神経・精神・運動器の病気

 

<副腎白質ジストロフィー>

 

中枢神経系(脳や脊髄)において脱髄(神経線維を覆っている髄鞘と呼ばれるさやの部分[電線に例えれば銅線が神経でその被覆の部分]の崩壊が起こる病態)や神経細胞の変性と、腎臓の上にありホルモンを産生している副腎という臓器の機能不全を特徴とする疾患です。

 

男性に重症化する遺伝病です。中枢神経系白質、副腎皮質、血清、白血球、赤血球など全身の組織において極長鎖脂肪酸と呼ばれる脂肪酸の増加を認めます。

 

 

この病気の患者さんは男性2~3万人に一人の割合と考えられます。

 

ほぼ同数の女性の保因者が存在すると考えられます。

 

通常、女性の方は症状を示しませんが、一部の女性保因者では加齢とともに軽度の歩行障害等をきたす方がみえます。

 

 

この病気の遺伝子に異常がある男性のうち40%程度の方は小児、思春期までに大脳型と呼ばれる症状で発症し、多くは急速に進行します。

 

成人では大脳型以外に、下肢のつっぱり感、歩行障害を主体とするAdrenomyeloneuropathy(AMN)で発症することがあります。

 

その他にも副腎機能不全のみの症状で発症する方もみえますが、AMNや大脳型に進展することがあるので、注意を要します。

 

 

この病気の原因はX染色体(男性では1つ、女性では2つ持っています)に存在するABCD1遺伝子の異常によりおこる遺伝病の一つです。

 

原因となる遺伝子のつくるタンパク質はadrenoleukodystrophy protein(ALDP)と呼ばれています。

 

これは細胞内にあるぺルオキシソームという細胞内小器官の膜に存在するタンパク質です。

 

ぺルオキシソームへの物質の移送に関わっていると考えられ、この膜タンパクの異常により極長鎖脂肪酸という物質の活性型誘導体がペルオキシソーム内へ移送されなくなる結果、

 

分解(β酸化といいます)ができなくなり細胞内に蓄積し、神経系細胞膜の機能異常を引き起こす可能性が示唆されています。

 

 

この病気の症状は、小児で発症する場合は、知能低下(学力の低下)、行動の異常(学校の落ち着きのなさ)、斜視、視力・聴力低下、歩行時の足のつっぱり(痙性麻痺)などの症状で発症することが多いです。

 

症状は進行性でコミュニケーションがとれなくなり、無治療では通常1~2年で終日臥床状態となります。

 

成人で発症する場合には歩行障害を主徴として知覚障害、尿失禁、インポテンツなどをきたし知能低下をきたさない慢性の経過をとる Adrenomyeloneuropathy(AMN)というタイプと小児と同様に知能低下を主徴とし急速に進行し臥床状態にいたるタイプ(成人大脳型)があります。

 

その他、思春期に発症する思春期型、ふらつき(小脳失調)を初発とする小脳・脳幹型などがあります。

 

女性保因者は通常発症しませんが、中高年以降に軽度の歩行異常(足のつっぱり)を認める場合もあります。

 

 

この病気の診断は血中極長鎖脂肪酸測定が重要で、画像では頭部MRIなどで後頭葉から進展していく白質病変が特徴的です。

 

 

この病気の治療法は小児大脳型や思春期大脳型で発症早期の場合には造血細胞移植(骨髄移植や臍帯血移植)の効果が報告されています。

 

移植後1~2年は症状が緩徐に進行しますが、その後停止する例が多いようです。

 

ただし、ある程度症状が進行した場合には増悪する場合もあり、また本治療法自体の危険度もあるため本治療法の選択には充分な検討が必要です。

 

成人大脳型でも近年、造血細胞移植施行例の報告があり、今後の検討が期待されます。

 

歩行障害を主徴とするAMNでは歩行時の足のつっぱりを緩和する抗痙縮薬の内服や理学療法が行われます。

 

また公的支援としては小児慢性特定疾患、成人の場合でも2000年4月より特定疾患に指定されていますので(2015年1月1日からは指定難病)、申請により医療費の公費負担が受けられます。

 

また身体機能障害の程度に応じて身体障害者手帳の申請をおこない介護用品の支援などが受けられます。

 

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「犢鼻(とくび)」です。

IMG_1883

場所は膝のお皿の下外方にあります。

 

 

「膝関節痛」「膝のしびれ」「下肢の麻痺」に効果があります。

 

 

お灸やマッサージをしてみてください。

 

 

<参考文献>

 

 

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

内分泌・代謝・栄養の病気

 

<メタボリック症候群>

 

 

厚生労働省は、メタボリックシンドロームに着目した「特定健診」「特定保健指導」を市町村や企業の健保組合に義務付けています。対象は40歳から75歳未満の方です。

 

 

メタボリック症候群の診断基準でしばしば問題になるのが、<悪玉コレステロール>と呼ばれている従来のLDLコレステロールの扱いです。

 

LDLコレステロールは虚血性心疾患の最大のリスクファクターであるのにもかかわらずメタボリック症候群の診断基準に含まれていないからです。

 

 

その理由は、

 

 

1)LDLコレステロールは古典的リスクファクターであり、新規のリスクファクターであるメタボリック症候群とは独立して考えることが可能であるから、

 

 

2)生理学的にメタボリック症候群での内臓脂肪蓄積は直接LDLコレステロールを上昇させないから、

 

という点です。

 

 

メタボリック症候群の発症に深く関与するのが、内臓の肥大化した脂肪細胞から分泌される生理活性物質で、総称してアディポカイン(アディポサイトカイン)といいます。

 

 

内臓の脂肪細胞が肥大化すると、善玉アディポカインの分泌が減り、悪玉アディポカインの分泌が増えます。

 

 

○善玉アディポカイン

 

アディポネクチン(動脈硬化を予防)、レプチン(食欲を抑制)

 

 

〇悪玉アディポカイン

 

PAI-1(血栓形成を促進し、動脈硬化を進展)、

 

TNF-α、レジスチン、Il-6(インスリンの働きを低下させ、血糖を上昇)

 

アンジオテンシノーゲン(血管を収縮させて血圧上昇)

 

 

このように、内臓脂肪細胞は、ただの脂肪の塊ではなくアディポカイン(アディポサイトカイン)と総称される様々な生理活性物質の分泌組織であることが注目されています。

今回は「番外編 その3」です。

 

今夏の北アルプス登山から、いろいろな「助け合い」について、今回もお話いたします。

 

 

私は、実は少し人見知りのタイプなのです。

 

それで私から他の方々には積極的には話しかけることは多くありません。

 

しかし、山小屋や途中の休憩所ではけっこう話しかけられることがあります。

 

たいてい「どこから来たんですか」とか「どこに向かうんですか」といった声かけから、話が自然に発展していきます。

 

 

そうなると、いろいろな情報交換がなされるようになります。

 

それが登山の行程のどこかで活きてきて助けられることがあります。

 

 

また、一生懸命登っている小さい子どもの姿に触れることがあります。

 

すると私自身の幼い頃のことが自然になつかしく思い出されます。

 

逆に高齢の方(今回は80才の方に出会いました!)とお話しする機会もあります。

 

すると自分もこの方のように、高齢になるまで登山を続けていられるだろうか、

 

どうすれば体力や筋力、気持ちを将来にわたって維持できるのだろう?と思いをはせたりします。

 

 

さて「助け合い」の話に戻りましょう。いざ助けを求めようとする時に活きてくるのは、

 

実は「日常的に何気なく、声かけをしておく習慣や心掛け」なのかもしれません。

 

 

そうした習慣や心掛けを身に着けておけば、助けてほしい方は第一声を発しやすくなるのではないでしょうか。

 

また助ける方もいきなりのSOSよりは、<助けてほしい>というサインを余裕をもって自然に受け取りやすくなるのではないでしょうか。

 

 

ですから、日ごろから周りの人々に笑顔で接し、気持ちの良い自然な挨拶をする、 こうした何気ない行動を心がけていると良いと思います。

 

 

「声かけ上手」は、「助けられ上手」、なのかもしれませんね。

 

 

(次回へ続く)

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

心臓・脈管 / 腎・泌尿器の病気

 

<非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)>

 

急性心筋梗塞の診断と治療の進歩は著しいものがあります。

 

生命に直結する病態であるため、医師ばかりでなく、

 

一般の皆様も、凡その概要に触れておくことは無駄ではないと思います。

 

 

そもそも心筋梗塞とは、心臓の筋肉細胞に酸素や栄養を供給している冠動脈血管に閉塞や狭窄などが起きて血液の流量が下がり、心筋が虚血状態になり壊死してしまった状態です。

 

通常は急性に起こる「急性心筋梗塞 (AMI) 」のことを指します。

 

また心臓麻痺とか心臓発作とも呼ばれることがあります。

 

 

心筋が虚血状態に陥っても壊死にまで至らない前段階を狭心症といい、

 

狭心症から急性心筋梗塞までの一連の病態を総称して急性冠症候群acute coronary syndrome, ACS)という概念が提唱されています。

 

 

 

診断:最近では、心筋壊死の証拠とし心筋トロポニンの上昇を必須とします。

 

高感度トロポニンは心筋特異性が高く、1時間という早期から上昇するため急性冠症候群の鑑別診断に有用です。

 

心電図の波形で、ST部分が上昇しているもの(ST上昇型)と、上昇していないもの(非ST上昇型)があります。

 

 

 

治療:非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)は、ST上昇型急性冠症候群と比較して治療までの時間的猶予があることが多く、冠動脈バイパス手術(CABG)が必要となる可能性が高いです。

 

中等度以上の非ST上昇型急性冠症候群NSTE-ACS)は、24時間以内の経皮的冠動脈形成術(けいひてきかんどうみゃくけいせいじゅつ、英percutaneous coronary intervention; PCI)は生命予後を改善できます。

 

このPCIとは、アテローム等の動脈硬化性病変により狭窄した心臓の冠状動脈を拡張し、血流の増加をはかる治療法で虚血性心疾患に対して行われる血管内治療の一つです。

 

この治療法の確立によって虚血性心疾患における内科学領域の循環器学と外科学領域の心臓血管外科学は限りなく接近しつつあります。

 

 

PCIによる早期侵襲的治療が有利とされつつある中、新規抗血小板薬(ADPアンタゴニスト:プラスグレル、チカグレロル)の開発にも目覚ましいものがあります。

 

これらの多くは欧米のガイドラインでは推奨されていが、日本では慎重に改訂作業を進めています。

 

救急外来で速やかに、これらの薬剤を投与した方が緊急PCIに十分効果が期待できるが、冠動脈造影の結果、速やかにCABGが必要となったときに出血の問題があるからです。

 

 

その場合、プラスグレルは7日前、チカグレロルやクロピトグレルは5日前に抗血小板薬の休薬が必要とされます。

 

推奨される2剤併用抗血小板療法(DAPT)期間は1年です。それ以上の継続は出血リスクが低く、血栓リスクが高いときのみとされます。

 

出血リスクが高いときや抗凝固を併用する3剤併用のときは抗凝固療法を優先し、DAPT期間を短縮します。

 

これらのリスクの層別化はTIMIリスクスコアやGRACEリスクスコアで行いきめ細かい対応が取られています。

 

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

<特発性器質化肺炎>

 

平成元年開設以来の最大の疑問は、なぜ高円寺南診療所には厄介な病気をもった患者さんが相当数受診されるのか、ということです。

 

お気づきの方がいらっしゃいましたら、今後どのように対応したら良いのかも含めてこっそり教えてくださいませんか?

 

 

もっとも私は、そうした厄介な患者さんの御蔭で貴重な臨床力を磨くことができたことを実感しております。

 

しかしながら、この苦労を再び繰り返せるか、といわれたら、果たしてYesと答えることができるかどうか、率直なところ自身はありません。

 

 

厄介な患者さんの例を挙げるのは恐縮ですが、年齢・性別も伏せてご報告させていただきます。

 

その方は熱が出て、咳も出て、全身がけだるくて、体重が減ってきたので、数か月がまんして様子をみていたが、さすがに心配になり近所の内科を受診したそうです。

 

そこは随分と流行っている医院らしく、即座に肺炎と診断したドクターは抗生物質を1ヶ月分処方されたとのことです。

 

患者を待たせず、必要な検査も省略して、面倒くさい説明もはぶき、患者のニーズ通りの抗生物質を、気前よく長期処方することができ、しかも、禁煙指導など患者の嫌がることは絶対にしない、

 

だからとても良い先生としての誉れが高いそうです。

 

そこまでいくと、確かに流行りそうです。

 

そのドクターも凄いですが、1ヶ月きちんと飲み続ける患者さんも凄いと思いました。

 

それで完治してしまえばハッピーなのですが、そうは問屋が卸さなかったようです。

 

 

やむなく高円寺南診療所を受診することになりました。

 

問診と診察の後、無料の血圧測定と末梢動脈血中酸素飽和度の測定をすると、低酸素血症であることが確認できました。

 

そこで無料ではない胸部レントゲン検査と血液検査を受けさせられる羽目になったその患者さんは、とても不服そうでした。

 

 

ともあれ、胸部レントゲン検査では気管支透亮像を伴い、濃厚な浸潤影が広がっていました。

 

呼吸機能検査をすると肺活量が顕著に低下していました。

 

この段階で、間質性肺炎と診断し、副腎皮質ステロイド剤を処方しました。

 

 

初診時の血液検査の結果でもCRP上昇,赤沈延長、好中球増加といった一連の炎症所見が確認されました。

 

再診時に、その患者さんはすっかり元気になられて、そのときばかりは、とても感謝してくれました。

 

しかし、特発性間質性肺炎の臨床診断基準を満たすこと、今後の治療指針を確定するためにも、紹介状を書くので病理学的な精密検査を受けてきてほしいことを申し出たら、

 

<検査のための余分な金は払いたくない>、と急に不機嫌になり、来院されなくなりました。

 

 

1ヶ月後、看護師である娘に連れられて再び来院されたその方は、内服中断後、再発し、呼吸困難のため救急搬送されたとのことでした。

 

搬送先の某大学病院では気管支肺胞洗浄液(BAL)検査でリンパ球増加、CD4/CD8比が低下し、そこで肺生検をしたところ

 

OP(器質化肺炎)パターンを呈し特発性器質化肺炎という診断名が確定した模様でした。

 

患者さんの娘さんは報告が簡にして要を得ていて優秀な看護師であると思われました。

 

 

前医の初診時診断である肺炎という診断名と一致して得心したつもりの、その患者さんは、

 

再び前医を受診して別の種類の抗生物質を処方されたところ、アナフィラキシーショックに陥り生死を彷徨った、とのことでした。

 

統発性器質化肺炎は、細菌性肺炎ではないので抗生物質の長期投与は無効であるばかりか、有害ですらあります。

 

本質的には、特発性間質肺炎の一種であるため、副腎皮質ステロイド剤の内服を一定期間つづけていかないと再発することが多いことも知られています。

9月3日(日)8:30~9:30、高円寺南診療所にて

 

 

運営会議での議題や決定したことをお伝えしていきます。

 

 

①イキイキ体操の動画を公開

 

こちらで公開しています

 

皆様のご意見をお待ちしております

 

 

 

②火曜日の水氣道稽古の時間を変更

 

午後1:30集合を午後2:30集合に変更いたしました。

 

 

 

③水氣道Q&Aの作成

 

これから水氣道に参加される方や、スタートして間もない方向けに制作

 

なるべく早く公開できるよう努力しております

 

 

主な議題は以上3点でした。

 

次回は10月1日(日)に開催予定です。

 

消化器系の病気

 

<神経内分泌腫瘍;膵・消化管神経内分泌腫瘍>

 

神経内分泌腫瘍とは、神経内分泌細胞に由来する腫瘍です。

 

この腫瘍細胞は膵、消化管、肺などの全身諸臓器に発生し、ペプチドホルモンを産生します。

 

 

これは血流へ分泌され、内分泌機能を持っているペプチド類です。

 

他のタンパク質のように、細胞の核内のDNAの鋳型から作られるmRNAの鋳型によって、ペプチドホルモンはアミノ酸を組み合わせて作られます。

 

 

神経内分泌腫瘍は、特異的な症状が現れるか否かによって機能性と非機能性に分類されます。

 

機能性は特異的な症状のために比較的早期に受診し、診断されることが多いです。

 

他方、非機能性は、発見されにくく、偶然に画像診断で発見されない限り、腫瘍が増大し、遠隔転移後に発見されるケースが多いです。

 

 

膵・消化管神経内分泌腫瘍とは膵神経内分泌腫瘍(pNET:pancreatic neuroendocrine tumor)及び消化管内分泌腫瘍(GEPNET: gastrointesteropancreatic neuroendocrine tumor)に分類される機能性腫瘍の総称で、わが国では、新規発症率が増加しています。

 

これは神経内分泌腫瘍の中で、消化管ホルモンを分泌するものであり、ホルモン過剰症状が問題となることが多いです。

 

これらの機能性腫瘍の中ではインスリノーマの頻度が最多です。

 

ですから、高円寺南診療所で経験した症例もインスリノーマでした。

 

ただし、インスリノーマ以外は悪性の場合が多いので鑑別診断は重要です。

 

MEN1に合併する場合があります。

 

 

診断は、ホルモン過剰による症状からはじめます。

 

インスリノーマでは低血糖症状が手掛かりになります。

 

その場合は、ホルモンの血中濃度を測定する一方で、すみやかに腹部超音波検査を試みます。

 

 

低血糖についてはウィプルの三主徴の診断的価値が高いとされます。

 

①空腹時または運動時の低血糖症状

 

②そのときの血糖値が50mg/dL以下

 

③ブドウ糖投与による症状の改善

 

 

CT検査で多血性腫瘍として発見されることがあります。

 

WHO分類で細胞核分裂像(/10HPF)とKi67指数(%)とに基づき病理組織学的なグレード(分化度)診断が行われ、

 

NET(G1),NET(G2),NECの3つに分類します。

 

NET(G1)は高分化で比較的悪性度が低く、NECは低分化型で悪性度が高く神経内分泌癌と呼ばれる所以です。

 

それでも予後は膵がん(通常型膵管がん)と比較すれば良好です。

 

 

なお、意識障害、物忘れや異常行動などの中枢神経系症状により認知症とされたり、

 

震え、動悸、不安感などの自律神経症状により精神疾患とされたりしたまま、改善をみることなく永らく通院しているケースが見受けられます。

 

身体と精神をキッパリと二分化し、身体科の臓器別専門分化の行き過ぎが生んだ現代医療の悲劇の一例です。

 

 

高円寺南診療所は心身医学によって、こうした誤診例で苦しんできた方の受け入れとサポートができたという貴重な経験をすることができました。

最近よくある質問:

<町医者(開業医)には定年が無いようですが、先生は何歳まで医者を続けますか?>
 

 

 

「医師の平均寿命は68歳~73歳」というデータをみました。

 

東京都の全医師の平均寿命は68歳だとのデータもあるようです。

 

 開業医はもっと短いのだそうで、平均60歳前後という情報を、とある筋(元某国立大学医学部教授、現在、都内開業医)から得ましたが、これが本当だとすれば、還暦間近な高円寺南診療所の院長はいつ死んでも不思議はありません。

 

そこで、それなら頑張って死ぬまで働こう、ということにしたらよいのでしょうか? 少し考えてみることにしました。

 

 

さて全国保険医団体連合会は「医師および歯科医師の精神状況についての意識調査」を行い、「4人に1人がうつ状態」など心身状態が明らかにしました。

 

少し古いデータなのですが、同調査は2007年10月6、7日の第22回保団連医療研究集会の全国共同調査として、福岡県保険医協会理事の財津吉和氏が発表したものです。

 

以下、要旨をさらに簡略化して紹介し、高円寺南診療所との比較検討を試みました。

 

 

 

結果概要 

 

開業歴平均17・7年、無床診療所が92・4%、平均年齢58・4歳。1週間の平均労働時間43・7時間。

65%が労働基準法の目安である週40時間をはるかに超えていました。

 

60時間以上が8・8%もいました。

 

 

⇒ 高円寺南診療所は平成元年開設ですので、開業歴は28年で、データ平均より10年長いです。

 

また改めて計算してみると私は1週間平均労働時間が80時間に達するので、労働基準法の目安の2倍に達していることに気が付きました。

 

しかし、無床診療所の院長で現在57歳ですので、とても参考になるデータベースということになります。

 

 

▼開業の直接の動機は?

 

1位「私生活の確保」、2位「専門性を生かす」、3位「経済的理由」

 

 

⇒ 高円寺南診療所を開業した直接の動機は、いずれでもなく、物の弾みと運命、とでも言いましょうか・・・つまり、結婚と同じで、ご縁と成り行きです。

 

 

 

心身の具合

 

▼現在の疲労状況は?

 

「身体は疲れている」(82・4%)「不眠症である」(45%)。

 

「限界、心身共にかなり疲れている」(30%)。

 

 

⇒ 高円寺南診療所の院長は、その日の疲れを、その日のうちに癒すことはまだ難しいですが、

 

水氣道と聖楽の御蔭で、その週の疲れを翌週に持ち越すことはほとんどなくなりつつあります。

 

 

▼今、ストレスに感じていることは?

 

何らかのストレスがある(81.2%)。経営問題(38・3%)とくに従業員問題、

 

他に家庭内の問題など

 

 

⇒ ストレスは私にもあります。しかし、ストレスには2種類あって、通常のネガティブな意味でのディ・ストレス、

 

これに対して、ポジティブなストレスもあり、ユウ・ストレスと呼ばれています。

 

私はディ・ストレスをユウ・ストレスに変換するスキル(水氣道と聖楽)を体得することで、ストレスを成長のエネルギー源としています。

 

 

▼息抜きの方法は?

 

息抜きはできている(86.8%)

 

方法は、趣味、飲食・会食など

 

 

⇒ 高円寺南診療所の院長には趣味はありません。水氣道、聖楽院での活動は、ライフワークです。

 

しかも、有意義なストレスを解消法です。

 

かなり厳しく、積もり積もったストレスに押しつぶされそうになっている他の医師にも水氣道や聖楽院を勧めたいと思いました。

 

多忙で、有能で、しかもミッションを持った方には水氣道や聖楽院への参加はお勧めだと考えるからです。

 

 

▼自分の本来の性格(精神状況)は?

 

うつ気質(23・4%)

 

 

⇒ うつ気質であることを自覚している医師が異常に多いです。

 

高円寺南診療所では心療内科を専門標榜し、しかも東洋医学を併用して、心の気質と体の体質の分析をしています。

 

そもそも、“うつ気質”の定義が問題ですが、うつ気質であると気づけるのは、一定レベルの知性と感性の持ち主であることの証明でもあります。

 

また、低レベルの理不尽なクレーマー族の犠牲にはなりますが、他者配慮性に優れ使命感や責任感が強いため自己犠牲を強いてしまいがちです。

 

したがって、現代社会の理不尽な医療構造にあって、誠実で優秀な医師が元来“うつ気質”でなくとも“うつ状態”に陥らざるをえない危機的状況である、ということも一般の皆様にご理解いただきたいと思います。

 

 

▼現在の精神状況は?

 

うつ状態(27・3%)、うつに対して服薬している(26・7%)

 

 

⇒ 医師の4人に1人以上が、うつ状態とは、どのようなことでしょうか?

 

これは大問題です!

 

 

▼相談相手は?

 

配偶者(約半数)。いない(16・2%)、8・2%が精神科医等(8.2%)

 

 

⇒ 高円寺南診療所の院長の相談相手は事務長(配偶者、兼院内薬剤師)です。

 

これも平均的、ということでしょうか。 仕事、今後に関して

 

 

▼今の仕事に対する愛着は?

 

「ある」(75・7%)、「ない」(21・8%)

 

 

⇒ 高円寺南診療所での仕事に対する愛着は、かなり強いものがあります!

 

なぜでしょうか? それがミッションだからです。

 

 

▼生まれ変われるとしたら、再び今の仕事を選ぶか?

 

「はい」(58・9%)、「いいえ」(14・8%)

 

 

⇒ 復活したら、神様と相談して職業を決めることでしょう。

 

 

▼「引退する年齢」は?

 

「死ぬまで働く」「体力が続く限り」(45・5%)

 

⇒ たぶん、上に同じです。しかし、患者の皆様次第です。

 

相互の信頼関係が維持できなくなり次第、医師を辞める覚悟です。

 

 

▼今までの人生は満足か?

 

「満足」(84・3%)

 

 

⇒ 多忙で、ストレスを抱え、しかもうつ状態になって抗うつ剤を内服しながら、

 

仕事を続けている医師が多いのに、この「満足」率の高さをみて、背筋が凍ります。

 

明らかにワーカホリック(仕事中毒)の医師が少なくない、という証ではないかと思います。

 

 

高円寺南診療所の院長医師は現状のみに対しては常に“不満足”です。

 

しかし、お蔭様で、抗うつ剤や睡眠薬を服用することなく、水氣道と聖楽院で英気を養い、困難を可能性に、ピンチをチャンスに転換してくることができました。

 

これまでの自分の経験はすべて財産であり、ご縁のあったすべての皆様に感謝しています。

 

 

 

まとめ

 

多くの開業医が厳しい医療環境下で、心身両面に及ぶストレスにさらされ、

 

うつ状態になりながら耐え忍んで、日常診療に従事している現状が明らかにされています。

 

 

そもそも開業医の寿命はなぜ短いのでしょうか。労働環境が厳しすぎるためというのも理由の一つでしょう。

 

超長時間の労働、不安定な休日、世間から思われている程高くはない所得と生活水準、

 

世間知らずでお人よしの開業医を食い物にする悪賢い業者の群れ等々、

 

客観的に見ても医師の労働環境は、医師の健康にとって良くない要素が多いと思われます。

 

社会的責任や義務などの負担に見合うだけの自由も権利、社会的保障もあるとは思えません。

 

 

元来、医師になるには相当に我慢強く、努力家タイプでなければならないことは、これまでの経験上、想定はしていました。

 

しかし、我慢の限界を超えて、蓄積疲労を募らせ、それでも使命を全うしようとし続けている多くの開業医たちの実態を、

 

どなたがどれだけ理解しているというのでしょうか。

 

 

こうした現状に対して、何らかの国家的な施策が早急になされなければ、取り返しのつかない事態に陥りつつあります。

 

そうなれば国民全体にとっても、危機的状況になり、しかもそれは壊滅的な打撃になることでしょう。

 

私たちは政府に対し、早急な医療政策の大転換を迫ることも大切ですが、まずは国民の皆様の意識改革こそが急務だと思います!

 

 

世界に冠たる国民皆保険制度を堅持し、健康保険証一枚で、国民が安心して十分な医療を受けられ、

 

また、医師が余裕を持って、最良の医療を提供できるよう、私たちも求めていきましょう。

 

しかし、現実の問題として、病気によっては(例、線維筋痛症)、保険診療の枠組みだけでは、限界があり、十分に対応できないケースもあります。

 

こうした現行の保険医療や生活保護受給者対応など未解決な現場での諸問題の解決を、

 

開業医の一方的な献身と負担だけに求めて当然視する国や自治体、企業などの態度は問題です。

 

 

問題はそれだけではありません。受診者の皆様ご自身が正しい認識に基づき、妥当な行動決定をし、

 

日本の医療をしっかり支えていこうとする勇気と覚悟をもっていただくことこそが緊急の課題だと信じます。

 

血液・造血器の病気

 

発作性夜間ヘモグロビン尿症

 

貧血はありふれた病気です。

 

しかし、貧血の種類は多様であり、鉄欠乏性貧血のように日常的なものばかりではありません。

 

そこで貧血に気づいた場合、高円寺南診療所では、尿検査で溶血の有無を確認しています。

 

尿潜血陽性、尿中ヘモジデリン陽性の場合は、

 

ヘモグロビン尿として血管内溶血を疑うなど、発作性夜間ヘモグロビン尿症を鑑別します。

 

まず、直接クームス試験で自己免疫性溶血性貧血を除外します。

 

 

直接クームス試験が陽性の場合は、寒冷凝集素価を測定して寒冷凝集素症を鑑別します。

 

 

そもそもなぜ夜間に溶血が起こりやすいかというと、

 

睡眠中は低換気になるため、呼吸性アシドーシス(体液の酸性化傾向)が強まることに関係しています。

 

逆に言えば、体液が酸性化する原因があれば日中でも溶血する病気であるともいえるでしょう。

 

 

発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroximal Nocturnal Hemogrobinuria:PNH)は、

 

補体による血管内溶血を主徴とする造血幹細胞疾患です。

 

原因は遺伝子に後天的変異を持った造血幹細胞がクローン性に拡大することによるものであり、PNHはクローン性疾患です。

 

 PNHしばしば再生不良性貧血を代表とする造血不全疾患と合併・相互移行します。

 

血栓症は本邦例ではまれですが、このPNHには特徴的な合併症です。

 

アジア例では造血不全症状が主体です。

 

溶血により血漿中に放出された遊離ヘモグロビンは一酸化窒素(NO)を強力に吸着します。

 

NOは平滑筋弛緩作用をもつため、これが減少することで消化管が収縮し、腹痛や嚥下困難をもたらします。

 

PNH赤血球では、グリコシルホスファチジルイノシトール(glycosyl phosphatidylinositol:GPI)を介して膜上に結合する数種の蛋白が欠損しています。

 

そのような蛋白であるCD55,CD59などの補体制御蛋白がPNH赤血球で欠如しているため、補体感受性が亢進します。

 

感染などにより補体が活性化されると、補体の攻撃を受けて溶血血栓症が起きます

 

補体活性状態による易溶血性は、ハム試験(アシドーシスによる易溶血性をみる検査でPNHに特異性が高い)や砂糖水試験で確認できます。

 

また、そもそもこの異常は、GPIの生合成を支配する遺伝子であるPIGA遺伝子の変異の結果もたらされることが明らかにされました。

 

診断には、フローサイトメトリーを用いたPNH型血球(CD55,CD59欠損細胞)の検出が必須で年に1回程度のフォローアップ検査が推奨されます。

 

非常に稀な疾患であり、新規治療薬(エクリズマブ)の適応、妊娠時の管理にあたっては、高度な専門性のもとに医学管理を行う必要があります。

 

エクリズマブはヒト化抗補体C5モノクローナル抗体であり、終末補体活性化経路を完全に阻害することで、PNHにおける補体による溶血を防ぎ症状を改善することができます。

 

 治療法は、骨髄移植により異常クローンを排除し、正常クローンによって置き換えることが、現在のところ唯一の根治療法です。

 

しかし、明確な適応基準はありません。

 

これまでは、血栓症、反復する溶血発作、重篤な汎血球減少症を呈する重症例などに施行されてきました。

 

したがって、血管内溶血、骨髄不全及び血栓症に対する対症療法が主体となります。

 

 

溶血発作に対しては、感染症等の発作の誘因を除去するとともに、必要に応じ副腎皮質ステロイドにより溶血をコントロールします。

 

遊離血色素による腎障害を防止するため積極的に輸液による利尿をはかりつつ、ハプトグロビンを投与します。

 

 

慢性溶血に対しては、補体第5成分に対する抗体薬エクリズマブ)が開発され、溶血に対する劇的な抑制効果が示されています。

 

 

骨髄不全に対しては、再生不良性貧血に準じた治療を行うが、軽度の骨髄不全を伴うことが多く、蛋白同化ホルモンが汎用されます。

 

溶血か骨髄不全かを問わず、貧血に対しては、必要があれば輸血を行うが、従来推奨されてきた洗浄赤血球輸血は必ずしも必要ではありません。

 

 

血栓症の予防と治療にヘパリンやワーファリン製剤による抗血栓療法を行います。

 

エクリズマブによる血栓予防効果も示されており、今後PNHの治療戦略は大きく変わっていくことが予測されています。

 

予後に関して、PNHは極めて緩徐に進行し、溶血発作を反復したり、溶血が持続したりします。

 

骨髄低形成の進行による汎血球減少と関連した出血(1/4)と感染(1/3)が主な死因となります。

 

発症/診断からの長期予後は、平均生存期間が32.1年、50%生存が25年でした。

 

PNHでは自然寛解が起こり得るというのも特徴の一つでありますが、その頻度は、日米比較調査によると5%でした。

 

エクリズマブの登場により、今後は予後が改善することが期待されています。