季節性アレルギー性鼻炎の代表であるスギ花粉症の有病率は年々増加傾向にあります。
特に10歳代から50歳代にかけてその有病率は高いです。
スギ花粉症は国民病とされ、莫大な医療費や労働生産性の低下などが社会問題となっています。
そのうえ、日本のスギ花粉症は欧米の花粉症と比較して重症度が高いにもかかわらず、花粉症症状を適切にコントロールできている患者さんはまだ少ないです。
スギ花粉よりも、目下ヒノキ花粉がピークなので、引き続きご注意ください。
花粉飛散量の傾向
2018年春のスギやヒノキの花粉飛散量は、全国的に2017年春より多いです。
東北地方から関東地方にかけての花粉飛散量は、2017年春の3倍から4倍です。
2018年 花粉飛散量増加の主な要因
春に飛散するスギやヒノキの花粉飛散量は前年夏、特に7月の日照時間に大きな影響を受けます。2017年7月の日照時間は全国的に平年並みか多くなりました。
このため、2018年春の花粉飛散量は例年より多くなることが予測されていました。
2017年秋に実施したスギ林の雄花調査でも、全国的に前年並みか前年より多くなっていました。また、ヒノキの雄花もかなり多くなっています。
さらに前年の花粉飛散量が多いと翌年は減少し、逆に前年が少ないと翌年は増加するという傾向もあるため、2017年春の花粉飛散量が例年より少なかった東北から関東地方にかけては、2018年春の花粉飛散量がかなり多くなる予想です。
スギやヒノキは樹齢が30年以上になるとたくさんの雄花を生産するようになります。
現在日本に植林されているスギやヒノキは90%以上が樹齢30年を超えています。
そのため花粉生産がピークになっているので、そもそものベースラインが高いです。
そのうえ、2018年春は例年より花粉飛散量が多いと予測されるので、早い時期からの予防策が必要であることを、定期通院中の皆様にはお伝えしていました。
2018年 新患の皆様の実態
2018年新患の患者さんの特徴は、
1)マスクや手洗いだけでは症状を防ぐことができると考えている方が多かったです。
⇒ 早目の受診対策が必要です。
2)初診時からすでにアレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎が完成しているうえに、急性鼻咽頭炎や急性気管支炎を合併している方が多かったです。
⇒ 花粉症対策の遅れによって、急性副鼻腔炎、急性気管支炎や気管支喘息(咳喘息を含む)を引き起こすことがあります。
3)「インフルエンザが治りきらずに風邪症状が長引いている」と誤解して、市販の風邪薬を1ヶ月以上も内服している人が散見されました。
⇒ 市販薬で「様子を見る」方が少なくありませんが、自己判断には限界があります。自己判断で「様子を見る」のではなく、医師が「様子を診る」ことが適切な治療を施すうえで大切です。
4)アレルギー性鼻炎の症状のうち、くしゃみ、鼻水については気づいていますが、鼻づまりについては自覚の乏しい人が多かったです。
⇒ その理由は、両側の鼻が詰まってはじめて、ようやく鼻づまりに気が付くような人が多いからなのかもしれません。
2018年 花粉症対策
1)花粉症には、総合アレルギー対策が必要です。
眼科、耳鼻咽喉科など科別にバラバラに受診していらっしゃる方は、それぞれの科の医師に情報を提供しておくことが望まれます。たとえば、目薬は目だけでなく鼻にも影響を及ぼします。
2)花粉症は季節性アレルギーですが、通年性アレルギーの合併に注意してください。
花粉の種類によって、発症のピークが異なります。花粉情報に注意し、抗原の回避・除去に努めてください。
3)市販もしくは耳鼻咽喉科医の処方により、点鼻血管収縮薬を使用している方はご注意!この種の点鼻薬は連用により鼻閉を引き起こすので、1日数回使用する場合には、短期間の使用にとどめてください。
4)花粉症が自然治癒することは少ないです。花粉症の寛解や薬物療法の減量をはかるためにはアレルゲン免疫療法が必要です。
5)例年この季節に重症化する方は、花粉が飛散する以前からの初期療法が有効です。
6)薬物療法は継続すると有効性が高くなります。特に、鼻噴霧用ステロイド薬は、患者さんが勝手に中断すると治りにくくなるので、薬剤の減量や中止のタイミングは自己判断せずに、担当医と相談してください。必要な期間は規則正しく習慣的に連用してください。
参考
https://tenki.jp/pollen/expectation/
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