漢方治療に関しては慶應義塾大学医学部漢方医学センターの漢方Q&Aは比較的上手にまとめられているので独自のコメントを付して紹介して参りました。

 

これに引き続き、富山県立中央病院 内科和漢・リウマチ科-Q&Aをご紹介いたします。

 

 

そこでも、高円寺南診療所の立場から、

<高円寺南診療所からのメッセージ>

を加えてご紹介を試みることにしました。

 

 

Q1.

和漢薬とか漢方薬とかよく聞きますが、どのようなものですか?

 

A1

薬効のある天然物を簡単に加工(乾燥や粉砕)したものを生薬(しょうやく)と言い、植物(草根木皮)をはじめ動物や鉱物からも製造されます。

 

ジギタリスはヨーロッパ生薬から抽出されたものですし、エフェドリンは麻黄(まおう)という生薬から、サリチル酸が楊の枝に由来することはよく知られています。

 

中国で使用されている生薬を漢薬といい日本固有の生薬を和薬と呼んで両者をまとめて「和漢薬」としています。

 

こういった和漢薬をいくつか組み合わせたものが「漢方薬」です。

 

ただしその組み合わせは決してデタラメなものではなく、漢方医学で決められた配合によって、それぞれ一定量が調和されています。

 

たとえば「葛根湯(かっこんとう)」という漢方薬は、葛根、麻黄、桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草の7つの生薬(和漢薬)で構成されています。

 

 

ところで「民間薬」との違いは何でしょうか。民間薬というのは伝承によって使用されてきた生薬を意味し、専ら単味で用いられるのが特徴です。

 

たとえば、ドクダミやゲンノショウコ、センブリなどです。

 

これに対して漢方薬は単独ではなく、複数の生薬を決められた割合で、組み合わせて使用します。

 

 

<高円寺南診療所からのメッセージ>

生薬と漢薬、漢薬と和薬の違い、漢薬と和薬を併せて「和漢薬」とよぶことなど、さすが薬のメッカの富山の病院の解説は切れ味が良いと感じました。

 

また、「和漢薬」は「民間薬」とはどのように異なるのか、ポイントが明らかにされました。

 

さて、ここで少しだけツッコミを入れておきます。和漢薬をいくつか組み合わせたものが「漢方薬」であると説明されていますが、厳密には正しくないです。

 

たとえば、甘草湯(かんぞうとう)という漢方薬は甘草のみ、つまり構成生薬は単味ですが民間薬ではなく、れっきとした漢方薬です。

 

激しい咳、咽喉痛の寛解を目的に医師が処方すれば、保険も効きますし、実際に良く効きます。

 

連用すれば、アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症など偽アルドステロン症をもたらしますが、急性期のみの使用であれば問題はありません。

 

紛らわしいものとしては、紅参末(こうじんまつ)、附子末(ぶしまつ)、これらも単味の生薬ですが、多くの場合他の漢方薬に加味して用いられることが多いです。

 

紅参末とはいわゆる朝鮮人参ですが、独参湯(どくじんとう)といってオタネニンジン一味だけの漢方薬が有名です。

 

なお、ヨクイニンエキスも薏以仁(ヨクイニン)の単味の漢方薬で、青年性扁平疣贅、尋常性疣贅など、イボの治療に用いられ、保険での処方が可能です。

 

 

ここで掲載する内容は、一般社団法人日本アレルギー学会のホームページ<一般の皆さま>から引用したものです。

 

最後に高円寺南診療所からのメッセージを加えています。

 

 

食物アレルギー③ 

Q

口腔アレルギー症候群とは?

 

A

口腔アレルギー症候群は、食物の摂取によってひきおこされ、唇や口の中にかゆみ、ヒリヒリ感、腫れがみられます。時にのどがしめつけられる感覚が生じたり、稀にアナフィラキシーをきたすこともあります。

 

原因食物は果物・野菜が主です。また、花粉症を合併することが多いことも特徴です。これは果物・野菜の抗原と花粉抗原との間に共通抗原性が存在するためです。

 

 

主な花粉と交差反応性が報告されている果物・野菜

 

シラカンバ          

バラ科(リンゴ、西洋ナシ、サクランボ、モモ、スモモ、アンズ、アーモンド)、セリ科(セロリ、ニンジン)、ナス科(ポテト)、マタタビ科(キウイ)、カバノキ科(ヘーゼルナッツ)、ウルシ科(マンゴー)、シシトウガラシ、等

 

スギ

ナス科(トマト)

 

ヨモギ

セリ科(セロリ、ニンジン)、ウルシ科(マンゴー)、スパイス、等

イネ科 、ウリ科(メロン、スイカ)、ナス科(トマト、ポテト)、マタタビ科(キウイ)、ミカン科(オレンジ)、豆科(ピーナッツ)、等

 

ブタクサ

ウリ科(メロン、スイカ、カンタロープ、ズッキーニ、キュウリ)、バショウ科(バナナ)、等

 

プラタナス

カバノキ科(ヘーゼルナッツ)、バラ科(リンゴ)、レタス、トウモロコシ、豆科(ピーナッツ、ヒヨコ豆)

 

食物アレルギー診療ガイドライン2012(作成:日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会)より転載

 

 

【高円寺南診療所からのメッセージ】

口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome: OAS)は、特定の食物を摂取したときに口唇や口腔内粘膜の腫脹、痒みや咽頭部の異常感を生じるもので、近年になって注目されるようになりました。

 

ポイントは花粉症(シラカンバ、ハンノキなど)と合併することが多いことです。

 

これを花粉・食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome : PFS)といいます。

 

診断は問診が重要です。血清中の特異的IgE抗体測定(RASTなど)も行います。

 

プリックプリックテストや確定診断のための経口負荷試験がありますが、高円寺南診療所では、アナフィラキシーショックの誘発の危険性を冒してまで実施する意義はないとする立場です。

 

治療の基本はアレルゲンの除去ですが、加熱処理により経口摂取可能となることが多いです。

今週から「骨粗鬆症についてQ&A」になりました。

 

ここで掲載する内容は、公益財団法人 骨粗鬆症財団のホームページから引用したものです。骨粗鬆症についてわかりやすい解説をしています。

 

 

骨粗鬆症は、長年の生活習慣などにより骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気です。

 

最初は、自覚症状はありませんが、ひどくなると骨折を起こし、寝たきりの原因となる場合もあります。

 

多くは腰や背中に痛みが生じて医師の診察を受けてからみつかります。しかし、骨粗鬆症になってから治すのはたいへんです。

 

骨粗鬆症にならないように、日ごろから予防を心がけることが大切です。

 

骨粗鬆症を予防することが、ほとんどの生活習慣病を予防することにつながります。

 

そのために、高円寺南診療所では女性では、45歳以上、男性でも50歳以上の皆様に骨量計測を推奨し、骨年齢を算出し、骨粗鬆症の早期発見、早期対応に力を注いでいます。

 

それでは、骨粗鬆症についてもっと詳しく勉強していきましょう。

 

それぞれのQ&Aのあとに【高円寺南診療所からのコメント】を加えました。

 

 

Q1

日本国内での骨粗鬆症の患者数を教えてください

 

A1

骨粗鬆症は、「健康」「予備軍」「骨粗鬆症」の境が明確ではなく、いわゆるグレーゾーンの人が多いのが特徴となっています。

 

骨粗鬆症は日本人をはじめとして、人類全体が最もかかりやすい病気の1つです。昔は骨折してからレントゲンを撮り、初めて骨粗鬆症に気づくといった状態だったので、実態はよくわかっていませんでした。

 

レントゲン写真だけでは重症の骨粗鬆症しか判断できなかったのです。しかし、近年、二重エネルギーX線吸収法(DXA)などで精密に骨量が測定できるようになった結果、日本の総人口の10%弱、すなわち約1100万人が骨粗鬆症で、現在は症状が出なくても、いずれ腰痛や骨折を起こす危険が大きいと言われています。

 

危険の程度を厳しく予測するかどうか、つまり、どこまで骨量が減少すれば危険とするかによって多少変わってきますが、骨粗鬆症予備軍まで含めると2000万人に達するかもしれません。

 

なお、「原発性骨粗鬆症の診断基準 2000年度改訂版」では、二重エネルギーX線吸収法(DXA)で腰椎を測った場合、若い人(20歳~44歳)の平均値の70%未満の数値を骨粗鬆症としています。日本人全員の骨量を測るわけにはいかないので、いろいろな方法で約1100万人という推定を出しています。

 

 

【高円寺南診療所からのコメント】

骨粗鬆症は、「健康」「予備軍」「骨粗鬆症」の境が明確ではなく、いわゆるグレーゾーンの人が多いのが特徴であるとされています。

 

それはなぜなのでしょうか。その理由の一つが、骨粗鬆症の評価基準にあることは既に指摘されていますが、私は他にも理由があると思います。

 

それらの一つは、評価の方法です。一回限り、つまり一時点での評価は、それがいかに精密な評価法であっても、限界があります。

 

骨粗鬆症にとって骨折リスクを評価することが大切であり、とくに今後の予測を立てることが必要になってきます。

 

そこで骨量を経時的に計測することによって、現在進行中の骨の状態が把握し易くなり、予後予測が立てやすくなります。

 

とくに骨量がその年齢平均を下回る場合、前回より骨量が低下している場合などでは、半年後に再度検査をして、経時的な傾向を把握しておくことはとても有意義です。

 

経時的に測定することによって、骨量にとってどのような生活習慣が改善因子か、あるいは増悪因子であるかをつきとめやすくなります。

 

 

グレーゾーンが多いもう一つの理由。それは、骨粗鬆症の局所的評価には臨床的な限界があることです。

 

骨量測定によって、おおよその骨年齢を計算すること自体は有用ですが、少なくとも筋骨格系のより広範囲の査定、たとえば筋肉率や体脂肪量などによる身体構造年齢、肺年齢、下半身動作年齢などを同時に評価することによって、骨粗鬆症ならびに転倒や骨折のリスクをより実際的に評価することが臨床的に有意義だと考えます。

 

 

高円寺南診療所では、概ね3か月に1回、つまり、春・夏・秋・冬の季節ごとのフィットネス検査(体組成・体力検査)を推進しています。それによって、日常生活での活動量(一日の歩行歩数など)、水氣道への積極的な参加などによる他の体力因子と骨量の増加等が連動することを確認することができます。

皆様の中には、保険証は万能だと思い込んでいる方がいらっしゃいます。

 

有効な健康保険証さえ持参していけば、ご自分が望む検査や治療が無制限に受けられるものと誤解されていませんか?

 

それどころか、医学的に妥当な診療を責任もって正しく行い実績を積み重ねていっても、保険診療報酬が得られないことがまかり通っているのが現状です。

 

たとえば、高円寺南診療所で専門的に診療している線維筋痛症という病名で保険診療はしていません。

 

その理由は、線維筋痛症という病名での保険診療の選択肢が非常に限られていて根本治療のためにはほとんど役に立たないからに他なりません。

 

ですから、保険医療のみが正当で妥当な医療であると思い込んでいる難病の患者さんは本当にお気の毒です。

 

難病の中には、作られた難病というものがあります。その最たる例が線維筋痛症です。この病気は保険医療制度が生み出した難病とさえいえるのではないかと考えています。

 

ちなみに、線維筋痛症は決して難病ではありません。治せる病気です。それが事実であることは、高円寺南診療所で鍼灸治療を受けたり、水氣道に参加したりして線維筋痛症を克服した多くの方々が何よりの証拠です。

 

また、これとは逆に、効果がほとんど認められないことがすでに判明している医療であっても、当然のように報酬が得られる場合もあります。

 

つまり、保険医療は万能ではないばかりか、大きな矛盾を孕んでさえいえるのです。

 

 

ただし、高円寺南診療所は、本来の保険医療制度の卓越性を高く評価しています。

 

そのため、日々、熱心に保険診療に取り組んでいます。それにもかかわらず、なお、厄介な手続きに追われています。それは、社会保険診療報酬支払基金との関わりにおいて顕著です。

 

如何に実例をお示しします。

 

その前に、予備知識として、まず、社会保険診療報酬支払基金とは何か、ということを当該基金自体のオフィシャルホームページで紹介されていますので、ご参照ください。

 

 

社会保険診療報酬支払基金

 

支払基金ってなにをしているの?

 

保険医療機関(薬局)からの診療に係る医療費の請求が正しいか審査したうえで、健康保険組合(保険者)などへ請求し、健康保険組合から支払われた医療費を保険医療機関へ支払いをする仕事をしています。

 

会社の従業員などの方は、協会けんぽや健康保険組合(保険者)などに加入しています。

 

加入者本人(被保険者)やその家族(被扶養者)が病気やケガをして、病院(保険医療機関)に行って治療を受けると、その医療費(1日から末日まで)は診療報酬明細書(レセプト)という形で病院から支払基金に請求されます。

 

 

支払基金はどのような業務を行っているのですか。

 

支払基金は、社会保険診療報酬支払基金法(昭和23年法律第129号)に基づき設立された法人であって、医療費の「適正な審査」及び「迅速適正な支払」を行うことを使命としています。また、平成15年10月から「特別の法律により設立される民間法人」として位置付けられたところです。

 

支払基金の具体的な業務は、保険医療機関等から提出された被用者保険分に係るレセプトの審査・支払業務のほか、高齢者医療制度関係業務、退職者医療関係業務及び介護保険関係業務に係る保険者からの拠出金(納付金)等の徴収及び市町村への交付金等の交付業務を行っています。

 

 

 

以下は、実際の返れい付せんです。

 

この質問に答えない限り、診療報酬は支払っていただけません。

 

もっとも、質問に答えたからといって、必ず支払っていただけるとは限りません。

 

審査委員会は高円寺南診療所に対して、必要理由を詳記、つまり詳しく書け、ということを求めてきているわけですから、それに従って、回答を準備しました。サックリとお読み流しいただければ幸いです。

 

 

返れい付せん(医科) 9月審査分

東京都社会保険診療報酬請求書審査委員会

 

この診療報酬明細書については、下記の理由により返戻いたしますので、

整備のうえ、この付せんを貼付したまま、次回請求時にご提出下さい。

 

下記の必要理由について詳記願います。

※ 関節腔内注射

 

下記の必要理由について詳記願います。

※ 超音波検査(断層撮影法)(その他)

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

※ 関節腔内注射が必要であった理由

 

直接的な個別臨床上の理由は、当該症例は、疼痛のため歩行困難を呈し、不均衡な姿勢での歩行のため膝関節その他の荷重関節の二次的障害を容易に来しやすい状況にあり、速やかな疼痛コントロールの必要があったためです。なお、該症例は臨床所見のみならず、予め実施した超音波検査所見からも比較的重度の単関節炎であることを認めました。なお喫煙者(Brinkman Index=300)であり、かつ、朝食摂取の習慣がなく食生活をはじめとする生活習慣の乱れが顕著であるため、急性関節炎の薬物治療として、消化管粘膜の保護のため非ステロイド系消炎鎮痛剤等の使用は最小限に制限すべきと判断したためです。

 

一般的な医学的理由としては、関節穿刺により化膿性炎症でないことを確認したうえで、ステロイドの関節内注入法が有効であることはすでに以前から証明されています。

 

実際には、速効性を確保する目的で、ステロイド剤(トリアムシノロン0.5mg)に局所麻酔薬(1%カルボカイン0.5ml)を混注としました。なお超音波検査パワードプラー法により、炎症部位の中心を特定し、その部位に精確に関節腔内注射を実施しました。関節注射実施の後、施設内歩行テストにて、歩行障害の程度が10→5、安静時局所疼痛の程度が10→1となり、均衡のとれた姿勢で帰宅可能であることを確認することができました。

 

 

※ 超音波検査が必要であった理由

 

直接的な個別臨床上の理由は、当該症例は、すでに3年前に初回の痛風発作を経験していますが、その後は発作がありませんでした。疼痛のため顕著な歩行困難を呈し、過体重(BMI27.0:肥満度Ⅰ)による慢性的な力学的負荷や骨折等の可能性も否定できないという臨床的背景があったためです。

 

一般的な医学的理由としては、痛風の診断および類似病態との鑑別のみならず、炎症の重症度とその拡がりを確認する必要のためです。

 

検査目的:

軟部組織および骨皮質の微細な構造障害、炎症所見および尿酸ナトリウム塩の結晶沈着を観察する必要がありました。

 

検査方法:

体表部用のプローブ(7.5MHz)を用いて断層撮影法およびパワードプラー法を実施しました。

 

根拠となる医学的エビデンス:

パワードプラー法で病変部の炎症性の異常血流シグナルの有無を確認することにより、炎症の拡がりとパワードプラ―シグナルによるグレードを評価が可能になります。

 

骨病変の評価において超音波検査は単純エックス線よりすぐれていること、

Schuleller-Weidekamm C, Schueller G, Aringer M,et al:Impact of sonography in gouty arthritis:Comparison with convention radiology, clinical examination, and laboratory findings.Eur J Radiol 62:437-443,2007

 

また超音波検査は軟骨表面の尿酸塩結晶の検出に有用であること、

Thiele RG,Schlesinger N:Diagnosis of gout by ultrasound.Rheumatology(Oxford)46:1116-1121,2007

 

以上の記載は、高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版(編集:日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会)2010、によるものです。

 

結晶沈着所見の周囲あるいはごく近接した部位に炎症性変化や構造障害が描出されることで、痛風に起因する所見であることを強く推測することが可能です。

 

 

 

如何でしたでしょうか。

 

このように、当然の保険医療でさえ、このような負担を医療機関に求めてきているのです。

 

たとえ、表面的には悪意ではないとしても、実質的にはかなり厳しい医療の抑制の意図がにじみ出ていることを感じ取っていただけたでしょうか。

 

極論は避けたいところですが、保険医療の崩壊は既に始まっていると考えざるを得ないのが医療現場の実情です。

 

この現状に対して、どのような態度で取り組むべきなのでしょうか。

 

それには、国民が保険医療の見えない部分をしっかりと見据えたうえで、しかるべき意思表示と民主主義にのっとった行動を開始する必要があると思います。

 

皆様は、いかがお考えでしょうか。

 

心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。

 

それは日本心療内科学会のHPです

 

 心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。

 

Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックする、が表示されます。

と書かれています。

 

高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、

 

<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。 

 

 

「質問12」

生理前になるとイライラや不安になるのですが、心療内科で診ていただけますか?

 

「答え」

月経前に「気分が沈む」「不安になる」「足がむくむ」など、いつもとは違う心やからだの不調を感じている人は少なくありません。

 

これは月経前症候群(PMS)といって、軽いものまで含めると7~8割の女性が経験しているといわれています。

 

落ち込んだり、いらいらしたりといった心の症状から、乳房の張りや腰痛といった体の症状、集中力がなくなるといった行動面の症状まで、実にさまざまです。

 

重症の場合には、毎日の生活に支障をきたしたり、人間関係のトラブルを招くこともあります。

 

月経の開始と共に症状が軽くなったり、なくなったりすることから、周りの人には理解されにくいという状況となります。

 

PMSの原因は十分にわかっていませんが、女性ホルモンの周期的な変動が脳内の神経伝達物質に影響を与えて症状が引き起こされているのではないかいう説が有力です。

 

PMSに対処するには、毎日自分の心やからだの変化を表に書いて記録することが有効です。

 

このとき月経も記録しておきます。

 

PMSメモリーという一目でわかる形式のものがお勧めです。

 

月経の周期と症状の関係がわかって、はじめてPMSだと理解する人もいますし、わかっただけで症状が軽くなることもあります。

 

自分のからだのサイクルがわかれば、調子の悪い時期はしんどいことを避けることも可能になります。

 

スケジュールを詰め込みすぎたり、何もかも自分で解決しなければと考えたり、些細なことで自分を責めたりすることはできるだけ避けましょう。

 

さらに、ビタミン・ミネラルを十分に取り入れたバランスの良い食事に気をつけ、睡眠を十分にとり、運動も心がけることが大切です。

 

軽い症状なら以上述べたようなセルフケアだけでもずいぶん楽になりますが、これで不十分な場合は心療内科受診をお勧めします。

 

PMSは環境の変化や心理的ストレスで悪化する場合があります。

 

薬物療法を行ったり、医療者と共に問題を整理し対処法を考えていくことが症状の軽減に役立ちます。

 

(甲村弘子)

<参考文献>

甲村 弘子:月経前症候群(PMS)に関する知見. 女性心身医学 16:260-263,2012

 

 

<高円寺南診療所の見解>

甲村弘子先生の現職は、こうむら女性クリニックの院長とのことですが、先生は大阪大学医学部を御卒業後、大阪大学医学部産婦人科に入局され、ドイツ・マックスプランク研究所 にも留学されています。

 

また日本心身医学会の心身医療専門医とのことであり、月経前症候群(PMS)について解説されるには適任だと思われます。

今回から「氣」の働きについて学んでいきましょう。

 

 

身体を構成するものとして、氣(き)・血(けつ)・水(すい)というものがあります。その中でも「氣」は中心的な働きをしています。

 

 

今回は「氣の生成」(体の中でどのようにして氣を生み出していくか)と「氣の循環」について学んでいきましょう。

 

 

1.まず食べ物を消化して氣(水穀の精微(すいこくのせいび))を作り出します。

 

 

2.水穀の精微と呼吸によって吸い込まれた大気(清氣)によって氣が生み出されていきます。

 

 

3.そこで生まれた氣は肺に移り呼吸の力によって全身に運ばれます。

 

 

4.余分な氣は腎に貯められます。(夜間に睡眠を取ることが重要です。)

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

ここで掲載する内容は、一般社団法人日本アレルギー学会のホームページ<一般の皆さま>から引用したものです。

 

最後に高円寺南診療所からのメッセージを加えています。

 

 

食物アレルギー②

 

Q

食物アレルギーの原因となる食品はどんなものが多いですか?

 

A

原因となりやすい食品の順位は、頻度が高い食品から卵、乳製品、小麦、甲殻類(エビ、カニ)、果物類、そば、魚類、ピーナッツ、魚卵(いくら)、大豆、木の実の順です(図2)。

1102表1

 

 

また、年齢によって異なります。6歳までは鶏卵、乳製品、小麦が多く、その後は加齢とともにそば、甲殻類(エビ、カニ)、果物、魚介類などが増えます(表2)。欧米ではピーナッツが最も多い原因アレルゲンです。

1102表2

 

日本でもピーナッツアレルギーの患者さんが増える傾向にあります。

 

しかし、原因食品は個人個人で異なります。自分の原因の食品を明らかにして対応してください。

 

 

『食物アレルギーの診療の手引き2017』(食物アレルギー研究会)によると、その他重要事項として以下の記載があります。

 

 乳児・幼児早期の即時型食物アレルギーの主な原因である鶏卵、乳製品、小麦は、その後加齢とともに耐性を獲得する(3歳までに50%、学童まで80~90%)。  

池松かおり他. アレルギー 2006; 55: 533-41.   Ohtani K, et al. Allergol Int 2016; 65: 153-7.   Koike Y, et al. Int Arch Allergy Immunol 2018 in press

 

 学童から成人で新規発症する即時型の原因食物は甲殻類、小麦、果物、魚類、ソバ、ピーナッツが多く、耐性獲得の可能性は乳児発症に比べて低い。  

Skolnick HS, et al. J Allergy Clin Immunol 2001; 107: 367-74.

 

 魚類アレルギーと間違いやすいアレルゲンとしてアニサキス、小麦アレルギーと間違いやすい病態としてダニの経口摂取によるアナフィラキシー(oral mite anaphylaxis)などがあり注意を要する。

 

 

【高円寺南診療所からのメッセージ】

高円寺南診療所には、小児の受診は皆無ですので、20歳以上の方に限って、食物アレルギーの原因食物を改めてランキングしてみます。

 

1位:甲殻類(18%)、

2位:小麦(15%)、

3位:フルーツ類(13%)、

4位:魚類(11%)、

5位:そば(7%)

 

ただし、1位から5位までの総計でも64%であり、その他の原因食物が食物アレルギーの原因である割合は、大まかにいって3人に1人にのぼります。

 

他の原因食物と比べてフルーツ類は、見逃されやすいように思われます。その理由の一つは、フルーツが食物アレルギーの原因になるとは考えない方が多いからなのかもしれません。

 

食物アレルギーの特殊な型として最近注目されているものが口腔アレルギー症候群で、花粉・果物症候群とも呼ばれます。生の果物や野菜を食べた直後に口の中がイガイガしたり腫れたりするのが特徴で、アレルゲンが口の粘膜に触れて起こるアレルギー反応で軽症のケースが多いですが、ときに重症化してアナフィラキシーになることもあります。

 

花粉と似通った蛋白質を含む果物や野菜があるために、特定の花粉症の人では関連する特定の果物や野菜に反応(交差反応)することで起こります。

 

例えば、

・シラカバやハンノキの花粉

リンゴ、モモ、サクランボ、キウイ、マンゴー、イチゴ、大豆

 

・ヨモギやブタクサの花粉

メロン、スイカ、バナナ、セロリ

 

・スギの花粉

トマト等

 

なお、口腔アレルギーを起こす果物や野菜のアレルゲンは酵素や熱に弱いため、加熱調理すれば分解されて食べても大丈夫なこともあります。

 

またゴムの木由来の天然ゴムラテックスアレルギーの方は、よく似た構造の蛋白質を有するバナナ、アボガド、イチジク、キウイ、メロン、クリ等を食べると口腔アレルギーの様な症状を起こすことがあり、ラテックス・フルーツ症候群と呼ばれています。

 

但しクリのアレルゲンは加熱しても分解されないために注意が必要です。

 

 

問診や血液検査、皮膚テスト、食物除去試験、経口負荷試験などでアレルゲンを特定して避けることが大切です。

 

もし食物アレルギーが起これば医療機関の受診が必要です。

 

症状が軽度であれば抗ヒスタミン薬やステロイド薬などが使われますが、アナフィラキシーの状態になれば直ちに処置しないと命にかかわります。

 

アドレナリン自己注射薬のエピペンRが健康保険の適応になっていますので、アナフィラキシーの経験がある方は専門医やかかりつけ医を受診して携帯するようにしましょう。

ここで掲載する内容は、アステラス製薬提供の患者さん・ご家族の皆さまなるほど病気ガイドから引用したものです。

 

関節リウマチについてわかりやすい解説をしています。

 

HPで確認することができます。

 

関節リウマチは、免疫の異常により関節の腫れや痛みを生じ、それが続くと関節の変形をきたす病気です。

 

関節リウマチを治療することで、炎症や痛みを最小限に抑え、毎日の生活を快適にすることができます。

 

現在と将来の生活の質を保っていくためにも、病院・診療所を受診し、きちんと治療を受けましょう。

 

監修医:東邦大学医学部医学科 内科学講座膠原病学分野 川合 眞一 先生

 

 

解り易い解説であること、日本リウマチ学会では一般患者向けQ&Aが掲載されていないため、これを採り上げました。

 

ただし、記述内容が古いままで改訂されていないため、それぞれのQ&Aのあとに【高円寺南診療所からのコメント】を加えました。

 

 

関節リウマチ患者の将来について②

 

Q

関節リウマチは、治らない病気なのですか?

 

一生治療を続けなければならないのですか?

 

A

もともと、関節リウマチの患者さんの10~30%は、自然に症状のない状態(寛解)になると言われていました。それが、治療法の進歩により、寛解になる患者さんがさらに増えてきています。

 

関節リウマチは、以前でも10%から30%の患者さんでは寛解が進んで治ったともいえる状態になると言われていました。しかし、最近では治療法の進歩により、まず薬を使いながら寛解を続けられる方が加わってきました。さらに、薬を止めても寛解が続く患者さんの率も確実に増えてきています。

 

従って、薬を使って寛解の状態が何年も続いていれば、主治医と相談して服薬をやめて様子をみることもできます。ただし、その場合は残念ながら再燃する患者さんもいらっしゃいますので、まずは症状のない状態を続けられるよう、しっかりと治療を続けていくことが大切です。

 

 

【高円寺南診療所からのコメント】

 

質問1)

関節リウマチは、治らない病気か?

 

 

これは、“治る”という言葉がどのような意味で使われているかによって答えが違ってきます。

 

まず、関節リウマチは治療によって“治る”という言葉を専門医は滅多に使いません。そのかわりに“寛解”という言葉を頻繁に使います。

 

そして、この“寛解”自体にも複数の種類があります。

 

 

関節リウマチの治療目標は、患者さんの生命予後(寿命の確保)とQOL(生活の質)を含めた長期予後を改善することとされます。

 

とくに関節リウマチに関連する臨床症状がみられず、関節リウマチによる関節破壊などの臓器障害や身体機能障害のリスクがほとんどないと考えられる状態を臨床的寛解とよびます。

 

もしリウマチ専門医が“治った”という言葉を使ったとしたら、それは、その患者さんが少なくとも「機能的寛解」(身体機能の低下のない状態)もしくは、「臨床的寛解」に至っている場合だろうと思われます。

 

その割合は、日常診療でも関節リウマチ患者の約6割が臨床的寛解に到達し、実際に、この臨床的寛解を現実的な目標としています。

 

臨床的寛解のなかでも高感度画像検査で滑膜炎を認めず、X線検査で関節破壊の進行が停止していることの裏付けがあれば、完全寛解(真の寛解)と見なされます。

 

これが、10ないし30%程度は期待できます。さらに抗リウマチ薬を使用しなくても、再発や再燃をせずに済む状態に到達できる場合もあります。これが、10%程度は期待できます。

 

そもそも関節リウマチ治療には4本柱があります。

 

それは患者教育、薬物治療、リハビリテーション、手術療法があります。

 

高円寺南診療所では、早期発見・早期治療例が多数であり、患者教育とリハビリテーション(鍼灸治療、水氣道)に力をいれているためか、およそ25%程度は“治る”といえそうです。

 

 

質問2)

関節リウマチは、一生治療を続けなければならないのか?

 

 

これも“治療”の意味する内容によって違った答えになります。

 

関節リウマチ治療の4本柱のうち、まず手術療法が一生続くというのは、最近では滅多にありません。

 

次に薬物療法ですが、少なくとも10%程度はお薬が不要になります。

 

そこで、残る2つの柱である患者教育、リハビリテーションについては、ある意味で一生続けるべきであると考えます。

 

ある意味、というのは、治療を“養生と鍛錬”という言葉に置き換えた場合です。

 

これは、超高齢社会を迎えた現在、フレイルやロコモ対策は、関節リウマチに限らず、全ての人にとって一生心がけるべき課題ではないでしょうか。

 

つまり、関節リウマチの患者さんが特別ではないということになります。

 

生涯エクササイズとして開発してきた水氣道は、“養生であると同時に鍛錬”であり、患者教育も併せ行っています。ですから、水氣道は関節リウマチのリハビリテーションに適しているばかりでなく、フレイルやロコモ対策にも通じています。

 

なお治療目標の達成には、早期診断と早期治療、短期的目標である臨床的寛解に到達するための疾患活動性の評価とそれによる治療の適正化が重要です。

 

病初期より、定期的に罹患関節および関節リウマチにおける高頻度罹患関節の単純エックス線画像を残し、比較読影により関節破壊の進行を把握しておくことはとても有益です。

 

エックス線検査は、関節リウマチの治療モニタリングに有用ですが、滑膜炎の活動性の乏しい状態である「臨床的寛解」と、それにより達成される身体機能の低下のない状態「機能的寛解」の維持が大きな目標となります。

 

また、単純エックス線上の関節破壊所見の程度が、身体機能の低下をよく反映することが知られています。つまり、単純エックス線上の関節破壊が進まない状態「構造的寛解」を維持することにより「機能的寛解」が維持される可能性が高いということです。

 

なお、近年、超音波検査(関節エコー)は、核磁気共鳴画像(MRI)とともに関節疾患の画像診断のスタンダードになりつつあります。

 

高円寺南診療所においては、この関節エコーがとても重宝しています。

 

関節エコ―のドプラー法は、単純エックス線検査では評価が困難である軟部組織の炎症を評価できるため、関節リウマチに特有な滑膜炎を検出することができるからです。

 

手は感染伝搬の媒体であるというヒト感染に関する新たな対照研究

 

<鼻をほじくるのはなぜ良くないことなのか>

 

鼻をほじくると自分自身だけでなく周囲の人の健康にも悪影響があることが、英リバプール熱帯医学研究所のVictoria Connor氏らによって報告されました。

 

European Respiratory Journal1010日オンライン版。

 

 

背景:肺炎球菌は、咳やくしゃみなどで飛び散る飛沫(しぶき)を介して感染することが知られています。しかし肺炎球菌の感染がどのように広がるのかについては、現時点まで明らかになっていませんでした。そこで著者らは地域における肺炎球菌の感染経路を明らかにするための研究を実施しました。

 

 

対象:1845歳の健康な男女40

 

 

方法:分類比較試験(4分類)

 

1)肺炎球菌を加えた水で濡らした手を鼻に近づけて吸い込む

wet sniff群”

 

2)肺炎球菌を乾いた状態で手の甲に付着させて鼻で吸い込む

dry sniff群”

 

3)肺炎球菌を加えた水で濡らした指で鼻をほじくる

wet poke群”

 

4)肺炎球菌を乾いた状態で指に付着させて鼻をほじくる

dry poke群”

 

 

結果:鼻をほじくったり、こすったりすると肺炎球菌が拡散する可能性があります。

 

その結果、全ての群で、肺炎球菌は手から鼻へと容易に感染することが明らかになりました。また、最も感染しやすいのは肺炎球菌を加えた水で濡らした2つのwet群でした。すなわち、肺炎球菌を加えた水で濡らしたに鼻を近づけて吸い込むwet sniff群と、肺炎球菌を加えた水で濡らした指で鼻をほじるwet poke群でした。

 

 

考察:乾燥した環境では細菌が死滅しやすいことが要因である可能性があります。「肺炎球菌は世界の死亡の主な要因となっており、年間で130万人もの5歳未満の小児がこの細菌によって命を落としている」。また、高齢者や免疫力が低下した慢性疾患を有する患者なども肺炎球菌の感染リスクが高い。ただし、細菌の存在によって子どもの免疫系が増強され、その後の感染リスクが低下する場合もあるため「鼻をほじくることは悪いことだけではないかもしれない」

 

 

結論:鼻と手が接触するだけでも肺炎細菌が簡単に広がることの初めての報告。子どものおもちゃを清潔に保つことは、手指の衛生に加えて幼い子どもたちを肺炎球菌の感染から守り、学校などでの集団感染や高齢の家族への拡散を防げる可能性があります。

 

 

原著論文:

Connor V, et al. Eur Respir J. 2018 Oct 10. [Epub ahead of print]

Hands are vehicles for transmission of in novel controlled human infection study.

 

JournalThe European respiratory journal. 2018 Oct;52(4); pii: 1800599.

 

AuthorsVictoria Connor, Esther German, Sherin Pojar, Elena Mitsi, Caroline Hales, Elissavet Nikolaou, Angela Hyder-Wright, Hugh Adler, Seher Zaidi, Helen Hill, Simon P Jochems, Hassan Burhan, Neil French, Timothy Tobery, Jamie Rylance, Daniela M Ferreira

 

 

Dr. Iijimaによるコメント

 肺炎球菌を使用した人体実験を企画した研究者の勇気もさることながら、男女40人のボランティアの決断力・実行力を考えると、日本の医療研究分化とはまるで別世界のような気がしました。

 

たとえこのような研究企画のアイディアが浮かんでも、高円寺南診療所では絶対に実行できない研究です。

 

 

細菌性肺炎の原因となる肺炎球菌感染症の予防のためには、手指の衛生が大切であることは以前から指摘されてきました。

 

この研究では、鼻をほじくることによる肺炎球菌感染のリスク増加を証明しています。

 

 

手洗いをすることは大切ですが、乾燥した環境では細菌が死滅しやすいので、手洗いをした後の手を濡れたままにしないで、速やかに乾燥させることも、患者指導の上で、見逃してはならない大切な視点であると思います。

 

 心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。

 

それは日本心療内科学会のHPです。

 

 心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。

 

Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックする、が表示されます。

 

と書かれています。

 

高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、

 

<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。

 

 

CQ

「質問11」糖尿病ですが、摂食障害を併発しました。

 

どのような治療を受けたらいいでしょうか

 

A

糖尿病だけでもご負担が大きいと思われますが、さらに、摂食障害も併発されたとのこと、大変ご苦労されていると拝察します。

 

糖尿病に摂食障害を併発した場合の治療に関しましては、まだ確立されたものはございませんが、糖尿病の担当医に加え、栄養士、看護師、さらには、心療内科医や精神科医を含めた多職種によるチームによるケアが重要であるとされています。

 

糖尿病の治療に関しましては、最初から完璧なコントロールを目指すのではなく、通常よりも高めの目標をまず定め、段階的にクリアしていく方法が勧められています。

 

これは、低血糖が生じる危険を低くするというメリットもあります。

 

また、インスリンを用いている方の場合には、低血糖による空腹感から過食につながることを避けるために、低血糖を起こしにくいインスリンポンプを使用することもありますし、グルコースタブレットの使用など、過食につながりにくい低血糖時の補食も勧められていますので、糖尿病の担当の医師とよく相談されるのがよいと思います。

 

そして、摂食障害の治療に関しましては、心療内科医や精神科医などの専門の医師の治療を受けられるのがよいと思います。

 

その場合も、医療者間のコミュニケーションが重要ですので、可能なら同一医療機関で受診されるのが望ましいと思われますが、難しい場合でも情報が共有できるよう、糖尿病と摂食障害の状態の記録をどちらを受診する際にもお持ちいただくのがよいと思います。

 

(吉内一浩)

 

 

<高円寺南診療所の見解>

吉内一浩先生は、現在、東大大学院医学系研究科・ストレス防御・心身医学分野の准教授です。吉内が大学院生だった頃に、今は無き東大分院の心療内科で、私は当時の教授であった久保木富房先生に心療内科の手ほどきを受けました。心療内科で用いるテストバッテリーの使い方や、パニック障害をはじめとする不安障害について、有意義な研鑽を積むことができました。摂食障害もまたその頃からの主要テーマの一つで、私も幾つかの学会発表をする際に、同じく大学院生であった中尾睦宏先生(現在、帝京大学医学部教授/心療内科・公衆衛生学)をはじめとする東大心療内科の若手の先生方のお世話になりました。

 

さて、糖尿病に摂食障害を併発した患者さんは、高円寺南診療所にも通院されています。全例が摂食障害のなかでも、神経性過食症に分類されるケースです。いずれにせよ糖尿病に摂食障害を併発した場合の治療は未確立なため、教科書的なマニュアル医療では到底対応しきれません。つまり、一人一人の背景を理解し把握した上で、より適切な治療方針を工夫していかざるを得ないということになります。高円寺南診療所では、生活習慣の記録による行動療法、認知行動療法の他に水氣道という強力な治療ツールをフルに活用しています。

 

吉内先生も指摘されているとおり、

<糖尿病の担当医に加え、栄養士、看護師、さらには、心療内科医や精神科医を含めた多職種によるチームによるケアが重要である>

ことに相違はありませんが、船頭が多くても船は山に登ってしまいがちです。やはり、優秀なリーダーの存在と積極的な関与が不可欠だと思います。

 

ところで、吉内先生は、説明の都合上だとは思われますが、糖尿病の治療と摂食障害の治療を分けてコメントされています。しかし、吉内先生のアドバイスの最も大切なポイントは、

<医療者間のコミュニケーションが重要ですので、可能なら同一医療機関で受診されるのが望ましい。>

ということに集約されていると思います。

 

なお、やむを得ない場合であれば

<情報が共有できるよう、糖尿病と摂食障害の状態の記録は、どちらを受診する際にもお持ちいただくのがよい>

とのご意見ですが、その場合は糖尿病管理の担当医が、どれだけ摂食障害患者を理解できるか、また、摂食障害管理の担当医が、どれだけ糖尿病を理解できるか、ということが重要になってきます。実情は、とても厳しい、というのが永年の経験の蓄積による私の印象です。

 

 

自らが心療内科指導医・専門医である吉内先生は、都内においても心療内科専門医は高々27人しかいないことを当然ご存じです。そこで、摂食障害の治療に関して、現実的な見地から、あえて心療内科専門医とは書かれずに

<心療内科医や精神科医などの専門の医師の治療を受けられるのがよい>

とされているのだと推測されます。ただし、内科診療をあまり経験されていない一般の精神科の先生に糖尿病の治療との兼ね合いを理解していただくということは、あまり期待できることではありません。

 

やはり、心療内科専門医は、内科医としての研修歴があるため糖尿病合併過食症の診療に携わる機会も多いのではないかと思います。ただし、インスリン使用者や透析を導入しているケースでは、やはり糖尿病専門医や腎臓透析の専門医との連携を考慮すべきだと思います。

 

 

糖尿病は、インスリンの作用不足によって起こる糖質を中心とした代謝障害です。ただし、その発症や経過に心理社会的因子が関与している心身症と見られる症例もあります。

 

また、神経症的な性格傾向をもつ症例もあり、抑うつとの関連が認められています。

 

過食症を合併していれば、なおさら心身症として、心身医学的アプローチを進めていくことが求められることが多いことでしょう。むしろ糖尿病それ自体が慢性病として長期にわたる心身両面でのコントロールを必要とする疾患であるという基本認識をもつことが大切だと思います。

 

<(糖尿病の)治療に関しては、通常よりも高めの目標をまず定め、段階的にクリアしていく方法が勧められています。>

と吉内先生は解説されていますが、いささか意味不明です。

 

<通常より高めの目標>設定と表記すると、血糖値その他のコントロールをより厳格にする、と誤解される可能性があると思われるからです。

 

<高めの目標を定める>、とは、この場合、空腹時もしくは随時血糖値あるいはヘモグロビンA1cの目標値であると理解すれば、たしかに低血糖が生じる危険を低くするというメリットがあります。

 

たしかに治療目標のハードルを低くしておくと、達成率が高まります。スモール・ステップ・アップ方式といって、この方法でサポートすると、患者さんが段階的に小目標をクリアしやすくなり、成功体験を重ねることにより、自己効力感を高めることができます。

 

この経験が糖尿病のみならず過食症のコントロールのためにとても大きな役割を発揮しています。