最新の臨床医学 11月10日(土)漢方治療についてのQ&A

漢方治療に関しては慶應義塾大学医学部漢方医学センターの漢方Q&Aは比較的上手にまとめられているので独自のコメントを付して紹介して参りました。

 

これに引き続き、富山県立中央病院 内科和漢・リウマチ科-Q&Aをご紹介いたします。

 

 

そこでも、高円寺南診療所の立場から、

<高円寺南診療所からのメッセージ>

を加えてご紹介を試みることにしました。

 

 

Q1.

和漢薬とか漢方薬とかよく聞きますが、どのようなものですか?

 

A1

薬効のある天然物を簡単に加工(乾燥や粉砕)したものを生薬(しょうやく)と言い、植物(草根木皮)をはじめ動物や鉱物からも製造されます。

 

ジギタリスはヨーロッパ生薬から抽出されたものですし、エフェドリンは麻黄(まおう)という生薬から、サリチル酸が楊の枝に由来することはよく知られています。

 

中国で使用されている生薬を漢薬といい日本固有の生薬を和薬と呼んで両者をまとめて「和漢薬」としています。

 

こういった和漢薬をいくつか組み合わせたものが「漢方薬」です。

 

ただしその組み合わせは決してデタラメなものではなく、漢方医学で決められた配合によって、それぞれ一定量が調和されています。

 

たとえば「葛根湯(かっこんとう)」という漢方薬は、葛根、麻黄、桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草の7つの生薬(和漢薬)で構成されています。

 

 

ところで「民間薬」との違いは何でしょうか。民間薬というのは伝承によって使用されてきた生薬を意味し、専ら単味で用いられるのが特徴です。

 

たとえば、ドクダミやゲンノショウコ、センブリなどです。

 

これに対して漢方薬は単独ではなく、複数の生薬を決められた割合で、組み合わせて使用します。

 

 

<高円寺南診療所からのメッセージ>

生薬と漢薬、漢薬と和薬の違い、漢薬と和薬を併せて「和漢薬」とよぶことなど、さすが薬のメッカの富山の病院の解説は切れ味が良いと感じました。

 

また、「和漢薬」は「民間薬」とはどのように異なるのか、ポイントが明らかにされました。

 

さて、ここで少しだけツッコミを入れておきます。和漢薬をいくつか組み合わせたものが「漢方薬」であると説明されていますが、厳密には正しくないです。

 

たとえば、甘草湯(かんぞうとう)という漢方薬は甘草のみ、つまり構成生薬は単味ですが民間薬ではなく、れっきとした漢方薬です。

 

激しい咳、咽喉痛の寛解を目的に医師が処方すれば、保険も効きますし、実際に良く効きます。

 

連用すれば、アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症など偽アルドステロン症をもたらしますが、急性期のみの使用であれば問題はありません。

 

紛らわしいものとしては、紅参末(こうじんまつ)、附子末(ぶしまつ)、これらも単味の生薬ですが、多くの場合他の漢方薬に加味して用いられることが多いです。

 

紅参末とはいわゆる朝鮮人参ですが、独参湯(どくじんとう)といってオタネニンジン一味だけの漢方薬が有名です。

 

なお、ヨクイニンエキスも薏以仁(ヨクイニン)の単味の漢方薬で、青年性扁平疣贅、尋常性疣贅など、イボの治療に用いられ、保険での処方が可能です。