総合内科

 

<意識障害の対応①>

 

現在の高円寺南診療所に不足している点は何か、と改めて考えてみると、

 

その一つは救急対応システムではないかと反省しています。

 

そこで、しかるべき時期にJMECCの指導者講習会を受講しようと考えています。

 

JMECCとは、日本内科学会主催の心肺蘇生の講習会です。 (Japanese Medical Emergenct Care Course)の略になります。

 

 

日本内科学会認定内科救急・ICLS講習会というのもありますが、

 

これまでの心肺蘇生講習会のICLSは、基本的に目の前に居る

 

「心肺停止の患者さんに対する心肺蘇生」 という状況のみを訓練していました。

 

基本的にすべての患者さんで、初めから心肺停止の状態であることを前提にしています。

 

確かに実際に、心肺停止の患者さんをいきなり発見することもあり得ます。

 

「そういった状況に出くわしたときに、すぐにBLSを行うことが出来るようになる」というのはとても重要です。

 

 

しかし、現実に医師になってから出くわす心肺停止状態の状態としては

 

容体がかなり悪い患者さんを診察→そのまま急変して心肺停止という状況に遭遇したりすると、

 

対応に苦慮してしまうのではないか、ということが懸念材料です。

 

そういう状況のシミュレーションは必要か、ということですが、

 

心肺停止になる患者さんは、80%に前駆症状があるという見解があります。

 

JMECCはそういう患者さんの初期段階から自信をもって診られるように(鑑別診断・治療)をしつつ、

 

その後の急変対応(心肺停止へ移行)した際にも対応できるようにする、

 

ということを目標したいとする立場から、今後是非必要なトレーニングだと考えているところです。

 

 

さて、JMECC講習会ではSAMPLEを参考に病歴聴取を行うように指導されるとのことですので、少しだけ予習をしてみました。

 

 

SAMPLEとは「SAMPLE history」と呼ばれる問診法です。

 

元来、救急隊が救急現場で傷病者に接触し、現病歴や既往歴などの問診を聴取する時の問診法です。

 

重症傷病者の場合、救急現場は時間との戦いになります。

 

そのため、問診は必要最低限な情報を簡潔かつ正確に聞かなければなりません。

 

問診を正確かつ簡潔に行うためにまとめられたのが、このSAMPLEというわけです。

 

●SAMPLE history SAMPLE historyとは以下のそれぞれの頭文字をとってつけられました。

 

Signs / Symptoms:主訴、症状

 

Allergies:アレルギーの有無、何によるアレルギーか

 

Medications:薬の服用の有無

 

Pertinent past medical history:既往歴(かかっている病気、手術歴など)

 

Last oral intake:最後に食事を摂取した時間、食事量

 

Events leading to the injury or illness:現病歴(何をしていたか、いつからか)

 

 

こうしてみると、高円寺南診療所の初診時問診票に一致していることを、再確認することができます。

 

高円寺南診療所の標榜専門科目の一つであるアレルギーが救急医療、

 

心肺蘇生の救急医療の根本に深くかかわっているということの認識を新たにした次第です。

Nogucciはとっても「ものぐさ」です。

 

前回は、何故スタートするのに時間必要になるのかを考えました。

 

 

①:あれこれ考えて取り掛かるのが遅れる。

②:一回で完璧にしたい=手直し等が面倒だ

③:手直ししたくないため、始める前に考えるが、構想がまとまらない。

④:面倒になって、やる気が萎えてくる。

⑤:やる気が出てくるまで、保留しよう!

⑥:ずるずると、スタートが遅れる。

 

 

という流れでした。

 

特に⑤の「やる気が出るまで保留」までたどり着くと、ギリギリまで始めません。

 

酷い時は忘れてしまったふりをして、流そうとします。

 

それでNogucciは考え…考え…考え…て寝てしまいました。

 

まあ冗談はさておき。答えは意外にシンプルでした。

 

 

「考えるな」です。①②③と余計なことを考えるくらいなら、

 

できる所から手を付け、始める切っ掛けを作る、というシンプルな行動から始めました。

 

単純にスタートするだけです。

 

「当たり前じゃないか」と言う方も多いと思いますが、

 

ものぐさな人にとってはとても大きな一歩なのです。

 

 

神経・精神・運動器の病気

 

<慢性頭痛>

 

高円寺南診療所の外来診療で気づくのは、慢性頭痛の相談が年を追うごとに増え続けていることです。

 

そこで、日本頭痛学会認定の頭痛専門医レベルの勉強をしておきたいものだと考えていたところ、

 

条件次第では頭痛専門医の資格を取得できることがわかり、

 

本格的な研鑽を続けていることは、たびたびご報告しているとおりです。

 

受験するための資格を取得するためだけでも3回の試験に合格しなければならないのですが、

 

幸いに最短時間でクリアすることができたのも、日常診療での豊富な経験に支えられたためだと考えています。

 

 

そこで、改めて頭痛診療のために、なぜ専門医が必要なのかを考えてみました。

 

意外に多い患者数にもかかわらず、

 

高い水準での医療がなされていない現状であることは知っていましたが、

 

それだけではないことに気づきました。

 

 

その一つが、頭痛診療には禁忌(きんき)が多く、

 

至る所に危険な時限爆弾が仕掛けられているようで、

 

危険極まりない領域だから、ということです。

 

 

そこで、しばしば用いられる禁忌とはどのようなことを言うのか、というあたりからご説明いたしましょう。

 

【禁忌(きんき)】とは、当該医薬品を使用してはいけない患者を記載しています。

 

 

以下のような点から考えて、ある医薬品を使用することにより、

 

病状が悪化したり、 副作用が起こりやすくなったり、

 

薬の効果が弱まるなどの可能性が高いため、使用しないこととされています。

 

 

すなわち、現在の病気(原疾患) 、ある病気が原因となって起こる別の病気(合併症) 、

 

これまでにかかった病気(既往歴) 、ご家族の方の病気(家族歴) 、

 

現在使われている他のお薬(併用薬剤) 、医薬品を使用する方の体質などです。

 

 

 

次に、頻度の多い頭痛に関する禁忌の例を挙げてみることにしました。

 

 

緊張型頭痛:治療薬としては消炎鎮痛剤(NSAIDs)や抗不安薬が用いられます。

 

 

片頭痛:前兆としては閃輝暗点などの視覚異常が90%で多いです。

 

病態としては脳血管周囲の三叉神経が刺激されて神経原性炎症を起こし、

 

そのシグナルが視床を通して大脳皮質に伝わり痛みを感じるという説が有力です。

 

予防薬としてはカルシウム遮断薬(ロメリジン®)、

 

抗てんかん薬(バルプロ酸)β遮断薬(プロプラノロール)、

 

抗うつ薬(アミトリプチリン®)が用いられます。

 

ただし、プロプラノロールとリザトリプタンの併用は禁忌です。

 

 

発作の前兆・予感が現れたときにエルゴタミンを、

 

頭痛発現後早期にトリプタン製剤を用いると良いでしょう。

 

なお酒石酸エルゴタミンとトリプタン製剤の24時間以内の併用は禁忌です。

 

発作時の治療薬はスマトリプタン等のセロトニン受容体作動薬やロキソプロフェンなどのNSAIDsを使用します。

 

 

前兆のある片頭痛では、エストロゲンを含む経口避妊薬は脳静脈洞血栓のリスクを高めるため使用すべきではありません

 

 

脳底型片頭痛・片麻痺型片頭痛トリプタン製剤はこれらの片頭痛には禁忌です。

 

また虚血性心疾患、脳血管障害、末梢血管障害などがある場合も禁忌です。

 

 

群発頭痛:20~40代の男性に多い。

 

片側の眼窩がえぐられるような激痛が1時間ほど続きます。

 

随伴症状としては頭痛側に、流涙、鼻閉の他、

 

縮瞳や眼瞼下垂などといった自律神経症状を生じることもあります。

 

急性期治療にはトリプタン製剤の皮下注射や100%酸素(純酸素)7Ⅼ/min,15minの吸入が有効です。

 

 

薬物乱用性誘発頭痛:単一成分の鎮痛薬の場合は月に15日以上の頻度で3ヵ月以上用いると薬物乱用頭痛の原因となります。

》往く週《 9月6日:第23回聖楽院週例コンサート(90分特別プログラム)

 

担当ピアニスト 荻原由実(聖楽院協力ピアニスト)

 

ピアニスト荻原由実は、各週の先任ピアニストと共に、しばしば、聖楽院週例コンサートに貢献しています。

 

今週は、秋めきつつある夜に相応しいノクターンの2曲の他に、アンコール曲として、献呈(Widmung)を披露しました。

 

この曲はロベルト・シューマン作曲による歌曲でフランツ・リストがピアノ独奏用に編曲したものです。

 

歌詞を持つことのできる数少ないピアノ曲のひとつです。

 

お客様の中には奈良市から出張で上京されてお立ち寄りの方もいらして、とても満足してくださいました。

 

また、プログラムの後半にお見えになり、ピアニスト荻原由実のソロ演奏を聞き逃されたお客様は、

 

彼女の声楽伴奏を聴き、是非、次回はピアノソロを聴きたいという御感想を寄越されました。

 

 

声楽が中心のプログラムでしたが、ソプラノ小松奈津子は、

 

色彩豊かで安定し、しかものびやかで柔らかな美声を披露してくれました。

 

若干20歳のテノール藤原拓実は、若さゆえのエネルギーをトスティの歌曲においても余すところなく表現してくれました。

 

 

そして、最後は英国人ソプラノ、サラ・ブライトマン、イタリア人テノール、アンドレア・ボチェリのアンサンブル曲として世界的に有名なタイム・トゥー・セイ・グッドバイ、

 

これを小松奈津子、藤原拓実のコンビではじめて演奏しました。

 

この曲はソプラノ・テノールの二重唱の定番の一つとして、

 

今後も更に磨きをかけていきたいと考えております。ありがとうございました。

 

 

〇おしらせ:現在、東京藝術大学大学院の古楽科にて研鑽中のソプラノ小松奈津子

 

9月24日(日)青山学院大学のチャペルで開催される

 

バロック・アンサンブル<アジア・コレギウム・ムジクム>に出演します。

 

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

来る週9月13日:第24回聖楽院週例コンサート(90分特別プログラム)

 

担当ピアニスト 鈴木美穂(聖楽院協力ピアニスト)

 

<鈴木美穂は第一週の担当ですが、今月は変則的に第二週を担当します。>

 

鈴木美穂は、音海水曜コンサートの立ち上げの功労者であり、今年の10月で早くも3年目を迎えます。

 

今回はブラームスのピアノ曲をご披露いたします。どうぞご期待くださいますように。

 

なお聖楽院の協力アーティストは、<聖楽>の奥義を究めたいというタイプの真摯な演奏家が多く、

 

彼女もチェンバロを購入し、古楽の稽古に勤しんでいます。

 

今後の聖楽院の演奏家として期待すべきジャンルで活躍中です。

 

 

この回の目玉の一つは、フルート富永綾香のプログラムです。

 

ビゼーの「アルルの女」より<メヌエット>他をお楽しみください。

 

彼女は、今年の7月初旬に東京オペラシティ、リサイタルホールにて

 

各音楽大学より推薦された若手フルーティストとして見事デビュー・リサイタルを果たしました。

 

今後は、聖楽院においてもフルートを中心とした豪華なプログラムを検討したいと考えているところです。

 

第24回聖楽院週例コンサート、どうぞお聴き逃しないように。

 

 

なお今後の予定ですが、

 

 

10月25日(水)第30回聖楽院週例コンサート(音海水曜コンサート発足、通算100回目特別記念プログラム)

 

特別出演のイタリア人アコーディオン奏者Ezio Ghibaudo氏のプログラムが決定しました。

 

聖楽院協力アーティストであるフルート西巻有希子とのアンサンブルもお楽しみいただけます。

 

 

11月23日(勤労感謝の日)に開催予定の第1回聖楽院レッスン生内部発表会のプログラムの骨格も出来上がりつつあります。

 

参加レッスン生は延べ11名(男性4名、女性7名)です。

 

指導はソプラノ小松奈津子、テノール藤原拓実、ピアノ伴奏は吉田奈津子です。

 

指導者による模範歌唱プログラム付で、フルート奏者による特別演奏も予定しています。

 

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「懸鐘(けんしょう)」です。

 

IMG_1882

場所は外踝の上方3寸にあります。人差し指から小指の幅です。

 

 

「腰腿痛」「下肢の麻痺」「寝違い」「頭痛」等に効果があります。

 

 

頭痛に効果があるなんて不思議ですね。

 

 

<参考文献>

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

内分泌・代謝・栄養の病気

 

<肥満症>

 

本邦において肥満とは体格指数25以上、高度肥満は、BMI35以上の肥満者のことをいいます。

 

肥満者はどの程度の減量をすればよいかの目安は、「肥満症診療ガイドライン2016」 において、

 

減量目標として肥満症では現体重からの3%以上の減少、高度肥満症では5~10%以上の減少が掲げられています。 

 

 

この肥満がもたらす様々な臓器障害の中で、最近、腎障害が注目されています。

 

これを肥満関連腎臓病といいます。

 

肥満関連腎臓病の腎組織病理像は、専門的な話で恐縮ですが、糸球体肥大と巣状分節状糸球体硬化症を特徴とします。

 

肥満に伴う腎障害には大きく分けて二つあり、

 

一つは肥満と肥満を基盤病態にするメタボリックシンドローム(Mets)<次週に解説します>に合併する糖尿病、 高血圧による腎障害です。

 

もう一つが肥満固有の腎障害であり、これを肥満関連腎症といいます。

 

肥満関連腎症の予後は必ずしもよくありません。

 

近年、 肥満自体が慢性腎臓病の危険因子と注目されており、

 

その機序としてアディポサイトカイン(アディポカイン)<次週に解説します>の異常、

 

腎臓に対する脂肪毒性, 糸球体過剰濾過を主とする腎血行動態の異常、

 

インスリン抵抗性などがあげられています。

 

今後の慢性腎臓病(CKD)治療の中心として肥満、

 

メタボリック症候群の管理が重要となってくると思われます。

 

 

アディポカインの一種で、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンは、

 

糖尿病、脂質異常症、高血圧症などを抑制する善玉アディポカインの一種です。

 

肥満では脂肪細胞が肥大しており、

 

悪玉アディポカインの分泌量のほうが増大しているためにアディポネクチンは減少しています。

 

肥満に起因する肥満関連腎臓病では、

 

耐糖能低下を伴わないにもかかわらず蛋白尿や腎機能低下を示します。

 

これが腎臓の糸球体肥大や腎肥大を呈し、

 

組織学的には巣状分節性糸球体硬化症の病理像を示すことになるのです。

 

ただし、幸いなことに、早期であれば減量により改善が見込めます。

 

 

またレプチンも脂肪細胞から分泌されるホルモンで善玉アディポカインの一種です。

 

これは食欲抑制、脂肪分解、エネルギー消費増加の作用があります。

 

レプチン抵抗性(レプチンに反応しないこと)のある人では

 

レプチン分泌は過剰増加を示すが肥満化しやすいことが知られています。

 

今回は「番外編 その2」です。

 

今夏の北アルプス登山でも、いろいろな助け合いに出会いました。

 

基本的に山は「自己責任」。

 

天候が悪い時や体調が悪い時に、先へ進むか、小屋にとどまるか、山を下りるかは自分で判断しなければなりません。

 

時には生死にかかわることもあるので、重要な判断・決断となります。

 

 

持ち物も、水、食料、着替え、コンパス、薬など、非常時にも応急的に対応できるよう、自分で持参します。

 

今回、私は食事を自分で作るため、バーナーや鍋を持参しました。

 

もちろん、その分荷物は重くなります。

 

自分が背負って登って、帰れるだけの重量に荷物をまとめます。

 

ゴミは山では捨てられません、自分の家まで持ち帰ります。

 

 

その上で、山に登る人たちは、譲り合い、助け合いの余裕を持ち合わせています。

 

 

山道ですれ違う時は、大体互いに「こんにちは」と挨拶を交わします。

 

山を下る人は登る人に道を譲りますが、その際、「頑張ってください」とか「あと少しですよ」といった声をかけたりもします。

 

道を譲られた側も、苦しくても「ありがとうございます」と返事をしたりします。

 

 

3畳のスペースに4~6人が寝ることになっても、不平を言う人はいません。

 

お互いに、「今日はよろしくお願いします」と言い合います。

 

見ず知らずの人たちが出会い、山の話をし合ったりして交流を深め、情報を交換し合うこともしばしば。

 

 

山では、自然と穏やかな「助け合い」が交わされます。(次回へ続く)

心臓・脈管 / 腎・泌尿器の病気

 

<非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)>

 

非ST上昇型心筋梗塞とは、不安定プラークの破綻あるいは血管のびらんに血栓形成が生じ冠動脈の内腔閉塞を来す急性冠症候群(ACS)の一病態です。

 

 

プラークの検査としては、頚動脈超音波検査が重宝で、高円寺南診療所でも実施しています。

 

頸動脈プラークは、エコー検査で動脈壁の肥厚(ひこう)としてとらえられ、

 

コレステロールなどの脂肪からなる粥状(じゅくじょう)動脈硬化巣である場合があります。

 

そのような頸動脈プラークは、時に破綻(破裂)して、破綻部位に血栓が形成されます。

 

 

非ST上昇型心筋梗塞の症状としては20分以上継続する胸痛を認めることが多いです。

 

心電図上はSTの持続的上昇を示さないが、心筋に障害を認め心筋逸脱酵素であるトロポニンT、トロポニンIあるいはCPK、CPK-MBの上昇を認める状態です。

 

また、心電図による診断には限界があり、ST低下あるいはT波の陰転化等を認めることもあるが変化のないこともあります。

 

 

近年、非ST上昇型心筋梗塞の評価方法にトロポニンが加わり、頻度は増加傾向にあります。

 

むしろ現在では急性心筋梗塞の診断は、心筋壊死の証拠とし心筋トロポニンの上昇を必須とします。

 

高感度トロポニンは心筋特異性が高く、1時間という早期から上昇するため急性冠症候群の鑑別診断に有用です。

 

なお非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)は、ST上昇型急性冠症候群と比較して治療までの時間的猶予があることが多く、

 

冠動脈バイパス手術(CABG)が必要となる可能性が高いです。

 

中等度以上のNSTE-ACSは、24時間以内のPCIは生命予後を改善できるため、t-PAの有用性は否定的です。

 

 

治療:

早期侵襲的治療が有利とされつつある中、新規抗血小板薬(ADPアンタゴニスト:プラスグレル、チカグレロル)は、欧米のガイドラインでは推奨されていが、日本では診改訂です。

 

救急外来で速やかに投与した方が緊急PCIに十分効果が期待できるが、冠動脈造影の結果、速やかにCABGが必要となったときに出血の問題があるからです。

 

その場合、プラスグレルは7日前、チカグレロルやクロピトグレルは5日前に抗血小板薬の休薬が必要とされます。

 

推奨される2剤併用抗血小板療法(DAPT)期間は1年です。

 

それ以上の継続は出血リスクが低く、血栓リスクが高いときのみとされます。

 

出血リスクが高いときや抗凝固を併用する3剤併用のときは抗凝固療法を優先し、DAPT期間を短縮します。

 

 

リスクの層別化はTIMIリスクスコアやGRACEリスクスコアで行います。

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

<肺塞栓症・肺梗塞>

 

安静解除時や排便・排尿の時に突発的な呼吸困難や胸痛、頻呼吸、動悸などを訴える患者さんがときどき来院されます。

 

肥満の女性で、下肢に静脈瘤がみられ、なおかつピルを服用している方であれば要注意です!

 

 

肺塞栓症・肺梗塞は肺の循環障害の一つです。

 

静脈血中に入った塞栓子(血栓、脂肪、腫瘍細胞など)が肺動脈を閉塞した状態を肺塞栓といい、

 

その末梢領域が出血性壊死を来した状態を肺梗塞といいます。

 

肺塞栓が生じて10~15%が肺梗塞に至ります。肺の血流は下肺野に多いため、下肺野に好発します。

 

 

原因となる血栓の大部分は、下肢や骨盤腔の深部静脈血栓症が原因となっています。

 

 

長期臥床、うっ血性心不全、エコノミー症候群、肥満、妊娠などの血流停滞

 

手術や外傷、静脈瘤などの血管内皮障害、脱水やピル(経口避妊薬)などによる血液凝固機能亢進、

 

手術やカテーテル検査などによる血管内費障害などがリスクとなります。

 

 

血栓症は近年、増加の傾向にあります。

 

循環虚脱を来さないような軽症~中等症の肺血栓症は、臨床上しばしば見逃されていることが多いのではないかと考えます。

 

慢性肺塞栓では、一般的に気付かれぬまま微小血栓を繰り返しており、

 

肺高血圧による肺性心の症状(労作性呼吸困難、疲れやすさ、など)を呈します。

 

肺塞栓のみで梗塞を伴っていなければ胸部エックス線も正常です。

 

高円寺南診療所は外来診療専門のためか、高齢者は比較的少ないのですが、そのかわり女性のピル使用率の高さが気になる所です。

 

ピルの使用リスクの一つに、血液凝固亢進による血栓形成があることは知っておいてほしい医学情報の一つです。

 

 

高円寺南診療所では、しばしば、末梢血酸素分圧濃度を測定することによって、異常を認めたら、ただちに胸部エックス線の検査をします。

 

もし低酸素血症がみられても胸部エックス線が正常なら、肺塞栓症を疑ってみる臨床的価値があるからです。

 

 

その場合は心電図のチェックも行います。

 

特異的な心電図所見は無いとされますが、右心負荷(右脚ブロック、右軸変位)、SⅠQⅢTⅢ(第一誘導で深いS波、第3誘導で異常Q波とT波の逆転)などで手がかりをつかめることがあります。

 

また心臓超音波検査で右心負荷を確認するのは難しくなく、心筋梗塞との鑑別にも有用です。

 

 

血栓症では血液中のD-dimerとBNPを測定します。

 

その上昇がなければ肺塞栓症を否定でき、また、BNPが上昇していれば右心不全の証拠となり、血栓症の重症度判定や予後推定に役立つからです。

 

 

また、近年、肺塞栓症において、発症後3~10日でピークを迎えるIgE上昇も注目されています。

 

 

予防が重要です。深部静脈血栓症をきたさないことが大切です。

 

 

一般的には、①積極的運動、②弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法、③低用量見分画ヘパリン投与、④血小板Xa阻害薬、⑤ワルファリン、などが推奨されています。

 

 

しかし、実際には運動不足や脱水に陥らないこと、可能であればピルの内服を中止すること、計画的に水氣道®に参加することなどがお勧めできます。

 

 

医学界は、水氣道®をほとんど認知していないので、医学書には全く記載されていませんが、水氣道は、上記の①および②に該当します。

 

そもそも、②を実行する方は皆無に近いのですが、水中での有酸素運動は、水圧による弾性ストッキング効果があり、

 

間欠的な圧迫は空気でなく水であっても有効であるはずなのですが、残念なことに、どなたもお気づきではないようです。

消化器系の病気

 

<ポイツ・ジェガース症候群>

 

ポイツ・ジェガース症候群(Peutz-Jeghers Syndrome)は

 

消化管ポリポーシス(消化管のポリープが多発する病気)の一つで

 

過誤腫型の若年性ポリポーシスです。

 

 

消化管ポリポーシスの中では家族性腺腫性ポリポーシスに次いで多い疾患であるためか、

 

高円寺南診療所でもしばしば相談を受けることがあります。

 

 

過誤腫(かごしゅ、hamartoma)とは、一般的には腫瘍と奇形(形態発生異常)の中間的な性格の病変とされていますが、

 

過誤腫性ポリープは非腫瘍性ポリープに分類されています。

 

 

病理学的な定義は、

「臓器や器官に固有の細胞や組織成分が、臓器内で過剰に発育または過剰増殖することである。過誤腫の構成細胞は周囲の正常細胞と同一であり、成熟した細胞で占められる。しかも、過誤腫から正常な組織や器官が派生することはない。」というものです。

 

 

過誤腫性のポリープは食道を除く、全ての消化管に発生しますが、特に小腸に多いです。

 

若年者に多く、口唇、口腔や手掌・足底の色素沈着を伴います。

 

症状としては、血便、腹痛、腸重積が高頻度であるため、

 

高円寺南診療所では嘔気・嘔吐・下痢・腹痛などの消化器系症状が出現する場合には、

 

診察とともに、最低限でも腹部レントゲン検査は実施することにしています。

 

そして、症状が安定した場合には、念のため便潜血検査を実施します。

 

 

染色体優性遺伝形式をとり10~20歳代に好発します。

 

ただし、他の先天異常はほとんど見られません。約70%に腫瘍抑制遺伝子LKB1/STK11の変異が認められます。

 

 

合併症として腸重積・イレウスと貧血の頻度が最も多く、その場合にはバルーン小腸内視鏡のもとで切除術を行うことがあります。

 

 

ポリープ自体は過誤腫であり腫瘍ではないため癌化率は低いですが、

 

消化管の他に、膵臓(消化器系だけで約20%です)、女性の場合ですと乳房、卵巣、至急などに癌を合併することがあります。

 

 

そのため高円寺南診療所では、癌の早期発見を可能とすべく、超音波検査を定期的に行うことを勧めています。