今月のテーマ<神経の特定内科診療>

 

重症脳卒中(JSS30以上)」Vol.2

 

 

幸いこの男性は、一命を取り止め、少しずつ回復していきました。

 

しかし、1ヶ月後に、妻からの報告をうかがうと、

 

「食膳の左側にあるものをまったく食べようとしません。」

 

ということでした。

 

 

患者さんの嫌いな食べ物が左側に配置されているからではありません。

 

左側にあるものを認識できない状態で、半側空間無視といいます。

 

 

この症例の脳梗塞による脳障害が右の頭頂葉に及んでいたためだと判断することができました。

 

右の頭頂葉障害があると、反対側である左の空間半側無視が生じ、

 

左側にあるものを認識できなくなることがあります。

 

 

この患者さんを診察したところ、ゲルストマン症候群を認めました。

 

 

補足解説:大脳には左右一対の半球がありますが、

 

それぞれ役割分担をしていて、一方が優位半球、他方が劣位半球となります。

 

右利きの人のほぼ100%、左利きの人の50%では、左大脳半球が優位半球です。

 

 

優位半球の頭頂葉が障害されると、

 

左右失認(左右の区別がつかない)、手指失認(指定された指を示せない)、

 

失算(簡単な計算ができない)、失書(簡単な文書を読めない)

 

の4つを主徴とするゲルストマン症候群を来すことが知られています。

先週号で「わかりやすい臨床栄養学」第5版に

 

新たな章立てとして21章免疫アレルギー疾患

 

の執筆を担当するお話をいたしました。

 

そこで、今回は、ダイジェスト版をまとめてみました。

 

 

 

<予備知識>

 

体内に外部からの物質が侵入すると、体は抗体というたんぱく質をつくります。

 

この場合の外来物質を抗原と呼びます。

 

このように抗原の体内侵入により体内で抗体ができる生体反応を

 

抗原抗体反応と呼びます。

 

 

生体反応である抗原抗体反応が心身に有利な作用である場合、

 

たとえば生体を守る特異的な反応の場合は、免疫反応といいます。

 

これに対して体に不利に作用する場合には心身の変調をもたらします。

 

これをアレルギー反応といいます。

 

 

 

<アレルギー反応のメカニズム>

 

そもそも外来物質である抗原は、どこから侵入してくるのでしょうか?

 

生体が外界と接しているのは皮膚と粘膜です。

 

粘膜は呼吸器などの気道、消化器の内腔の表面を覆い、外界と接しています。

 

抗原が侵入してくるのは皮膚と粘膜からです。

 

抗原は、一般に抗体の産生をもたらす他、細胞による免疫反応を起こさせるものです。

 

 

病原体(ウイルス、細菌など)やアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)などです。

 

 

アレルギーの発症は遺伝子(アレルギー体質、アトピー素因など)と

 

環境因子が複雑に関与して生じると考えられています。

 

 

アレルギー反応は、そのメカニズムから4型(もしくは5型)に分類されます。

 

 

 

<アレルゲンの種類>

 

アレルゲンには大きく分けて吸入性アレルゲン食物アレルゲンとがあります。

 

吸入性アレルゲンは、皮膚や気道粘膜から侵入する

 

ダニ、ハウスダスト、花粉、動物の皮膚などです。

 

 

食物アレルゲンは、消化管粘膜から侵入する、牛乳、卵、大豆などが代表的です。

 

 

 

<アレルギー疾患>

 

 

主なものは、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、食物アレルギーなど。

 

 

<アレルギー疾患の特徴>

 

アレルギー疾患の原因となるアレルゲンによる陽性率は、

 

小児では加齢とともに変化し、

 

また発症の原因となるアレルギー疾患が変化する傾向があり、

 

これをアレルギーマーチといいます。

 

 

吸入性アレルゲンでは、小児では、成長とともに陽性率が上昇し、

 

また新たなアレルゲンが加わる傾向があります。

 

 

食物アレルゲンでは、小児では、成長とともに陽性率が低下する傾向があります。

 

 

<アレルギー疾患のケア>

 

アレルゲンが何かを調べる(アレルゲンの同定)。

 

そして、除去可能なアレルゲンは除去します。

 

疲労や心理社会的ストレッサーに対する対策

 

(ストレッサー軽減するための養生、ストレス耐性を増す鍛錬)を講じます。

 

 

気管支喘息では、アレルゲンの除去を基本とした環境のコントロールと、

 

喫煙者では禁煙を勧めることが不可欠です。

 

 

アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリアー機能が低下しているので、

 

皮膚の清潔保持の励行、皮膚保湿の徹底を図ります。

 

 

次回は、「食物アレルギー」をテーマとします。

今月のテーマ<神経の特定内科診療>

 

 

「重症脳卒中(JSS30以上)」Vo1.1

 

今回の症例は、平成元年に高円寺南診療所開設後も、

 

しばらくの間週末勤務をしていた救急病院での忘れられない経験例です。

 

 

70代の男性。急激な意識障害のために救急車で搬入されてきました。

 

付き添いの妻からのお話によると、

 

「今朝、食卓のテーブルの前で、椅子に座って食後のコーヒーを飲んでいたところ、

 

突然崩れ込むように椅子からずり落ちたので、大変だ、と思いながらも、

 

それまで、しばしば起こしていた低血糖発作かもしれないと考えて、ようやく救急車を呼びました。

 

持病に高血圧と不整脈がありますが、

 

大の病院嫌いのためこれまで治療を受けてくれませんでした。」

 

とのことでした。

 

 

意識障害の評価は、意識レベルJCSⅡ-10と判断しました。

 

 

JSCとはJapan Coma Scaleという意識障害の重症度分類です。

 

まず、JSCⅡというのは、刺激すると覚醒する状態です。

 

これに対してJSCⅠは、刺激しなくても覚醒している状態、

 

JSCⅢは、刺激しても覚醒しない状態です。

 

 

次に、JSCⅡをさらに細かく査定してみます。

 

JSCⅡには3水準あり、JSCⅡ⁻10、JSCⅡ⁻20およびJSCⅡ⁻30です。

 

JSCⅡ⁻10は、「普通の呼びかけで容易に開眼する」状態

 

JSCⅡ⁻20は、「大きな声または体を揺さぶることにより開眼する」状態

 

JSCⅡ⁻30は、「痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと、辛うじて開眼する」状態です。

 

 

これは意識障害の分類であって、脳卒中の重症度の評価ではありませんが、

 

緊急を要する現場で時間と手間がかからない評価方法なのでとても有用です。

 

 

当然の意識障害であることから、脳卒中を疑いました。

 

そこで神経学的検査をすると、左片麻痺を認めました。

 

そこで右半球の脳卒中を疑いました。

 

ただし、脳卒中には、脳出血くも膜下出血脳梗塞があるので

 

鑑別が必要です。

 

 

不整脈を心電図で確認すると、心房細動と診断しました。

 

この慢性の心房細動を原因としてできた心臓内の血栓が、血流に乗って

 

脳へ向かう動脈を閉塞させたこと(心原性脳塞栓症)が推定されました。

 

脳卒中の中でも、脳梗塞、てんかん、低血糖発作などを疑いました。

 

ただちに頭部MRI検査を行いましたが、発症後3時間を経過していました。

 

 

頭部MRI検査では、拡散強調像(DWI)という撮影技法によるフィルムにて、

 

右大脳半球に高信号域を認めました。

 

これは脳の動脈血流が遮断された領域を表します。

 

右の中大脳動脈が血流を供給する領域(灌流域)に一致するものでした。

 

これは、急性期脳梗塞の所見です。

今回は自律神経と呼吸の関係について見ていきましょう。

 

 

自律神経の働きの表を見ながら読んでください。

 

自律神経表

 

 

 以前、自律神経のはたらきで「自律神経の要素は無意識にコントロールされているが、

 

意識的にコントロールできる要素もある」と書きました。

 

 

 

それは何でしょうか?

 

 

 

答えは「呼吸数」と「呼吸の深さ」になります。

 

 

 

緊張すると教えられたわけでもないのに、深呼吸しますよね。

 

 

それは深く大きく呼吸することにより、

 

自動的に呼吸数が減り、副交感神経が働きやすくなるのです。

 

 

これを意識的に訓練して、十分に利用することができるようになれば、

 

 

深呼吸によるリラクゼーションを導くことができるようになります

 

 

交感神経を過剰に働かせている現在、ヨガ、瞑想等の言葉が世間を賑わせています。

 

そのどれもが、深く大きく呼吸をすることを重要視しています。

 

 

皆、本能的に「副交感神経を働かせないとまずいな」と感じているのかもしれません。

 

 

 

ちなみに<水氣道>は水圧によって、無意識に呼吸が深くなり

 

過剰な交感神経の働きを、自然に抑えることができるのでおすすめします。

 

 

 

次回、私は幸か不幸か疲労度分類の「反復性過労」から

 

「疲労困憊」まで体験しましたので、

 

そのことを書きたいと思います。

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

今月のテーマ<痛風・高尿酸血症>

 

 

「高尿酸血症・痛風の生活指導と合併症がある場合の治療」

 

 

1)高尿酸血症・痛風は代表的な生活習慣病です。

 

飲酒制限などの生活習慣是正はお薬の効果を高めます。

 

 

2)そこで生活習慣の是正を目的とした生活指導が基本となります。

 

 

3)高尿酸血症・痛風に対する生活指導は、食事療法、飲酒制限、

 

肥満者の場合は、肥満を解消することによって血清尿酸値を低下させる効果が期待されます。

 

 

4)運動の推奨が中心となります。

 

 

5)食事療法としては適正なエネルギー摂取、

 

プリン体・果糖の過剰摂取制限、十分な飲水を励行します。

 

 

6)身体活動(運動)は、メタボリック・シンドロームの種々の病態の改善に有効です。

 

メタボリック・シンドロームの改善は血清尿酸値を低下させる効果が期待されます。

 

 

7)高血圧・心疾患系の病気を合併する場合:

 

「総合的な臓器のリスク回避」を目指し、

 

同時に高尿酸血症の発症に関連する生活習慣を改善するための指導を受けましょう

 

 

8)脂質異常症を合併する場合:

 

動脈硬化性疾患の1因子となる脂質異常症を治療し、

 

動脈硬化性疾患の軽減を図ることを目標としつつ血清尿酸値のコントロールをします。

 

 

9)メタボリック・シンドロームを合併する場合:

 

食事療法や運動療法、また禁煙などの生活習慣をまず改善して

 

7%程度の体重の減量をはかることが基本です。

 

メタボリック・シンドロームの治療の最終目標は、

 

本症候群の帰結点である動脈硬化性疾患や2型糖尿病の

 

発症予防と進展を食い止めることにあります。

 

 

10)なお日本肥満学会は、

 

まず現在の体重ないしウエスト周囲径の5%程度の減少を目標とするよう勧告しています。

今日は前回の続き、Aさんの『自動思考(頭の中にパッと浮かぶ考え)』から、

 

よくあるパターン④~⑤をお話しします。

 

 

例)Aさんは職場の会議のプレゼンの時に、

 

「資料の数値に間違いがある」と指摘されました。

 

 

Aさんが即座に思ったこと=『自動思考』は…

 

 

これでプレゼンは台無しだ。上司の評価も下がり、もう昇進の可能性はなくなった。

 

自分は肝心な時にいつもミスばかりしている。みんなにダメな人間と思われている。

 

 

④ みんなのように完璧な資料を作らなければならないのに。

 

 

⑤ 業績が伸びないのも、全て自分のせいだ。もう会社の人に顔向けできない…

 

 

④「すべき思考」:

「~すべき」「~すべきでない」「~しなければならない」

 

「~してはいけない」と考える傾向のことです。

 

この基準を自分に当てはめると自分を追い詰め、

 

実行できないと罪の意識を持ちやすいです。

 

また相手にもその基準を求めるため、怒りや葛藤を感じやすくなります。

 

また、これには④の「完璧な~」は「ストレスへの対処法7」で

 

すでにお話しした「全か無か思考」も関与していることにお気づきでしょうか。

 

 

 

⑤「自分への関連づけ(個人化)」:

 

何か良くないことが起こった時、

 

自分に責任がないような場合でも自分のせいにしてしまう傾向のことです。

 

Aさんはこの考えにとらわれて、

 

「ではこれからどうするか」「自分ができることは何か」

 

といった生産的な考えが思い浮かびません。

 

 

 

今回までに、自動思考に基づく基本的な考え方のクセを

 

5つの要素に分類してご紹介してきました。

 

 

これまでに挙げてきた、これらのパターンが、

 

いくつも合わせ技で係わってくると、問題はより複雑化しがちになります。

 

そのような状況では、自分一人で振り返って整理することは、より難しくなるでしょう。

 

 

より一層、自分を追い詰めたり相手を責めたりして、

 

落ち込みや不安、怒りを感じやすくなるかもしれません。

 

 

今一度、ご自身の考えのクセをチェックし、

 

機会があればご相談くださいますように。

 

今月のテーマ<痛風・高尿酸血症>

 

 

「高尿酸血症・痛風の治療」

 

 

1)水分の摂取量を確保し、1日尿量2リットル以上を目安にします。

 

 

2)薬を内服しているときは、しっかりと、水分を摂取しましょう。

 

 

3)高尿酸血症の治療では、

 

肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常などを合併することが多いので、

 

生活習慣全般を改善することが最も大切です。

 

運動は水氣道のような有酸素運動を推奨し、

 

過激な無酸素運動は血清尿酸値を上昇させるので控えるようにします。

 

 

4)特に、血清尿酸値を下げるためには、

 

アルコール飲料やプリン体、果糖(フルクトース)、ショ糖(シュークロース)や

 

カロリーの過剰摂取を避けることがポイントです。

 

 

5)尿路結石、腎疾患、高血圧などの合併がある場合は、

 

血清尿酸値が8.0mg/dⅬ以上で薬物療法を考慮します。

 

 

6)痛風発作の発現・再現、高尿酸血症の合併症を防ぐためには、

 

血清尿酸値を6.0mg/dl以下にコントロールすることが重要です。

 

 

7)なお、治療により自覚症状がなくなっても継続療養することが必要です。

 

 

8)無症候性高尿酸血症といって、症状をともなわない高尿酸血症の段階で、

 

無症候性高尿酸血症であっても、生活習慣の改善にもかかわらず

 

血清尿酸値が9.0 mg/dⅬ以上であればお薬による治療の可否を検討します。

 

 

9)高尿酸血症が原因で発症する

 

痛風関節炎、痛風結節、腎障害、尿路結石を予防するために

 

血清尿酸値を低下させることが望ましいです。

ドクトル飯嶋の「認定痛風医試験」受験顛末記 (その3)

 

 

<前号から、すでに一週間たっているので要約します。>

 

受験票発送消印(6月13日)、受験票到着(6月14日)、

 

「認定痛風医試験」(6月18日) したがって、受験勉強は正味3日のみ。

 

受験会場の在室者は4名:試験官2名(医学部教授)

 

事務局員1名、受験生1名(高円寺南診療所 飯嶋正広)

 

受験者はドクトル飯嶋ただ一人・・・

 

 

 

試験結果通知が届くまでの正味5日間は、

 

試験準備の3日よりも入念に試験問題を検討しました。

 

受験した試験問題をもとに最新の論文を読めば読むほど、

 

医学の進歩のすさまじさを実感した次第です。

 

第一線の多くの臨床医が参考にする最新のガイドライン

 

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」(第2版)2010年改訂

 

の記述すらすでに古いものになっているくらいだったからです。

 

 

これでは不合格の公算が高い、良くても合否スレスレ、と見込んでいました。

 

ただし、試験問題を詳細に検討する過程で、不適切問題を発見しました。

 

そのあと、試験結果通知消印(6月22日)の合格通知到着(6月23日)

 

結果的には「合格」でしたが、正解数は60問中39(65%)に過ぎませんでした。

 

 

ここではじめて判明したのは、

 

「認定痛風医試験」の合格ラインは65%以下であるということです。

 

専門医試験の合否ボーダーが60%というのは普通なので、

 

ギリギリのセーフ。

 

正解が2/3にも満たなかったのですから決して名誉なことではありません。

 

まさに冷や汗もの。

 

胸を張って「合格しました」なんて言えません。

 

 

しかし、毎週、懺悔録を綴っているMr.NoGucciを見習って、

 

私も正直にご報告することにいたしました。

今月のテーマ<痛風・高尿酸血症>

 

 

「高尿酸血症・痛風の診断」

 

 

Q1.そもそも尿酸とは?

 

A1.尿酸はプリン塩基(アデニン、グアニン)をはじめとするプリン分解の最終産物です。

 

 

Q2.高尿酸血症の原因は?

 

A2.尿酸の産生過剰、尿酸排泄の低下またはその両方の合併により生じます。

 

尿酸の産生過剰の原因は、食事からのプリンの過剰摂取や、

 

内因性のプリン産生増加、プリンヌクレオチドの分解亢進などにより起こります。

 

 

 

高尿酸血症・痛風の診断の実際:

 

1)高尿酸血症は血清尿酸値が7.0mg/dl以上をいいます。

 

 

2)高尿酸血症が急性痛風関節炎、痛風結節、腎障害、尿路結石

 

の原因になることは以前から知られていました。

 

 

3)近年、高尿酸血症が動脈硬化性疾患の危険因子でもあることが明らかになりつつあります。

 

 

4)高尿酸血症は、原因によって

 

「尿酸産生過剰型」、「尿酸排泄低下型」、「混合型」に大別され、

 

そのタイプ別に適した治療を行います。

 

 

5)痛風の診断では、単純エックス線(レントゲン)検査は、

 

他の類似の疾患との鑑別に有用です。

 

高円寺南診療所では、痛風の診断に積極的に超音波検査を活用し、

 

パワードップラー法による異常血流を検知し、

 

関節炎の拡がりと炎症の程度などを併せて評価し診断に役立てています

 

 

6)超音波検査は苦痛を伴わず、被爆の恐れもないので、

 

必要な時間をかけて、患者さんとコミュニケーションを図りながら、

 

丁寧に観察できるので実際上のメリットが大きいです。

 

骨病変の評価においてがレントゲン検査より優れ、

 

また軟骨表面の尿酸塩結晶の検証に有用であることが示されています。

医学の進歩は日進月歩。

 

 

だから、それを受けて臨床栄養学(食事療法)もチョクチョク変わるのです。

 

 

2007年初版から10年足らずで4回目の改訂作業。

 

 

本は売れないと、改訂できません。

 

改訂できないと、内容が古くなって価値が下がります。

 

 

価値が下がると、売れません。

 

⇒悪循環のパターンに陥らぬための努力は半端ではありません。

 

 

 

今回、ドクトル飯嶋が依頼され、

 

相談を受けた担当部分のメールをご紹介いたします。

 

 

 

9章 腎・尿路疾患(腎臓病の食事交換表が新しくなったため、それに対応)

 

 

13章 がん 13章の3節(13‐3 ターミナルケア 追加)

 

 

18章 摂食障害 (タイトルは 摂食障害 となっていますがその中に身体障害・

 

知的障害も入っているのでガイドラインにあるように 

 

神経・精神系疾患 としてはいかがでしょうか?

 

 

21章 免疫アレルギー疾患(新規章)臨床栄養に関することを書いていただければと存じます。

 

 

9月ごろまでに頂ければと存じます。

 

お忙しいこととは存じますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

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本日は、腎臓病の食事交換表(第8版)についての話題です。

 

 

第8回目の改訂の背景には、慢性腎臓病(CKD)と呼ばれる概念が台頭したからです。

 

CKDとは,慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症,腎硬化症,多発性嚢胞腎など,

 

すべての慢性の腎臓疾患を包含させて表現した呼び名です。

 

CKDに対して,現代の医学ではいまだ根治的治療法がないことが多いです。

 

CKDが進行して腎機能低下が顕著になるほど,

 

食事療法の占める役割と効果が大きくなります。

 

この意味から,腎臓病治療での食事療法の価値は変わりません。  

 

日本腎臓学会から,CKDの概念に合わせて

 

「慢性腎臓病に対する食事療法基準2007年版」が発表されました。

 

また近年,腎臓病のための治療用特殊食品が新しく多数開発されたことにともない,

 

今回の改訂でもこれら特殊食品を見直されています。

 

透析食では,血管石灰化の防止の観点より,

 

リン摂取制限がますます重要視されています。

 

リン摂取量はたんぱく質摂取量と相関するため、

 

たんぱく質の摂取過剰は避けるべきであることから、

 

今回の改訂では,健常人に対する

 

たんぱく質摂取推奨量を超えるようなたんぱく質70gの項目が削除されました。

 

 今回の改訂は,この食品交換表は,

 

栄養学的にほぼ等しい栄養価(たとえば,たんぱく質3gを含む食品を1単位とする)

 

の食品を相互に交換することによって,食事の変化と楽しみを与え,

 

それによって同等な治療効果を期待することを目的としたものです。これは食品成分表と大きく異なるところです。

 

利用にあたっては誤解や誤った方法で使用されないように指導する必要があります。

 

 

「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014」(日本腎臓学会編),

 

「日本人の食事摂取基準2015」(厚生労働省)に準拠して内容を一部訂生。