前回はこちら

 

 

水氣道稽古の12の原則(8)全面性の原則(その2)

 

運動生理学にもとづくトレーニング理論におけるいくつかの原則の一つに「全面性の原則」があります。多くの場合は、筋肉トレーニングに関するもので、筋肉トレーニングはバランスよく行うという法則であると理解されています。またバランスとは、「必要な要素を見落とさない」ということにもつながります。ですから、「全面性の原則」には、概念自体の発展性や成長性が内在しているということができます。

 

たとえば筋肉トレーニングをする場合には、特定の筋肉や特定の身体部分の筋肉に偏らずに、全身の筋肉のバランスを考えながらトレーニングする必要があります。ただし、筋力トレーニングについていえば、全身の筋をバランスよく鍛えることを前提としつつも、大筋群を優先してトレーニングを実施することは大切です。

 

つまり、全面性とは、バランスであるとはいっても、それは広範囲に均一ということではなく、目的に応じて、それぞれに比重が異なることがあるということになります。

 

それから、トレーニングのモードとして持久力(持久力)を高める有酸素運動や筋力強化(パワー)のための無酸素運動がありますが、いずれか一方ではなく、両方のモードでトレーニングを行うことも「全面性の原則」の本旨に適うことになります。

なぜなら「全面性の原則」とは、筋肉トレーニングとはに限った原則ではないからです。

 

また、筋肉をトレーニングするためには、筋肉以外の体力向上全般に細やかな配慮と工夫が必要になるからです。逆に、筋肉だけに注目しているならば、それは本質的に「全面性の原則」に反して、これと矛盾することになるからです。ですから、筋肉トレーニングはバランスよく行うという狭い意味での解釈ではなく、少なくとも体力トレーニングはバランスよく行うという法則に拡張して理解することが大切です。

 

ですから体力とは、当然ながら単に筋力を意味するものではありません。筋力の他に、有酸素能力・柔軟性などの体力要素をバランスよく高めることが必要です。それらを、更に具体的に列記するならば、持久力、瞬発力、敏捷性、平行性、柔軟性といったようにいろんな体力要素です。前回説明したことの繰り返しになりますが、これらの体力要素を偏りなくバランスよくトレーニングしていくことが、より本格的な意味での「全面性の原則」ということになります。

 

そのためには「全面性の原則」の考え方を織り込んだ<準備体操><整理体操>を丁寧に実施することが有用だと思います。

 

水氣道では20年の歳月をかけて独自の<準備体操(通称:イキイキ体操)><整理体操(通称:のびのび体操)>を独自に発展・展開させてきました。

 

いずれの体操も「全面性の原則」に則って体系づけられていますが、それぞれの目的が違います。つまり、「全面性の原則」というのは、目的に応じて柔軟な多様性を示しうるものだということができます。そして、いずれの体操も各自の目的に応じた「全面性の原則」に則って組み立てられているのですが、両方の体操を組み合わせることによって、相互の効用を補完し合い、より完成度の高い稽古の基礎ができあがるのです。つまり、稽古の流れ全体を通して「全面性の原則」がより高度に完成していくものであることを理会していただきたいと思います。

 

それから、前回は、トレーニングにおいては、トレーニング効果を阻んでいる好ましくない生活習慣や認知・思考や動作・行動などの『悪い癖』の発見と是正も大切だと説明しました。『悪い癖』は行動や運動の偏りをもたらすからです。

 

ですから、本来の目的を見失わず、正しい方向性をもった行動をとる能力を育む努力と工夫なしには「全面性の原則」に適ったトレーニングの目標を達することはできません。

つまり、「全面性の原則」に適ったトレーニングとともに、トレーニングの方向性の全体を見通す能力育成に心掛けていかなければならないということになります。

 

そこで水氣道における「全面性の原則」は、筋力トレーニングをはじめとする各種体力要素を対象とするにとどまらず、メンタル面、社会面など、より広範な次元に根ざした原則としてとらえています。

 

水氣道がトレーニングするのは体力のみならず気力にも及びます。体力と気力をトレーニングするのは水氣道に限らず、多くのスポーツや武道についてもいえることです。

しかし、水氣道における体力と気力の訓練は、他の種目以上に相互の関連性を重視し、より深い洞察へ導くことができるように構成されています。

それは、心身相関という心身医学理論に立脚して稽古プログラムが構成されているからです。体力は主に瞬発力(パワー)持続力(スタミナ)によって支えられますが、気力もまた瞬発力(決断力)持久力(忍耐力)によって支えられます。

 

さて人間が心身共に成長していくためには体力と気力のいずれもが必要となりますが、その鍵となり、明らかに観察できる兆しとなるものが行動変容です。

 

行動変容のためには、決断力と瞬発力の助けが必要です。今まで経験したことのない活動を開始するためには多少の勇気と覚悟、それから最小限の体力が必要になります。

それらが揃ってはじめて自信が与えられることになります。ですから、水氣道を始めることを勧められた人は、当然生まれて初めての体験をするわけですから、一定の覚悟が必要です。

 

実際に、それが一番高いハードルになっているようです。逆に言えば、どれだけ時間がかかっても、そのハードルを飛び越えることができた人は、大きな行動変容を遂げ、その結果、初めての体験を味わい、認知にも変容が及ぶことになり、自信が与えられることになります。

 

しかしながら、自信とは受動的に与えられるものではなく、能動的に獲得していくものです。このことを理解していただく上で有益な概念として「自己効力感」という言葉を紹介させていただくことにします。

 

 

自己効力感は、社会的認知理論の中で使用される心理学用語の一つで、スタンフォード大学教授のアルバート・バンデューラ博士によって提唱されました。

 

同博士がさまざまな恐怖症を克服した人たちにインタビューを行うことによって、恐怖症という極めて困難な病を克服することができた人たちの中に共通点を見出したことがきっかけだとされています。

 

その共通点とは、「自分は困難を克服できる」そして「自分は現状を変えることができる」と信じるようになれたという変化を体験できたということでした。その後の継続的な研究によって自己効力感を保持する人は、「失敗」、「壁」、「困難」、「難問」に遭遇しても、「チャレンジする」あるいは、失敗しても「比較的早く立ち直る」という傾向にあることが証明されました。

 

 

私は20年に及ぶ水氣道の実践の積み重ねによって確信できたことは、まったく想像もつかない水氣道の世界に飛び込んでくることができるくらいに心身の気が熟した方たちにとって、水氣道が提供するハードルは決して高いものではないということです。

 

水氣道での「失敗」はむしろ楽しいものでさえあります。そして、ことさらに「壁」を意識することなく「壁」を乗り越えることができます。なぜならば、水氣道の稽古で提示する課題の提示の仕方に独自の工夫が施されているからです。

つまり、「困難」な急こう配と思える課題も、小分割して、なるべくなだらかな階段の数を増やすことによって「平面」に見えてくるような道程が用意されています。「難問」ですら水氣道の稽古メソッドに従って実践すれば、「快刀乱麻を断つが如し」であるといえるといって良いでしょう。

 

このように、水氣道の稽古における「全面性の原則」とは、体力のみならず気力を養い、そこから自己効力感を高めることによって、より健康的な行動変容に繋げ、各人の成長と発展に資するための指針となるものであるということができるでしょう。

 

水氣道の稽古における「全面性の原則」は、ここまでのお話に留まるものではありません。この原則についての更なる意味、そしてこの原則に基づいて、水氣道では、どのような実践に役立て、何を目標にしているのか等については、次回のテーマにしたいと思います。

 

前回はこちら



・ 水氣道稽古の12の原則(8)全面性の原則(その1)

 

運動生理学にもとづくトレーニング理論で、通常5つないし6つの原則とされるものの一つに「全面性の原則」があります。これは、一言で言えば、トレーニングはバランスよく行うという法則です。

 

筋肉トレーニングをする場合は、全身の筋肉のバランスを考えてトレーニングをすべきであるという意味で理解されているようです。これは身体の特定の筋肉のトレーニングに偏らないことが大切だということです。

 

一部分の筋肉だけを鍛え続けているとケガのリスクを高めてしまうので「全面性の原則」はスポーツ選手にとって重要な心得といえるでしょう。

 

たとえば、上半身だけ、下半身だけの筋肉トレーニングの場合は、偏ったトレーニングであり「全面性の原則」に反することになります。なぜならば、上半身と下半身のバランスが不良になるからです。

 

また、主動筋ばかりを強化すると、相対的に拮抗筋が弱まり、運動力学的にバランスを損ねてしまうため、拮抗筋の傷害につながることになります。もっとわかりやすく言えば、屈筋のみを強化すると、それに拮抗する伸筋が弱まり、それらの双方の骨格筋のバランスを支える土台である関節の軟骨を痛めてしまうことがあります。


このように、筋肉トレーニングをする場合には、特定の筋肉や特定の身体部分の筋肉に偏らずに、全身の筋肉のバランスを考えながらトレーニングする必要があります。

 

ただし、文字通り「全面性の原則」とはいっても、毎回のトレーニングにおいて、全身の筋肉をすべて均等に動かすことを意味するものではありません。筋力トレーニングについていえば、全身の筋をバランスよく鍛えることを前提としつつも、大筋群を優先してトレーニングを実施することは大切です。

 

それから、トレーニングのモードとして持久力(持久力)を高める有酸素運動や筋力強化(パワー)のための無酸素運動がありますが、いずれか一方ではなく、両方のモードでトレーニングを行うことも「全面性の原則」の本旨に適うことになります。

 

そして「全面性の原則」とは、体力トレーニングはバランスよく行うという法則です。

ここで体力と一言でいっても、それは単に筋力だけではありません。筋力の他に、有酸素能力・柔軟性などの体力要素をバランスよく高めることが必要です。

 

それらを、更に具体的に列記するならば、持久力、瞬発力、敏捷性、平行性、柔軟性といったようにいろんな体力要素です。これからの要素を偏りなくバランスよくトレーニングしていくことが、より本格的な意味での「全面性の原則」ということになります。

 

そのためには「全面性の原則」の考え方を織り込んだ<準備体操>や<整理体操>を丁寧に実施することが有用だと思います。

すべてのスポーツや競技の基礎となるすべての体力要素を高めるトレーニングは、この準備体操と整理体操に組み入れ、体力的基礎をしっかりと確保することは可能です。

また、それ自体が「全面性の原則」に則ったトレーニングであるといえるでしょう。

 

このように、体力というのは色々な要素で構成されているので、できる限り全ての体力要素を鍛えていかなければならないということも「全面性の原則」によって維持されやすくなります。

逆に言えば、「全面性の原則」は、ある体力要素を向上させたいのであれば、トレーニングの基礎として他の体力要素も向上させなければならないという原則であるともいえます。

 

さらに、いくらトレーニングであるからといって、むやみに動いてばかりではトレーニング効果が得られません。インターバルを入れて、小休止することも大切です。

活動と休息のバランスを工夫することも「全面性の原則」に含めて理解しておくことが望まれます。

たとえば、短距離走でベストスコアを得たい場合であっても、ダッシュだけでなく、ゆっくりと動くことが大切です。

つまり、同じ部位や種目に偏ったものではなく、バランスよく強化しなければならないということを「全面性の原則」が教えてくれます。

 

競技選手の場合には、トレーニングを実施する際には、その競技種目をよく分析し、目的に適う専門的なトレーニングを積み重ねていくことになりますが、その場合でも、基礎のトレーニングとしては、ある部位に偏ることなく全面的に強化する必要があります。

なぜならば、全面的に能力を開発することで、 将来より高度なテクニックを習得する際にもさまざまな能力の幅があるため比較的早く習得できるからです。

 

 

それから、トレーニングにおいては、トレーニング効果を阻んでいる好ましくない生活習慣や認知・思考や動作・行動などの『悪い癖』の発見と是正も大切です。

 

『悪い癖』は行動や運動の偏りをもたらすからです。ですから、本来の目的を見失わず、正しい方向性をもった行動をとる能力を育む努力と工夫なしには「全面性の原則」に適ったトレーニングの目標を達することはできません。

つまり、「全面性の原則」に適ったトレーニングとともに、トレーニングの方向性の全体を見通す能力育成に心掛けていかなければならないということになります。

 

以上、「全面性の原則」について縷々説明しましたが、水氣道における「全面性の原則」は、筋力トレーニングをはじめとする各種体力要素を対象とするにとどまらず、メンタル面、社会面など、より広範な次元に根ざした原則としてとらえています。

 

それでは、水氣道における「全面性の原則」とはどのような考え方に基づいて、どのような実践に役立て、何を目標にしているのか等については、次回のテーマにしたいと思います。

 


昨年は、新型コロナ禍によって水氣道の稽古中断が2カ月に及びました。

それにもかかわらず、再開後は年末にかけて意欲的な参加が増え、例年より多くの進級者および技能検定合格者を輩出することができたことは大きな喜びです。

 

本年も、各人にとって更に充実した稽古となるよう精進するとともに、水氣道機構の健全な発展を期したいと願うものであります。

 

 

 令和3年稽古開きについて

 

1月5日(火)中野支部鷺宮会場

 

1月8日(金)<鷺宮会場:金曜稽古開始>

 

1月9日(土)新宿支部ハイジア会場

 

1月18日(月)三鷹支部スバル会場

 

1月24日(日)<スバル会場:日曜稽古開始>

 

 

 

 進級検定合格者発表

 

 12月は進級検定(中審査および小審査)のみで、昇段試験(大審査)はありません。令和3年度の大審査は6月に実施、合格者発表は7月1日予定

 

 

中審査(合格者計4名)

 

水氣道准1級(高等修錬生候補)合格:細谷健太

 

水氣道准2級(中等修錬生候補)合格:高橋千晴、中西正子

 

水氣道3級(初等訓練生)合格:田辺幸子

 

 

 次回の中審査は、6月に実施、合格者発表は7月1日予定

 

なお、中審査検定料は3,000円、ただし、准3級への昇級検定料は2,000円とする。

 

 

小審査(合格者計13名)

 

水氣道4級(高等訓練生)合格:植田栄喜、大場康弘、野口将成

 

水氣道5級(中等訓練生)合格:西川みつ子、松田要

 

水氣道6級(初等訓練生)合格:石山雅代、漆弘雄、高見栄造、三上富三

 

水氣道7級(特別体験生)合格:漆正子、北岸亨、近藤正子、佐々木明彦

 

 

 次回の小審査は、3月に実施、合格者発表は4月1日予定

なお、小審査検定料は1,000円、ただし、次回検定より、6級への昇級検定料は500円、

7級入級は引き続き無料とする。

 

 

 技法検定資格取得者発表

 

インストラクター検定(合格者なし)

 

 インストラクター技法検定は中審査に併せて実施しています。
したがって、次回のインストラクター技法検定は6月、合格者発表は7月1日予定
インストラクター技法は、以下の3つの水準から成ります。

 

第一水準(I1)氣・血・水航法:理気航法、調血航法、活水航法

 

第二水準(I2)応用航法:三九航法、水拳航法、舞踊航法、モアイ水車航法

 

第三水準(I3)発展航法:卍字忍術航法、将棋航法、舞踏航法、経絡航法、太極航法

 

 

 

ファシリテーター検定(合格者計5名)

 

 ファシリテーター技法検定は小審査に併せて実施しています。
したがって、次回のファシリテーター技法検定は3月、合格者発表は4月1日予定

 

のびのび体操ファシリテーター(F4):鈴木けい子、濱屋幸一

 

五航法ファシリテーター(F3):阿部静子、足立博史

 

いきいき体操ファシリテーター(F2):林知子

 

親水航法ファシリテーター(F1):<該当者なし>

 

注意:1月6日(水)の記事をお読みください。

 

前回はこちら

 


水氣道稽古の12の原則(7)反復性の原則(3)

 

運動生理学やトレーニングの理論では、体力の向上には少なくとも週3回以上、規則的に、長期間行うこととされます。

 

技術面でも何度も繰り返し継続することで、神経系も強化され「自分のもの」とすることができます。1度や2度のトレーニングでは効果を得られにくく、習慣的に継続して行うことでより効果を上げられます。

 

それでは、水氣道の稽古も週3回以上行わなければ効果が得られないのでしょうか?

 

そのようなことはありません。

実際に週3回以上稽古に参加している会員は、それほど多くはありません。

 

週3回以上の参加が絶対条件になるのは、黄帽子組(支援員)以上で、今後も昇段を目指す会員のみです。

 

青帽子(指導員)など四段以上の職業水氣道家を志す方は、週4回以上の参加が求められます。

 

これに対して多くの会員は、せいぜい週2回もしくは1回という参加頻度です。週1回の参加でもエクササイズ効果はありますし、極端な話、月に1回しか参加できなくても継続して参加することには大きなメリットがあります。

 

その理由は、水氣道のエクササイズの内容がユニークであるからです。

日常の生活が陸上であるのに対して、水氣道のエクササイズは水中という、まったく異なる環境でのエクササイズだからです。

しかも、水泳とは異なり、基本的に起立二足歩行での運動を行います。

 

水には様々な物理的作用がありますが、とりわけ浮力による実質的体重の減少のために、抗重力筋が弛緩することにより、関節の可動域が拡大します。

そのため、日頃十分に使いこなせていない筋群を総動員させることができます。それは直ちに、より多くの神経系を賦活し、促通することにもなります。

 

このように、水氣道では、仮に月に1回程度の参加であっても周期的・計画的な参加により得られる健康上のメリットは少なくないといえるでしょう。そして、私は、反復性(継続性)の原則の概念の中に、周期性・計画性という要素を盛り込んでいます。

 

ですから白帽子組(体験生・訓練生)の皆さんには、まず稽古曜日を決めて、可能な限り毎週、よくを言えば週に2回参加していていただければと考えています。週1回程度の稽古でも4級程度、週2回程度の稽古では1級レベルに到達することも十分可能です。

 

 

水氣道における「反復性の原則」

 

水氣道での「反復性の原則」の特徴は、規則性を重視するところにあります。

 

つまり、トレーニングの効果を得るには、繰り返し行う必要がありますが、トレーニングの反復・継続をさらに規則的・計画的に行うことで、効果がより現れやすくなるというふうにこの原則を理解します。

 

この原則から形成されていくのがトレーニングの習慣化であり、トレーニングすることが生活の一部と化し、さらには生活そのものと一体化しつつあるならば、それをトレーニングの生活化と呼びます。

 

そして、水氣道は生涯を通して継続することを目標とする生涯エクササイズであるということも、この「反復性の原則」を基礎としています。
 

 

 

「反復性・周期性の原則」

 

このように水氣道の効果的な運動プログラムは、ある程度の期間、規則的・計画的に繰り返すようにしています。

 

繰り返し行うことは、テクニックを上げるための重要な要素です。

 

周期性の原則は、1年間を通したトレーニング計画を行うことです。

 

どの時期や季節が最も効果的かを考えてプログラムを作成します。

ただし、どんなトレーニングでも「繰り返し」を続けることが基本です。 特に身体の基本動作になると毎日の練習が必要です。効果を得るためには、継続することが何より大切です。運動は一生ものと考えて習慣にしましょう。
 

体力や気力を維持するにも、やはり継続が欠かせません。

トレーニングを始めたてのときは、自分が使いたい筋肉の感覚が明確にわからないことがあります。

しかし、何度も繰り返し反復することで神経系も強化され、神経や筋肉を快適に使っている感覚というものが育まれてきます。

 

ですから、初めてやってよくわからなくて興味が持てなくても諦めず反復して練習することで次第によくわかるようになり、楽しくなってくることを経験できるまで「反復・継続」することが大切なのです!

 

 

水中トレーニングとトレーニングの原理・原則

 

水中トレーニングでは、水中という陸上とは全く異なる環境に身を置くことだけで、体の内側から「過負荷の原理」が起きている状態となります。

 

より一層「トレーニングの原則」を留意しながらトレーニングを実施していくことが重要であることはいうまでもありません。また、健康づくりのためには水中環境で過ごしたり、いつもより軽い運動をしたりするだけでも効果が期待できます。

 

疾病の改善や健康づくりのための運動プログラム作成に関しては、特別に「運動処方」という言い方をします。

 

安全で効果的な運動処方を行うためには、運動前の問診やメディカルチェック・体力測定(フィットネスチェック)を実施し、個人の潜在的なリスクや体力水準、体組成などを評価する必要があります。

 

また運動中は定期的な強度の監視、運動後はトレーニング効果の再検査が重要です。

特にプログラムの作成にあたっては個人の特性を考慮し、各国で定められている運動処方の指針に従い、科学的に裏付けられたプログラムの作成が望まれます。

 

運動経験もないトレーニング初心者さん(水氣道の体験生)が、 いきなり上級者が行うようなハードな筋トレや複雑な航法をするのには無理がありますし、 高齢者が若い方と同じ方法で取り組む場合でも、怪我につながる可能性もあり危険です(個別性の原則)。

 

 

 

水氣道の原理・原則・法則の違いとは

 

◆ 原理とは

 

「自然科学においては,ある理論体系の基礎になっている法則および命題をさす。初めは仮定として導入されたものでも、それから出てくる結論が事実を正しく記述しているかどうかによって、その原理の正当性が判断される」

 

 

◆ 原則とは

 

「人間の社会的活動の中で、多くの場合にあてはまる基本的な規則や法則」
 トレーニングの<原理>は心身に起こる現象のことを指し、トレーニングの<原則>」は、効果を出すうえで守るべき法則(行動規則)のことを指しているのです。心身に起こる反応について知り、理解する。そして法則を守りながらトレーニングを行うことで、その効果をさらに高めることができるでしょう。

 

 

◆ 法則とは

 

「① 必ず守らなければならない規範。おきて。」

「② いつでも、またどこででも、一定の条件のもとに成立するところの普遍的・必然的関係。また、それを言い表したもの。」

 

上記の①、②のうち、トレーニング理論で用いられる<法則>にあたるのは②です。それは、具体的には「練習はただ何でもやれば効果が上がるというものではなく、基本原理・原則に基づいて計画的に行うことで大きな効果を得ることができる。」という体力トレーニングの根本とされる「ルーの法則」として知られています。

 

すなわち、

 

1) 体の機能は適切に使用すれば現状を維持でき、
さらに増強させることができる。

 

2) 体の機能は使用しなければ衰える。

 

3) 体の機能は過度に使用すれば障害をきたす。
これに対して、水氣道は、心身のトレーニングであることから、水氣道の法則は心身のトレーニングの法則ということになります。

 

すなわち、

1) 心身の機能は適切に使用すれば現状を改善できる。

 

2) 心身の機能は使用しなければ衰える。

 

3) 心身の機能は過度に使用すれば障害をきたす。

 

ただし、心身の機能を適切に使用して現状を改善すれば、
適切に負荷を強めていく限り障害を来さずに、現状をさらに改善できる。

 

 

 

今年の総括:

上達(昇段・昇級)している人の特徴

 

1. 水氣道の稽古の目的を理解し、人間性や人格を磨く

 

2. 自分の役割を意識して参加する(意識性の原則)

 

3. 反復・継続してトレーニングを行う(反復・継続性の原則)

 

4. 全身しっかりトレーニングを行う(全身性の原則)

 

5. 漸進的に負荷を上げる(漸進性の原則)

 

本年は、新型コロナ禍の影響により、概ね2カ月に及ぶ活動中止を余儀なくされました。

 

また、稽古再開後も厳しい人数制限等のため、不自由を強いられることになりました。

 

その後、人数制限は徐々に緩和され、中野支部(鷺宮健康プラザ会場)では1レーン10名まで、また今年新たに開拓した三鷹支部(スバル会場)では1レーン12名までが使用可となりました。

 

年末に向かっても稽古参加者は増えこそすれ勢いは衰えず、多くのメンバーが年内の寒稽古を完遂することができました。

そのうえ、年明け元旦付けで認定される昇級者の数も近年にない数を達成することができました。

元旦付けで合格者を発表いたしますので、是非ご確認ください。

 

このように、水氣道は、内部においては新型コロナのようなパンデミック状態でも継続可能なエクササイズとして再認識されつつあります。

 

令和3年には、水氣道を通して、より多くの皆様の健康維持増進のために貢献したいものです。

 

令和2年の水氣道支部の活動は12月25日の稽古納めをもって無事終了しました。

 

なお、水戸准支部は12月27日が稽古納めとなります。

 

令和3年の水氣道の稽古初めは、以下の通りです。

 

 

中野支部(鷺宮健康プラザ会場)1月5日(火)

 

新宿支部(ハイジア会場)1月9日(土)

 

三鷹支部(スバル会場)1月18日(月)

 

水戸准支部(青柳会場)1月10日(日)

 

前回はこちら

 



水氣道稽古の12の原則(7)反復性の原則(2)

 

身体が動くうちに筋力の維持・向上に努め始めましょう!

 

身体が動くうちに筋力を維持・向上させることが、廃用症候群(生活不活発病)の予防になります。

 

 

つまり、生活に不自由を感じていない、あるいは気づけていないか自分がまだ健康だと考えているうちに予防するスタンスこそが大切です。

 

介護保険料を支払っている以上、必要に応じて介護サービスを受ける権利があるのは当然のこととしても、すべての人が介護サービスを受けるようになって当然であるかのような意識が高まり続けることは、本人にとっても社会にとっても決して幸福なことではないはずです。

 

むしろ、高齢者になっても要介護状態にならないようにする「介護予防」という視点がもっと強調されて、具体的な対策が嵩じられなくてはなりません。

 

杉並国際クリニックは、「介護施設との連携もなければ、在宅医療や往診すらしない、地域住民に寄り添わない医療機関である」という批判は甘んじて受け入れています。

 

高円寺南診療所の30年の業績において、そのような体制を構築できなかったことは紛れもない事実だからです。

しかし、その代わり、あるいは、それ以上のものを創出できたとことを自負しています。

それが20年の実績がある「水氣道」です。要介護者の自然増を前提とする治療や介護志向の医療が主流であるならば、あえて主流に組みせず、逆に、予防や抗老化を志向し要介護者を減らしていけるような健康管理の拠点になろうというのが杉並国際クリニックであると宣言したいと思います。

生涯現役、自宅からの独歩通院を目標とする患者さんを支援する医療機関の取り組みがそろそろ正しく評価されても良いのではないか、と私は考えています。

 

廃用症候群にならないためには、いきなり「寝たきり」にならないことが大切だと強調されますが、これはあまり教育的ではないメッセージだと思います。

なぜなら、相当な高齢者で、しかもサルコペニアでフレイルの状態に近づいている人でも、自分は当分の間「寝たきり」にはならない、と勝手に思い込んでいることが多いからです。

 

しかし、寝たきりにならないためには、自分はまだ「寝たきり」にはならないという根拠に乏しい思い込みを捨てなくてはなりません。

「寝たきり」はある日突然に生じることを予め受け止めておく必要があります。

なぜならば「寝たきり」の原因として、病気やケガがありますが、病気やケガは長い人生において、いつ襲い掛かってくるかもしれないからです。

 

要介護者が増加の一途をたどっている最大の理由は、超高齢化社会という背景があるにせよ、それより大切なことがあると思われます。それは、「寝たきり」は、いつでもすぐに襲ってくるものだという厳しい現実から顔を背け、目を反らしてしまいがちだからです。その結果、有効な対策を立てて実行すべきことを先延ばしにしてしまうことになります。

 

いつ陥ってしまうかわからない「寝たきり」状態に対しては、その直接の原因となる病気やケガに気をつけることはいうまででもありうません。

しかし、過度に用心し過ぎて鍛錬を怠ることによって、かえって病気やケガを招いてしまいかねないことにも注意する必要があります。

 

むしろ、仮に病気やケガになって長期入院などで一時的な寝たきり状態になっても、あきらめたり、ラクを考えたりしないで、なるべく身体を動かし続けることができるように、日頃からの訓練を継続して、万一に備えておくという心構えと週間の確立が大切です。
 

高齢者ばかりでなく、40歳くらいの方の中にも、動かないでいる状態や動かなくても済んでしまう生活が続くと、それが悪しき習慣(悪癖)になってしまい身体を動かすのを嫌がる人もいます。

 

前回説明しましたが、ひとは40歳を超えると少しずつ筋肉量が減少していき、高齢者では猶更です。

ですから健康状態に配慮しながら、高齢者においては杖や車いすなどを使用する機会をできるだけ減らし、非高齢者においても座りっぱなしの生活にならないよう、自分で身体を動かすように工夫することは、廃用症候群を防ぐ方法です。

 

ただし、もし本格的な廃用症候群になった場合は、家族や介護スタッフ、医療関係者が協力してリハビリに努めましょう。高齢者の場合、短期間で回復するわけではありませんが、途中でやめるとそのまま「寝たきり」になってしまいます。

 

リハビリのゴールを設定し、焦らずコツコツ反復・継続して行うことが重要です。

もっとも、独歩で外来通院が可能な方であれば、水氣道に継続的・計画的に参加することによって廃用症候群は確実に予防できるばかりでなく、気力や体力を含め生活の質を向上させることが可能です。

 

 

 

廃用症候群の原因
 

特に高齢者では、知らないうちに進行し、気がついた時、あるいはある朝突然に「起きられない」「歩くことができない」などの状況になってしまうことが少なくありません。
 

過度に安静にしたり、あまり身体を動かさなくなったりすると、筋肉がやせおとろえ、関節の動きが悪くなります。そしてこのことが、さらに筋肉や脳神経の活動性を低下させて悪循環をきたし、ますます全身の身体機能や精神機能に悪影響をもたらします。最悪な状態では、「寝たきり」となってしまうばかりではなく、「認知症」をももたらしてしまうことがあります。

 

 

廃用症候群の診断
 

廃用症候群には決まった医学的検査はありません。動くことができない病気になったり、安静にしている時間が長く、普段できていたことができなくなってしまったりした場合には「廃用性筋萎縮」が考えられます。また、動かせていた関節の動ける範囲が狭くなれば「関節拘縮」と考えられます。廃用症候群は医師だけでなく看護師や介護従事者、家族が見つけることもあります。

 

 

廃用症候群の予防
 

廃用症候群は、治療を必要とする疾患によって安静臥床を余儀なくされている状況で、運動をしないこと、寝ていること、日常生活に支障をきたす手足の位置や関節の角度(不良肢位:ふりょうしい)で長時間を過ごすことにより生じます。
 

たとえば、下肢を骨折して、ベッド上での生活が長くなると、骨折した下肢の筋肉が萎縮したり、関節が拘縮してしまったりするだけでなく、起立性低血圧や、静脈血栓症、誤嚥性肺炎や褥瘡を起こしやすくなります。
 

これらの廃用症候群を予防するために、一般的に言われていることは、「できるだけ寝た状態を存続させないように」ということです。そのために座位時間を増やしたり、ベッド上で上肢や下肢を動かす運動を行ったりします。また、精神心理面では「人とのかかわりが薄れると精神機能の低下をきたすので、言葉をよくかけ、面会をよくするようにしましょう。」とアドバイスすることが多いです。

 

 

新型コロナウイルス感染症対策と廃用症候群
 

新型コロナウイルス感染症の感染が再び拡大する可能性がある状況で、毎日ご不安に感じられている方も少なくないと思われます。特に高齢者の方におかれましては感染予防を心掛けながら健康を維持していくことが大切です。
 

ただし、消極的な感染予防を続けていくことには盲点があります。免疫力の温存・強化を図るためには、養生と鍛錬を続ける必要があるからです。とはいえ、天候に関わらず屋外で安心して継続的に実施できる運動は少ないです。季節や天候に関わらず、あるいは感染症のパンデミックにあっても継続可能なエクササイズとしては自宅で行える体操がお勧めです。

 

お勧めではありますが、それを実行できる人ばかりではありません。それは、ある意味では当然のことです。

なぜならば、前述したように人間は社会的動物(アリストテレス)であって、とくに精神心理面では「人とのかかわりが薄れると精神機能の低下をきたす」ことになるからです。

 

通年性・全天候型で、しかも次亜塩素酸を含んだプールの水、50%以上の湿度など、ウイルスの不活化に効果のあるプール環境での「感染は極めて低い」ことは、生涯エクササイズとしての水氣道の大きな強みであり、安全性が確保された上に、養生と鍛錬を反復して継続できる貴重なエクササイズであるともいえるでしょう。

 

ですから水氣道会員に廃用症候群なし、なのです。

 

 

廃用症候群のケア・治療
 

高齢者が一度廃用症候群になると、元の状態まで改善させることは難しくなります。

つまり廃用症候群は治療よりも予防が重要です。心機能の低下や誤嚥性肺炎は普通の病気と同じように投薬を中心に治療を行います。せん妄の時には精神神経系の薬を使用することもあります。

 

可能であればできるだけ早く元の生活に戻すことが大切です。自宅から入院して廃用症候群になった場合は、入院のきっかけとなった病気が治ったら速やかに自宅に戻ると廃用症候群を防ぐことができます。やむを得ず長期臥床が必要であった場合は、早いうちから病気の治療を妨げない範囲でリハビリを行うことも重要です。しかし、後になればなるほど、効果は限られてきます。

 

前回はこちら

 



水氣道稽古の12の原則(7)反復性の原則(1)

 

反復性の原則

 

反復性の原則とは、技術や体力に関係なく、トレーニングの効果を得るには、計画的に繰り返し行う必要があるという原則です。

 

その場合、反復して身体に与えられる運動刺激は適切であることが必要です。

これは、毎回のトレーニングにおいて同一の運動動作を一定程度以上繰り返すメニューを確保するということにとどまらず、全体のトレーニングを繰り返し、長い時間かけて規則的に継続して行うことで、効果が高くなるという意味も含んでいます。

そのため、反復性の原則は、「継続性の原則」と呼ばれたり、「反復・継続性の原理」と呼ばれたりすることがあります。

 

つまり運動の効果を得るためには、時間の要素が不可欠であり、繰り返し、規則的に、長期間行うことが大切になります。その理由は、トレーニング刺激による身体の適応(=体力の向上)には時間がかかるため、体力を向上させるにはどうしてもある程度の期間継続する必要があるからです。

 

 

トレーニング初期段階は神経と筋肉を繋げていく時期です。

 

現状で使えていない筋肉を使えるようにする「神経と筋肉の促通時期」が、一般的に4~8週間ほどあります。

その時期は、筋肉量に変化は見られません。実際に筋肉量に変化などが起こるのはこの後になります。

 

水氣道の会員ばかりでなく、杉並国際クリニックにおいて健康管理を続けている皆様にはお馴染みのフィットネス・チェック(体組成・体力検査)を概ね季節ごと(春・夏・秋・冬、3カ月ごと)に実施していることも、このような理由によるものです。

 

 

「反復性の原則」の本質から外れたトレーニングの影響

 

トレーニングは1回頑張ったからと言って、すぐに効果が現れるものではありません。

また、一定以上の期間を継続して行わないと筋肉は減っていってしまうため、1回やっただけ、短い期間だけ、では効果はでません。トレーニングの効果は長期間のトレーニングによって、初めて目に見える大きな効果を期待することができるので、いかに優れた施設や指導者、トレーニングメニューやプログラムがあったとしても継続しなければ効果は表れません。

 

ですから、「反復性の原則」とは、「トレーニングの効果を得るためには定期的・継続的なトレーニング実施が必要。どんなに優れたトレーニングでも数回だけのトレーニングや極端に少ない頻度でのトレーニングなどでは効果は得られない」といった意味です。

 

「可逆性の原理」のところで改めて説明しますが、短期間のトレーニングで鍛えた身体は、運動を辞めてしまうと短い時間で元に戻ってしまいます。

逆に長い時間をかけてトレーニングを行った場合、筋肉や神経がゆっくりと成長、身体の中で定着するため、少しトレーニングを休んだだけでは、一期に元に戻ることがありません。そのためにも、トレーニングは継続して行うことが必要になります。
 

たとえば絶対安静の状態で筋肉の伸び縮みが行われないと、1週間で10~15%の筋力低下が起こると言われています。高齢者では2週間の床上安静でさえ下肢の筋肉が2割も萎縮するともいわれています。

 

また病気やケガのない一般人でも40歳を境に人の筋肉量は減少していきます。そして、高齢になるにつれて筋肉量は減少していき、単純に筋肉量が減少していけば運動機能の低下が起こるため、しらずしらずのうちに人は動かなくなっていきます。日常生活で動く機会が減ってきてしまうと生活不活発病という、いわゆる「廃用症候群」が起こってしまいます。
 

これは、トレーニング効果が消失する以前に加齢に伴う筋肉の減少、又は老化に伴う筋肉量の減少(以下、サルコペニア)も注目されています。

この病態は栄養障害、虚弱(以下、フレイル)とも関連が強く、転倒予防や介護予防の観点からも重要です。フレイルとは、高齢者の身体機能や認知機能の低下を表し、「虚弱な状態」を意味します。日本老年医学会が2014年に提唱した概念であり、介護業界では要介護の予備軍として非常に注目を浴びています。

 

運動機能低下に加えてうつ病や認知症などの「認知機能の低下」、寝たきり・閉じこもりなどの要素が加わることでフレイルが加速していきます。また、この状態には低栄養の関連性が強いと厚生労働省も発表しています。
 

こうしたサルコペニアやフレイルは高齢者の身体機能障害のリスク因子、転倒リスク因子として注目されています。

また、これらは同時に「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群、通称「ロコモ」)をもたらしてしまいます。ロコモは「足腰の衰えなどが原因で、日常生活に支障を来している状態」のことを指し、原因には主に「加齢による衰え」や「筋肉・関節・骨など運動器自体の病気やケガ」が挙げられます。これは高齢化社会を迎え、国が「メタボリックシンドローム」(メタボ)の次に国民に浸透させようとしている言葉です。
 

ただし、「サルコペニア」、「ロコモ」や「メタボ」などの概念は主に身体的側面を捉えた概念であるため、心身の両側面をとらえる「フレイル」や「廃用症候群」(生活不活発病)とは異なる次元の概念であると言えます。

 

廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のことをいいます。

廃用症候群では、さらに、気分的な落ち込みが顕著に現れてうつ状態になったり、前向きに取り組むやる気が減退したりと、精神的な機能低下も見られます。意欲低下などの精神的な機能低下により、身体活動の継続が阻害され、ますます「廃用症候群」が進行してしまうという悪循環に陥ってしまうことになります。

 

 

反復性の原則は「廃用症候群」予防トレーニングの鉄則

 

廃用症候群(生活不活病)とは過度に安静にすることや、活動性が低下したことによる身体に生じた様々な状態をさします。この状態は、反復性の原則を無視することによってもたらされる心身の状態であるということができます。
 

トレーニングを中断したままベッドで長期に安静にした場合には、生理的な変化として以下の「廃用症候群の症状の種類」に示すような症状が起こり得ます。病気になれば、安静にして、寝ていることがごく自然な行動ですが、それを長く続けると、心身の両面において廃用症候群を引き起こしてしまいます。

 

 

廃用症候群の症状の種類

 

廃用症候群を発症すると、「運動器障害」「循環・呼吸器障害」「自律神経・精神障害」を引き起こします。

 

<身体諸器官系統の衰え>

「運動器障害」(サルコペニアやロコモティブ症候群「ロコモ」と共通)

 

• 筋萎縮・・・筋肉がやせ衰える(サルコペニア)

 

• 関節拘縮・・・関節の動きが悪くなる

 

• 骨萎縮・・・骨がもろくなる

 

 

「循環・呼吸器障害」(メタボリックシンドローム「メタボ」に関連)

 

• 心機能低下・・・心拍出量が低下する

 

• 起立性低血圧・・・急に立ち上がるとふらつく

 

• 誤嚥性肺炎・・・唾液や食べ物が誤って肺に入り起きる肺炎

 

• 血栓塞栓症・・・血管に血のかたまりがつまる

 

 

「その他の身体障害」

 

• 逆流性食道炎・・・胃から内容物が食道に逆流し、炎症がおきる

 

• 尿路結石・尿路感染症・・・腎臓、尿管、膀胱に石ができる、細菌による感染がおきる

 

• 褥瘡(じょくそう)・・・「床ずれ」といわれる皮膚の傷や感染

 

 

 

<精神神経系の衰え>

 

「自律神経・精神障害」

 

• うつ状態・・・精神的に落ち込む

 

• せん妄・・・軽度の意識混濁のうえに目には見えないものが見えたり、混乱した言葉づかいや行動をするようになったりする

 

• 見当識障害・・・今はいつなのか、場所がどこなのかわからない

 

 

反復性の原則の前提としての栄養

 

脳卒中を始めとする疾病予防の重要性は言うまでもないですが、後期高齢者が要介護状態になる原因として無視できないものとして、「認知症」や「転倒」と並んで「高齢による衰弱」があります。これはまさしく老年医学で言う「虚弱:フレイルティ(frailty)」を含んでおり、低栄養との関連が極めて強いのです。

 

このフレイルの原因としてサルコペニアが重要です。ですからサルコペニアを予防することが、ロコモ、フレイルばかりではなく、廃用症候群(生活不活発病)やメタボの予防になります。

 

サルコペニアは筋肉の減少であるため、筋肉を増やすことが必要です。そのためには、まず「栄養をしっかり確保すること」が重要で、特にタンパク質を摂取することが重要視されています。牛ヒレ肉や豚ヒレ肉などのお肉の摂取や、赤身のマグロやかつお、いわしなどの魚の摂取もタンパク質を多く含む食品として知られています。しかし、蛋白質は動物性蛋白のみならず大豆などの植物製品を積極的に摂取することが望まれます。

 

また蛋白質の代謝のためにはミネラルやビタミン栄養をしっかり摂取することが必要であり、そのためには牛乳をはじめとする乳製品の活用が大切です。

 

このように栄養を確保した上で、次に重要なのが適度な運動を行うことです。栄養状態が不良な状態で運動を行っても全く意味がないばかりか、むしろ逆効果であったりするので、栄養状態が良いということが予防のための基本的な前提条件です。栄養はエクササイズを反復・継続するために要求される最低限の体力のみならず気力の確保のためにも不可欠だからです。

 

鷺宮スポーツ・コミュニティプラザから、

新型コロナウィルス感染拡大への措置として下記の通達がありました。

 


1、12月より館内でのマスクの着用を原則義務化(プール使用は更衣室内までの着用

 

2、マスクは鼻と口を確実に覆うようなマスク若しくはネックゲイターの着用(マウスシールドは禁止)

 

3、移動中、更衣室内でのお客様同士の会話は、できる限り控える。

 

4、会話をする場合は、必ずマスクの着用。

 

5、利用当日は、事前に各自検温、入館時検温の2回を徹底

 

6、体調の優れない場合は、利用を控える。

 

以上です、よろしくお願いいたします。
                            

 

日本水気道協会
中野支部長:林亮博

 

IMG_20201210_085336

 

前回はこちら



水氣道稽古の12の原則(6)全面性の原則(2)

 

全面性の原則

 

全面性の原則とは、一般的にはトレーニングをする際は、同じ部位や種目に偏ったものではなく、バランスよく全面的に強化しなければならないという原則です。
 

例えば、胸の種目だけ行うのではなく、脚や背中など全身をまんべんなく鍛えることが大切です。偏りのあるトレーニングでは、怪我や技術の低下にも繋がってしまいます。
 

水氣道の稽古の流れは基本的に「全面性の原則」に従って体系化されているため、体験生や訓練生の間は、この原則を知らなくても「全面性の原則」に則った稽古ができるようになっています。

しかし、稽古というものは、時と場所と参加者などの変数によって、臨機応変にプログラムが修正されていきます。修錬生ともなれば支援員等の指示によって、一定の技法を訓練生や体験生の先頭に立って展開していくことがあります。その場合は、「全面性の考慮」が大切になってきます。

 

 

水氣道における「全面性の原則」
 

水氣道での「全面性の原則」の特徴は、簡単に言うと「偏らずにバランスよくトレーニングしましょう」ということに留まらず、「心身をバランスよく鍛えることが大事ですよ」ということが含まれているということです。

 

さらにはメンタルトレーニングや集団内での社会的能力の向上も必要です。「頭ばかりでも、体ばかりでもダメ」ということに他なりません。また、体力だけでなく気力も養うのですが、それだけでは一般のスポーツや従来の武道と変わることはありません。

 

水氣道で養うのは行動体力だけでなく防衛体力も視野に入れています。つまり、病気にならない体力、病気になっても回復できる体力である「防衛体力」を養うことも水氣道の目的の一つです。

 

このように、体力を複眼的に捉えて鍛錬することも「全面性の原則」に含まれていると理解しておいてください。

また、運動器と感覚器は切っても切れない相互補完的な関係があります。

 

水氣道は稽古を勧めていく過程で、身体の五官をすべて動員することになります。

感覚には表在感覚(温・冷覚、触・圧覚、痛覚)の他に深部感覚(位置覚、振動覚)などがあります。水氣道の稽古では、これらの感覚を訓練することで脳にとって有益な刺激を与えることができ、また、それによって磨かれた感覚によって緻密で正確な判断や行動が可能になっていくのです。

 

 

「全面性の原則」に基づいた稽古の基本

 

「全面性の原則」には多くの要素が含まれています。そうすると、いろいろな要素がある中で、いったい何から始めたらよいのか、という疑問が生じます。その答えは、すべてのスポーツや競技の基礎となる体力的基礎となる訓練をしっかりとやることであると考えてよいでしょう。


もっと簡単に言えば、人間は直立二足歩行をする動物であって、左右交互運動を行うことが基本であることから稽古を考えていくことになります。

 

人は直立しているだけで運動をしています。重力に逆らって姿勢を保持するために、下肢の筋肉や体幹の脊柱起立筋が絶えず活動状態にあります。また、それ以前に、呼吸するための呼吸筋(呼気筋と吸気筋)が休みなく働いています。

ですから、私たちが水氣道で水に入るだけで、水圧に抗して呼吸するため呼吸筋の負荷運動を行い、また、水中では浮力や水流・波などの流体力学的作用により、姿勢を保持するための筋緊張は亢進することになります。

呼吸筋、姿勢保持筋という基礎の上に立って、移動などの動作をするための筋肉が水の抵抗や粘性により負荷を得て自ずと鍛えられることになります。

 

多くのスポーツや武道と水氣道の決定的な違いは、基本的に一切の道具を使用しないことと、他者と直接接触しないことにあります。

そして、運動は常に左右交替制であり、対称的運動を行うということにあります。

 

水氣道における「全面性」とは左と右を等しく鍛えることも含んでいます。

 

多くの球技のように左右の機能の分化をはかるのではなく、脱分化・均等化をはかるのです。もちろん、完全に等しく鍛えることはできませんが、前進運動があれば、後退運動も行うことによってバランスのとれた稽古を心がけます。これも水氣道の「全面性の原則」に含まれています。

 

稽古計画を立てて、なるべく計画的に参加できるように工夫して調整することも稽古の一環です。そして、稽古に通う往来での時間配分や、食事のタイミングやその内容を吟味することも「全面性の原則」に含めて考えてください。それから、毎日の生活も水氣道の延長であり、それが一体となったならば「全面性の原則」は最大限に生かされることになるでしょう。

 

一回の稽古の中で、地味ではあるが効果的な基本エクササイズを全身バランスよく実施して、柔軟性や筋力・筋肉量の向上を図り、体力向上に繋げていけるように水氣道の体系は構成されています。

その中で個々人にとって特に弱い・硬い・動かしづらい部分に関しても各人が少しずつ気づいていくことになります。

多くの場合、適切な時期と機会に、個別に、あるいは仲間や上級者と共にしっかりとアドヴァイスを受け、より望ましいアプローチが可能になっていきます。

 

このように、水氣道では、強いところや優れたところをさらに強化していくことよりも、極端に弱い部分や苦手な部分があればまずそこを改善して、全体のパフォーマンスを低下させてしまうような目立った弱点をなくすことを大切にします。そうした弱点を全体の中から探していく姿勢も「全面性の原則」に則った水氣道の稽古の方向性です。

 

「全面性の原則」は日常生活においても応用範囲が広いです。

語学習得の場合も単語を憶えるだけでなく、文法も、リーディングも、リスニングも、スピーキングも,ライティングもすべてバランスよく勉強することで、高い語学スキルが鍛え上げられるものなのです。

 

いろいろな側面を訓練することは時間も労力も要するために敬遠する人も少なくないようですが、それも当面の間だけのことです。全面性の原則に従って学習していけば、学習効率が加速度的に高まっていきます。

 

全体を見通す事を忘れずに:目標を達成するためには全体を見通す力が必要
部活動でレギュラーを取れる人や就職活動で引く手数多な人、仕事で結果を残せる人など人生を成功させている人たちは決まって正しい方向性をもった行動をとる能力が優れているのです。

 

「木を見て森を見ず」ということわざがありますが、物事の細部に気をとられてしまい本来の目的を見失っている人が多いように感じます。 

 

私にも苦い経験がありますが、例えばあなたも次のような人を見かけたことがあるのではないでしょうか?

 

• 健康になることを目的として禁煙をしているのに家族が見ていないところでタバコをもらう人


• 理想のボディを手に入れたいと思ってダイエットを始めたのに体重を落とすことだけにとらわれて、骨や筋量を減らし、脂肪を増やし、プロポーションを崩してしまう女性

 

• 舞台の上での見栄えを良くしたいがために、腹筋を鍛えすぎて身体を固めてしまった結果、柔軟なベルカント唱法を困難にしてしまった声楽家

 

• 打球の飛距離を伸ばすために体重を増やそうと食事の摂取量を増やしたがお腹周りに肉がつきすぎてスイングが遅くなってしまう野球部員

 

• 走力向上のために筋力トレーニングを始めたにも関わらず、いつのまにかスクワットの重量を上げることが主たる目的となってしまい(膝上の筋肉がつきすぎて)結果的に総力を落としてしまったランナー

 

• 将来の実生活に役立つ知識・知恵を身につけるために勉強をしているはずなのに定期テストの問題をカンニングする学生

 

• 子供中心に物事を考えるあまり子供以外の人のことが目に入らなくなって、かえって子供に恥ずかしい思いをさせてしまう親

 

以上の例は本末転倒です。

もし、結果が伴っていなかったり心当たりがあったりするのなら一旦今の悪習慣を中断して、その時間を有効に利用し目標を再確認しましょう。

 

目標を達成できる人は全体を見通す能力が高い人たちなのです。

水氣道

 

前回はこちら

 


水氣道稽古の12の原則(6)全面性の原則(1)

 

筋力トレーニングの通説としての「全面性の原則」

 

これは一般的には、全身の筋肉をバランスよくトレーニングしなければならないという原則として理解されているようです。

この原則は、トレーニング効果の向上のためだけでなく、けがや障害の防止という安全確保の目的のためにも強調されています。

 

一か所や一方向に偏った過度な集中トレーニングでは、たとえばヒザや腰を痛めたために休養を強いられ、かえって筋力を落としてしまいかねません。

なぜならば、鍛える部分が偏ると、また偏った動きのスポーツでは、全身のバランスが崩れがちとなり、怪我や痛みの原因になりやすくなるので注意が必要です。

このように部分の筋肉だけを鍛え続けているとケガのリスクを高めてしまうので「全面性の原則」はスポーツ選手に限らずすべての人にとって重要な心得といえるでしょう。

 

そこでバランスよくトレーニングすることで、全体的に機能を向上させようとするのが、そもそもの「全面性の原則」です。怪我なく効率的に筋力向上を達成する上でこの原則は重要だと考えます。

 

たとえば、腕立て伏せだと、肩や上腕二頭筋や三頭筋、大胸筋などの上半身は鍛えられても,下半身は鍛えられにくい傾向にあります。

全身の筋力を高めるのであれば、背筋や下腹部、脚なども併せてトレーニングする必要があります。上半身だけでなく下半身も、身体の前面だけでなく後面も、大きい筋肉も小さい筋肉も、表層の筋肉も、深層のインナーマッスルも、呼吸筋も、姿勢を維持する抗重力筋、さまざまな動きに必要な筋肉も、くまなく鍛えることが全面性を考慮したトレーニングということになります。

 

 

トレーニングの対象を筋力に限らないことも「全面性の原則」

 

全面性の原則はその言葉通り、包括的にトレーニングをしていく必要性を説明した原則です。包括的トレーニングとは、自己の体力や、その他の健康の現状を考慮し、すべての健康要素を高めるトレーニングを行なうことです。そのためにはまず必要とされる体力の各要素をバランスよく全面的に発達させることです。

 

具体的には、有酸素運動、筋力トレーニング、柔軟性などの体力要素もバランスよく高めることです。

また、筋力だけの話ではなく、柔軟性やパワー、持久力といった他の体力要素もトレーニングしていくことも全面性です。

 

したがって、「全面性の原則」とは、ある体力要素を向上させたいのであれば、トレーニングの基礎として他の体力要素も向上させなければならないという原則のことです。

つまり、体力というのは色々な要素で構成されているので、可能な限り全ての体力要素を鍛えていかなければならないということです。

 

このように様々な体力要素のトレーニングをすることが全面性なので、筋トレだけでなくランやジャンプ系など、色々と実施していくべきです。しかし、トレーニング実践者がトレーニングに使える時間も無限ではありません。

 

そのため、多くのトレーニングジムでは、効率的に体力を強化しようとしてウエイトトレーニング(筋トレ)が指導の中心になりがちのようです。しかし、こうしたトレーニング内容も基本的にはこの「全面性の原則」に則ってプログラムされてはいるようですが、それは狭い意味で「全面性の原則」に過ぎません。
 

水氣道は、この「全面性の原則」の対象として筋力をはじめとする体力強化のためだけに用いているのではなく、より広い意味で用いています。

 

それは、水氣道では「全面性の原則」を限りなく発展性のある原則として捉え、日々の稽古において「全面性の考慮」を積み重ねてきた結果であるといえます。稽古の時間や場所が限られているから、安全にかつ効率的に稽古を行えるように工夫が凝らされなければなりません。

「全面性の配慮」が行き届いた水氣道の稽古プログラムは、そのような「全面性の原則」が基礎に据えられています。

 

これについては、次回解説する予定です。