わが国では、脳卒中は高齢者要介護原因疾患では最大であり全体の約2割を占めています。

 

脳卒中を発症すると1年以内の死亡原因の多くが脳卒中そのもの、またはその再発によるものです。また、1年以後は心血管合併症による死亡がこれらを上回ります。

 

ですから、脳卒中患者の外来診療に当たっては、脳卒中再発予防が最も重要ですが、同時に、心筋梗塞などの心血管事故の予防、認知機能の低下に留意して早期発見に努めることになります。

 

 

脳卒中の診療は発症予防、発症した場合の急性期治療、リハビリテーションと慢性期再発予防に大別されます。

 

そして脳卒中の急性期治療は、ほとんどの症例が専門特化された急性期病院で実施されるために、高円寺南診療所を含め、大多数の医療機関は急性期治療を終結した後に診療に参加することになります。

 

また、神経後遺症のため歩行障害、運動障害を有する場合は訪問リハビリテーションなどの介護サービスを利用して日常生活動作の維持に努めることが必要です。

 

しかし、医療機関はいずれも、脳卒中再発予防のためのガイドラインに基づいた外来診療に努めることになります。

 

問題点は、医療と介護の分離、医療においても急性期と安定期など、脳卒中の患者さんに対しての連続的なケアが確保しづらいことです。

 

 

脳卒中再発予防の内科的管理の3本柱は、

 

①内科的危険因子の管理(高血圧管理が最重要!他に糖尿病、脂質異常症、心房細動、慢性腎臓病などの管理)

 

②抗血栓療法(心原性脳塞栓症の抗凝固療法、非心原性脳梗塞の抗血小板療法)

 

③生活習慣改善(禁煙、節酒、運動、適正な体重維持など)

です。

 

 

脳卒中に対する高円寺南診療所の力点は、そもそも脳卒中にならないようにするための予防においています。

 

いかに医学が進歩しても、ひとたび脳卒中になると、様々な不都合が生じてしまうことは避けられないからです。

 

 

水氣道®に定期的に参加することは、生活習慣の全般的な改善に繋がります。

 

水氣道は血圧の正常化などのメカニズムによって脳卒中予防に役立つ他、脳卒中の急性期治療後の神経後遺症のリハビリテーション、さらには再発予防の目的にもかなう、理想的な有酸素運動です。

わが国の不整脈患者数は増加しています。

 

とりわけ最も多くみられるのは心房細動です。

 

心房細動の患者数は約130万人と推定されています。

 

心房細動は加齢と共に増加するので、わが国でも高齢化に伴い患者数はさらに増加する傾向にあります。

 

わが国では日本循環器学会から「不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)」

 

「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)」

 

「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」が公表されています。

 

 

期外収縮やⅠ度房室ブロック、ウェンケバッハ型Ⅱ度房室ブロックは生命予後には影響しません。しかし、その他の不整脈は生命予後に影響を及ぼします。

 

特に、心室細動や心室頻拍などの重症不整脈では突然死が起こりえますが、植え込み型除細動器(ICD)や抗不整脈薬による治療が適切になされれば、生命予後は基礎心疾患の重症度に依存することが多いです。

 

 

不整脈について高円寺南診療所で説明していること

 

 

①不整脈の診断には、症状を感じたときの心電図を記録することが必須です。

 

②心電図を記録することが困難であれば、自己検脈により脈拍数、脈が規則正しいかどうかを確認していただくだけでも診断に役立ちます。

 

③“動悸”を感じるからといって不整脈とは限りませんし、また、不整脈であっても動悸を感じないことがあります。

 

④人間ドックや健診での心電図検査の結果で、期外収縮はよくみられる所見ですが、治療の必要はほとんどありません。

 

⑤心房細動は、たとえ無症状であっても、塞栓症予防のため抗凝固療法の必要性を検討します。また、症状が無いからといって安易に抗凝固療法を中止してはいけません。

 

⑥心房細動の中でも、発作性の場合は、カテーテルアブレーションによる根治が期待できます。

 

⑦発作性上室頻拍・心房粗動は、カテーテルアブレーションにより治療可能であり、第一選択の治療法ですらあります。

 

➇不整脈治療薬により、既存の不整脈が増悪したり、新たに別の不整脈が出現したりすることがあるので、抗不整脈薬の調整は外来ではなく、入院を前提にして行うことを勧めています。

季節性アレルギー性鼻炎の代表であるスギ花粉症の有病率は年々増加傾向にあります。

 

特に10歳代から50歳代にかけてその有病率は高いです。

 

スギ花粉症は国民病とされ、莫大な医療費や労働生産性の低下などが社会問題となっています。

 

そのうえ、日本のスギ花粉症は欧米の花粉症と比較して重症度が高いにもかかわらず、花粉症症状を適切にコントロールできている患者さんはまだ少ないです。

 

スギ花粉よりも、目下ヒノキ花粉がピークなので、引き続きご注意ください。

 

 

花粉飛散量の傾向

 

2018年春のスギやヒノキの花粉飛散量は、全国的に2017年春より多いです。

 

東北地方から関東地方にかけての花粉飛散量は、2017年春の3倍から4倍です。

 

 

2018年 花粉飛散量増加の主な要因

 

春に飛散するスギやヒノキの花粉飛散量は前年夏、特に7月の日照時間に大きな影響を受けます。2017年7月の日照時間は全国的に平年並みか多くなりました。

 

このため、2018年春の花粉飛散量は例年より多くなることが予測されていました。

 

2017年秋に実施したスギ林の雄花調査でも、全国的に前年並みか前年より多くなっていました。また、ヒノキの雄花もかなり多くなっています。

 

さらに前年の花粉飛散量が多いと翌年は減少し、逆に前年が少ないと翌年は増加するという傾向もあるため、2017年春の花粉飛散量が例年より少なかった東北から関東地方にかけては、2018年春の花粉飛散量がかなり多くなる予想です。

 

スギやヒノキは樹齢が30年以上になるとたくさんの雄花を生産するようになります。

 

現在日本に植林されているスギやヒノキは90%以上が樹齢30年を超えています。

 

そのため花粉生産がピークになっているので、そもそものベースラインが高いです。

 

そのうえ、2018年春は例年より花粉飛散量が多いと予測されるので、早い時期からの予防策が必要であることを、定期通院中の皆様にはお伝えしていました。

 

 

2018年 新患の皆様の実態

 

2018年新患の患者さんの特徴は、

 

1)マスクや手洗いだけでは症状を防ぐことができると考えている方が多かったです。

⇒ 早目の受診対策が必要です。

 

2)初診時からすでにアレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎が完成しているうえに、急性鼻咽頭炎や急性気管支炎を合併している方が多かったです。

⇒ 花粉症対策の遅れによって、急性副鼻腔炎、急性気管支炎や気管支喘息(咳喘息を含む)を引き起こすことがあります。

 

3)「インフルエンザが治りきらずに風邪症状が長引いている」と誤解して、市販の風邪薬を1ヶ月以上も内服している人が散見されました。

⇒ 市販薬で「様子を見る」方が少なくありませんが、自己判断には限界があります。自己判断で「様子を見る」のではなく、医師が「様子を診る」ことが適切な治療を施すうえで大切です。

 

4)アレルギー性鼻炎の症状のうち、くしゃみ、鼻水については気づいていますが、鼻づまりについては自覚の乏しい人が多かったです。

⇒ その理由は、両側の鼻が詰まってはじめて、ようやく鼻づまりに気が付くような人が多いからなのかもしれません。

 

 

2018年 花粉症対策

 

1)花粉症には、総合アレルギー対策が必要です。

 

眼科、耳鼻咽喉科など科別にバラバラに受診していらっしゃる方は、それぞれの科の医師に情報を提供しておくことが望まれます。たとえば、目薬は目だけでなく鼻にも影響を及ぼします。

 

 

2)花粉症は季節性アレルギーですが、通年性アレルギーの合併に注意してください。

 

花粉の種類によって、発症のピークが異なります。花粉情報に注意し、抗原の回避・除去に努めてください。

 

 

3)市販もしくは耳鼻咽喉科医の処方により、点鼻血管収縮薬を使用している方はご注意!この種の点鼻薬は連用により鼻閉を引き起こすので、1日数回使用する場合には、短期間の使用にとどめてください。

 

 

4)花粉症が自然治癒することは少ないです。花粉症の寛解や薬物療法の減量をはかるためにはアレルゲン免疫療法が必要です。

 

 

5)例年この季節に重症化する方は、花粉が飛散する以前からの初期療法が有効です。

 

 

6)薬物療法は継続すると有効性が高くなります。特に、鼻噴霧用ステロイド薬は、患者さんが勝手に中断すると治りにくくなるので、薬剤の減量や中止のタイミングは自己判断せずに、担当医と相談してください。必要な期間は規則正しく習慣的に連用してください。

 

 

参考

 

https://tenki.jp/pollen/expectation/

冬期に流行するインフルエンザは「季節性インフルエンザ」と呼ばれています。

 

これにより、わが国では毎年の流行期間中に1,000~2,000万人が医療機関を受診すると推定されています。

 

一般には、比較的予後良好な疾患ですが、高齢者や基礎疾患をもつ方では重症化することがあります。

 

季節性インフルエンザの治療については、日本感染症学会による「抗インフルエンザ薬の使用適応について(改訂版)」がわが国での治療ガイドラインと言ってもよいでしょう。

 

 

インフルエンザ迅速診断キットの正確さを検証した海外のメタアナリシスによると、検査の感度は62.3%(95%信頼区間57.9~66.6%)でした。

 

つまり、迅速診断キットでは3分の1以上も診断見落としがあるということです。

 

わが国からの報告では感度は80~90%以上とされますが、これは疑わしいです。

 

その理由は感度が低くなる条件が複数存在するからです。

 

それは、成人であること、B型インフルエンザの場合、発症6時間ないし12時間くらいまでの病初期、あるいは5日以降の病後期、高熱がない場合などです。

 

当方の説明にもかかわらず専門性と臨床経験のある医師による総合的な判断より、インフルエンザ迅速診断キットの結果を信頼する方は、初診の段階で他の医療機関を受診していただくようにお勧めしています。

 

 

季節性インフルエンザについて高円寺南診療所が説明していること

 

①健常成人では、季節性インフルエンザは通常予後良好であり、1週間程度で治癒するとされています。

 

②しかし、そもそも健康なライフスタイルを維持して、インフルエンザワクチンを接種していれば、季節性インフルエンザに罹るリスクが小さくなり、症状も軽度で済むことが多いです。

 

③また、季節性インフルエンザに罹る方は、たとえ本人が健常であると思い込んでいても、

実際には検診や人間ドック等を受けていないケースが散見され、根拠が乏しいことが多いです。その場合は、1週間では完全に治癒しない場合もあります。

 

④重症化・合併症のハイリスク者では、重症化、合併症併発により、重症化し、死に至ることもあり得ます。

 

⑤治療開始後、食事を摂ることができ、症状が改善傾向にあれば、そのまま様子をみてよいですが、その判断はできるかぎり、主治医と共に行ってください。

 

⑥治療開始後も発熱が続き、症状が悪化する場合は、必ず再受診してください。

 

⑦特に呼吸困難、意識障害、けいれんなどの症状が出現した場合は、直ちに救急車を呼んでください。

 

➇成人が季節性インフルエンザに罹患した場合の休職期間も、概ね学校保健安全法によるインフルエンザに罹患した場合の出席停止期間を参考にします。

「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまで」と決められていますが、事前に職場に連絡しておきましょう。

 

⑨禁忌でなければ、毎年流行期間が訪れる前に、早めにインフルエンザワクチンを接種してください。

わが国における血液透析患者は2013年末の時点でさえ31万人を越え、それ以降も増加の一途をたどっています。

 

血液透析に至る原因疾患は、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症をはじめとする慢性腎臓病(CKD)が多くを占めています。

 

慢性腎臓病(CKD)患者数は約1,330万人と推定され、日本人の8人に1人に相当します。

 

包括的かつ有効なCKD対策を、診療所外来等で実行しなければ、新規透析導入患者を有意に減少させることはできません。

 

診療ガイドラインとしては、日本腎臓病学会の2013年版「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」、日本透析医学会の2015年版「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」があります。

 

また、各疾患別(多発性嚢胞腎、IgA腎症、ネフローゼ症候群、急速進行性糸球体腎炎)の2014年度版ガイドラインが日本腎臓病学会より公表されています。

 

 

慢性腎臓病(CKD)について高円寺南診療所が説明していること

 

①慢性腎臓病(CKD)の患者さんは、末期腎不全(ESKD)よりも死亡リスクが高いです。

 

②それは軽度の腎機能低下や蛋白尿がCVD(心筋梗塞や脳卒中)の大きな危険因子だからです。ですから、定期的な尿検査により蛋白尿をチェックし、血液検査で腎機能を評価することが大切です。

 

③CKDは動脈硬化を促進し、またCVD(心筋梗塞や脳卒中)の患者さんではCKDを合併する頻度が高いです。

 

④CKDは単独でCVD(心筋梗塞や脳卒中)の予後規定因子です。

 

⑤CKDとCVDの危険因子の多くは共通しています。

 

⑥CKD独自の合併症には、CKD-MBDや腎性貧血があります。

 

⑦またCKD-MBDや腎性貧血は、CVD(心筋梗塞や脳卒中)の危険因子となります。

 

➇慢性腎臓病(CKD)とCVD(心筋梗塞や脳卒中)は、同時に並行して発症・進展を予防し、増悪を防ぐようにすることが重要です。

 

⑨そのための具体的な方法は、臨床栄養学を学んで実践すること、水氣道®など医学の専門家によって体系化された方法に基づく運動習慣を持つことが肝要です。

<夕食を食べないので(食べる習慣が無いので)夕食後の薬が飲めませんでした。>

 

Nogucciが受けた相談です。

 

他にも、「朝ギリギリまで寝ていたいので、朝食の時間が無く薬を飲み忘れることがあります」という方も。

 

 

ドクトル飯嶋は必要最小限の薬しか出しません。

 

薬はしっかりと飲んでいる前提で処方しています。

 

 

ガッツリと食べなられなくても、少しでもいいので何かお腹に入れて、必要量は飲んで頂きたいのです。

 

 

3食しっかり食べてもらいたいのは…

 

 

薬を飲むために3食きちんと食べる

 

→朝食や夕食を食べるリズムができる

 

→食生活のリズムが整う

 

→リズムが整うと、飲み忘れが無くなる

 

→必要量が飲めているので回復が早くなる

 

→薬が必要無くなった後も良い習慣が残り、体調管理に役立つ

 

 

ちょっとしたことですが、より良い方向に向かって行ってます。

 

 

ともかく、今までの習慣を修正するのは大変だと思います。

 

しかし、薬を飲んで早く良くなり、朝昼晩を食べる良い習慣も身につく、

一石二鳥だと思いませんか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本人の貧血の頻度は、成人男性7~10%、成人女性20%弱です。

 

男性は70歳以上、女性は40歳代で最も多いです。

 

貧血の原因として最も重要なのは鉄欠乏です。

 

鉄欠乏の目安は、血清フェリチン値が15ng/mL未満です。

 

鉄欠乏の男性は4%、女性で約20%です。

 

もっとも、これらのデータは一般人口における割合ですから、

 

病院を受診する方の割合はグーンと高くなるわけです。

 

このように、女性を診たら貧血を忘れてはならないのが、少なくとも内科医の心得です。

 

とくに40歳代の女性では、鉄欠乏が40%台にも登り、月経のある女性の半数が鉄欠乏であることは、余り意識されていないようです。

 

鉄欠乏性貧血に関しては日本鉄バイオサイエンス学会が作成した「鉄剤の適正使用による貧血治療指針改定第3版」が公表されています。

 

 

<鉄欠乏性貧血について高円寺南診療所で説明していること>

 

①男性および閉経後の女性では消化管出血が原因であることが多いです。

 

②悪性腫瘍が原因であることもあるので、消化管およびその付属臓器(肝・胆・膵)のスクリーニング検査をお勧めします。便潜血検査、上部消化管造影検査、腹部超音波検査

 

③治療薬として経口鉄剤を用いることがありますが、その副作用として、悪心、便秘、腹部膨満、腹痛、下痢、嘔吐などがあります。

 

④経口鉄剤には向き不向きがあるので、必要に応じて内服薬の変更や服用時間の変更(朝から就寝前など)を工夫する必要があります。

 

⑤内服薬で改善しない場合は、鉄剤の静脈内投与が必要となる場合があります。

 

⑥出血による鉄欠乏性貧血の場合、出血が持続していなければ、貧血は2か月以内に改善します。

 

⑦貧血は表面的には改善されても、鉄の貯蔵をはかるために、さらに3~6か月間鉄剤を内服する必要があります。

 

➇貧血改善後にも再発することが多いです。

 

 

通常であれば3か月に1回、最低でも半年に1回は血液検査を行う必要があります。

 

なお鉄分の多い食事については、臨床栄養学のテキストをご参考になってください。

 

1)  食物と栄養学基礎シリーズ10 臨床栄養学

吉田勉監修、飯嶋正広・今本美幸 編著 2013 学文社

(9疾患・病態別栄養ケア・マネジメント/9・10血液系の疾患・病態/

 9・10.1 貧血 192頁)定価(本体3000円+税)

 

2)わかりやすい臨床栄養学 第5版

吉田勉監修、

飯嶋正広、井上久美子、今井克己、近江雅代、恩田理恵、小林三智子 共著

三共出版 2017年3月10日 第5版

(各論編 11血液系疾患/1貧血 鉄欠乏性貧血 179頁)

定価(本体2900円+税)

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は、「上脘(じょうかん)」と「巨闕(こけつ)」です。

 

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場所は、臍とみずおちの上端を二等分したところが中脘、さらに二等分したところが巨闕で、中脘と巨闕の中間が上脘です。

 

 

「胃腸炎」「胃痙攣」「胃拡張」等に効果があります。

 

 

胃の調子が悪い時に指圧してみてください。

 

 

<参考文献>

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

急性肝炎のほとんどは自然経過で肝不全に至ることなく治癒します。

 

そのため、補液などの対症療法で経過観察をします。

 

しかし、急性肝不全など肝不全に移行した場合にはきわめて予後不良になります。

 

そのためにも、急性肝炎では肝予備能を厳重に観察し、劇症化の徴候を見落さないことが必要です。

 

劇症化の徴候としては、身体所見(悪心・嘔吐の持続、傾眠)、血液検査所見(PT延長、間接型ビリルビン優位のビリルビン上昇)などがあります。

 

また、原因によっては慢性化のリスクもあります。

 

 

急性肝不全症例では専門医療機関にて肝移植を含めた治療が必要になります。

 

こうした肝機能低下例では、肝移植も治療の選択肢となり得るため、少なくとも肝移植の適応の判断を含め肝不全の治療については肝臓専門医が行うか、もしくは併診とすることが望ましいと考えます。

 

 

実際には、ステロイドパルス療法や血漿交換・持続濾過透析などの集学的治療を行い、生体肝移植のドナー候補の確認や脳死肝移植登録を行います。

 

 

近年、治療適応や薬剤選択が複雑性を増しています。

 

それでは、一般には、どのような場合に肝臓病専門医に紹介すべきでしょうか。

 

 

以下は、高円寺南診療所の指針です。

 

紹介先は大学病院のなかでも特定の高度医療機関に限られます。

 

1)急性肝炎の場合、急性肝不全に移行する可能性が高い例

(血清ビリルビンが持続的に高値、プリトロンビン時間が40%未満

 

2)B型・C型慢性肝炎、肝硬変で抗ウイルス療法を検討する場合

 

3)肝硬変症で合併症をスクリーニングする場合

 

4)肝炎ウイルス以外の慢性肝障害で原因が不明な場合