サノフィ・メディアラウンドテーブル開催

 

( 2018年10月19日 06:10 )

 

医師専用の電子ジャーナルの一つ、Medical TribuneのLuxeに、とても興味深い有益な記事がありましたので、若干、読みやすく修正したうえで、途中で解説を加えてみました。ご参考になさってください。

 

国立感染症研究所の調査によると、日本における昨シーズン(2017年9月〜18年4月)のインフルエンザ感染者は2,230万人を超え、1999年の統計開始以来、最高となりました。(関連記事:「インフルエンザ3週連続で過去最高更新」)。

 

特に65歳以上の高齢者では免疫力が低下しているためインフルエンザウイルス感染により入院や死亡のリスクが高いです。そのため専門医からはワクチン接種率向上の必要性が指摘されています。9月5日、サノフィが都内で開催したメディアラウンドテーブルでは、米・Brown UniversityのStefan Gravenstein氏と国立病院機構東京病院の永井英明氏が講演し、高齢者がインフルエンザワクチンを接種する意義などについて説明しました。

 

 

インフルエンザ感染が急性心筋梗塞のリスクに!

 

一般に65歳以上の高齢者では循環器疾患などの慢性基礎疾患を抱えていることが多いです。インフルエンザウイルス感染はそれらの慢性疾患を悪化させ、重症化の原因となることが珍しくありません。

 

最初にGravenstein氏が、循環器疾患に対する影響を中心に、インフルエンザワクチン接種の有効性を説明しました。

 

高齢者では、加齢、糖尿病などの慢性疾患や、インフルエンザ、市中肺炎、帯状疱疹といった感染症の罹患に伴い、血栓が生じやすくなります。特にインフルエンザに感染すると、頻脈、低酸素症、急性炎症、血栓形成を来し、急性心筋梗塞のリスクが高まります。

 

同氏は、インフルエンザワクチンの接種が、こうした急性心筋梗塞の予防に有効であることを解説しました。

 

心血管リスクを有する6,735例(平均年齢67歳)を対象としたメタ解析で、インフルエンザワクチンの接種が心血管イベント発現を36%低下させたとの報告(JAMA 2013; 310: 1711-1720)を紹介しました。「ワクチンの接種により入院が減少し、医療費を抑制するというベネフィットも得られる」と述べ、医療経済の観点からもワクチン接種の勧奨は重要であるとしました。

 

日本のインフルエンザワクチン接種率は、小児で59.2%、一般成人で28.6%、高齢者で58.5%とされます。これは、先進諸国と比べて決して高い水準にあるとはいえません。

 

高円寺南診療所からのコメント:

高齢者でさえ60%未満、一般成人に至っては30%未満の接種率というデータは、インフルエンザワクチンの意義について、日本では理解が相当遅れていることを意味するものだと思われます。

 

 

以上のような現状について、Medical Tribuneでは同氏に追加取材を行い、その考えについて尋ねています。

 

「ワクチン後進国」と呼ばれる日本の現状について

同氏はまず「抗原量を増やした高用量ワクチンでなく、まず標準用量のワクチン接種率を向上させる必要があるのではないか」と指摘しました。

 

その上で、「米国でも、『ワクチンが悪い』とメディアで報道されることがある。しかし、その年の流行を防げなかったとしても、ワクチンの有効性を示す試験結果は出ている」と話し、メディアなどを通じてワクチン接種の意義を啓発する重要性を強調しました。

 

接種率上昇には公費助成の適応拡大を!

 

続いて登壇した永井氏は、日本の高齢者におけるインフルエンザワクチン接種の現状を説明しました。

 

インフルエンザによる入院と死亡は高齢になるほど増加します。その死因の多くは、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、喘息、糖尿病などの慢性基礎疾患の悪化として分類されます。

 

これらの疾患は、いずれも日本人の死因の上位を占めます。そして同氏は「高齢者の死因として、インフルエンザは過小評価されているのではないか」との所感を述べました。

 

インフルエンザワクチン接種による予防は、死亡数を減少させることができるか。

 

同氏は、1950〜2000年の日本と米国における『肺炎およびインフルエンザによる超過死亡数とワクチン接種量の関係』を調べた研究を紹介しました。

 

米国ではワクチン接種量の増加に伴い超過死亡数が減少している一方、日本では1994年の任意接種化を契機に超過死亡数が増加していると指摘しました(図、 N Engl J Med 2001; 344: 889-896)。

 

 

高円寺南診療所からの補足説明:

インフルエンザワクチン接種制度の変遷

インフルエンザワクチンは1962年から勧奨接種として実施が開始されました。

1976年からは予防接種法に基づいた一般的臨時接種として小中学生に対して接種されるようになりました

1987年からは保護者の意向により希望者に接種する方式に変更になりました。

1994年の予防接種法改正により任意接種のワクチンに変更となりました。

これらの変更に伴い、 接種人数は年々減少し、 厚生省(現:厚生労働省)の調査によると接種率は1979年の67.9%から、 1992年には17.8%まで低下しました。

 

 

このように有効性が示されているインフルエンザワクチンについて、日本で使用可能なものは標準用量の4価不活化ワクチンのみです。

 

抗原量を増やした高用量ワクチンが承認された米国と比べ、選択肢は限定されます。また、公費助成の対象となるのは、65歳以上または60〜64歳で基礎疾患(身体障害者手帳1級相当の障害)を有する人のみです。

 

2010年に、生後6カ月以上の全国民が接種対象と位置付けられた米国に比べ、日本では非常に厳しい公費助成基準が設けられています。

 

こうした状況を踏まえ、同氏は「インフルエンザワクチン接種による重症化予防効果は明らかなので、高齢者は積極的に接種してほしい」と述べ、「公費助成の対象を60歳未満にも拡大すべきだ」と訴えました。

 

 

高円寺南診療所の意見:

インフルエンザワクチンの公費助成について

少なくとも欧米先進国並みのインフルエンザ接種率を達成することは、緊急の課題だと思います。

 

心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。

それは日本心療内科学会のHPです。

 

心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。

 

Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックするとが表示されます。

 

と書かれています。

 

高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。

 

 

「質問13」

認知症で精神科にかかっていますが、呼吸器、循環器、消化器などの不調を訴えていますが、心療内科で診て頂けますか?

 

「答え」

認知症の方が身体症状を訴えた場合、幾つかの点に留意する必要があります。

 

まず、認知症の重症度です。

 

認知症が軽度から中等度ならば身体症状をほぼ正確に訴えることができるのですが、高度の場合は自分の身体症状を適切に訴えることが難しくなります。

 

高度認知症では言葉によるコミュニケーションをとるのが困難だからです。

 

ただし、高度認知症であっても咳・痰、食欲不振、嘔気・嘔吐、下痢・便秘、頻尿などの兆候や、しかめ面、うめき、頻回のナースコールなどといった不快感を示唆する行動があると身体症状のあることがわかります。

 

また、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)として拒食、過食、不眠、大声だしなどの症状があると、身体疾患がなくても何らかの身体疾患があるのではないかと疑われることもあります。

 

さらに、甲状腺機能低下症、ビタミンB1欠乏症など認知症様症状を来す身体疾患があります。

 

この場合はそれぞれの疾患の身体症状を伴います。

 

認知症の方の身体症状の評価は必ずしも容易ではありませんし、身体疾患の有無を検査で確かめるにしても患者さんの協力を得られるとは限りません。

 

さて、心療内科は心身症の患者さんを対象とする内科であります。

 

認知症の方でも環境の変化や様々な心理的ストレスに曝されると身体疾患を発症したり、身体疾患の経過に影響のでることがあります。

 

このような患者さんは心療内科医が診断し、保険適用のある心身医学療法を用いるのがよい場合もありますので精神科の主治医とご相談の上、受診されることをお勧めいたします。

 

ただし、高度認知症では心身医学療法を行うことが難しいでしょう。

 

なお、精神科に入院している患者さんを内科・外科医が診察・治療にあたると、心疾患、糖尿病、肝硬変、骨折など幾つかの特定の疾患について精神科身体合併症管理加算が保険診療で認められております。

 

(佐々木大輔)

 

 

<高円寺南診療所の見解>

精神科と心療内科の併診というケースは、認知症に限らずに日常的に増えています。

 

「質問13」の質問者が認知症だとしても、精神科と心療内科の違いが理解できる高度な知的水準を維持しているものとの推定が可能です。

 

回答者の佐々木大輔先生がコメントしているように、認知症が軽度から中等度ならば身体症状をほぼ正確に訴えることができますが、相談者の認知症の重症度が高度であるとは考えにくいです。

 

まず、言葉によるコミュニケーションをとるのが困難ではなさそうです。ですから、この方の身体症状の評価は特別に難しそうではないし、身体疾患の有無を検査で確かめるに際してして必要な本人の協力も十分に期待できそうです。

 

そこで、この質問者への回答は、ずばり、「あなたを心療内科で診させていただくことは可能です。」ということになるでしょう。

 

 

私は、この質問者は認知症としてより、むしろ軽度認知障害としての可能性を考えます。

 

認知症ですでに精神科に受診中であるとすれば、少なくとも認知機能は低下していることでしょう。

 

しかし、認知機能が低下した状態には、正常とも認知症ともいえない状態が存在することが知られています。これを「軽度認知障害」(mild cognitive impairment : MCI)と呼びます。

 

MCIの背景となる病態は多様で、認知症疾患の前駆状態として出現するほかに、他の脳気質異常や代謝・内分泌異常など身体疾患が基盤になることもあります。

 

なお、うつ病などの精神疾患による認知機能低下をMCIに含めるかどうかは、診断基準によって扱いが異なります。

 

この質問者は精神科受診中であり、うつ病が原因で認知機能が低下して認知症と診断されている可能性は完全には否定されません。

 

その理由は、診断基準によっては、MCIもしくは認知症に該当する可能性があるからです。

 

さて、佐々木先生は、「心療内科は心身症の患者さんを対象とする内科であります。」と述べておられますが、それでは認知症は心身症なのでしょうか。

 

認知症は心身症とは区別されるのが普通です。

 

認知症は成人におこる知能障害で、多くの場合、脳の器質性病変を基礎に持っています。

 

これに対して、心身症は「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的ないしは機能的障害が認められる病態」をいい、原因はともかく身体の病気であることが前提です。この場合の身体とは、脳の器質性病変は除外して考えるのが通例です。

 

しかし、脳も身体の一部を構成する臓器であり、脳を含めて体であると考えることも不可能ではなく、実際に、神経内科では脳を臓器として、つまり身体の一部として扱っています。

 

このように考えていくと、認知症を心身症から完全に切り離して考えることは難しいように思われます。

 

また、佐々木先生のコメントでもあるように、認知症の方でも環境の変化や様々な心理的ストレスに曝されると身体疾患を発症したり、身体疾患の経過に影響が現れたりすることがあります。そのような症例では、経験豊富な心療内科専門医が大きな役割を果たすことが可能です。

 

心療内科専門医に求められるのは、まず軽度認知障害(MCI)の早期診断だと思います。

 

2011年に米国国立老化研究所とアルツハイマー病協会はMCIは臨床症状で判断するとして、以下の診断基準を示しました。

 

①   患者、家族、医師によって以前より明らかに認知機能が低下していることが確認される

 

②  記憶、遂行機能障害、注意、言語、視空間機能の領域の1つ以上で年齢や教育歴から予想されるレベルより明らかに低下していることが確認される

 

③ 複雑な仕事は以前より難しくなっているが、日常生活では自立していること

 

④  認知症には至っていないこと

 

とくに、②ではエピソード記憶障害がある場合は、アルツハイマー型認知症へと進行する例があるので注意

 

なお、佐々木先生も触れていますが、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)についての観察を怠らないことも大切でしょう。

 

より厳密には神経心理学的評価を行いますが、年齢教育歴平均の1~1.5SDの他覚的認知機能低下の存在が指摘されています。高円寺南診療所でもMMSE検査は導入していますが、CDRの他に、今後はモントリオール認知評価(Montreal Cognitive Assessment : MoCA)の導入も検討中です。

 

 

最後に、認知症の薬物療法・非薬物療法の原則について

 

多くの認知症では、薬物療法・非薬物療法のいずれにおいても根本的治療はありません。

 

そこで、生活の質(QOL)を損ねている要因に着目して治療を行うことで、効果を挙げることができます。非薬物療法では本人が参加して楽しく思えるものでなくてはなりません。ただとえば、アルツハイマー型認知症などでみられる多くのBPSDは、認知機能トレーニング、運動療法、音楽療法に代表される非薬物療法によるケアアプローチを試みることが大切です。

 

高円寺南診療所が開発した水氣道や聖楽院(声楽療法)は、最初から認知症の治療を目的としたものではありませんが、軽度認知障害(MCI)の段階での早期発見や発症予防を含めて大いに役立てていきたいと考えています。

 

漢方治療に関しては慶應義塾大学医学部漢方医学センターの漢方Q&Aは比較的上手にまとめられているので独自のコメントを付して紹介して参りました。

 

これに引き続き、富山県立中央病院 内科和漢・リウマチ科-Q&Aをご紹介いたします。

 

 

そこでも、高円寺南診療所の立場から、

<高円寺南診療所からのメッセージ>

を加えてご紹介を試みることにしました。

 

 

Q1.

和漢薬とか漢方薬とかよく聞きますが、どのようなものですか?

 

A1

薬効のある天然物を簡単に加工(乾燥や粉砕)したものを生薬(しょうやく)と言い、植物(草根木皮)をはじめ動物や鉱物からも製造されます。

 

ジギタリスはヨーロッパ生薬から抽出されたものですし、エフェドリンは麻黄(まおう)という生薬から、サリチル酸が楊の枝に由来することはよく知られています。

 

中国で使用されている生薬を漢薬といい日本固有の生薬を和薬と呼んで両者をまとめて「和漢薬」としています。

 

こういった和漢薬をいくつか組み合わせたものが「漢方薬」です。

 

ただしその組み合わせは決してデタラメなものではなく、漢方医学で決められた配合によって、それぞれ一定量が調和されています。

 

たとえば「葛根湯(かっこんとう)」という漢方薬は、葛根、麻黄、桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草の7つの生薬(和漢薬)で構成されています。

 

 

ところで「民間薬」との違いは何でしょうか。民間薬というのは伝承によって使用されてきた生薬を意味し、専ら単味で用いられるのが特徴です。

 

たとえば、ドクダミやゲンノショウコ、センブリなどです。

 

これに対して漢方薬は単独ではなく、複数の生薬を決められた割合で、組み合わせて使用します。

 

 

<高円寺南診療所からのメッセージ>

生薬と漢薬、漢薬と和薬の違い、漢薬と和薬を併せて「和漢薬」とよぶことなど、さすが薬のメッカの富山の病院の解説は切れ味が良いと感じました。

 

また、「和漢薬」は「民間薬」とはどのように異なるのか、ポイントが明らかにされました。

 

さて、ここで少しだけツッコミを入れておきます。和漢薬をいくつか組み合わせたものが「漢方薬」であると説明されていますが、厳密には正しくないです。

 

たとえば、甘草湯(かんぞうとう)という漢方薬は甘草のみ、つまり構成生薬は単味ですが民間薬ではなく、れっきとした漢方薬です。

 

激しい咳、咽喉痛の寛解を目的に医師が処方すれば、保険も効きますし、実際に良く効きます。

 

連用すれば、アルドステロン症、ミオパチー、低カリウム血症など偽アルドステロン症をもたらしますが、急性期のみの使用であれば問題はありません。

 

紛らわしいものとしては、紅参末(こうじんまつ)、附子末(ぶしまつ)、これらも単味の生薬ですが、多くの場合他の漢方薬に加味して用いられることが多いです。

 

紅参末とはいわゆる朝鮮人参ですが、独参湯(どくじんとう)といってオタネニンジン一味だけの漢方薬が有名です。

 

なお、ヨクイニンエキスも薏以仁(ヨクイニン)の単味の漢方薬で、青年性扁平疣贅、尋常性疣贅など、イボの治療に用いられ、保険での処方が可能です。

 

 

ここで掲載する内容は、一般社団法人日本アレルギー学会のホームページ<一般の皆さま>から引用したものです。

 

最後に高円寺南診療所からのメッセージを加えています。

 

 

食物アレルギー③ 

Q

口腔アレルギー症候群とは?

 

A

口腔アレルギー症候群は、食物の摂取によってひきおこされ、唇や口の中にかゆみ、ヒリヒリ感、腫れがみられます。時にのどがしめつけられる感覚が生じたり、稀にアナフィラキシーをきたすこともあります。

 

原因食物は果物・野菜が主です。また、花粉症を合併することが多いことも特徴です。これは果物・野菜の抗原と花粉抗原との間に共通抗原性が存在するためです。

 

 

主な花粉と交差反応性が報告されている果物・野菜

 

シラカンバ          

バラ科(リンゴ、西洋ナシ、サクランボ、モモ、スモモ、アンズ、アーモンド)、セリ科(セロリ、ニンジン)、ナス科(ポテト)、マタタビ科(キウイ)、カバノキ科(ヘーゼルナッツ)、ウルシ科(マンゴー)、シシトウガラシ、等

 

スギ

ナス科(トマト)

 

ヨモギ

セリ科(セロリ、ニンジン)、ウルシ科(マンゴー)、スパイス、等

イネ科 、ウリ科(メロン、スイカ)、ナス科(トマト、ポテト)、マタタビ科(キウイ)、ミカン科(オレンジ)、豆科(ピーナッツ)、等

 

ブタクサ

ウリ科(メロン、スイカ、カンタロープ、ズッキーニ、キュウリ)、バショウ科(バナナ)、等

 

プラタナス

カバノキ科(ヘーゼルナッツ)、バラ科(リンゴ)、レタス、トウモロコシ、豆科(ピーナッツ、ヒヨコ豆)

 

食物アレルギー診療ガイドライン2012(作成:日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会)より転載

 

 

【高円寺南診療所からのメッセージ】

口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome: OAS)は、特定の食物を摂取したときに口唇や口腔内粘膜の腫脹、痒みや咽頭部の異常感を生じるもので、近年になって注目されるようになりました。

 

ポイントは花粉症(シラカンバ、ハンノキなど)と合併することが多いことです。

 

これを花粉・食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome : PFS)といいます。

 

診断は問診が重要です。血清中の特異的IgE抗体測定(RASTなど)も行います。

 

プリックプリックテストや確定診断のための経口負荷試験がありますが、高円寺南診療所では、アナフィラキシーショックの誘発の危険性を冒してまで実施する意義はないとする立場です。

 

治療の基本はアレルゲンの除去ですが、加熱処理により経口摂取可能となることが多いです。

今週から「骨粗鬆症についてQ&A」になりました。

 

ここで掲載する内容は、公益財団法人 骨粗鬆症財団のホームページから引用したものです。骨粗鬆症についてわかりやすい解説をしています。

 

 

骨粗鬆症は、長年の生活習慣などにより骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気です。

 

最初は、自覚症状はありませんが、ひどくなると骨折を起こし、寝たきりの原因となる場合もあります。

 

多くは腰や背中に痛みが生じて医師の診察を受けてからみつかります。しかし、骨粗鬆症になってから治すのはたいへんです。

 

骨粗鬆症にならないように、日ごろから予防を心がけることが大切です。

 

骨粗鬆症を予防することが、ほとんどの生活習慣病を予防することにつながります。

 

そのために、高円寺南診療所では女性では、45歳以上、男性でも50歳以上の皆様に骨量計測を推奨し、骨年齢を算出し、骨粗鬆症の早期発見、早期対応に力を注いでいます。

 

それでは、骨粗鬆症についてもっと詳しく勉強していきましょう。

 

それぞれのQ&Aのあとに【高円寺南診療所からのコメント】を加えました。

 

 

Q1

日本国内での骨粗鬆症の患者数を教えてください

 

A1

骨粗鬆症は、「健康」「予備軍」「骨粗鬆症」の境が明確ではなく、いわゆるグレーゾーンの人が多いのが特徴となっています。

 

骨粗鬆症は日本人をはじめとして、人類全体が最もかかりやすい病気の1つです。昔は骨折してからレントゲンを撮り、初めて骨粗鬆症に気づくといった状態だったので、実態はよくわかっていませんでした。

 

レントゲン写真だけでは重症の骨粗鬆症しか判断できなかったのです。しかし、近年、二重エネルギーX線吸収法(DXA)などで精密に骨量が測定できるようになった結果、日本の総人口の10%弱、すなわち約1100万人が骨粗鬆症で、現在は症状が出なくても、いずれ腰痛や骨折を起こす危険が大きいと言われています。

 

危険の程度を厳しく予測するかどうか、つまり、どこまで骨量が減少すれば危険とするかによって多少変わってきますが、骨粗鬆症予備軍まで含めると2000万人に達するかもしれません。

 

なお、「原発性骨粗鬆症の診断基準 2000年度改訂版」では、二重エネルギーX線吸収法(DXA)で腰椎を測った場合、若い人(20歳~44歳)の平均値の70%未満の数値を骨粗鬆症としています。日本人全員の骨量を測るわけにはいかないので、いろいろな方法で約1100万人という推定を出しています。

 

 

【高円寺南診療所からのコメント】

骨粗鬆症は、「健康」「予備軍」「骨粗鬆症」の境が明確ではなく、いわゆるグレーゾーンの人が多いのが特徴であるとされています。

 

それはなぜなのでしょうか。その理由の一つが、骨粗鬆症の評価基準にあることは既に指摘されていますが、私は他にも理由があると思います。

 

それらの一つは、評価の方法です。一回限り、つまり一時点での評価は、それがいかに精密な評価法であっても、限界があります。

 

骨粗鬆症にとって骨折リスクを評価することが大切であり、とくに今後の予測を立てることが必要になってきます。

 

そこで骨量を経時的に計測することによって、現在進行中の骨の状態が把握し易くなり、予後予測が立てやすくなります。

 

とくに骨量がその年齢平均を下回る場合、前回より骨量が低下している場合などでは、半年後に再度検査をして、経時的な傾向を把握しておくことはとても有意義です。

 

経時的に測定することによって、骨量にとってどのような生活習慣が改善因子か、あるいは増悪因子であるかをつきとめやすくなります。

 

 

グレーゾーンが多いもう一つの理由。それは、骨粗鬆症の局所的評価には臨床的な限界があることです。

 

骨量測定によって、おおよその骨年齢を計算すること自体は有用ですが、少なくとも筋骨格系のより広範囲の査定、たとえば筋肉率や体脂肪量などによる身体構造年齢、肺年齢、下半身動作年齢などを同時に評価することによって、骨粗鬆症ならびに転倒や骨折のリスクをより実際的に評価することが臨床的に有意義だと考えます。

 

 

高円寺南診療所では、概ね3か月に1回、つまり、春・夏・秋・冬の季節ごとのフィットネス検査(体組成・体力検査)を推進しています。それによって、日常生活での活動量(一日の歩行歩数など)、水氣道への積極的な参加などによる他の体力因子と骨量の増加等が連動することを確認することができます。

心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。

 

それは日本心療内科学会のHPです

 

 心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。

 

Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックする、が表示されます。

と書かれています。

 

高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、

 

<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。 

 

 

「質問12」

生理前になるとイライラや不安になるのですが、心療内科で診ていただけますか?

 

「答え」

月経前に「気分が沈む」「不安になる」「足がむくむ」など、いつもとは違う心やからだの不調を感じている人は少なくありません。

 

これは月経前症候群(PMS)といって、軽いものまで含めると7~8割の女性が経験しているといわれています。

 

落ち込んだり、いらいらしたりといった心の症状から、乳房の張りや腰痛といった体の症状、集中力がなくなるといった行動面の症状まで、実にさまざまです。

 

重症の場合には、毎日の生活に支障をきたしたり、人間関係のトラブルを招くこともあります。

 

月経の開始と共に症状が軽くなったり、なくなったりすることから、周りの人には理解されにくいという状況となります。

 

PMSの原因は十分にわかっていませんが、女性ホルモンの周期的な変動が脳内の神経伝達物質に影響を与えて症状が引き起こされているのではないかいう説が有力です。

 

PMSに対処するには、毎日自分の心やからだの変化を表に書いて記録することが有効です。

 

このとき月経も記録しておきます。

 

PMSメモリーという一目でわかる形式のものがお勧めです。

 

月経の周期と症状の関係がわかって、はじめてPMSだと理解する人もいますし、わかっただけで症状が軽くなることもあります。

 

自分のからだのサイクルがわかれば、調子の悪い時期はしんどいことを避けることも可能になります。

 

スケジュールを詰め込みすぎたり、何もかも自分で解決しなければと考えたり、些細なことで自分を責めたりすることはできるだけ避けましょう。

 

さらに、ビタミン・ミネラルを十分に取り入れたバランスの良い食事に気をつけ、睡眠を十分にとり、運動も心がけることが大切です。

 

軽い症状なら以上述べたようなセルフケアだけでもずいぶん楽になりますが、これで不十分な場合は心療内科受診をお勧めします。

 

PMSは環境の変化や心理的ストレスで悪化する場合があります。

 

薬物療法を行ったり、医療者と共に問題を整理し対処法を考えていくことが症状の軽減に役立ちます。

 

(甲村弘子)

<参考文献>

甲村 弘子:月経前症候群(PMS)に関する知見. 女性心身医学 16:260-263,2012

 

 

<高円寺南診療所の見解>

甲村弘子先生の現職は、こうむら女性クリニックの院長とのことですが、先生は大阪大学医学部を御卒業後、大阪大学医学部産婦人科に入局され、ドイツ・マックスプランク研究所 にも留学されています。

 

また日本心身医学会の心身医療専門医とのことであり、月経前症候群(PMS)について解説されるには適任だと思われます。

ここで掲載する内容は、一般社団法人日本アレルギー学会のホームページ<一般の皆さま>から引用したものです。

 

最後に高円寺南診療所からのメッセージを加えています。

 

 

食物アレルギー②

 

Q

食物アレルギーの原因となる食品はどんなものが多いですか?

 

A

原因となりやすい食品の順位は、頻度が高い食品から卵、乳製品、小麦、甲殻類(エビ、カニ)、果物類、そば、魚類、ピーナッツ、魚卵(いくら)、大豆、木の実の順です(図2)。

1102表1

 

 

また、年齢によって異なります。6歳までは鶏卵、乳製品、小麦が多く、その後は加齢とともにそば、甲殻類(エビ、カニ)、果物、魚介類などが増えます(表2)。欧米ではピーナッツが最も多い原因アレルゲンです。

1102表2

 

日本でもピーナッツアレルギーの患者さんが増える傾向にあります。

 

しかし、原因食品は個人個人で異なります。自分の原因の食品を明らかにして対応してください。

 

 

『食物アレルギーの診療の手引き2017』(食物アレルギー研究会)によると、その他重要事項として以下の記載があります。

 

 乳児・幼児早期の即時型食物アレルギーの主な原因である鶏卵、乳製品、小麦は、その後加齢とともに耐性を獲得する(3歳までに50%、学童まで80~90%)。  

池松かおり他. アレルギー 2006; 55: 533-41.   Ohtani K, et al. Allergol Int 2016; 65: 153-7.   Koike Y, et al. Int Arch Allergy Immunol 2018 in press

 

 学童から成人で新規発症する即時型の原因食物は甲殻類、小麦、果物、魚類、ソバ、ピーナッツが多く、耐性獲得の可能性は乳児発症に比べて低い。  

Skolnick HS, et al. J Allergy Clin Immunol 2001; 107: 367-74.

 

 魚類アレルギーと間違いやすいアレルゲンとしてアニサキス、小麦アレルギーと間違いやすい病態としてダニの経口摂取によるアナフィラキシー(oral mite anaphylaxis)などがあり注意を要する。

 

 

【高円寺南診療所からのメッセージ】

高円寺南診療所には、小児の受診は皆無ですので、20歳以上の方に限って、食物アレルギーの原因食物を改めてランキングしてみます。

 

1位:甲殻類(18%)、

2位:小麦(15%)、

3位:フルーツ類(13%)、

4位:魚類(11%)、

5位:そば(7%)

 

ただし、1位から5位までの総計でも64%であり、その他の原因食物が食物アレルギーの原因である割合は、大まかにいって3人に1人にのぼります。

 

他の原因食物と比べてフルーツ類は、見逃されやすいように思われます。その理由の一つは、フルーツが食物アレルギーの原因になるとは考えない方が多いからなのかもしれません。

 

食物アレルギーの特殊な型として最近注目されているものが口腔アレルギー症候群で、花粉・果物症候群とも呼ばれます。生の果物や野菜を食べた直後に口の中がイガイガしたり腫れたりするのが特徴で、アレルゲンが口の粘膜に触れて起こるアレルギー反応で軽症のケースが多いですが、ときに重症化してアナフィラキシーになることもあります。

 

花粉と似通った蛋白質を含む果物や野菜があるために、特定の花粉症の人では関連する特定の果物や野菜に反応(交差反応)することで起こります。

 

例えば、

・シラカバやハンノキの花粉

リンゴ、モモ、サクランボ、キウイ、マンゴー、イチゴ、大豆

 

・ヨモギやブタクサの花粉

メロン、スイカ、バナナ、セロリ

 

・スギの花粉

トマト等

 

なお、口腔アレルギーを起こす果物や野菜のアレルゲンは酵素や熱に弱いため、加熱調理すれば分解されて食べても大丈夫なこともあります。

 

またゴムの木由来の天然ゴムラテックスアレルギーの方は、よく似た構造の蛋白質を有するバナナ、アボガド、イチジク、キウイ、メロン、クリ等を食べると口腔アレルギーの様な症状を起こすことがあり、ラテックス・フルーツ症候群と呼ばれています。

 

但しクリのアレルゲンは加熱しても分解されないために注意が必要です。

 

 

問診や血液検査、皮膚テスト、食物除去試験、経口負荷試験などでアレルゲンを特定して避けることが大切です。

 

もし食物アレルギーが起これば医療機関の受診が必要です。

 

症状が軽度であれば抗ヒスタミン薬やステロイド薬などが使われますが、アナフィラキシーの状態になれば直ちに処置しないと命にかかわります。

 

アドレナリン自己注射薬のエピペンRが健康保険の適応になっていますので、アナフィラキシーの経験がある方は専門医やかかりつけ医を受診して携帯するようにしましょう。

ここで掲載する内容は、アステラス製薬提供の患者さん・ご家族の皆さまなるほど病気ガイドから引用したものです。

 

関節リウマチについてわかりやすい解説をしています。

 

HPで確認することができます。

 

関節リウマチは、免疫の異常により関節の腫れや痛みを生じ、それが続くと関節の変形をきたす病気です。

 

関節リウマチを治療することで、炎症や痛みを最小限に抑え、毎日の生活を快適にすることができます。

 

現在と将来の生活の質を保っていくためにも、病院・診療所を受診し、きちんと治療を受けましょう。

 

監修医:東邦大学医学部医学科 内科学講座膠原病学分野 川合 眞一 先生

 

 

解り易い解説であること、日本リウマチ学会では一般患者向けQ&Aが掲載されていないため、これを採り上げました。

 

ただし、記述内容が古いままで改訂されていないため、それぞれのQ&Aのあとに【高円寺南診療所からのコメント】を加えました。

 

 

関節リウマチ患者の将来について②

 

Q

関節リウマチは、治らない病気なのですか?

 

一生治療を続けなければならないのですか?

 

A

もともと、関節リウマチの患者さんの10~30%は、自然に症状のない状態(寛解)になると言われていました。それが、治療法の進歩により、寛解になる患者さんがさらに増えてきています。

 

関節リウマチは、以前でも10%から30%の患者さんでは寛解が進んで治ったともいえる状態になると言われていました。しかし、最近では治療法の進歩により、まず薬を使いながら寛解を続けられる方が加わってきました。さらに、薬を止めても寛解が続く患者さんの率も確実に増えてきています。

 

従って、薬を使って寛解の状態が何年も続いていれば、主治医と相談して服薬をやめて様子をみることもできます。ただし、その場合は残念ながら再燃する患者さんもいらっしゃいますので、まずは症状のない状態を続けられるよう、しっかりと治療を続けていくことが大切です。

 

 

【高円寺南診療所からのコメント】

 

質問1)

関節リウマチは、治らない病気か?

 

 

これは、“治る”という言葉がどのような意味で使われているかによって答えが違ってきます。

 

まず、関節リウマチは治療によって“治る”という言葉を専門医は滅多に使いません。そのかわりに“寛解”という言葉を頻繁に使います。

 

そして、この“寛解”自体にも複数の種類があります。

 

 

関節リウマチの治療目標は、患者さんの生命予後(寿命の確保)とQOL(生活の質)を含めた長期予後を改善することとされます。

 

とくに関節リウマチに関連する臨床症状がみられず、関節リウマチによる関節破壊などの臓器障害や身体機能障害のリスクがほとんどないと考えられる状態を臨床的寛解とよびます。

 

もしリウマチ専門医が“治った”という言葉を使ったとしたら、それは、その患者さんが少なくとも「機能的寛解」(身体機能の低下のない状態)もしくは、「臨床的寛解」に至っている場合だろうと思われます。

 

その割合は、日常診療でも関節リウマチ患者の約6割が臨床的寛解に到達し、実際に、この臨床的寛解を現実的な目標としています。

 

臨床的寛解のなかでも高感度画像検査で滑膜炎を認めず、X線検査で関節破壊の進行が停止していることの裏付けがあれば、完全寛解(真の寛解)と見なされます。

 

これが、10ないし30%程度は期待できます。さらに抗リウマチ薬を使用しなくても、再発や再燃をせずに済む状態に到達できる場合もあります。これが、10%程度は期待できます。

 

そもそも関節リウマチ治療には4本柱があります。

 

それは患者教育、薬物治療、リハビリテーション、手術療法があります。

 

高円寺南診療所では、早期発見・早期治療例が多数であり、患者教育とリハビリテーション(鍼灸治療、水氣道)に力をいれているためか、およそ25%程度は“治る”といえそうです。

 

 

質問2)

関節リウマチは、一生治療を続けなければならないのか?

 

 

これも“治療”の意味する内容によって違った答えになります。

 

関節リウマチ治療の4本柱のうち、まず手術療法が一生続くというのは、最近では滅多にありません。

 

次に薬物療法ですが、少なくとも10%程度はお薬が不要になります。

 

そこで、残る2つの柱である患者教育、リハビリテーションについては、ある意味で一生続けるべきであると考えます。

 

ある意味、というのは、治療を“養生と鍛錬”という言葉に置き換えた場合です。

 

これは、超高齢社会を迎えた現在、フレイルやロコモ対策は、関節リウマチに限らず、全ての人にとって一生心がけるべき課題ではないでしょうか。

 

つまり、関節リウマチの患者さんが特別ではないということになります。

 

生涯エクササイズとして開発してきた水氣道は、“養生であると同時に鍛錬”であり、患者教育も併せ行っています。ですから、水氣道は関節リウマチのリハビリテーションに適しているばかりでなく、フレイルやロコモ対策にも通じています。

 

なお治療目標の達成には、早期診断と早期治療、短期的目標である臨床的寛解に到達するための疾患活動性の評価とそれによる治療の適正化が重要です。

 

病初期より、定期的に罹患関節および関節リウマチにおける高頻度罹患関節の単純エックス線画像を残し、比較読影により関節破壊の進行を把握しておくことはとても有益です。

 

エックス線検査は、関節リウマチの治療モニタリングに有用ですが、滑膜炎の活動性の乏しい状態である「臨床的寛解」と、それにより達成される身体機能の低下のない状態「機能的寛解」の維持が大きな目標となります。

 

また、単純エックス線上の関節破壊所見の程度が、身体機能の低下をよく反映することが知られています。つまり、単純エックス線上の関節破壊が進まない状態「構造的寛解」を維持することにより「機能的寛解」が維持される可能性が高いということです。

 

なお、近年、超音波検査(関節エコー)は、核磁気共鳴画像(MRI)とともに関節疾患の画像診断のスタンダードになりつつあります。

 

高円寺南診療所においては、この関節エコーがとても重宝しています。

 

関節エコ―のドプラー法は、単純エックス線検査では評価が困難である軟部組織の炎症を評価できるため、関節リウマチに特有な滑膜炎を検出することができるからです。

 

 心療内科についてのQ&Aをご紹介いたします。

 

それは日本心療内科学会のHPです。

 

 心療内科Q&Aのコラムを読むことができます。

 

Q&Aは、想定した事例です。Q&Aや疾患についてのご質問、病院の紹介等は、受け付けておりませんのでご了承下さい。※「質問」をクリックする、が表示されます。

 

と書かれています。

 

高円寺南診療所に通院中の皆様が、一般論であるこのQ&Aを読んでいただくためには、実際に即した具体的な解説が必要だと考えました。そこで、「質問」「答え」の後に、

 

<高円寺南診療所の見解>でコメントを加えることにしました。

 

 

CQ

「質問11」糖尿病ですが、摂食障害を併発しました。

 

どのような治療を受けたらいいでしょうか

 

A

糖尿病だけでもご負担が大きいと思われますが、さらに、摂食障害も併発されたとのこと、大変ご苦労されていると拝察します。

 

糖尿病に摂食障害を併発した場合の治療に関しましては、まだ確立されたものはございませんが、糖尿病の担当医に加え、栄養士、看護師、さらには、心療内科医や精神科医を含めた多職種によるチームによるケアが重要であるとされています。

 

糖尿病の治療に関しましては、最初から完璧なコントロールを目指すのではなく、通常よりも高めの目標をまず定め、段階的にクリアしていく方法が勧められています。

 

これは、低血糖が生じる危険を低くするというメリットもあります。

 

また、インスリンを用いている方の場合には、低血糖による空腹感から過食につながることを避けるために、低血糖を起こしにくいインスリンポンプを使用することもありますし、グルコースタブレットの使用など、過食につながりにくい低血糖時の補食も勧められていますので、糖尿病の担当の医師とよく相談されるのがよいと思います。

 

そして、摂食障害の治療に関しましては、心療内科医や精神科医などの専門の医師の治療を受けられるのがよいと思います。

 

その場合も、医療者間のコミュニケーションが重要ですので、可能なら同一医療機関で受診されるのが望ましいと思われますが、難しい場合でも情報が共有できるよう、糖尿病と摂食障害の状態の記録をどちらを受診する際にもお持ちいただくのがよいと思います。

 

(吉内一浩)

 

 

<高円寺南診療所の見解>

吉内一浩先生は、現在、東大大学院医学系研究科・ストレス防御・心身医学分野の准教授です。吉内が大学院生だった頃に、今は無き東大分院の心療内科で、私は当時の教授であった久保木富房先生に心療内科の手ほどきを受けました。心療内科で用いるテストバッテリーの使い方や、パニック障害をはじめとする不安障害について、有意義な研鑽を積むことができました。摂食障害もまたその頃からの主要テーマの一つで、私も幾つかの学会発表をする際に、同じく大学院生であった中尾睦宏先生(現在、帝京大学医学部教授/心療内科・公衆衛生学)をはじめとする東大心療内科の若手の先生方のお世話になりました。

 

さて、糖尿病に摂食障害を併発した患者さんは、高円寺南診療所にも通院されています。全例が摂食障害のなかでも、神経性過食症に分類されるケースです。いずれにせよ糖尿病に摂食障害を併発した場合の治療は未確立なため、教科書的なマニュアル医療では到底対応しきれません。つまり、一人一人の背景を理解し把握した上で、より適切な治療方針を工夫していかざるを得ないということになります。高円寺南診療所では、生活習慣の記録による行動療法、認知行動療法の他に水氣道という強力な治療ツールをフルに活用しています。

 

吉内先生も指摘されているとおり、

<糖尿病の担当医に加え、栄養士、看護師、さらには、心療内科医や精神科医を含めた多職種によるチームによるケアが重要である>

ことに相違はありませんが、船頭が多くても船は山に登ってしまいがちです。やはり、優秀なリーダーの存在と積極的な関与が不可欠だと思います。

 

ところで、吉内先生は、説明の都合上だとは思われますが、糖尿病の治療と摂食障害の治療を分けてコメントされています。しかし、吉内先生のアドバイスの最も大切なポイントは、

<医療者間のコミュニケーションが重要ですので、可能なら同一医療機関で受診されるのが望ましい。>

ということに集約されていると思います。

 

なお、やむを得ない場合であれば

<情報が共有できるよう、糖尿病と摂食障害の状態の記録は、どちらを受診する際にもお持ちいただくのがよい>

とのご意見ですが、その場合は糖尿病管理の担当医が、どれだけ摂食障害患者を理解できるか、また、摂食障害管理の担当医が、どれだけ糖尿病を理解できるか、ということが重要になってきます。実情は、とても厳しい、というのが永年の経験の蓄積による私の印象です。

 

 

自らが心療内科指導医・専門医である吉内先生は、都内においても心療内科専門医は高々27人しかいないことを当然ご存じです。そこで、摂食障害の治療に関して、現実的な見地から、あえて心療内科専門医とは書かれずに

<心療内科医や精神科医などの専門の医師の治療を受けられるのがよい>

とされているのだと推測されます。ただし、内科診療をあまり経験されていない一般の精神科の先生に糖尿病の治療との兼ね合いを理解していただくということは、あまり期待できることではありません。

 

やはり、心療内科専門医は、内科医としての研修歴があるため糖尿病合併過食症の診療に携わる機会も多いのではないかと思います。ただし、インスリン使用者や透析を導入しているケースでは、やはり糖尿病専門医や腎臓透析の専門医との連携を考慮すべきだと思います。

 

 

糖尿病は、インスリンの作用不足によって起こる糖質を中心とした代謝障害です。ただし、その発症や経過に心理社会的因子が関与している心身症と見られる症例もあります。

 

また、神経症的な性格傾向をもつ症例もあり、抑うつとの関連が認められています。

 

過食症を合併していれば、なおさら心身症として、心身医学的アプローチを進めていくことが求められることが多いことでしょう。むしろ糖尿病それ自体が慢性病として長期にわたる心身両面でのコントロールを必要とする疾患であるという基本認識をもつことが大切だと思います。

 

<(糖尿病の)治療に関しては、通常よりも高めの目標をまず定め、段階的にクリアしていく方法が勧められています。>

と吉内先生は解説されていますが、いささか意味不明です。

 

<通常より高めの目標>設定と表記すると、血糖値その他のコントロールをより厳格にする、と誤解される可能性があると思われるからです。

 

<高めの目標を定める>、とは、この場合、空腹時もしくは随時血糖値あるいはヘモグロビンA1cの目標値であると理解すれば、たしかに低血糖が生じる危険を低くするというメリットがあります。

 

たしかに治療目標のハードルを低くしておくと、達成率が高まります。スモール・ステップ・アップ方式といって、この方法でサポートすると、患者さんが段階的に小目標をクリアしやすくなり、成功体験を重ねることにより、自己効力感を高めることができます。

 

この経験が糖尿病のみならず過食症のコントロールのためにとても大きな役割を発揮しています。

 

漢方治療一般に関しては

一般社団法人 日本東洋医学会 一般の方へのHPを検索してみてください。

 

ここには<漢方ストーリー>という読み物がりますので、お読みになってください。

 

ただし、具体的なQ&Aは掲載されていません。

 

これに対して、慶應義塾大学医学部漢方医学センターの漢方Q&Aは比較的上手にまとめられていると思います。

 

その記載は概ね一般的ではありますが、慶應義塾大学医学部漢方医学センター受診者を想定して書かれているようです。

 

そこで、高円寺南診療所の立場から、<高円寺南診療所からのメッセージ>を加えてご紹介を試みることにしました。 

 

Q

 漢方薬と西洋薬を併用しても副作用は大丈夫ですか?

 

A

漢方薬と西洋医学の併用については歴史が浅く、よく分かっていない部分が多くあります。慢性肝炎の治療に用いるインターフェロン療法と小柴胡湯はどちらも慢性肝炎に対する治療効果が証明されている薬です。

 

しかし、併用すると間質性肺炎という重い副作用を起こしやすいとされ、併用してはいけないことになっています。また、イレウスの治療に使う大建中湯と糖尿病の薬であるグルコバイ、ベイスンといった薬の併用は大腸に異常なガスを発生させる危険性が警鐘されています。

 

また甘草の副作用が、利尿剤や強力ミノファーゲンによって増えることも指摘されています。

 

現在服用している薬、受けている治療についてきちんと知ったうえで、漢方を出してくれる先生と相談してみてください。

 

 

<高円寺南診療所からのメッセージ>

漢方薬と西洋薬の併用によって懸念される弊害は多く存在しています。漢方薬の相互作用が見逃されやすいです。

 

その理由として考えられるのは、過去の事例として、漢方薬と西洋薬の併用禁忌になっているのが小柴胡湯とインターフェロンの併用例のみだからです。

 

併用注意とされているのも麻黄含有製剤・甘草含有製剤のみです。

 

1)Answerの補足説明①

<慢性肝炎の治療に用いるインターフェロン療法と小柴胡湯はどちらも慢性肝炎に対する治療効果が証明されている薬です。しかし、併用すると間質性肺炎という重い副作用を起こしやすいため、併用してはいけないことになっています。>

 

これが、唯一の併用禁忌例です。

 

 

2)Answerの補足説明②

<イレウスの治療に使う大建中湯と糖尿病の薬であるグルコバイ、ベイスンといった薬の併用は大腸に異常なガスを発生させる危険性>

 

理由については、大建中湯などに含有されている膠飴(こうたい)が、ベイスンなどのα-グルコシダーゼ阻害薬との併用により、二糖類である膠飴が吸収されず未消化の糖質が腸内細菌より分解されるからです。そのため腹部膨満感などが悪化する可能性があります。

 

 

3)Answerの補足説明③

<甘草の副作用が、利尿剤や強力ミノファーゲンによって増えること>

の理由については、甘草を含む漢方薬を過量に摂取することにより、偽アルドステロン症といって低カリウム血症を引き起こすことがありますが、利尿剤(ループ利尿剤、サイアザイド系利尿剤)も低カリウム血症をもたらし易いために、低カリウム血症を起こす可能性をさらに高めてしまうからです。これは併用注意であり、禁忌とはされていません。

 

 

4)麻黄を含む漢方薬は、交感神経刺激作用があるため甲状腺製剤などの薬剤との併用で、同じ作用の重複による不眠・動悸・頻脈・興奮などの症状を起こす可能性を高めます。

 

併用注意ですが、併用禁忌とはされていません。

 

 

5)麻黄・附子などの生薬は、胃酸分泌抑制剤との併用により胃内のpHの上昇で麻黄・附子などの生薬の吸収が高くなり、副作用の発現頻度が上がるため注意が必要です。

 

これも、併用注意とされていますが、併用禁忌ではありません。

 

 

漢方薬と西洋医学の薬剤を別々の医療機関あるいは薬局から出していただいている方は多数に及びます。

 

同一の医療機関、もしくは一人の医師から両方の処方を同時に受けている方はむしろ少数派だと思います。

 

そのために、漢方薬との併用で様々な症状に繋がる可能性がたくさんあります。

 

初診時には当然ですが、再診時以降も、他の医療機関や薬局・薬店から出された薬は、市販などで購入して服用しているものを含めて、それぞれの医師もしくは薬剤師に確認することが必要となります。

 

高円寺南診療所での処方方略は、独自の階層的処方システムをとっています。

 

1)養生と鍛錬:生活指導(睡眠・覚醒リズムの是正)>食事>運動>心理

2)物理療法・鍼灸療法

3)ミネラル類>ビタミン類>漢方薬>西洋薬の順です。

 

そのため、西洋薬を処方している多くの患者さんには、すでに漢方薬が処方されていることが多く、また、漢方薬を処方している多くの患者さんには、すでにミネラル・ビタミン類を処方していることが多いです。

 

高円寺南診療所では、この独自の階層的処方システムを活用することにより、漢方薬と西洋薬の相互作用の発生予防のために、処方の度に、確認と検討を重ね、日常的に注意と警戒を維持できる環境が確立しています。