再発予防策❸ 非心原性脳梗塞

 

この10年の間の脳卒中に関する医学の進歩は目覚ましいです。脳梗塞の臨床病型には、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、その他の原因で生じるその他の脳梗塞があります。

その他の原因とは、奇異性塞栓症、動脈解離、本態性血小板血症ならびに可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)など、脳梗塞の新たな原因として明らかにされてきました。

それでも、心原性脳塞栓症を除く、これら種々の臨床病型は非心原性脳梗塞として一括りに論じられています。また、最近、塞栓性と考えられるが塞栓源不明な脳塞栓症(ESUS)という新しい概念が提唱されています。

 

非心原性脳梗塞については、急性期以降の再発予防として、抗血小板薬(アスピリン、クロピトグレル、シロスタゾール、チクロピジン)が強く推奨されています。

とくに、シロスタゾール(プレタール®)を含めた2剤併用が再発リスクの高い患者に長期間にわたって有効であることが示されています。

 

シロスタゾールの使い方としては、❶ 慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛及び冷感などの虚血性諸症状の改善、❷ 非心原性脳梗塞発症後の再発抑制、の際に適応となります。

ただし、出血、うっ血性心不全、妊婦には禁忌とされます。また、脈拍数増加、狭心症発現があるので、胸痛などの狭心症症状の問診を行なうべきことが警告されています。

その他、高血圧持続患者へは慎重投与、冠動脈狭窄を合併する患者で過度の頻脈数増加が現れた場合には適切な処置を行う旨の注意がなされています。

 

 

杉並国際クリニックでの臨床応用

読者の皆様は、すでにお気づきかもしれませんが、この領域の医学は、有能でかつ勤勉な現場の医師が日々研鑽を積んでも追いつくことが難しくなりつつある領域の一つです。

 

模範解答を限られた時間と報酬で、複雑でめまぐるしく変化する情報をアップ・ツー・デートに収集し、分析し、回答を提出することには限界が来ています。

 

AIとの共存の中で、精密な将来軌跡を予見すること(iPOP)に基づかなければ精密な健康管理は実現できません。

いわゆる生涯にわたる個人ごとのビッグデータをモニタリングして、互いにそれをシェアリングによりはじめて実現することになります。

 

我が国は、世界一の長寿国となって約20年が経過しましました。これは水氣道®の歴史とほぼ軌を一にします。そして、2019年には、高齢化率が28.4%となり、75歳以上の高齢者の割合も指標となる14%を超え、超高齢社会になりました。

これから増加するのは、75歳以上の高齢者、特に85歳以上の高齢者の人口比率です。

そして、いずれ85歳以上の高齢者が人口の1割を占め、人生100年時代が到来すると予想されています。

 

高齢化率が28%を超え、超・超高齢社会に突入し、100年後、100歳を超える人が半数に達する未来が実現すると見込まれています。

ユヴァル・ノア・ハラリは、2018年の「ホモ・デウス テクノロジーとサイエンスの未来」という講演で、「前例のない水準の繁栄と健康と平和を確保した人類は、次に不死と神性を標的とする可能性が高い」としています。

 

しかし、地球の温暖化や自然環境の破壊、新たな病原体や薬剤耐性を獲得した既存の病原体の出現によって、絶えず人類は生命の危機に脅かされています。

そのような現実の中にあっても、なかなか死ねなくなった人類が、死ぬまで幸福でいる(「幸福寿命」の延長)のためには、どのような対策をたてたらよいでしょうか。

 

それは死ぬまで、社会に対して、何らかの形で「働きかける」ことができる心身の活力を保持する方略が必要です。

医学的に言えば、心身医学と老年医学の発展と普及が求められますが、心身医学と老年医学を統合するならば、≪老年心身医学≫という専門分野の確立が必要になるのではないでしょうか。

この老年心身医学を医療として有効に生かすためには、老年期に入る前からの早期からの準備が肝要であるということです。

皆様の水氣道®や聖楽療法へのご興味とご関心、そして実際にご参加いただくことによって、私どもの全人的健康開発法の発展と普及が望まれる次第です。

来月『リウマチ専門医』の資格を更新します。

 

本日、一般社団法人日本リウマチ学会から、リウマチ専門医の認定書が届きました。

 

riumati

 


1998年3月1日にリウマチ専門医の資格を取得して以来、5回目の資格更新です。
認定期間は2020年3月1日から2025年2月28日までです。

 

『リウマチ専門医』は、厚生労働省が承認した「広告可能な専門医」の一つです。
英文表記:JCR-board certified rheumatologist


リウマチ科は、決して難しい難病や珍しい病気ばかりを扱っているわけではなく、増え続けつつある国民病の診療にも力を入れている診療科です。

ですから、東京都では約660名のリウマチ専門医が活躍しても、まだ足りません。

 

 

リウマチ科とは?

リウマチ科では、関節リウマチ(全国で70万人程度)をはじめとする膠原病(全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、ベーチェット病、混合性結合組織病、掌蹠膿疱症性関節炎、抗リン脂質抗体症候群、血清反応陰性脊椎炎など)、骨粗鬆症(全国で1300万人以上)、変形性関節症(全国で3000万人程度)、痛風(全国で110万人以上)などの診療を担当します。

 

また、全国で200万人にものぼる線維筋痛症は、本来であればリウマチ専門医を中心に積極的に受け入れるべき疾患であると考えます。

 

しかし、実際には国際的にみても、リウマチ専門医の苦手意識は根強く、ほとんどの患者さんは受け入れを拒否されているのが現状です。

 

線維筋痛症は、決して難病ではなく、心身医学・東洋医学・リハビリテーション医学などに精通したエキスパートであれば対応な疾患です。

 

杉並国際クリニックは、水氣道®や聖楽療法などの独自の心身医学療法を開発し、有意義な診療経験を重ねています。

 

このように、リウマチ科は、特殊な病気のみを扱う難病診療科ではなく、増え続けつつある日常的な国民病の診療にも力を入れている身近な診療科なのです。

 

 

 

リウマチ専門医とは?

たとえば関節リウマチを例に挙げてみるならば、関節リウマチという名称からイメージされがちですが、症状は関節だけではなく全身にあらわれ、また患者さん一人ひとりによっても、症状のあらわれ方は異なります。

 

そのような病気を診る医師には、専門的な知識と経験が求められます。

そこで、日本リウマチ学会では、リウマチ専門医の育成をしています。

学会では、受験資格を定め、その資格を有した医師がリウマチ専門医の試験に臨みます。その試験に合格して、リウマチ専門医と認定されます。

 

リウマチの専門医には、「日本リウマチ学会認定リウマチ専門医」の他に「日本整形外科学会認定リウマチ医」があります。
 

 

また、日本リウマチ財団は、リウマチ性疾患の征圧を目指して設立された団体で、いくつかの条件を満たした医師を日本リウマチ財団登録医として登録する制度を設けています。こちらからは、日本リウマチ財団に登録された医師のいる施設を検索することが可能です。

 

 

◎「杉並国際クリニック」が正しく掲載されているサイト3件

 

 日本リウマチ財団HP

日本リウマチ財団登録医が勤務する医療機関一覧

 

 

 東京都医療機関案内サービスひまわり(東京都福祉保健局)

杉並区の「リウマチ科」を診察する病院・クリニック

 

 

 Q Life リウマチ専門医のいる杉並区(東京都)の病院一覧

リウマチ専門医のいる杉並区(東京都)の病院(10件)

 

 

▲ 旧名称:高円寺南診療所のまま掲載されていたサイト4件

⇒「杉並国際クリニック」との訂正を御願いしました。

 

 病院なび



杉並区・リウマチ科/膠原病内科 - 病院・医院・薬局情報病院・医院・薬局 22件

 

 

 ドクターズファイル

杉並区のリウマチ科のクリニック・病院19件

 

 

 Caloo(カルー)

杉並区のリウマチ科の病院・クリニック 18件

 

 

 お医者さんガイド



東京都 杉並区のリウマチ科の病院とクリニック22件

再発予防策❷ 心原性脳塞栓症

 

心原性脳塞栓症

非弁膜症性心房細動(NVAF)患者への脳卒中再発防止

クマリン系抗凝固薬ワルファリン(ワーファリン®)が強く推奨されています。

ただし、ワルファリン投与中に大出血を来すことがあり、その場合にはプロトロンビン複合体(ケイセントラ®)の使用を考慮します。そのためワルファリンの使用に当たっては血中濃度モニタリングが必要で、また他の薬物やビタミンKを含む食品など食物との相互作用が多いため使いにくい側面があります。

標準化プロトロンビン時間(PT-INR)を2~3、70歳以上では1.6~2.6にコントロールします。

 

なおNVAF患者では虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症が懸念されますが、これらの発症抑制のためにDOACが適応になりました。

これらは血中濃度モニタリングの必要がなく、また薬物や食物との相互作用が少ないため使いやすい薬剤です。

 

・トロンビン阻害薬ダビガトラン(プラザキサ®)

 

・直接Xa阻害薬リバーロキサン(イグザレクト®)、アビキサバン(エリキュース®)、エドキサバン(リクシアナ®)

 

 

杉並国際クリニックでの臨床応用

非弁膜症性心房細動(NVAF)による心原性脳塞栓症の再発予防のためには、ワルファリンより出血性合併症の少ないDOACを考慮します。また出血の危険度の高い処置が予定されている場合は、ヘパリンではなくDOACへの置き換えを考慮します。ただし、処置当日のみはDOAC内服は中止とします。

再発予防策❶

 

脳卒中の再発予防には、1)高血圧、2)糖尿病、3)脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の管理が重要ですが、その管理を成功させる前提条件は、禁煙、節酒などの生活習慣の改善にかかっています。

 

1) 高血圧
脳卒中罹患患者では、血圧管理の目標を140/90㎜Hg未満とします。ただし、脳出血・くも膜下出血・ラクナ梗塞の患者さんや抗血栓薬を服用している患者さんでは130/80㎜Hgとさらに低い目標設定が可能であれば、それを目指します。

推奨される降圧薬は、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、少量の利尿薬です。

 

2) 糖尿病
血糖のコントロールが基本です。しかし、血糖コントロール単独ではなく、1)血圧管理、3)脂質管理が不可欠です。

脳卒中再発予防のためには糖尿病治療薬のなかでもピオグリダゾン(アクトス®)が有効です。

 

3) 脂質異常症

脂質異常症のなかでも高コレステロール血症(総コレステロールやLDLコレステロールが高い場合)は、スタチンが推奨されています。

スタチンは血清脂質改善作用ばかりでなく、抗酸化作用、抗炎症作用、内皮機能改善作用などがあり、動脈硬化巣の退縮あるいは安定化作用があります。

スタチン抵抗性高コレステロール血症では、PCSK9阻害薬エボロクマブ(レバーサ®)、ありロクマブ(プラルエント®)が検討されていますが、脳梗塞患者における有用性は確立されていません。

 


杉並国際クリニックでの臨床応用

脳卒中の再発予防法について学んでおくと、脳卒中の一次予防の大切さがより良く理解できると思います。

当クリニックでは、肥満の分類・メタボリックシンドローム評価からはじめることが多く、上記の1)高血圧、2)糖尿病、3)脂質異常症についても、それぞれ具体的なフォーマットを完備し、患者の皆様にも、個々の状況に応じた簡易な生活行動記録表を作成していただいております。

上記の他にも慢性腎臓病(糖尿病性腎臓病用は、別建て)、高尿酸血症・痛風、心不全、骨粗鬆症、関節リウマチなどを整備し、改訂も行っております。

 

脳卒中の予防のための高血圧管理の成績はほとんどの皆様が良好ですが、糖尿病の管理については、必ずしも徹底できていないため、更なる工夫と努力を要するところです。

 

そこで、脳卒中の再発防止に有効な糖尿病治療薬ピオグリダゾン(アクトス®)の当クリニックでの使用法について説明します。この薬剤の特性は、動脈硬化リスク因子を改善させるメリットにあります。

ただし、体重増加や体液貯留のリスクもあります。

この薬剤が使用できる条件は、2型糖尿病に限定されます。ただし、2型糖尿病であれ ば処方できるのかというと、そうではなく、以下の場合に限ります。
  

❶ 食事・運動療法のみ、または加えて一定の糖尿病治療薬(SU類・αGI・BG類)で効果不十分な場合
  

❷ 食事・運動療法に加えてインスリン投与で効果不十分な場合

  

それから薬剤の処方においては禁忌を確認しておく必要があります。この薬剤は、心不全、重症ケトーシス、糖尿病性昏睡・前昏睡、重篤な肝・腎障害、重症感染症、手術前後、重篤な外傷、妊婦、が禁忌とされます。

ですから、心不全発症の恐れのある心筋梗塞、狭心症、心筋症、高血圧性心疾患などの心疾患のある方には慎重に使用しなければなりません。

他に1型糖尿病も禁忌の一項目ですが、適応が2型糖尿病であるので、糖尿病の正しい診断が鍵となります。また、膀胱癌治療中の患者にも投与を避けるべきとの注意があります。

  

食事療法・運動療法では効果が十分ではなく、インスリン抵抗性が推定される2型糖尿病が良い適応となる他、他の糖尿病治療薬でコントロールが十分でなく、インスリン抵抗性があると思われる例も適応となります。
  

<食事療法・運動療法では効果が十分ではなく>とありますが、実際には、効果が十分でないのではなく、十分に実施していないことがほとんどなので、やむなく薬物療法に踏み切らざるを得ないのです。

とくに水氣道®は、多くの糖尿病患者さんのための生涯エクササイズとして理想的なのですが、なかなかご参加いただけていないのが残念です。水氣道は内臓脂肪蓄積量を減少させることによってインスリン抵抗性を低下させる効果があります。
  

<インスリン抵抗性が推定される>とは、どのような目安での推定なのでしょうか?

実際にはBMI≧25㎏/m²、空腹時血中インスリン≧10μU/mL、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)≧2.5などの指標を参考にします。

このデータは、75g糖負荷試験を実施することで得ることができます。

杉並国際クリニックでは、この試験のための指針を作成して、診療フォーマットに基づき着々と症例を重ねています。
  

そして、アクトス®を処方するためには、予め一定の糖尿病治療薬(SU類・αGI・BG類)のいずれかが使用されていることが前提ですが、当クリニックでは近年SU類の処方は減少しています。

その理由は、スルフォニル尿素(SU)類で血糖コントロールが不十分である場合に追加薬としてアクトス®を併用すると低血糖を起こすことがあるからです。

とくに脳卒中後遺症がある糖尿病患者には低血糖に至ることはとても危険です。そのため、当院では、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI:ベイスン®、グルコバイ®、セイブル®)もしくはビグアナイド(BG:メトグルコ®、グリコラン®、ジべトス®)類を選択することが増えています。
  

またアクトス®は、妊婦で禁忌とされるだけでなく、女性には使いにくい側面があります。それは水・ナトリウムの貯留作用があるために、しばしば体重が増加し、女性ではそれが顕著となり易いからです。

むくみ(浮腫)が強い場合にはフロセミド(ラシックス®)などのループ利尿薬を用います。

その場合でも水中有酸素運動である水氣道®を継続している方に限れば、利尿剤なしでも体重増加もなく、浮腫も発生せず、ナトリウム貯留による血圧上昇も見られません。

水氣道®は水中での水圧による自然な加圧トレーニングであり、水深に比例して水圧が高くなるため、下半身のむくみが改善しやすいというメカニズムを有効に活用できるメリットは大きいと思います。
  

後遺症に対する治療

 

脳卒中の慢性期(慢性期脳卒中)の治療においては、脳卒中後遺症に対する治療、再発予防対策が中心となります。後遺症のうち、運動麻痺、失語症などの神経症状は主にリハビリテーションが中心となります。

 

これらの脳卒中後遺症に対する治療について 原則として脳循環・代謝改善薬の中から適切な処方薬を選択していきます。

ただし、これらは概して即効性はなく、通常では使用開始後2週間を経た頃から効果が出現し、4~8週頃に明確になってきます。

そこで、重度の副作用がない限り、4~8週をめどに継続投与して効果を判定することになります。

逆に、8週投与しても効果が無ければ他薬に切り替えます。いずれも漫然と長期連用せず、途中で休薬して症候の動きをみることが重要とされます。

 

脳循環・代謝改善薬の中には多少なりとも抗血小板作用をもち、単剤で脳梗塞再発防止も示されているものがあります。

ただし、頭蓋内出血後止血が完成していないと考えられる患者には禁忌です。こうした薬剤の中から、臨床症状を勘案してより適切な選択をすることができます。

 

たとえば頭痛めまいなどの自覚症状の改善のためには、脳循環改善薬が有効です。特に脳梗塞後のめまいにはイブジラスト(ケタス®)、イフェンプロジール(セロクラール®)が推奨されています。

そして脳梗塞後の意欲低下には脳代謝改善薬ニセルゴリン(サアミオン®)が有効です。

 

また脳代謝改善薬としてアマンタジン(シンメトレル®)は脳血管障害慢性期の意欲・自発性低下に有効であり、作用発現も比較的早いとされます。ただし、アマンタジンは催奇形性があります。

妊婦、授乳婦、透析を必要とする重篤な腎障害例では禁忌です。

また、てんかん・既往歴・痙攣素因では発作を誘発または悪化させるとの報告があります。そして、自殺傾向患者、精神障害者または中枢神経系作用薬投与中では慎重投与とされます。

 

一方、高齢者では幻覚が出やすいので維持量を低く保つ必要があります。禁忌例ではなくとも、起立性低血圧を起こしやすく、めまい、ふらつき、立ちくらみ、霧視が生じることがあるため危険作業をしないよう指導します。

さらに急激な減薬、中止による悪性症候群(高熱、錐体外路症状、意識障害、筋組織酵素CK上昇など)の出現に注意します。

 

そして脳卒中後にはしばしばうつ状態になりますが、その場合には抗うつ薬の投与が推奨されています。

 

 

杉並国際クリニックでの臨床応用 

イブジラスト(ケタス®は、二つの顔を持っています。

最初の顔は、脳循環改善薬としてのものです。薬理学的にはピラゾロピリジン誘導体であり、脳血流増加に伴う脳循環改善作用をもちます。脳梗塞後遺症に伴う慢性循環障害によるめまいの改善に用います。

 

また、この薬剤の二つ目の顔は、抗アレルギー薬であるメディエーター遊離抑制薬として使用されることもあります。そのため気管支喘息に対しても保険適用があります。

 

メディエーター遊離抑制薬とは、マスト細胞(肥満細胞ともいい、粘膜組織などにあって、炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つ)からIgE依存性の機序によりヒスタミン、ロイコトリエン、血小板活性化因子、プロスタグランジンなど種々のメディエーター(伝達物質)が遊離するのを抑制します。

ヒスタミン、ロイコトリエンはアレルギー反応を引き起こす伝達物質であるため、抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬は代表的なアレルギー治療薬です。また血小板活性化因子という伝達物質が遊離するのを抑制することが脳梗塞後遺症に伴う慢性循環障害によるめまいの治療に役立つことになります。

 

杉並国際クリニックでは、主として気管支喘息の患者さんにケタス®を処方することがあります。

たとえば、気管支喘息とともにめまいを起こしやすい方、あるいは脳卒中の血族が複数いるという家族歴のある気管支喘息の方などが代表的です。

気管支喘息だけでなくめまいの改善に役立っています。そして、将来の脳卒中発症の予防をも期待して処方しています。

 

アマンタジン(シンメトレル®は、抗パーキンソン作用、抗A型インフルエンザウイルス作用、ドパミン放出促進作用、ジスキネジア抑制作用があります。

そのためこの薬剤は臨床実務上では三つの顔を持ちます。最初の顔は、脳梗塞後遺症に伴う意欲・自発性低下の改善薬として、二番目の顔は、パーキンソン症候群に対する治療薬としての、三つ目の顔はA型インフルエンザウイルス感染症に対する抗A型インフルエンザ剤としての顔です。

 

現在では、主としてパーキンソン治療薬として用いられています。

とくに軽症・若年発症患者の治療導入薬(初期治療薬)として有効です。さらに本格的なパーキンソン治療薬であるレボドパ補助薬としても広く使用されています。

 

パーキンソン治療薬としては、現在主流となっている非麦角系アゴニストでは突発性睡眠の副作用が問題となるため、シンメトレル®などを治療開始の選択肢として考えるべきとされます。

 

杉並国際クリニックでは、パーキンソン治療薬としての処方でシンメトレル®が選択肢にのぼるようなケースではL-ドパを用います。L-ドパでの効果の確認は、パーキンソン病の診断を確かにするという効用もあるからです。

 

またインフルエンザ治療目的でシンメトレル®を処方することはありません。その理由は、現在のA型インフルエンザの大部分が抗A型インフルエンザウイルス剤に耐性(薬が効かないこと)を獲得しているからです。

また、インフルエンザに罹患すると、抗インフルエンザウイルス薬の有無・種類に関わらず、異常行動の報告があります。そこで自宅療養時は少なくとも発熱から2日間、転倒等の事故防止を講じる必要があるので、起立性低血圧を起こしやすく、めまい、ふらつき、立ちくらみ、霧視が生じるシンメトレルを新規に使用することはデメリットの方が大きいと考えています。

 

予防への使用はワクチンの補完であることを考慮することになっていますが、予防のために用いることすらナンセンスであると考えます。

 

<はじめに>

 

 

前回は「動悸」に効果のあるツボを紹介しました。

 

 

「膻中」は乳頭を結ぶ線と胸骨の正中線と交わるところにあり、

 

 

「太淵」は親指の付け根の手のひら側にある手首にできるしわのある場所にあり、

 

 

「神門」は手のひら側で小指側のしわのできる部位にあるというお話でした。

 

 

 

今回は「胃痛・胃もたれ」に効果のあるツボを紹介しましょう。

 

 

<胃痛・胃もたれに効果のあるツボ>

2020-02-18 16-51

2020-02-19 16-20

 

 

 

今回は「中脘(ちゅうかん)」「足三里(あしさんり)」を紹介しましょう。

 

 

「中脘」は お臍から指4本分上にあります。

 

 

「足三里」は膝のお皿の下の外側にあるくぼみから指4本下にあります。

 

 

中脘は仰向けに寝た状態で息を吐きながら痛くない程度に押しましょう。

 

 

足三里はテニスボールやゴルフボールで正座をした状態で押し当ててみましょう。

 

 

毎回下手な絵で申し訳ないです。

 

 

 

杉並国際クリニック 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

<土曜日特集:統合医学(心身医学・漢方医学)カンファランス>

中国で新型コロナウイルス肺炎のガイドライン第6版(新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第六版))が発表している文書は、先週ご紹介いたしました。

 

今回のガイドラインでは、治療薬として抗マラリア薬であるリン酸クロロキン(磷酸氯喹)が有効としています。日本では認可されないと思われます。また抗インフルエンザ薬のアルビドール(阿比多尔)の記載あります。日本の保健処方では「ラピアクタ®」です。ただし、新型コロナウイルスの治療目的では保険が効きません。


また中医(漢方)治療では漢方の注射薬も追加されたり、清熱への配慮に力が入れられたり、いろいろ変更がありました。

 

中医治療は「医学観察期」「軽症」「通常型」「重症」「重篤」「回復期」に分けて行ないます。

今回は、医学観察期の処方の一部についてその他の処方を紹介いたします。

 

1 医学観察期

 

臨床表現2:乏力伴発熱

推奨中成薬

金花清感顆粒 

金銀花、石膏、麻黄、杏仁、黄金、連翹、貝母、知母、牛蒡子、青蒿、薄荷、甘草


連花清瘟膠嚢(顆粒) 

連翹、金銀花、麻黄、杏仁、石膏、板藍根、貫衆、魚腥草、藿香、大黄、紅景天、薄荷、甘草

 

疎風解毒膠嚢(顆粒) 

虎杖、連翹、板藍根、柴胡、敗醤草、馬鞭草、芦根、甘草

 

<解説> 

臨床表現2:乏力伴発熱 

推奨中成薬とは、臨床症状として発熱を伴う倦怠感がある場合の推奨薬ということです。
 

上記3処方の中で、日本で何とか処方可能なものは金花清感顆粒のみでしょう。

これらも漢方の刻み調剤が可能な薬局では保険処方可能です。

エキス製剤での処方は、複数の処方を組み合わせても無理があります。

 

金花清感顆粒の構成生薬のうちで、以下は日本での表記と異なります。

金銀花=忍冬、黄金(黄金花)=黄芩、青蒿(セイコウ;クソニンジン)=茵陳蒿

 

連花清瘟膠嚢については、漢方の刻み調剤が可能な薬局でも保険調剤は困難です。

自費での処方であってもかなりの困難が伴うことでしょう。

連花清瘟膠嚢の構成生薬のうち、魚腥草(ぎょせいそう)とはドクダミのことで日本では十薬とも呼ばれ入手可能ですが、保険適

応外です。

 

板藍根(ばんらんこん)=細葉大青、貫衆(かんじゅう)きじのお、紅景天(こうけいてん)=ベンケイソウ、

これらの薬味を日本で適切に揃え調剤することも困難でしょう。

 

疎風解毒膠嚢(顆粒)についても、連花清瘟膠嚢と同様で、

虎杖=イタドリ、スカンポ(酸模)、板藍根(ばんらんこん)=細葉大青、敗醤草=女郎花、馬鞭草=熊葛、芦根=芦の根など保険調剤対象外の材料が多数を占めています。

 

 

杉並国際クリニックが推奨する漢方薬
中国政府の推奨資料をもとに、新型コロナウイルス感染症のPCR検査基準に達していないが、感染を否定できない段階で、初期症状の特徴に相応する漢方薬を挙げてみることにします。

 

胃腸の不調を伴う倦怠感がある場合 

第一候補:

「藿香正気散(かっこうしょうきさん)」(市販OTC薬)

 

第二候補:

朝食前「香蘇散」、昼食前「半夏厚朴湯」、夕食前「苓姜朮甘湯」
     

時間薬理学的発想による処方例、いずれも健康保険適応漢方エキス製剤

 

発熱を伴う倦怠感を伴なう場合

第一候補:

「銀翹散(ぎんぎょうさん)」(市販OTC薬)

 

第二候補:

朝食前「麻杏甘石湯」、昼食前「辛夷清肺湯」、夕食前「滋陰至宝湯」
     

時間薬理学的発想による処方例、いずれも健康保険適応漢方エキス製剤

心療内科:うつ病治療薬と抗癌剤

うつ病はWHOによると2030年にはすべての疾患中で最も経済的打撃を与えると予想されます。

うつ病は基本的には回復する疾患とされ、通常では数カ月で回復します。

しかし、実際には30~40%は薬物に抵抗性(薬が効かないこと)を示し、1年以上回復しない場合もあります。

 

うつ病は、昔から精神科医が担当してきましたが、うつ病診療を行っている精神科医の多くが心療内科を標榜しているため、一般の方ばかりでなく医療界においてさえ心療内科が誤解されたままになって、しかもそれが定着してしまっているのが現状です。

 

しかしながら、残念なことに、ほとんどの精神科医は線維筋痛症に代表される、心身医学的アプローチが効を奏するような慢性疼痛性疾患の患者さんに対して積極的であるとは言えません。

皮肉なことに杉並国際クリニックで経験した線維筋痛症の方の多くは双極Ⅱ型障害を合併していました。

 

精神科で初診時にうつ病と診断される患者の約2割は双極Ⅱ型障害(うつ+軽躁)があり、単極性うつ病と誤診されるとの報告がありますが、簡便な印象判断ではなく、本格的な半構造化面接(M.I.N.I)に加えて軽躁エピソードについて念入りに病歴を聴取してきた杉並国際クリニックの経験例では、むしろ約7割が双極Ⅱ型で、単極性うつ病は2割にも満たない結果でした。

そこで精神科での抗うつ薬による治療が効かなかったという相談を受けると、まず双極Ⅱ型障害ではないかどうかを検討するようにしています。

 

 

うつ病の女性が乳癌になったとしたら・・・?

 

ホルモン療法薬(抗エストロゲン薬)

・タモキシフェン(ノルバデックス®):乳癌

妊婦には禁忌です。

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)といって、乳腺では増殖抑制、子宮内膜や骨では増殖促進に働きます。

 

選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)

・パロキセチン(パキシル®):

❶ うつ病・うつ状態、❷ パニック障害、❸ 強迫性障害、❹ 社会不安障害、
❺ 外傷後ストレス障害(PTSD)

 

選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI):

パロキセチン(パキシル®)、フルボキサミン(デプロメール®、ルボックス®)、セルトラリン(ジェイゾロフト®)

 

これらは鎮静効果がないことから非鎮静系薬とみなされます。

過量服薬しても比較的安全で、かつ治療域が広いことから抗うつ薬の第一選択薬として用いられています。

しかし、その効果は従来薬の三環系抗うつ薬を上回ることはなく、重症例には適しません。

心電図上のQT延長という異常所見(薬剤誘発性QT延長症候群:重症不整脈の引き金となる)の出現があるため心疾患の患者への投与は控えます。

 

パロキセチン(パキシル®)は抗不安作用を併せ持もつ比較的強力な抗うつ薬ですが、内服中断により中断症候群に注意、フルボキサミン(デプロメール®、ルボックス®)と同様にP450(肝臓の薬物代謝酵素)を阻害するため、併用薬との相互作用に注意します。

また、セルトラリン(ジェイゾロフト®)と同様にP糖蛋白(細胞膜上に存在して細胞毒性を有する化合物などの細胞外排出を行う)を阻害するため、抗悪性腫瘍薬や強心剤であるジギタリス製剤との併用時は注意します。

 

タモキシフェン(ノルバデックス®)による乳癌の治療中に、パロキセチンを服用すると、乳癌による死亡リスクが増加したとの報告があります。

パロキセチンがCYP2D6(生体内の異物を代謝する主要な酵素の1つ)を阻害することにより、タモキシフェン(ノルバデックス®)の活性代謝物のエンドキシフェンの血中濃度が低下することが原因です。

基本的には併用を避け、エスシタロプラム(レクサプロ®)等への変更を検討します。

 

 

 

杉並国際クリニックの視点から

〝うつ病〝と一口に言っても、杉並国際クリニックでは、「うつ状態」の方の受診が多いです。代表的なのは、上記にも触れた①本人も気付いていないような軽躁エピソードの既往のある双極性障害Ⅱ型のうつ状態です。

その他に②ストレスの度合いが大きく本人が適応できなくなる適応反応症での一時的うつ状態、③ 2週間以上典型的なうつ病症状が続くが夕方には元気になる抑うつエピソード、また、④ 不満や他罰性のためにうつが遷延してしまう持続性抑うつ障害のケースもあります。

 

いずれのタイプも早期察知・対応が大切です。

うつ病は身体症状で発症することがあり、その場合は身体疾患と診断されて治療が遅れてしまうことが多いと精神科医はしばしば指摘します。

しかし、他方、癌などの身体疾患を見落として漫然と向精神薬の投与を続けて手遅れになってしまうケースも稀ではないことも内科・心療内科医の立場から指摘しておかなければならないでしょう。

そのため、興味や関心の喪失や憂鬱さ、意欲低下といった精神面と同時に、睡眠障害や食欲低下、疲れやすさなどの典型的な身体症状以外の諸症状の出現についても注意深い観察が必要です。

 

実際に膵癌がうつ病と誤診されることは有名であり、乳癌患者がうつ状態になることも少なくないでしょう。

このような時代に、患者の精神面だけ、あるいは身体面だけを扱う臨床医学ばかりが展開を続けても日常医療の向上には繋がらない可能性が高くなりつつあります。

実際に、甲状腺疾患がスクリーニングされていないまま不適切な治療をなされているケースも多数経験してきました。たとえば、一般的に甲状腺機能亢進症は躁状態や不安傾向となり、逆に甲状腺機能低下症は抑うつ傾向となります。

 

このような臨床水準のまま、次々に副作用が多くリスクの高い抗癌剤が開発され、また、一方で、効果の差はわずかであるにもかかわらず、副作用において大きく異なる抗うつ薬が使用されている現実があります。

そうして、単独でも取り扱いの難しい薬剤同志を併用する必要が生じやすい超高齢社会においては有害作用のリスクは高まるばかりです。

 

癌医療と精神医療のインターフェイスにおいては、精神腫瘍学(サイコオンコロジー)という領域が誕生しました。

精神腫瘍学とは、がんと心の関係を精神医学、心理学、腫瘍学、神経学、免疫学、社会学、倫理学、哲学など自然科学・社会科学的手法を用いて探求する領域です。こうした心療内科を中心とする心身医学が正しく理解され、そして心療内科専門医が十二分に活躍できない限り、医療の多くの領域でAIの支援に大きく頼らざるを得ない時代に突入することになるのではないかと思われます。

 

<完>


杉並国際クリニック 飯嶋正広

 

❹ 対処行動(ソフト面)の問題

1)初動対応の遅れ:

感染者が集中する北部ロンバルディア州では、最初の市中感染が確認された2月下旬の時点で既に広範囲にウイルスが広がっていたとの分析があります。

患者急増に集中治療室の受け入れが追い付かず、人工呼吸器もたちどころに不足してしまいました。

⇒初動対応の遅れをなかなか認めようとせず、言い訳に終始するのは、イタリアだけでなくWHO、中国そして日本も同じ穴のムジナであるようです。

流行性の感染症の制圧の鍵は初動対応に罹っていると思います。初動が遅れ、しかも適切な対応ができないと、患者数の急増に加えて、重症化が進行し、それがまた患者のさらなる増加を招きます。

 

2)症状の重い人を優先的に検査する態勢:

医療現場は初動で混乱し、ANSA通信によると3月中旬までにロンバルディア州だけで約700人の医師や看護師も感染しました。

イタリア政府の衛生高等研究所幹部は、症状の重い人を優先的に検査する態勢が死亡率を高くした原因であるとも述べています。

⇒初動の対応が遅れたから、トリアージして重症患者を中心に対応せざるを得なくなったことは明らかです。

そして、人工呼吸器が不足すると、適応を60歳未満に限定して、リスクの高い重症の高齢者を排除したことも死亡数を増やす結果を招く原因になったのではないでしょうか。

大流行しているロンバルディア州の人口は約1000万人で、この一州でイタリアの人口の1/6を占める最大の州とはいえ、ただでさえ不足している医療従事者を700人感染させてしまったのは、最大の失策だったのではないかと思います。
   

イタリアの感染者数の累計が感染者累計1万7660人であるということは、ただでさえ不足している医師が膨大な件数のPCR検査に従事したことになります。

検査を受けた患者の陽性率の情報が手元にないため、より正確な推計はできませんが、少なくとも感染が判明した1万7千件の数倍以上のPCR検査を実施したはずです。

患者の収容施設や治療資源や十分な防禦体制が確保されていない状況で、有効な治療に結びつけられないまま、ひたすらに膨大な件数のPCR検査を強行していけば、医療従事者が次々に感染してしまいます。

そして、残された医療従事者の負担が更に増えて疲弊し、更なる感染に繋がってしまうと、医療体制は完全に混乱し、麻痺し、収集のつかない事態にまで発展してしまいかねないことは容易に理解できます。
   

患者を救う立場の医療従事者を感染の危険から守り、一定期間継続的で安定した医療供給をはかれるような態勢を確保することが、パンデミック収束にむけて行政が留意すべき最優先事項であるということ、そしてPCR検査は態勢の整った施設に限定して最大限の支援を行い、これまで通り症例を限定して実施すべきであること、この2点を深く認識していただきたいものです。

杉並国際クリニック 飯嶋正広


❷ 人口構成で高齢者が多い

イタリア政府の衛生高等研究所幹部は致死率の高さについての説明で、欧州連合(EU)の昨年の統計によると、同国で人口に占める65歳以上の割合は22.8%でEU加盟国の中で最も高いという指摘があります。たしかに、高齢の感染者は病状が悪化しやすいため死亡率も高いです。

⇒ しかし、各国の比較のために2018年統計をみると、1位の日本についでイタリアは2位、たしかに欧州ではトップの高齢化率ですが6位のドイツ、12位のフランスと大差がないことがわかります。

 

1位日本(27.59%)、2位.イタリア(22.75%)、6位.ドイツ(21.46%)、
12位フランス(20.03%)、18位、スペイン(19.38%)、26位、英国(18.4%)

 

人口の高齢化は一因ではあるでしょうが、主要因ではなさそうです。どこの国でも似たようなものですが、イタリア政府の衛生高等研究所幹部が高齢者人口比率を引き合いに出すのは根拠としては、とてもお粗末だと思います。

こういう場合は、当局が真実を報道することを避けて、意図的に言及していない可能性があります。

 

 

❸ 医療体制(ハード面)の不備

その原因:医療従事者の人員不足、原因の原因:緊縮財政のあおり

医療関係予算は削られ2012~17年の間で全国で約760の診療科が閉鎖されています。イタリアのレスプレッソ(L’Espresso)誌はエリート層や学生を中心に読まれている主要なニュース週刊誌ですが、この雑誌は「新型コロナ感染拡大が起きる前からイタリアの医療体制は機能不全に陥っていた」と指摘しました。

「既に緊急事態は起きていた」との大見出しで、医師はすでに5万6千人、看護師は5万人不足していたとの分析を伝えました。

 

現在、ミラノやジェノバでは見本市会場やフェリー内を突貫改装し、数百単位ずつの病床を増設する案も浮上しています。

⇒緊急時に対応できる医療機関の大規模閉鎖や医療従事者の慢性的欠乏が続いてきた中で、にわかに改築した病院を建設したとしても、十分な設備や医療スタッフが不足していれば病院はまったく機能しないはずです。すると、次第にとんでもない悪循環が連鎖的に加速して起こることになります。