東洋医学

 

<漢方の名医:高山宏世先生>

 

私の診察机の背にある書棚には、漢方処方に関する三考塾叢刊の三組セットの書籍があります。

 

この書物は、漢方専門医として診療に当たる上での珠玉というべき名著です。  

 

 

この書物は、鍼灸治療や水氣道®にも豊富な示唆を与えてくれました。

 

私自身は、著者の高山先生とは直接の面識はありませんが、患者さんを通して、先生の偉大さを改めて実感する経験に恵まれました。

 

 

高山先生は1934年鹿児島県生まれとのことで、私より四半世紀先輩の医師です。

 

先生が九州大学医学部を卒業された1962年は、私はまだ3歳ということになります。

 

1974年に福岡市中央区大名で高山クリニックを開業されて現在に至っているようです。

 

 

個人情報に対する制約のため、詳細に亘るご紹介は控えますが、高山クリニックを受診していた不眠症に悩む青年が、東京に転居となったために、高円寺南診療所を受診されました。

 

尤も、彼は高円寺南診療所宛の紹介状を持参していたのではなく、インターネット検索でアクセスしたとのことでした。

 

 

持参された情報は処方箋のコピーのみでしたが、それで高山クリニックに通院されていたことが判明した次第です。

 

漢方専門のクリニックらしく、パッケージに入った漢方エキス製剤の他に刻み生薬の処方内容が記されていました。

 

 

以下、ミニ解説を加えます。

 

生薬/crude drugは、動植物の薬用とする部分、細胞内容物、 分泌物、抽出物又は鉱物などを示します。

 

刻み生薬/crude drug pieces for decoctionは切断生薬という言葉を用いており、刻み生薬とは呼んでいません。

 

切断方法まで表現する場合は cut、 sliced、 powdered、 crushed などをつけるが、 cut と powdered に関しては切度がJP通則で規定されています。

 

 

切断生薬/cut crude drugは全形生薬を小片または小塊に切断または粉砕したもの、 あるいは粗切、中切または細切したものです。

 

 

 

青年が持参した処方内容は、エキス製剤2種

 

 

ツムラ四逆散エキス顆粒(医療用)2.5g 1日1回眠前

 

ツムラ参蘇飲エキス顆粒(医療用)7.5g 1日3回毎食後

 

刻み生薬:1日2回昼食後、眠前

 

ゲンジン(玄参)1.5g、オンジ(遠志)3g、キキョウ(桔梗)1.5g、

 

ゴミシ(五味子)1.0g、トウキ(当帰)1.5g、テンモンドウ(天門冬)3g、

 

バクモンドウ(麦門冬)3g、ジオウ(乾地黄)2.5g、サンソウニン(炒酸棗仁)3g、

 

ブクリョウ(茯苓)4g、柏子仁3g、党参3g、丹参4g

 

以上を湯液として50分煎じる

 

初診の青年は、この処方がとても合っているとのことでしたが、

問題点が2つありました。

 

その1は、刻み生薬に対応できる調剤薬局が近隣にないこと

 

その2は、大量の生薬類の処方は審査の厳しい東京では保険が利かないこと

 

 

そこで、この青年には、素晴らしい処方であり、また名医の処方でもあることから、

 

東京でも同様に刻み生薬の処方をしてもらえる漢方専門医の受診をお勧めしました。

 

 

そして、その間の繋ぎとして、エキス製剤のみを、保険が利く範囲で、以下のように処方させていただきました。

 

 

ツムラ参蘇飲エキス顆粒(医療用)2.5g 1日1回朝食前

 

ツムラ四逆散エキス顆粒(医療用)2.5g 1日1回昼食前

 

ツムラ酸棗仁湯エキス顆粒(医療用)2.5g 1日1回夕食前

 

 

漢方のエキス剤を最小量で効果を発揮させるために、空腹時投与が一般的ですが、

 

高円寺南診療所では、それぞれのエキス剤が時間薬理学的に最も有効であると想定される時間帯に割り当てる方式を創案し、実践しています。

 

 

しかし、名医の処方と同等の効果を期待することは難しいので、少しでも患者さんの役に立てば、という思いのみで処方しました。

 

そろそろ主治医が見つかったのではないかと想像していたときに、その青年は再び来院されました。

 

<薬が十分に効かなくて困っている>という報告を受けることになるだろうと予測していた私は、意外な反応に驚きました。

 

彼いわく<先生、酸棗仁湯が効きすぎて日中も眠いです>と。

 

 

私は、かつて不眠症の患者に酸棗仁湯が有効であった症例について日本東洋医学会で発表したことがあります。

 

酸棗仁湯を不眠症に用いることは珍しくないのですが、専門医の間でも、実際には余り効かない、という声が多かったためでした。

 

実際に酸棗仁湯を一日三回投与しても効きにくいことが多いです。

 

しかし、朝食前、昼食前に、酸棗仁湯以外の適切な漢方薬を投与することによって、酸棗仁湯は夕食前のみの投与であっても、劇的に力を発揮することがあるのです。

 

 

幸い彼もそのような効き方をする体質だったようです。

 

そこで、<それでは、酸棗仁湯を半量にして続けてみてはいかがですか>と提案すると、<先生、半量では全く効きません>とのこと、そこで<それならば、3分の2で試してください。

 

2パックで3日分になりますね。>とアドヴァイスして納得していただきました。

 

 

昔も今も、薬のさじ加減というのは、微妙なものです。

 

現代薬の場合、錠剤ですと微調整できないので、同じ成分の顆粒製剤や粉末製剤を用いて、さじ加減することがあります。

 

工夫次第では、少量のエキス製剤でも、名医の処方と同等の効果を出せることがあるという経験は、漢方処方に対する興味を掻き立ててくれました。

 

 

それまでは、湯液として50分煎じる手間が必要でしたが、エキス製剤のみであれば多忙な若者にとっても継続可能です。

 

ちなみに、この若い患者さんは、それまで福岡で診ていただいていた高山先生が名医であることは、ほとんどご存じなかった模様でした。

 

心身医学科(心療内科、脳神経内科、神経科を含む)

 

<頭痛>

 

日々の診療で数多く接しているはずの頭痛。その頭痛を巡って、基本的なことから振り返ってみたいと思います。

 

頭痛とは頭頸部に限局する痛みの総称です。

 

まず、気が付くことは痛みが頭部のみならず頸部の場合を含むということです。

 

いわゆる首こりも頭痛に含まれるということになります。次に、限局性ということです。

 

線維筋痛症のように痛みが全身に及んでいる場合には、頭痛を伴うことが多いのですが、この場合は、頭痛からは除外されてしまうことになります。

 

 

これに対しては、臨床的にも納得できるポイントもあります。

 

実際に高円寺南診療所で頭痛を訴える患者さんの多くが後頚部に圧痛を認めます。

 

つまり、頭痛は自覚しているのですが、頸部の自発痛を自覚していないのです。

 

いわゆる圧痛点(トリガーポイント)を軽く圧迫する刺激が加えられてはじめて、首こりや肩こりを自覚するタイプです。

 

 

そして、首こりや肩こりが頭痛の原因や誘因になっている場合は、

 

坂本式鍼灸の三療一術法(高円寺南診療所オリジナルの鍼灸治療システム)などによって肩こりの治療が効果的である場合が多いです。

 

 

肩こりがなかなか改善しない方のなかには、下半身の筋力が低下している方が散見されます。

 

そのような場合には、水氣道®で水の浮力による支援を受けながら定期的に有酸素運動を続けると、

 

次第に下半身が強化され、姿勢が改善し、それに伴い効率の良い呼吸ができるようになります。

 

すると徐々に頭痛は見られなくなっていきます。

 

 

 

これに対して、疑問なのは、慢性的な全身痛を伴う線維筋痛症の頭部痛です。

 

これは器質的疾患によらないので一次性頭痛に分類されます。

 

これには、片頭痛(前兆を伴うものと伴わないものがあります)、緊張型頭痛群発頭痛三叉神経痛自律神経性頭痛などがあります。

 

これらの中には、頭頸部領域を超えて広範囲にこりや痛みを伴うものがあるので、

 

頭痛の定義として頭頸部に限局した痛み、という括りは必ずしも適切ではなく、実際的ではないのではないか、というのが高円寺南診療所の見解です。

 

 

 

痛みの部位としては、

 

片側性で常に同側なのが群発頭痛、

 

片側とは限らず両側性であるのが片頭痛、

 

一定部位なのが三叉神経痛の特徴です。

 

 

しかし、外来診療では、最初から「へん頭痛」と自己診断して来られる方が少なくありません。

 

病名の根拠をお尋ねすると、<いつも頭の片側だけが痛いから>、とか<変な頭痛だから>とかの珍答が少なくありません。

 

素直に<頭が痛い>とか、単純に<頭痛>と伝えてくださる方がむしろ少数なのが不思議です。

 

 

いずれにしても、頭痛の診療は、全身のチェックが必要です。

 

心理社会的なストレッサーによって頭痛がもたらされることを多くの皆様方はご存知のようです。

 

ときどき、<私の頭痛の種は・・・>など、

 

頭痛発作の引き金になるエピソードを語ってくださる患者さんがいらっしゃいますが、診断の上でとても役に立ちます。

 

 

医療上の大切なポイントは、生命予後に関わる二次性頭痛を見逃さないことです。

 

二次性頭痛とは、器質的疾患による頭痛です。見逃すことができない二次性頭痛としては、以下のものが重要です。

 

くも膜下出血細菌性髄膜炎脳出血側頭動脈炎緑内障脳腫瘍などです。

 

今回は「番外編 その7」、「「物」による助け合い」のつづきです。

 

 

エピソード2

 

私が他の登山者を助けたこともあります。

 

もう20年くらい前になります。

 

 

友人たちと富士山に登ることになりました。

 

私はすでに1回登ったことがあったので、準備は万端でした。

 

しかし、友人たちは初体験であり、また軽い気持ちや油断もあったようです。

 

そのため、持ち物など登山の装備に不備がありました。

 

その日はよく晴れていたので、皆で順調に登っていました。

 

 

しかし、周知のことのはずですが、やはり山岳部の天候は急変しやすいものです。

 

その日は天候が激変し、大粒の雨が降ってきました。

 

皆ずぶ濡れ状態になってしまいました。

 

 

<これは危険だ>と皆の空気が一変。 七分丈のズボンの男性などは、ブルブルと震えていました。

 

幸い、何とか避難小屋に辿り着くことができました。

 

 

そこで天候の回復を待ち、次の山小屋に移動しました。

 

ところが、同行の皆は満足な着替えも持っていませんでした。

 

 

私は余分に着替えを持っていたので、女性の友人に衣類を貸すことができました。

 

 

富士山に軽装で行く人をよく目にします。

 

 

しかし、山の天気は想像以上に変わりやすい。

 

本当に危険です。 しっかりとした装備でのぞむことが肝心です。

 

 

(次回へ続く)

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

 

総合リウマチ科(膠原病、腎臓、運動器の病気を含む)

 

<性格環境習慣病としての痛風>

 

はじめに、性格環境習慣病について、これは高円寺南診療所の所長である飯嶋正広の造語です。

 

いわゆる現代病に取り組む上で、

 

成人病、習慣病(1970年代後半、日野原重明)、

 

習慣病(1990年、川久保清)、

 

生活習慣病などの概念に触発されて2000年から診察室限定で使い始めた用語です。

 

 

そもそも成人病とは1955年頃から厚生省(当時)が使いはじめた用語です。

 

これは40歳前後から 60歳代の働き盛りの人々に発生率の高い疾患をさし,

 

脳血管障害,悪性腫瘍,心疾患,糖尿病,痛風など,主として非感染性の慢性疾患がその代表的なものでした。

 

近年,これらの発病が低年齢化し,また食生活や運動,飲酒,喫煙などの生活習慣が発病に大きく関与することから,

 

97年(厚生省、当時)は従来の成人病を「生活習慣病」と改称しました。

 

 

痛風の背景には高尿酸血症があります。

 

近年、高尿酸血症は生活習慣病との関連で議論されることが増えてきました。

 

たとえば、メタボリックシンドロームでは、インスリン過剰分泌により尿酸の再吸収が増加する他、

 

尿酸の産生も更新し、高尿酸血症となり、やがては痛風発作を引き起こす可能性が高まります。

 

そればかりでなく、肥満による過剰なインスリン産生は尿酸とともにナトリウムの再吸収を促すために、高血圧をもたらすことがあきらかになってきました。

 

 

現在、高尿酸血症や痛風の診療に関しては、

 

『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン<第2版>(2010年改訂)』が日本痛風・核酸代謝学会から出されています。

 

このガイドラインの欠点の一つが、患者のパーソナリティや日々被っているはずの心理社会的ストレッサーの関与についての記述がないことです。

 

その理由は、この学会の枢要なポストに、心療内科学会専門医が不在であるからだと思います。

 

 

痛風は、世間が揶揄する“贅沢病”ではありません。

 

何事にも熱心に取り組み、多忙でクリエイティブな毎日を展開している人、責任感が強く、巨悪による不正や、ポピュリズム、印象操作などに対して、人一倍義憤を感じ易い有能な方々に多く発症しています。

 

 

医師として、私がそのような患者さんへの誤解を放置したまま、彼らを見捨てることができると思いますか?

 

すでにリウマチ専門医であり、かつ、心療内科専門医である私が、痛風認定医試験に挑戦し、合格できた理由の一つは、

 

社会に対する大きな貢献を果たし、日本経済を牽引し、弱者を支えようと日夜努力を惜しまない、

 

こうした痛風患者さんのために、大きなエールを送りたいからであると確信している次第です。

 

水氣道7級(特別体験生)の木村英一さんから水氣道の所感をいただきました。

 

多くの皆様にとって、有意義なメッセージですので、ご本人の了解を得て実名でご報告させていただきます。

 

EK

 

木村さんはトランペットのプロフェッショナルで、私事で恐縮ですが、私は木村さんからトランペットを定期的に習っています。

 

演奏家としてばかりでなく、教育者としても優れた方です。

 

毎回のレッスンで大きな気づきをいただき、日常診療や、水氣道、そして聖楽院での活動のためにも大いに刺激を受けております。

 

 

木村さんは、今年水氣道に入門されましたが、熱心に稽古に参加されています。

 

 

杉十小プールには初めての体験生の方のガイダンスをしてくださっています。

 

私がその旨、御礼を申し上げると、「私も最初の稽古のとき、皆様からとても親切にしていただいたので、同じようにさせていただいております。」

 

とのお答えに、再度、感動と喜びを覚えました。そうなのです。

 

それこそが水氣道なのです。

 

 

さて<地上では経験できない体勢での運動>を可能にするのが水氣道の醍醐味の一つなのですが、

 

それを「興味深く、楽しく感じ」ることができれば、上達はスムーズだと思います。

 

 

新しいこと、新奇なことを求める探求心や冒険心は、人類の進歩の原動力だといえます。

 

 

ただし、高度な知能を持った人類は、同時に不安感や恐怖心に襲われがちです。

 

それを乗り越えて新しいことに挑戦するためには、それに打ち勝つだけの安心感、期待感、希望などのエネルギーが必要です。

 

その根幹は、一言でいえば、信頼だと思います。

 

自分を信じ(自信をもつ)、他者を信じ(信頼する)、ともに新たな体験や発見を分かち合うことを、水氣道では大切にしています。

 

 

<水氣道では、水に助けられたり、逆に、水に妨げられたり>しながら、基本的にリラックス状態を保ちながら心身を同時に鍛錬していきます。

 

ごく自然な運動なのですが、日頃の生活環境ではなかなか味わえないために、一般の陸上運動とは異なった「疲れ」を感じます。

 

 

「運動で疲れを感じることもありますが、けっしてイヤな疲れではなく、心地良い疲れです」と木村さんは書いておられますが、

 

この「疲れ」をどのように受け止め、理解することができるか、ということも水氣道の稽古の要点の一つです。

 

心地良い疲れを感じることができる心身の状態とは、心身がバランス良くリラックスできたことを意味します。

 

典型例では、身体全体がやや重く感じられるにもかかわらず、からだの芯からほのかに暖かい感じがします。

 

これは、自律訓練法でいう第一公式(重感練習)、第二公式(温感練習)で得られる心身の状態に通じるものです。

 

木村さんは林亮博(水氣道従弐段下・上席支援員)健康管理士の下で自律訓練法を練習中であるため、

 

水氣道の効果を早い段階で味わうことができたのではないでしょうか。

 

 

一般に、疲労感は不愉快な身体感覚であり、不健康な状態の徴候であると受け止めがちです。

 

しかし、実際に問題となるのは、疲労が蓄積しているにもかかわらず、

 

疲れに気づけない(感じない)、

 

疲れを疲れとしてあるがままに受け止めない(疲労状態にあることの否認)、

 

疲れていることで充実感を感じる(疲労状態が病的快感に変性)といった傾向や習慣です。

 

 

普段から<健康的な心地良い疲れ>に馴染んでいれば、<病的で不快な疲れ>に気づきやすくなります。

 

この<病的で不快な疲れ・気づいていない疲れ>を<健康的な心地良い疲れ>に変換する作用効果については、水氣道で実際に体験できることでしょう。

 

 

水氣道の稽古プログラムの後半では、水氣道の各技法(航法)の分級稽古になります。

 

木村さんは、林組の活水航法に意欲的に参加されています。

 

この航法は、身体内外の水の性質を大いに活用して、肩関節や股関節などの重要関節の柔軟性を高めることに加えて、それに関連する筋力強化を図ることを目的としています。

 

木村さんは「以前より柔軟性、筋力もついてきた」ことを報告してくださっていますが、

 

活水航法の良さを感じ取り味わいながら計画的に稽古を続けておられる成果を感じていただけていることが良くわかります。

 

 

「今後も体力、集中力を養うためにも続けてまいりたい」とのことですが、

 

プロの演奏家として体力と集中力は不可欠の条件であることを、熟知されている方の御感想だと思います。

 

<日本人より日本人?>

 

シュウカツというと、かつては就職活動のことでしたが、最近では人生の終焉に向けての準備である終活という言葉が大流行りです。

 

 

私自身を振り返ってみますと、私の学生時代は、医学生であったため、ほとんど就職活動をすることなく危機感もなく過ごしていました。

 

研修先も最初に受験した虎の門病院に合格したので、全くと言ってよい程、就職活動には無縁でした。

 

その分マイペースで勉学に専念できたことは、今から思えばとても恵まれていたのかもしれません。

 

そうしたわけで、私にはシュウカツは無縁であると思っていたところ、誰しもが避けることのできないシュウカツなるものに遭遇することになりました。

 

もっとも、淡々と日々を過ごし、特別な備えをせずにこの世を終えることもできないわけではありませんが、

 

後に残すことになるであろう若い人たちのために、自分たちの終焉活動を通して何らかのメッセージを残していくことも意味があるように思えてきました。

 

 

すると自分の最後をどこで、どのように迎えるか、ということを決断する過程が終活のように思われてきました。

 

 

先週末の連休に、郷里の茨城で過ごしました。先月にはじめて訪れたカトリック教会が茨城県の概ね中央部に位置する笠間市にあります。

 

そこはイエズス・マリアの聖心会の日本本部です。

 

妻と次女とともに最初に預かった主日の御ミサはコルネリウス・ビファー神父(1927年3月28日~)によるものでした。

 

米国ニューヨーク出身の90歳の司祭は、1951年10月28日に来日されて以来、日本での布教に専心されてきました。

 

1959年生まれの私よりも以前から、日本での生活を始められたことを考えると、人生における先輩だけでなく、日本の市民としても先輩であることを改めて深く受け止めました。

 

90歳の現在も現役でカトリック司祭のミッションを果たし続けておられる姿に心打たれました。

 

 

翌日は、早朝午前5時50分の妻の思い付きに合意し、朝ミサに預かることにしました。

 

 

そこで、修道会の朝の聖務日課を共にし、朝の御ミサに参加した後、ビファー神父、川又巳三男神父(1937年3月20日~)との分かち合いのひとときに恵まれました。

 

さて司祭たちは終活をいつ始めるのであろうか、などとの自問は愚かなことであることに気づきました。

 

彼らは、司祭の道を選んだ時点で、すでに終活をはじめているように思えました。

 

否、洗礼を受けた段階ですでにそれが始まっていたのかもしれません。

 

 

この修道院の裏手には司祭の墓地があります。それに隣接して、一般の墓地が整備されています。

 

その一隅に、その日、妻と私の墓所を求めることに決めました。

総合アレルギ‐科(呼吸器・感染症、皮膚科・眼科を含む)

 

<アレルギー性鼻炎のトータルマネジメント>

 

 

アレルギー性鼻炎は非常に増加している病気です。

 

1998年と2008年に馬場らが行った全国的有病率調査では、通年性アレルギー性鼻炎は18.7%から23.4%に、

 

季節性アレルギーであるスギ花粉症は16.2%から26.5%に増加しています。

 

しかし、高円寺南診療所を受診する患者さんの多くは、アレルギー性鼻炎に罹っていても、慢性化していて、鼻閉による口呼吸を放置している方が多く、

 

たまたま何度も風邪ひきを繰り返したていたり、睡眠障害に陥っていたり、気管支喘息を併発していたり、といったケースで受診される方が後を絶ちません。

 

 

これらのアレルギー性鼻炎は、有病率が高いばかりでなく、

 

日中の眠気や集中力の低下、疲れやすさ、イライラなど生活の質(QOL)を低下させ、労働生産性も低下させます。

 

そこで、アレルギー性鼻炎の診療において、実践的な診療指針が必要になります。

 

実際のアレルギー性鼻炎の診療の紹介のために、

 

今回は

1)そもそも鼻炎とは何か?

 

2)その診断とは?

 

3)治療法の選択は?

 

4)実際の薬剤の特徴は?

 

について手短にまとめてみました。

 

 

 

1)そもそも鼻炎とは何か?・・・鼻炎には様々な種類があります

 

臨床上、鼻炎と称される多くの異なる病態があります。

 

アレルギー科が扱う鼻炎は、主にアレルギー性鼻炎ですが、これは過敏性非感染性鼻炎に分類されます。

 

このアレルギー性鼻炎は、かぜ症候群に代表される感染性の急性鼻炎と、急性・慢性副鼻腔炎との鑑別を必要とすることが多いです。

 

とくに、非感染性の好酸球性副鼻腔炎は難治性なので注意しています。

 

そして、アレルギー性鼻炎と診断できた場合には、ダニなどが原因となる通年性のものと、主として花粉が原因となる季節性のものがあります。

 

花粉によるアレルギー性鼻炎のなかには、花粉‐食物アレルギーを伴うケースもあります。

 

 

2)アレルギー性鼻炎の診断のステップは?・・・①問診、②アレルギー性かどうかの鑑別、③原因抗原を同定する

 

①問診を行うにあたり、家族歴や発症年齢、鼻症状や付随する眼症状、咽頭症状など耳鼻咽喉科的な視点のみならず、内科として喘息の合併や小児ぜんそくの既往歴を聴取することが、アレルギー性の関与を疑ううえで役に立っています。

 

そして、発症期や生活環境などの情報は、原因抗原の手掛かりを捕まえるためにも大切にしています。

 

 

②アレルギー性鼻炎か否かを鑑別するにあたり、上記問診の他に、鼻鏡検査、レントゲンなど画像検査、血液・鼻汁好酸球検査、血清非特異的IgE抗体定量を行うことがあります。

 

 

③原因抗原を同定するには、血清特異的IgE抗体検査、皮膚テスト、誘発テストが含まれます。

 

 

3)アレルギー性鼻炎の治療選択・・・患者さんのタイプに応じて選択

 

原因物質である抗原を回避するための工夫は、患者さん自ら実行できる重要な治療対策です。

 

ただし、治療薬は軽症例では第2世代の抗ヒスタミン一種類を選択しますが、中等症以上のアレルギー性鼻炎に対しては、病型に応じて作用機序の異なる薬剤を複数組み合わせて用いています。

 

第2世代の抗ヒスタミン薬は、有効性が高いうえに、眠気などの副作用が軽減されているため使いやすいですが、反応性には個人差があります。

 

根本的な治療として、舌下免疫療法が注目されています。また、保存的治療が無効な例では、手術療法を考慮すべきことがあります。

 

 

4)実際の薬剤の特徴と使い分け・・・症状の病型と重症度から薬剤を選択

 

わずかであっても症状が出たら初期療法を開始します。

 

この段階では、第2世代抗ヒスタミン薬もしくは抗ロイコトリエン薬を選択します。症状が強い場合には、適切な併用療法を積極的に行います。

 

鼻噴霧用ステロイド薬は、通年性アレルギー性鼻炎、花粉症で鼻汁・くしゃみ型、充全型を問わず軽症例から用いられ、中等症以上では標準的に用います。

 

鼻噴霧用ステロイド薬の特徴は、

 

①効果は強く、②効果発現は1~2日と早く、③副作用は少なく、

 

④鼻アレルギーの3症状(くしゃみ、はなみず、はなづまり)に等しく効果があり、

 

⑤投与部位のみに効果が発現して、全身作用をもたらさない、という利点が挙げられます。

テーマ:「生き方上手」な医師

 

2か月ほど前に帰天された日野原 重明(ひのはら しげあき)先生、著明な方なのでご存知の皆様も少なくないことでしょう。

 

日野原博士は1911年(明治44)10月4日 - 2017年(平成29)7月18日、日本の医師です。

 

先生は聖路加国際病院名誉院長、上智大学日本グリーフケア研究所名誉所長、公益財団法人笹川記念保健協力財団名誉会長、一般財団法人ライフ・プランニング・センター理事長、公益財団法人聖ルカ・ライフサイエンス研究所理事長などを歴任されました。

 

 

先生のご著書の「生き方上手」という本を読んでみたい、と思いつつ実行できないまま訃報を知りました。

 

そこで、インターネットで検索した、読者の方からの投稿文を2つ引用します。

 

 

#1.日野原さんが90歳の頃に書かれたエッセイ。

 

生涯現役を通され、90歳になっても尚、睡眠時間を削って忙しく活動されておられる様子に驚嘆する。

 

戦争を経験し、よど号ハイジャック事件に遭遇し、医師として4000人を看取ってこられた著者だからこそ語れる「生き方」について、謙虚に受け止めたい。

 

特に6章「死は終わりではない」が、死をどう迎えるかについて、現場からの具体的なエピソードなど交えて語られ、色々考えさせられた。

 

 

#2 先日亡くなられた聖路加国際病院の日野原重明先生の本。

 

生きかた上手は死にかた上手。人生は長さではなく、どう生きたかで価値が変わってくる。

 

「たとえ病を抱えていても、清々しい「健康感」があればそれで十分であり、それが大切」「辛く苦しいことでも「体験」したことは、間違いなくその人の強みになる」という言葉に胸を打たれた。

 

習慣が人間の性格や品性を作り上げていく。

 

私も今日1日を大事に精一杯生き、いつになるか分からないが、穏やかに周りに感謝をしながら人生を終わりたい。

 

 

次に、日野原先生について、改めて特筆すべきと思われた事績を経年的にまとめてみることにしました。

 

特に、医学と音楽との接点については、高円寺南診療所の診察室と『聖楽院』との接点の在り方について、とても貴重なお手本であると受け止めています。

 

 

日野原先生は、御幼少のみぎりから多方面に亘る芸術的才能を発揮されていました。

 

小学生の頃から同人誌などの物書きも嗜み、筆名は「日野原重秋」「日野原詩郷明」の筆名で詩作、作詞さらにはピアノ演奏や作曲までに及んでいました。

 

日野原先生は結核を患い、闘病生活中に「ノクターン」を作曲しました。

 

 

1943年、京都帝国大学医学博士の学位を取得。

 

○日野原先生は音楽好きでした。先生の博士論文は「心音の研究」。

 

心臓が収縮するとき低音が発生することを発見しました。

 

 

1951年、エモリー大学医学部内科に1年間留学し、ポール・ビーソン教授に師事する。

 

○メイヨー・クリニックでホリスティック医療に触れる。

 

 

1986年、日本バイオミュージック研究会(現・日本音楽療法学会)初代会長を務める。アメリカ内科学会名誉フェロー。

 

 

2008年2月17日放送の「N響アワー」(NHK教育テレビ)で日野原がゲスト出演した際、池辺晋一郎によって披露された。

 

 

2015年、全国学校音楽コンクール(小学校の部)課題曲『地球をつつむ歌声』の作詞を担当した。

総合医療・プライマリケア

 

<老年医学>

 

老年医学とは、高齢者を対象とする臨床医学の専門分野です。

 

臓器別の高齢者疾患へのアプローチだけでなく、老化に伴う高齢者特有の諸条件を考慮してのアプローチを必要とします。

 

さらに、個々の高齢者の価値観やQOLなどの側面までを含めた包括的な対応が求められる分野です。

 

 

高齢者の定義は、一般に65歳以上の人と定義されます。

 

そこから74歳までを前期高齢者、75歳から84歳までは、後期高齢者、85歳以上を超高齢者としてきました。

 

ところが、最近では元気で活動的な高齢者が増えたせいか、老人の定義を75歳以上の人に改めてはどうか、という提言もなされているようです。

 

そうなると、たとえば後期高齢者を90歳以上、超高齢者を100歳以上、という具合に改められていくかもしれません。

 

 

日本では1970年に高齢化率が7%を超え、高齢化社会となり、

 

1994年にはこれが14%を超えることで高齢社会、

 

さらに2007年には21%を超えたため、超高齢化社会になりました。

 

 

高齢者の多くは、生理的老化に伴う症状と、病気やケガなどによる病的老化に伴う症状が重複しています。

 

そこで、これらの診断、治療、生活指導に至るまでを一括して行うのが老年医学の役割であると考えると解りやすいかもしれません。

 

 

高円寺南診療所では、患者さんに「症状の原因は歳のせいでしょうか」と尋ねられて

 

「はい、おっしゃる通りです。あなたの症状は歳のせいです」などと見立てることは、ほとんど無かったように思います。

 

歳のせいと考えれば、患者さんは諦めざるを得なくなりますし、

 

医師も何となく責任逃れができるので、ある意味、双方の気が楽になる可能性はあります。

 

そうなると、とたんにその患者さんに対する医療の質が低下することになることは大きな損失です。

 

 

そうならないためには、老化という現象には、上述のとおり、生理的な老化と、病的な老化があること、

 

そして、両者はまったく無関係ではなく、密接な関係をもっていることを、改めて考察する必要があると思います。

 

 

可能な限り、高齢の患者さんの訴えが老化に基くものなのかどうか、

 

そして、それらが老化現象だとして、生理的な現象なのか、病的な現象なのかを、注意深く観察して、可能な範囲で見極めておくことが、

 

その後の診療方針を決定する上で、とても大切だと思います。

 

 

それでは、生理的老化とはどのようなものでしょうか。

 

このタイプの老化は全ての人の加齢に伴って発生する生理的な機能低下です。

 

成熟期を過ぎてから、ゆるやかに、かつ不可逆的に進行します。

 

白髪、老眼、シミやシワなどがその典型例で、多くの場合では年相応に進行していく老化現象です。

 

 

これに対して、病的老化というものがあります。

 

これは特定の疾患に罹患したり、環境要因などのストレスにさらされたりした人に生じる著しく加速された老化です。

 

高血圧、動脈硬化、骨粗しょう症などがその例ですが、治療によってある程度可逆的です。

 

 

高円寺南診療所では、水氣道®参加者の皆さんに、季節の変わり目である3か月ごとにフィットネス・チェックを実施して、

 

身体組成や骨密度にもとづく構造年齢、肺年齢や稽古の成果を評価し、水氣道®によるアンチエイジングの進捗を評価しています。

 

また、水氣道®参加者でない皆さんにも、可能な限り半年に一回はフィットネス・チェックを受けていただいて、病的老化の早期発見と治療に役立てています。

 

 

そもそも高齢者の疾患の二大特徴は“多様性”と“非典型性”にあるとされます。

 

“多様性”とは、高齢者の病態は若年者とは大きく異なり、多くの疾患に同時に罹ることです。

 

また“非典型性”とは、若年者では現れる症状が、はっきりと現れにくく、陽性所見を取りにくい場合が多いことを意味します。

 

そして、“多様性”と“非典型性”とがあいまって、多くの疾患を併発しているため、現れる症状や所見は、そうした複数の疾患からもたらされる場合が多いです。

 

その他の特徴としては、病気の治療によって改善しても、容易に再発を繰り返しやすいこと、

 

精神・神経症候をもって発症しやすいこと、

 

本来の疾患とは直接関連性が少ないはずの合併症を併発しやすいこと、

 

病気の予後は心理社会的要因の影響を受けやすいこと、などが挙げられるでしょう。

 

 

こうした事情が背景となって、高齢者は複数の医療機関にまたがって医療提供を受ける可能性が高く、

 

それぞれの担当医が、その高齢者の全体像を把握しにくいまま、治療薬を処方し、

 

全体として、かなりの種類と数の薬剤を抱えることになります。

 

それにもかかわらず、高齢者では各臓器の機能が低下しているため、薬剤による副作用発現も急増しやすくなります。

 

 

高円寺南診療所では、高齢者に限らず、なるべく漢方薬を上手に活用しています。

 

 

なぜなら、現代医学的発想に立つならば、極端な話をすれば、症状の数だけ処方薬が必要になりがちです。

 

これに対して、漢方薬は、複数の症状をカバーできるので、薬の処方をシンプルにすることができます。

 

また、漢方薬の多くは身体症状ばかりでなく、それに付随する精神症状も同時に改善できることが少なくないからです。

 

また、水氣道®の稽古に稽古的に参加している方や定期的に鍼灸治療を受けている方は、

 

病気やケガに罹りにくくなるばかりでなく、症状が現れやすいため、早期に病気を気づくことができ、治療による反応も良好です。

 

こうした意味においては、水氣道®や鍼灸・漢方薬による治療は高齢での老化の進行を遅らせるアンチエイジング効果がみられます。

 

しかも、病的な老化の治療のみならず、生理的な老化にも、アンチエイジング効果が及んでいるように観察されます。

<まめに記録を取る②>

 

「記録を取らなくなったNogucciは、どうなったでしょう?」

 

答えは、「体重計に乗らなくなった」でした。

 

 

体重が落ちなくなって暫くすると、

 

「今回も、変わってないだろうな…」と考え、

 

「どうせ変化がないんだから…」と思って記録をさぼります。

 

その様な甘い考えでは食事も、どんぶり勘定になっていきます。

 

食事が多少増えても気にしないと、

 

気づいたら体重が増える→体重計に乗るのが怖い→ますます記録を取りたくなくなる→体重が増える

 

という増え始めると、止まらなくなる悪循環に陥ります。

 

 

ですので「体重が減り、落ちなくなる時期が来ても、記録を取り続けることは、客観的に自分を見るために必要な事である。」

 

と実感したのは、リバウンドを公表して、再び記録を取り始めてからでした。