日々の臨床9月13日水曜日<神経内分泌腫瘍:膵・消化管神経内分泌腫瘍>

消化器系の病気

 

<神経内分泌腫瘍;膵・消化管神経内分泌腫瘍>

 

神経内分泌腫瘍とは、神経内分泌細胞に由来する腫瘍です。

 

この腫瘍細胞は膵、消化管、肺などの全身諸臓器に発生し、ペプチドホルモンを産生します。

 

 

これは血流へ分泌され、内分泌機能を持っているペプチド類です。

 

他のタンパク質のように、細胞の核内のDNAの鋳型から作られるmRNAの鋳型によって、ペプチドホルモンはアミノ酸を組み合わせて作られます。

 

 

神経内分泌腫瘍は、特異的な症状が現れるか否かによって機能性と非機能性に分類されます。

 

機能性は特異的な症状のために比較的早期に受診し、診断されることが多いです。

 

他方、非機能性は、発見されにくく、偶然に画像診断で発見されない限り、腫瘍が増大し、遠隔転移後に発見されるケースが多いです。

 

 

膵・消化管神経内分泌腫瘍とは膵神経内分泌腫瘍(pNET:pancreatic neuroendocrine tumor)及び消化管内分泌腫瘍(GEPNET: gastrointesteropancreatic neuroendocrine tumor)に分類される機能性腫瘍の総称で、わが国では、新規発症率が増加しています。

 

これは神経内分泌腫瘍の中で、消化管ホルモンを分泌するものであり、ホルモン過剰症状が問題となることが多いです。

 

これらの機能性腫瘍の中ではインスリノーマの頻度が最多です。

 

ですから、高円寺南診療所で経験した症例もインスリノーマでした。

 

ただし、インスリノーマ以外は悪性の場合が多いので鑑別診断は重要です。

 

MEN1に合併する場合があります。

 

 

診断は、ホルモン過剰による症状からはじめます。

 

インスリノーマでは低血糖症状が手掛かりになります。

 

その場合は、ホルモンの血中濃度を測定する一方で、すみやかに腹部超音波検査を試みます。

 

 

低血糖についてはウィプルの三主徴の診断的価値が高いとされます。

 

①空腹時または運動時の低血糖症状

 

②そのときの血糖値が50mg/dL以下

 

③ブドウ糖投与による症状の改善

 

 

CT検査で多血性腫瘍として発見されることがあります。

 

WHO分類で細胞核分裂像(/10HPF)とKi67指数(%)とに基づき病理組織学的なグレード(分化度)診断が行われ、

 

NET(G1),NET(G2),NECの3つに分類します。

 

NET(G1)は高分化で比較的悪性度が低く、NECは低分化型で悪性度が高く神経内分泌癌と呼ばれる所以です。

 

それでも予後は膵がん(通常型膵管がん)と比較すれば良好です。

 

 

なお、意識障害、物忘れや異常行動などの中枢神経系症状により認知症とされたり、

 

震え、動悸、不安感などの自律神経症状により精神疾患とされたりしたまま、改善をみることなく永らく通院しているケースが見受けられます。

 

身体と精神をキッパリと二分化し、身体科の臓器別専門分化の行き過ぎが生んだ現代医療の悲劇の一例です。

 

 

高円寺南診療所は心身医学によって、こうした誤診例で苦しんできた方の受け入れとサポートができたという貴重な経験をすることができました。