日々の臨床 9月7日木曜日<肺塞栓症・肺梗塞>

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

<肺塞栓症・肺梗塞>

 

安静解除時や排便・排尿の時に突発的な呼吸困難や胸痛、頻呼吸、動悸などを訴える患者さんがときどき来院されます。

 

肥満の女性で、下肢に静脈瘤がみられ、なおかつピルを服用している方であれば要注意です!

 

 

肺塞栓症・肺梗塞は肺の循環障害の一つです。

 

静脈血中に入った塞栓子(血栓、脂肪、腫瘍細胞など)が肺動脈を閉塞した状態を肺塞栓といい、

 

その末梢領域が出血性壊死を来した状態を肺梗塞といいます。

 

肺塞栓が生じて10~15%が肺梗塞に至ります。肺の血流は下肺野に多いため、下肺野に好発します。

 

 

原因となる血栓の大部分は、下肢や骨盤腔の深部静脈血栓症が原因となっています。

 

 

長期臥床、うっ血性心不全、エコノミー症候群、肥満、妊娠などの血流停滞

 

手術や外傷、静脈瘤などの血管内皮障害、脱水やピル(経口避妊薬)などによる血液凝固機能亢進、

 

手術やカテーテル検査などによる血管内費障害などがリスクとなります。

 

 

血栓症は近年、増加の傾向にあります。

 

循環虚脱を来さないような軽症~中等症の肺血栓症は、臨床上しばしば見逃されていることが多いのではないかと考えます。

 

慢性肺塞栓では、一般的に気付かれぬまま微小血栓を繰り返しており、

 

肺高血圧による肺性心の症状(労作性呼吸困難、疲れやすさ、など)を呈します。

 

肺塞栓のみで梗塞を伴っていなければ胸部エックス線も正常です。

 

高円寺南診療所は外来診療専門のためか、高齢者は比較的少ないのですが、そのかわり女性のピル使用率の高さが気になる所です。

 

ピルの使用リスクの一つに、血液凝固亢進による血栓形成があることは知っておいてほしい医学情報の一つです。

 

 

高円寺南診療所では、しばしば、末梢血酸素分圧濃度を測定することによって、異常を認めたら、ただちに胸部エックス線の検査をします。

 

もし低酸素血症がみられても胸部エックス線が正常なら、肺塞栓症を疑ってみる臨床的価値があるからです。

 

 

その場合は心電図のチェックも行います。

 

特異的な心電図所見は無いとされますが、右心負荷(右脚ブロック、右軸変位)、SⅠQⅢTⅢ(第一誘導で深いS波、第3誘導で異常Q波とT波の逆転)などで手がかりをつかめることがあります。

 

また心臓超音波検査で右心負荷を確認するのは難しくなく、心筋梗塞との鑑別にも有用です。

 

 

血栓症では血液中のD-dimerとBNPを測定します。

 

その上昇がなければ肺塞栓症を否定でき、また、BNPが上昇していれば右心不全の証拠となり、血栓症の重症度判定や予後推定に役立つからです。

 

 

また、近年、肺塞栓症において、発症後3~10日でピークを迎えるIgE上昇も注目されています。

 

 

予防が重要です。深部静脈血栓症をきたさないことが大切です。

 

 

一般的には、①積極的運動、②弾性ストッキング、間欠的空気圧迫法、③低用量見分画ヘパリン投与、④血小板Xa阻害薬、⑤ワルファリン、などが推奨されています。

 

 

しかし、実際には運動不足や脱水に陥らないこと、可能であればピルの内服を中止すること、計画的に水氣道®に参加することなどがお勧めできます。

 

 

医学界は、水氣道®をほとんど認知していないので、医学書には全く記載されていませんが、水氣道は、上記の①および②に該当します。

 

そもそも、②を実行する方は皆無に近いのですが、水中での有酸素運動は、水圧による弾性ストッキング効果があり、

 

間欠的な圧迫は空気でなく水であっても有効であるはずなのですが、残念なことに、どなたもお気づきではないようです。