水氣道1級(高等修錬生)『調血航法』先任者 加藤博文

 

 

前回、私が水氣道を始めた2年半前は、

 

プールに入ることをかなり躊躇していたことをお話ししました。

 

 

その私が、今では週に2~3回定期的に稽古をしています。

 

 

水に浸かる回を重ねる毎に楽しくなっていったからです。

 

 

そして、通う回数も次第に増えていきました。

 

 

しかし、これまでずっと順調だった訳ではありませんでした。

 

『何かのアクシデントがあるたびに、水氣道の稽古に向かうのが億劫になる。』

 

そういうことを何度も経験しました。

 

 

脱落しそうになるたびに、飯嶋先生の後押しがありました。

 

 

『皆さんと楽しく水氣道を行うことを想像すること。』

 

 

すると、『1ト2ト・・・1ト2ト・・・』という『調血航法』のリズムを感じることができます。

 

そこには自然で無理のない<間>があり、<裏拍>を感じることもできます。

 

 

それだけで、再び、プールに足を向ける心の準備が完了したものでした。

 

 

次回は、<裏拍>のお話をいたしましょう。

 

 

 

註2:調血航法は、血流停滞である”瘀血(おけつ)”、

 

血流不足である“血虚”を改善するための水氣道の応用技法で「肝」を養います。

 

中医学で「肝」は、血流調整を行い、休息時には血液を肝に集め、

 

活動時には必要とする器官へ血液を送る働きがあるとします。

 

「肝」はまた、血を筋に送り、正常な機能を保つようにします。

 

このため、「肝」の血が不足すると

 

筋は十分な栄養を受けることができずにケイレン、しびれ、ひきつけなどを起こします。

 

女性の場合、体が虚弱で疲れやすく、貧血気味、気分がふさぎがちか不安定な方にも向きます。

 

具体的には、生理不順や体力低下などの他、

 

手術後あるいは産後の神経症(血の道症)に適応します。

 

ある程度「理氣航法」に慣れてきたら、「調血航法」を併用すると効果的です。

水氣道1級(高等修錬生)『調血航法』先任者 加藤博文

 

 

皆さん、暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?

 

 

『調血航法』の先任実践者、加藤博文です。この新しいHPでは初登場です。

 

 

さて、今回は『調血航法』についてご紹介いたします。

 

 

まずは自己紹介を通して、私がこれまで水氣道で経験して身に着けてきたこと、

 

それを少しずつ紹介させていただきます。

 

 

私が水氣道を始めたのは2年半前。

 

最初は、プールに入るのをかなり躊躇していました。

 

水に慣れていなかったためです。

 

 

『1・2・1・2…』というせわしない心臓の鼓動と、

 

余裕のない呼吸のリズムが私を襲ってくるのでした。

 

 

私の歩き方そのものに<間>がありませんでした。

 

これを水氣道では<間抜け>といいます。

 

 

しかも、テンポに<裏拍>を感じることさえありませんでした。

 

 

ですから機械仕掛けのロボットのように歩いていたり、自転車をこいでいたり、

 

まったく余裕のない動作と思考に支配されていたのだと思います。

 

 

註:調血とは、血流の不均衡(乱れ)や異常を整えることです。

 

血行を促進し、心身を暖め、元気をとりもどすのを助けます。

 

また、ホルモンのバランスを整える効果も期待できます。

8月14日に特許庁より、商標の登録の手続き書類が届きました。

 

 

水氣道は、これまで商標登録について積極的ではありませんでした。

 

 

それは、組織運営において「商標」の意義についての理解が不十分であり、

 

水氣道は「商品」と認識することに心理的な抵抗があったことが一因です。

 

 

実際には「指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分」とあり、

 

「指定役務」を登録するということを知ることで納得がいった次第です。

 

 

 

以下が、水氣道として登録した役務(えきむ)です。

 

 

指定役務:技芸・スポーツ又は知識の教授セミナーの企画・運営又は開催

 

スポーツの興行の企画・運営又は開催

 

 

 

商標登録されるのは以下の4件です。

 

「水氣道」「水気道」「suikido」

 

および「Mindfulness Group Aquabics」

 

 

すべて、国内法的には正式名称です。

 

 

日本水氣道協会内部では、

 

「水氣道」 を基準名称とします。

 

 

なお国内では「水気道」 を通称とします。

 

 

また海外では「suikido」 を表音的基準名称、

 

「Mindfulness Group Aquabics」 を説明的英語名称とします。

 

 

ただし、「suikido」は、フランス語圏向けの仏文ではすでに「suïkido」と表記しています。

 

 

手続きに当たり、特に以下の三会員の尽力があったことを報告します。

 

◎本田文雄、初等訓練生(水氣道6級)

 

〇 野口将成、特別訓練生(水氣道准3級)

 

〇加藤博文、高等修錬生(水氣道1級)

 

今回は、金澤克彦さん<水氣道少初段下[1](特別修練生[2])>からの御寄稿です。

 

 

 

皆さん、どうもこんにちは。理氣航法[3]でお馴染みの金澤克彦です。

 

 

私が水氣道を始めて、早くも四年の月日が経ちました。

 

 

気が付けば、帽子の色も白[4]から朱[5]、朱から黄[6]色になっていました。

 

 

何時の間にか、水に入ると自然とリラックス出来るようになっていました。

 

色んな変化に気づくことができる今日この頃です。

 

 

さて、今日は呼吸について少し書いてみようと思います。

 

 

実は私、普段の呼吸がすごく浅いのです。

 

 

先生から『君、息止めてない?』と言われるほど、

 

呼吸に関しては全く自信がありません。

 

 

『おいおい、そんな人が理氣航法【3】なんかレクチャーしていいんかい』

 

と言われそうです。

 

 

しかし、不思議なことに、プールに入ると人一倍息が吐けるようになるのです。

 

そして体がそれを要求しているようにも感じます。

 

 

これは一体どういうことなのでしょうか。

 

 

水に入ることによる安心感なのか、

 

自然に統合呼吸[7]になるからなのか、

 

はたまた前世が深海魚だったのか、

 

多分いろんな要素が含まれているのだと思います。

 

 

ともあれ、最近はプールで息を吐くということが、

 

私にとって非常に重要な習慣になってきているなと感じています。

 

 

普段、私達は意識をしなくても呼吸をしていると思います。

 

でも私のように悪い習慣に気づかないまま浅い呼吸になっている方、

 

人工的な現代社会にあっては沢山いらっしゃるのではないかと思います。

 

 

ですから、一度、水の中で意識して呼吸してみることをお勧めいたします。

 

 

そこで今まで気が付かなかったことが少し見えてくるかもと思うのです。

 

 

 

<注釈>

【1】 少初段下:水氣道の初段は少初段下・少初段上・大初段下・大初段上の4階級制です。

 

【2】 特別修錬生:黄帽子を被りますが、支援員見習いの修錬生の扱いです。

 

【3】 理氣航法:心身を巡る氣の流れを改善することを目的とした水氣道の応用技法。

 

【4】帽子:級外(体験生)、7級(特別体験生)、6級(初等訓練生)、5級(中等訓練生)および4級(高等訓練生)が被る帽子です。

 

【5】 朱帽子:准3級(特別訓練生)、3級(初等修錬生)、2級(中等修錬生)および1級(高等修錬生)が被る帽子です。

 

【6】黄帽子:上記各級の初段の他、弐段および参段が被る帽子です。

 

【7】 統合呼吸:水氣道で身につける呼吸法。腹式呼吸と胸式呼吸を統合した自然な呼吸法。

相変わらず、「わかっています…でも」Part7

 

 

これまでのMr. NoGucciの座右の銘「明日からがんばる!」

 

この考えはいつから、そしてどこからくるのでしょうか?

 

 

Mr. NoGucciは考えを巡らせました。

 

 

ふと思ったのは、変化することへの不安。

 

変わってしまうと自分が自分で無くなってしまうのでは?

 

という妄想に近い不安でした。

 

 

そこで、反省(消極的受動的でなく積極的能動的に)により、

 

過去を内省してみることにしました。

 

 

すると、ふと高校生の頃が思い出されました。

 

1年間で12kg減量(75㎏⇒63㎏)できた記憶です。

 

そういえば自分の本質は特に何も変わらなかったなあ…

 

 

自分で無くなるという考えは無用の不安。

 

「今を変えたくない」、「努力するのがシンドイ」

 

そういう怠惰な自分の言い訳でした。

 

 

さえらに、本音では

 

1)このままでいるほうが楽

 

2)スタートするには心の準備がまだ

 

3)やる気はあるが、もうちょっと待ってから

 

という禁煙を勧められている方がよく口にする言い訳も…

 

 

やはり、まずスタート。

 

そして、行動のきっかけを作るのが大切だと気付いたのでした。

 

前回まで、病的な水である四飲、

 

つまり4種類の(広義の)痰飲(たんいん)について説明してきました。

 

今回は、四飲以外の水毒について紹介します。

 

 

 

水毒は四飲の他に、留飲(りゅういん)伏飲(ふくいん)があります。

 

 

<留飲>は、水毒(痰飲病)の一つで、

 

飲邪が長期にわたり消退せず留滞する病証です。

 

中焦脾胃の運化機能(胃腸の消化吸収機能)が失われて水飲が長く体内に停滞し、

 

胸も腹もすっきりせず、ひっかかったり詰まったりするに至った状態です。

 

 

日常的なストレスによる不平不満が解消すると気分が落ち着き、

 

胸がすいて気持ちがよくなることを「溜飲が下がる」といいます。

 

このときの溜飲は、この留飲に相当します。

 

 

留滞する部位によって症状は異なるが、

 

疼痛・腫脹・機能障害・冷えなどがみられます。

 

 

水氣道では、全体の基本稽古に加えて「調血航法」、「活水航法」さらに、

 

「経絡航法」によって改善を図ることができます。

 

 

 

<伏飲>身体の奥深くに潜伏した痰飲のことです。

 

痰飲とは病的な水分が長期に欝滞して粘ったものを指す中医学の概念で、

 

さまざまな病気に関係しています。

 

この痰飲が体内に潜伏し、

 

悪寒や咳嗽、腰痛などが発作的に生じるようにまで至ったものが伏飲です。

 

これが進行して悪化すると、難治性の慢性疼痛になります。

 

 

伏飲は漢方医学の喘息の病態に関しては、古くから文献に記載されています。

 

喘息では痰飲が肺の奥深くの膈(横隔膜)の付近に潜伏しているので伏飲といいます。

 

ですから、非発作時には無症状で痰は出ませんが、

 

発作が起こると喘咳と一緒に痰となってこみ上がってくるのです。

 

発作を起こす引き金になるのはカゼ、寝不足、疲労、気候や気圧の変化、

 

ホコリ、タバコの煙や排気ガスなどですが、

 

実は病の根本要因はこの伏飲であり、伏飲が除かれない限り喘息は治らないわけです。

 

 

水氣道では、全体の基本稽古に加えて「理氣航法」、「活水航法」さらに、「経絡航法」

 

によって改善を図ることができます。

 

 

今回で「活水航法」の解説は締めくくります。

 

水氣道で直接「水」に係る「活水(カッスイ)航法」をです。

 

活水の方略は心身の「弾性」を育むことにあります。

 

弾性を育むための方術は、「流動性」と「柔軟性」です。

 

 

 

今回は、「経絡航法」という名称が登場しました。

 

次回よりこの「経絡航法」の解説が始まります。

 

 

心身を統合している3系統を東洋医学的に表現すると「氣」「血」「水」になります。

 

 

「経絡航法」はまず、「氣」「血」を統合的に調整して氣道を確保し、

 

さらに「水」と交わることによって、水氣道を完成させる道筋をなすものです。

 

 

さらにさらにさらに、「わかっています…でも」Part6

 

 

辞書を引くと「反省」とは、また「内観(ないかん)」に同じ、とされます。

 

Mr. NoGucciは反省しても内省に欠けることを、目下、反省中、否、内省中です。

 

Mr. NoGucciはこうして「過去を内省」すれば内観することにもなるのでしょうか?

 

 

そこで、内観について調べてみました。

 

  1. 白隠禅師の内観法:白隠は江戸時代の禅僧で白隠慧鶴と号したそうです。

 

その著書『夜船閑話』(やせんかんな)に紹介される心身リラックス法が内観法。

 

白隠は修行時代に心身のバランスを崩して禅病(ノイローゼ状態)に陥りました。

 

そこで京都白川の山奥に住む「白幽子」という仙人に伝授された

 

「内観の法」により、健康を回復したといいます。

 

 

その方法は、仰向けに寝て、

 

丹田から両足にかけての範囲に意識を置くための4つの公案を静かに唱えるというものです。

 

自律訓練法に似ているとされます。

 

 

Mr. NoGucciは、高円寺南診療所で勤務する中で、自律訓練法を習得しましたが、

 

これにも、最初はかなりの心理的抵抗がありました。

 

このお話は、いずれまた・・・

 

 

2.「内観」という用語:

 

明治期の浄土真宗の思想家・清沢満之が「内観」という用語を用いました。

 

昭和期の実業家で僧侶の吉本伊信が

 

諦観庵(浄土真宗系の信仰集団)に伝わっていた自己反省法の「身調べ」から

 

秘密色、苦行色、宗教色を除き、「内観」と名づけ、万人向けのものとした修養法です。

 

 

浄土真宗だけでなく、

 

たとえば内村鑑三のようなキリスト教信者も「内観」という言葉を用いているそうです。

 

現在、医療に応用されて内観療法ともいわれます。

 

森田療法と並ぶ日本起源の心身医学療法として国際的に認められています。

 

病的な水である(広義の)痰飲(たんいん)について、

 

さらに説明を続けていきます。

 

 

(広義の)痰飲(たんいん)は4種類あり四飲と呼びますが、

 

前回までの(狭義の)痰飲、懸飲、溢飲に引き続き、

 

今回は四飲の最後の支飲(しいん)について解説します。

 

 

 

<支飲>は咳嗽、呼吸困難(とくに起坐呼吸)がみられるものです。

 

 

起坐呼吸とは現代医学用語の一つで、呼吸困難が臥位で増強し,

 

起坐位または半坐位で軽減するという臨床的徴候です。

 

つまり、起きているより寝ている方が呼吸は苦しくなる左心不全の主要徴候です。

 

 

<支飲>のこれらの症状は肺寒が原因となって、

 

寒飲が肺に留まることによって生じます。

 

 

まず肺寒とは肺の寒証とされます。

 

寒証とは、体外から寒邪を受けたり、

 

体内で生産される陽気が衰退したりすることによって起こる寒冷状態です。

 

足腰が冷えて痛い、寝冷えでの腹痛寒がり・手足の冷え・頻尿など冷えの症状を伴います。

 

 

次に寒飲とは、冷えて喀痰の多い状態をいいます。

 

 この場合、「飲」とは体液が透明希薄(粘稠な場合が「痰」)です。

 

透明希薄な飲邪となるのは陽気不足のため津液(体液)を濃縮する力がないからです

 

したがって、寒飲とは、身体のエネルギーが生産不足し、

 

身体機能が低下して冷えを生じることによって水湿が停積して

 

肺(皮膚・鼻を含む呼吸器系)のエネルギーの流れをせき止める病態です。

 

 

その寒証にも虚寒と実寒があります。

 

 

○ 虚寒は陽虚(エネルギー不足で冷えを伴う状態)で生じ、

 

稀薄な多量の痰・寒がる・口渇がない・口中に唾液が多い・舌苔が白滑などがみられます。

 

治療法は温肺散寒(肺を暖めて、冷えを解消する)

 

 

水氣道では、最初の親水航法から、

 

ゆっくりとしたテンポ呼吸を整えることに留意しながら運動するようにします。

 

すると、次第に、呼気が暖かく感じられるようになります。

 

 

それは、肺が温まって、冷えが解消された証となるものです。

 

 

準備体操「イキイキ体操」や標準五航法までで十分なことが多いですが、

 

さらに「理氣航法」でさらに肺を暖め、

 

また慣れてくるにしたがい「活水航法」を習得することが有益です。

 

 

○ 実寒は寒邪を感受して生じ、鼻閉・鼻水・咳嗽・稀薄な痰などがみられます。

 

治療法は発散風寒(体表にとりついた病邪を発汗させて排除する)

 

・温肺化痰(肺を暖めて排出しやすい痰ができるようにする)

 

 

水氣道では、準備体操「イキイキ体操」や標準五航法までで十分なことが多いですが、

 

さらに「調血航法」で発汗を促し、

 

また慣れてくるにしたがい「活水航法」を習得することが有益です。

 

さらにさらに、「わかっています…でも」Part5

 

 

Mr. NoGucciは振り返りの乏しい人間だと、よく指摘されます。

 

つまり、内省が徹底的に欠如しているようなのです。

 

内省とは「自分の考えや行動などを深く省みること」だそうです。

 

辞書を調べてみると「反省」と同じ意味でも使われています。

 

 

ただし、Mr. NoGucci自身しょっちゅう反省はしているはずです。

 

だから、反省と内省は何となく違うのかな、と感じています。

 

 

Mr. NoGucciの反省の対象の多くは、今さっき、しでかしてしまった失敗です。

 

日常的でささいなものがほとんどで、大抵は周囲の注意で自覚します。

 

否、「日常的でささいなもの」と受け止めていること自体が反省の欠如です。

 

後悔の念には程遠く「今日はツイてなかったな。」という感じに近いです。

 

これは自己憐憫に近いもので、罪悪感は希薄かもしれません。

 

楽しくないので「この状況から早く逃れたい」という気分です。

 

 

「反省はしているが内省に欠ける」のはなぜか、検証してみます。

 

そこでMr. NoGucciの反省の特徴の核心をあぶり出してみます。

 

 

あれれ、浮かんできましたよ。

 

それは、自分自身で気づいて行う積極的な反省ではないことです。

 

指摘を受けて、やむを得ず行う消極的な反省に過ぎなかったことに思い至ります。

 

 

そうなると、反省にも二種類があることがわかります。

 

仮に自主的で能動的に反省することを特別に<内省>と呼ぶとするならば、

 

Mr. NoGucciにそれが欠けているのなら、「内省に欠ける」というのは納得です。

 

徹底的に欠けていたのは、「過去を内省する」習慣だったのかもしれません。

病的な水である(広義の)痰飲(たんいん)について説明を続けていきます。

 

 

(広義の)痰飲(たんいん)は4種類あり四飲と呼びますが、

 

前回までの(狭義の)痰飲、懸飲に引き続き、

 

今回は溢飲(いついん)について解説します。

 

 

<溢飲>は、体が重だるくなり、発汗作用が低下する状態です。

 

これは脾氣虚のため直接的に脾の運化作用が失調し、

 

間接的に肺の宣散作用が失調するために生じるものです。

 

 

これは、少し難しいので、段階を追って説明します。

 

 

まず脾の運化作用とは何か、です。

 

これは胃腸で消化された飲食物を、

 

氣 ( エネルギー)や、血に変えて心肺へ送り、

 

そこからから全身に運搬される一連の働きです。

 

 

飲食物は胃腸で消化されているにもかかわらず、

 

全身の組織や細胞に有効に行きわたらないため栄養源として代謝されない状態が、

 

脾の運化作用の失調です。

 

 

これは脾のエネルギー不足が原因と考えられるので、脾気虚と呼ぶのです。

 

 

脾気虚は、いわば「腑抜け(ふぬけ)」の状態で、

 

姿勢が悪く、息が浅く、気力・体力が乏しい状態です。

 

 

それは、姿勢保持・呼吸・運動のすべてに筋肉(特に骨格筋)が関与するのですが、

 

骨格筋の鍛錬不足で貧弱だと、

 

容易に脾気虚、つまり、「腑抜け」になってしまうのです。

 

 

 

次に肺の宣散作用とは何か、です。

 

これは呼気(吐き出す息)の気化作用を通じて

 

濁気(二酸化炭素や揮発性酸)を体外に排出することです。

 

 

息を吐くことはとても大切なのですが、

 

息を吐く働きは、息を吐き出す筋肉(呼気筋)の仕事です。

 

 

呼気筋の主役は腹壁筋群(腹筋)で、内肋間筋もある程度役割を果たします。

 

 

また、胸筋は肩が固定されていないと働きません。

 

 

安静時には呼気は受動的ですが、

 

運動時には吸気筋である横隔膜の運動の補助をします。

 

 

こうして、<溢飲>が脾氣虚のため直接的に脾の運化作用が失調し、

 

間接的に肺の宣散作用が失調するために生じる理由が説明できます。

 

 

骨格筋の鍛錬不足で説明ができます。

 

骨格筋が脆弱だと、四肢の筋肉は第二の心臓と呼ばれることもありますが、

 

筋肉が発達して活発な機能を発揮していれば、

 

特に静脈の血流が滞ることなく心臓へと灌流し、

 

それが腎臓や全身の皮下組織に及んで、排尿や発汗を促すことができます。

 

 

それが失調すると、体内の水をさばくことができなくなるため、

 

発汗作用が低下し、体が重だるくなります。

 

 

e

対処法は、①正しい姿勢の保持、②正しい呼吸の維持、③正しい歩行の継続です。

 

 

これらを可能とする基本的な前提条件は骨格筋の量と質と機能です。

 

①正しい姿勢が保持できないと、②正しい呼吸の維持ができなくなります。

 

 

また、①正しい姿勢、と②正しい呼吸、によって

 

③正しい歩行の継続が可能となります。

 

 

水氣道においては、

 

親水三航法で①、②、③の基本に立ち戻り、

 

準備体操<イキイキ体操>で主に①と②を強化し、

 

標準五航法で①、②、③をさらに強化したうえで、

 

さらに高度な④上下肢の協調運動機能を訓練しています。

 

各種の応用航法、理氣航法、調血航法、活水航法および経絡航法は、

 

上記の全体共通のトレーニングをさらに専門的に補強・充実させる目的でおこなています。

 

本日のトピックスである<溢飲>タイプの方は、

 

水中にいるだけで、何もしなくても効果が得られます。

 

自覚できなくても発汗が促進され、利尿効果も生じるため、

 

特に下半身の水腫(むくみ)が改善し、

 

身体全体の重だるさは訓練早期に解消されることが多いです。

 

 

最終的には活水航法で鍛錬しますが、

 

筋肉が脆弱な方は調血航法、

 

それ以前に吐く息が浅い方は理氣航法から始めることが賢明です。