候群を認めました。
補足解説:大脳には左右一対の半球がありますが、
それぞれ役割分担をしていて、一方が優位半球、他方が劣位半球となります。
右利きの人のほぼ100%、左利きの人の50%では、左大脳半球が優位半球です。
優位半球の頭頂葉が障害されると、
左右失認(左右の区別がつかない)、手指失認(指定された指を示せない)、
失算(簡単な計算ができない)、失書(簡単な文書を読めない)
の4つを主徴とするゲルストマン症候群を来すことが知られています。