内分泌・代謝・栄養の病気

 

テーマ:潜在性クッシング症候群

    (メタボの症状だが、生活習慣病ではない病気)

 

 

潜在性クッシング症候群(subclinical Cushing Syndrome)とは

 

クッシング症候群の臨床症状を示していないが、

 

コルチゾールの自律的な分泌

(中枢性の上位ホルモンのコントロールを受けないので、

生理的なホルモン分泌の日内変動が消失)

 

がある状態のものです。

 

 

副腎偶発腫瘍(副腎インシデンタローマ)の発見により指摘されることが多いとされます。

 

これは、他の理由で行われた画像診断で偶然副腎に腫瘍が発見されたものの総称です。

 

 

副腎偶発腫瘍の中では非機能性副腎腺腫が約半数で最多ですが、

 

自律性にホルモンを分泌しているもの

 

(コルチゾール産生腫瘍、褐色細胞腫、アルドステロン産生腺腫など)もあります。

 

ホルモンの過剰分泌がある場合や悪性が疑われる場合(直径3cm以上)では外科的摘除も考慮します。

 

 

副腎偶発腫瘍の中で、臨床症状はなくても

 

コルチゾールを自律性に分泌しているコルチゾール産生腫瘍の例があり、

 

これを潜在性クッシング症候群(subclinical Cushing Syndrome)と呼びます。

 

 

血中コルチゾールは日中正常値であることが多いため、

 

血中副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の測定、

 

少量デキサメサゾン抑制試験、副腎シンチグラフィなどを行います。

 

血中ACTHとコルチゾールの採血は早朝約30分間の安静後に行います。

 

尿検査も早朝尿ないし朝のスポット尿で血中遊離コルチゾールを計測し、クレアチニン補正を行います。

 

 

持続的なコルチゾールの過剰分泌により、高血圧、脂質異常症、耐糖能異常、

 

骨粗しょう症などを合併することが多いです。

 

これに伴う高血圧、糖尿病は自律性に分泌されるコルチゾールに依存します。

 

また過剰に分泌されたコルチゾールのミネラル・コルチコイド作用により、

 

低K血症を来すことがあります。

 

 

これらの大部分は顕性のクッシング症候群には移行しません。

 

しかし、外科的切除により改善がみられる場合があるため、

 

個別の患者さんの状況を総合的に判断して手術を考慮します。

 

ちなみに、副腎腫瘍を摘出後の改善率は50~80%です。

 

 

片側性副腎腫瘍によるクッシング症候群では、

 

健側副腎はコルチゾール分泌過剰によるACTH抑制のため萎縮し、

 

術後半年以上のグルココルチコイド補充療法が必要です

心臓・脈管 / 腎・泌尿器の病気

 

テーマ:心不全の予防と治療(その2)

 

<心臓カテーテル検査を行わずに心不全の評価をする>

 

 

本日ご紹介する症例は、M.Yさん77歳の独居の男性です。

 

彼の主病は、慢性心不全ですが、高血圧、慢性心房細動、リウマチ、痛風の合併例です。

 

 

身長174㎝、体重80㎏、BMI26.4(肥満度Ⅰ)

 

2017年7月1日現在での肥満度はⅠで、BMI25を減量目標とすると76㎏弱なので、

 

さらに4㎏の減量努力中です。

 

2010年5月31日の体重94.4㎏⇒31.3(肥満度Ⅱ)でしたので、

 

すでに14kg以上の減量に成功しています。

 

そのため、血圧や血中尿酸値は正常化し、リウマチもコントロールされています。

 

ただし、慢性心房細動は持続しています。

 

 

 

日常生活では、急いで階段昇降をすると、動悸、息切れを感じる他は、

 

日常生活に支障は来していない、とのことです。

 

4段階で評価するNYHA(ニューヨーク心臓協会)心機能重症度分類ではⅡ度に相当します。

 

NYHA(ニューヨーク心臓協会)心機能重症度分類

 

I 度:

心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく、

日常労作により、特に不相応な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの。

 

II 度:

心疾患があり、身体活動が軽度に制約されるもの; 安静時または軽労作時には障害がないが、

日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)によって、上記の愁訴が発現するもの。

 

Ⅲ度:

心疾患があり、身体活動が著しく制約されるもの;

安静時には愁訴はないが、

比較的軽い日常労作でも、上記の主訴が出現するもの。

 

IV 度:

心疾患があり、いかなる程度の身体労作の際にも上記愁訴が出現し、

また、心不全症状、または、狭心症症候群が安静時においてもみられ、

労作によりそれらが増強するもの。

 

 

このNYHA分類は、問診により簡便かつ短時間に、

 

心機能障害の程度を、大まかに知ることができます。

 

しかし、その重症度判定が主に自覚症状によって行われるため、

 

心機能の定量的・客観的評価には適していません。

 

 

とくに、M.Yさんのように高齢の慢性心不全では、

 

より定量的・客観的な評価が必要になります。

 

そこでフォレスター(Forrester)分類

心不全1

 

フォレスター分類とは、心係数と肺動脈楔入圧の

 

2つの定量的・客観的データに基づいて心不全の程度を分類するものです。

 

このうち心係数は心臓超音波検査で容易に計測できますが、

 

肺動脈楔入圧はスワン‐ガンツという心臓カテーテルを用います。

 

超音波検査は、患者さんに苦痛を与えず、繰り返して検査できるので、

 

実際の現場の臨床では、心係数の確認が重要です。

 

カテーテル検査が実施できない日常の外来診療においても、

 

この係数だけで、末梢循環不全の有無を鑑別できることができます。

 

 

心係数2.2以であれば末梢循環不全のないⅠ群【死亡率3%】もしくはⅡ群【死亡率9%】、

 

心係数2.2未満であれば末梢循環不全でⅢ群【死亡率23%】もしくはⅣ群【死亡率51%】です。

 

 

M.Yさんの心臓超音波検査で得られた心係数は2.76でした。

 

2.76>2.2ですから、M.Yさんは末梢循環不全を伴わないⅠ群もしくはⅡ群です。

 

ただし、Ⅰ群は心機能正常群ですから、明らかな心不全であるM.YさんはⅡ群、

 

すなわち、末梢循環不全を伴わない肺うっ血タイプの心不全(うっ血性心不全)であることが推定されます。

 

 

 

左心不全

 

<身体所見>

 

心濁音界の拡大、心拍拍動の左方変異、心尖部でⅢ音とⅣ音聴取(ギャロップ・リズム)など、

 

M.Yさんには明らかな左心不全の所見がありました。

 

ただし、同じく差心不全の所見である肺野での連続性ラ音(水泡音)は聴取しませんでした。

 

<胸部エックス線>

レントゲンまえ2

正面像:心拡大 心・胸郭比増大

 

レントゲンよこ2

側面像:心拡大 左心房の拡大も顕著です。

 

肺水腫の所見の検索

 

心陰影の拡大(心・胸郭比↑)CTR=75.8%(基準:50%未満)

②上肺野の血管陰影の増強

③肺門部を中心としたうっ血(バタフライ陰影)

 

 以上を認めましたが、胸水貯留をはじめKerley’s B line,vanishing tumorなどの所見は認めませんでした。

 

 

<心臓超音波>

エコー5

心臓超音波Bモードによる左心室機能評価

 

 

エコー票

左心室機能計測値

 

    左室径短縮率(%FS)0.38 (基準:0.26~0.55)

 駆出率(EF)0.67(基準:0.64~0.75)

 

 左心不全では上記のデータはいずれも低下しますが、M.Yさんのデータはいずれも基準範囲でした。

 

 

<血液検査>

 血漿BNP 73.8pg/mL (基準値18.4以下)

 

 この検査データは、左心室の拡張末期圧をよく反映するので左心不全の診断意義が大きいとされます。

 

M.Yさんの血漿BNPは、前回が46.1でしたので、

左心室の拡張末期圧が上昇し、

左心不全が悪化していることを疑わなければなりません。

 

 

 

<M.Yさんの心不全の評価>

 

自覚症状による心不全の重症度はNYHAⅡ度で、比較的安定していました。

 

客観的な評価尺度である超音波検査による心係数計測により、

 

フォレスター分類に当てはめると末梢循環不全を伴わない

 

Ⅰ群もしくはⅡ群に相当しました。

 

また、心臓カテーテル検査を行うまでもなく、

 

うっ血性心不全に対するコントロールは万全でないことが、

 

胸部X線、血液検査等により判明し、

 

フォレスター分類Ⅱ群の末梢循環不全を伴わない肺うっ血タイプの左心不全と評価することができました。

 

 

<M.Yさんの心不全の治療方針>

 

フォレスター分類は心不全の治療方針の決定に有用です。

 

Ⅱ群の心不全の場合、治療の基本戦略は前負荷の軽減です。

 

具体的な治療戦術としては利尿薬や血管拡張薬です。

 

 

<M.Yさんの現在の治療薬>

 

木防已湯

(漢方薬:体に溜まった不要な水分をさばく「利水剤」の一つで、

 

体力が中程度よりあって、みぞおちがつかえて顔色がさえない人の、

 

むくみや動悸、息切れなど、心不全症状があるときに用います。)

 

ジゴキシン(心不全治療薬:ジギタリス製剤)

 

ミニプレス(降圧薬:α遮断薬)

 

ブロプレス(降圧薬:ARB)

 

バイアスピリン(抗血栓薬:抗血小板薬)

 

アザルフィジン(抗リウマチ薬:低分子抗リウマチ免疫調整薬)

 

ザイロリック(痛風治療薬:尿酸生成抑制薬)

 

 

以上のうちで、慢性心不全の治療において予後改善の証拠が得られているのは、

 

ARBのみです。

 

現在、治療強化のために利尿薬の導入を検討していますが、

 

スピロノラクトン(アルダクトンA®)も慢性心不全の治療において

 

予後改善の証拠が得られているので、有力な候補であると考えております。

 

<第5ステップ> その2

 

第5ステップは「助けを求める人を決める」段階です。

 

自分が抱えている、今ある大事な問題について、

 

周囲のサポーターたちの誰に助けを求めるのが適切か、引き続き考えていきましょう。

 

複数の人の力を借りることも大きな助けとなるでしょう。

 

 

しかし、上のような考えを巡らせ、助けを求めることが苦しくなったり、

 

ためらわれることもあったりすると思います。

 

特に、きわめて個人的な問題の場合や、

 

もっと自分の苦しみをわかってほしい場合はそうです。

 

どんなに親しい間柄でも、親しいからこそ、打ち明けにくいこともあるのです。

 

 

臨床心理士は第一に、来談者の皆さんの「しんどさ」「苦しみ」に寄り添い、

 

受け止めることに努めます。

 

そのために、皆さんの心の中で、周囲で、

 

何が起こっているのかを皆さんがお話しできる範囲でお聞きしていきます。

 

事情をしっかり伺った上で、今の苦しみから脱していく方法を

 

ともに真剣に考えていきます。

 

もちろん、守秘義務がありますので、

 

お話したことが外部に漏れる心配はありません。

 

 

臨床心理士に相談する、カウンセリングを受ける、

 

というのは、「自分は病気なんだ」ということではありません。

 

第24,25回でお話ししたように、「自己スティグマ」、

 

つまり「こんな自分は周囲に受け入れられない(病気だ、変だ)というレッテルを

 

自分自身に貼ってしまうこと」によって自尊心や自己評価が下がり、

 

助けを求めることをためらわせるのです。

 

 

誰もが必ず人生の中でライフイベント、重大な問題にぶつかることがあります。

 

つい、「他の人にとっては大した問題じゃないだろう、こんなことで人に相談するのは…」

 

とためらう気持ちが起こるかもしれません。

 

しかし、自分と他人の悩み、苦しみの重さは天秤で測れるものではありません。

 

誰にでも弱点があって、たまたまそこに問題が発生したと思ってくださってよいと思います。

 

「自分が弱いから」ではありません。

 

 

臨床心理士は、「その人にとって」重大な問題である、

 

ということをよく理解している専門家なのです。

 

 

* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房

 

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子

 

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

テーマ:テーマ:アナフィラキシー・ショック対策(その2)

 

<エピペンの使い方®について>

 

蕁麻疹

 

アナフィラキシーショックの症状には悪心(おしん)と嘔吐(おうと)がみられます。

 

<原因> 

抗菌薬などの薬剤、食物(そば)、虫刺症(ハチ毒)、物理的刺激など多岐にわたります。

 

たとえば、お好み焼き粉などの粉製品を開封後、

 

長期間室温保存することで混入したダニが繁殖し、

 

その製品を摂取したことによるアナフィラキシーが報告されています。

 

 

アナフィラキシーショックは、IgE抗体を介する免疫学的抗原・抗体反応であり、

 

2回目以降に強く起こることが重要です。

 

 

<症状> 

起因物質投与後、数分で粘膜浮腫、気管支痙攣(けいれん)、

 

血圧低下などの広範な症状を呈します。

 

早期の対応のためには前駆症状についての知識が役に立ちます。

 

気分不快感、違和感、唇や手足のしびれ、

 

心悸亢進(動悸)などから始まることが多いです。

 

症状は次第に、血圧低下、頻脈(脈拍数の増加)、皮膚紅潮、

 

蕁麻疹(じんましん)、顔面蒼白(顔が真っ青になる)、

 

喘鳴(呼吸がゼイゼイする)、呼吸困難、下痢などが生じます。

 

 

違和感として、悪心・嘔吐があります。

 

胃内容物(ときに十二指腸・小腸内容物)が不随意に逆流し、

 

食道・口腔から体外に排泄されることを嘔吐といい、

 

嘔吐したくなる差し迫った感覚を悪心(嘔気、吐き気)といいます。

 

なお、重症になると意識が消失し、死に至ることがあるため緊急対応が必要です。

 

 

<治療>

迅速な処置が決め手になります!

 

①アドレナリン自己注射用キット(エピペン®)を携帯していれば、それ使用します。

 

②エピペン®をもってなければ、呼吸、循環(脈拍数など)の状態を直ちに把握して、

 

援助者(救急隊、可能であれば蘇生チーム)に連絡する。

 

③医療機関でアドレナリンを大腿部(中央前外側)に筋注し、

 

患者を仰臥位(あおむけ)にして下肢を挙上する。

 

ここまでは、原理的には①と同じです。

 

 

その後、必要に応じて酸素投与、静脈ルート確保、心肺蘇生を行います。

 

 

補足説明)専門的な話になりますが、アドレナリンを投与するのは、

 

血圧を回復させるだけでなく、c AMPを介して

 

アナフィラキシー反応を抑制に直接役立つことが知られています。

 

 

<検査>

症状が落ち着き、投与薬剤の影響を受けなくなった時期に行います。

 

そこでアレルゲンの同定検査を行います。

 

①血清特異的IgE抗体検査

 

②プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト

 

高円寺南診療所では①のみを実施しています。

 

感度は低いもののアナフィラキシー反応を誘発するリスクがないからです。

 

②は感度が高いのですが、アナフィラキシー反応を誘発するリスクがあります。

調血航法 No.2

 

調血航法は、理気航法と密接な相互補完関係があります。

 

 

理気航法では呼吸法を訓練しますが、その主役となる臓器は肺です。

 

しかし、肺は肺自身が筋肉でできているわけではないので、単独では動けない臓器です。

 

横隔膜や腹筋群をはじめとする呼吸筋のはたらきによって、

 

はじめて肺は収縮・拡張を繰り返して呼吸をつかさどることができます。

 

そして、私たちの意志によって呼吸の深さや呼吸数を調節することができます。

 

つまり、理気航法といえども呼吸筋という筋肉の鍛錬が基礎になっているのです。

 

 

これに対して、調血航法の血液循環の主役となる臓器は心臓です。

 

心臓はそれ自体が心筋という特別な筋肉によって成り立っているので、

 

自動能がありリズミカルに収縮・拡張を繰り返すことができます。

 

しかし、私たちの意志によって心拍数をコントロールすることは簡単にはできません。

 

簡単ではないですが、不可能ではありません。

 

脳を使って、調血航法は各自が脈拍をチェックしながら

 

運動の強度や疲労度と心拍数・脈拍数との関係に関する感覚を

 

身に着けるための訓練も含まれています。

 

 

特に立位の姿勢では下半身の組織から心臓に戻ってくる静脈の血液の流れは、

 

重力に逆らう方向になります。

 

この流れを助けるポンプが下肢の筋肉です。

 

 

ここからは前回の重複となりますが、大事なことですので再度ご紹介いたします。

 

調血航法では、左右両方の大脳を使って(考えると同時に感じながら)、

 

心臓のリズムのように1・2、1・2…と、心地良く歌う気持ちで声に出し、

 

皆と合唱するように、リズムカルに体を動かしていきます。

 

 

一歩一歩段階的に、単純な動きから、次第に複雑な動きに向けて、

 

それぞれ目的とする筋肉を意識しながら、関節の屈伸運動を律動的に繰り返していきます。

 

それによって、最終的に全身の筋肉の瞬発力(パワー)と持久力(スタミナ)を

 

無理なく強化し、平衡感覚や協調運動能力を磨くことによって、

 

その目的を実現することができるのです。

 

 

日本水氣道協会 水氣道2級(中等修錬生)

 

調血航法直伝 加藤博文

消化器系の病気

 

テーマ:胃がん検診(その1)

 

<胃がん検診の意義と目的>

 

 

国の指針(2016年4月1日から適用)では

 

胃がんの一次検診では:問診、胃X線検査、胃内視鏡検査が勧められています。

 

 

日本対がん協会が2015年度に全国の支部で行った胃がん検診の結果では、

 

胃がん検診を1万人が受けると、638人が「異常あり」と判定され、

 

精密検査(二次検診)を受けるように勧められます。

 

精密検査を受けた人は516人で、その中から12人に胃がんが発見され、

 

1万人中12人という割合になります。

 

 

この数字をどのように判断するかは、個人の価値観によって異なるのではないかと思います。

 

ただし、高円寺南診療所のポリシーとしては、

 

1万人中9988人の方のメリットも同時に考慮するようにしています。

 

 

①「胃X線検査」

 

「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」(2006年)で、

 

「対象とする集団の胃がんによる死亡率を減少させる」

 

という胃がん検診の目的に合致すると科学的に証明され、

 

「効果あり」と判定されています。

 

 

検査法は、まず、空気を出して胃を膨らませる発泡剤を飲みます。

 

その後、X線を反射するバリウムという造影剤を飲んで、胃にX線を当てながら撮影します。

 

撮影したいところにバリウムがうまく付着するように体を上下左右に動かして、

 

7~8枚撮影するのが一般的です。

 

胃X線検査は、一次検診で「異常あり」と判定された場合、

 

さらに詳しく検査するために精密検査でも利用されます。

 

検査の感度(がんがある人を正しく診断できる精度)は70~80%といわれています。

 

胃がんのほかに、胃潰瘍(かいよう)やポリープも発見でき、治療に結びつけられます。

 

 

高円寺南診療所では胃X線検査を高く評価しています。

 

その理由は、胃がんや胃潰瘍、その他器質的胃炎の診断に役立つばかりではなく、

 

慢性胃炎の大多数を占める症候学的胃炎(器質的病変を認めないもの)や、

 

健診受診者の約15%にみられる機能性ディスペプシア

 

(胃のもたれ、みぞおちの痛みなどの腹部症状を呈するが

 

症状の原因となる器質的・全身的・代謝性疾患を認めないもの)

 

のケースであっても、胃全体の解剖学的位置や周辺臓器との位置関係をはじめ、

 

胃の形態と機能の全体像を観察することができ、

 

その後の治療に役立てることができるからです。

 

 

問題点として、X線による放射線の被曝(ひばく)がありますが、

 

自然のなかで浴びる放射線と同程度なので、健康に大きな影響を及ぼすことはありません。

 

 

②「胃内視鏡検査」については2014年に同ガイドラインが見直され、

 

一次検診の方法として推奨されました。

 

ただし、死亡率減少効果を判断する証拠が不十分で、

 

対策型検診として実施することはすすめられていません。

 

また麻酔薬や鎮痙剤を使うので、これらの薬による副作用もあります。

 

薬に対するアレルギーのある人は必ず医師に相談しましょう。

 

高円寺南診療所では現在、この検査を積極的に行っていませんので、

 

必要な場合は、適切な医療機関にご紹介いたしております。

テーマ:患者の皆様からのメッセージ・ボード創設(その1)

 

<ピア・カウンセリングについて>

 

 

高円寺南診療所のオフィシャルホームページをご覧くださっている皆様に

 

お知らせがあります。

 

 

高円寺南診療所の最大の看板は、患者の皆様だという考えについては、先週ご紹介した通りです。

 

 

たとえば、根本的な解決に向けての医師としてのアドバイスに対して、

 

「はい。…でも」と乗り気でなく、

 

まるで他人事のような反応の患者さんとのやりとりで

 

手詰まりを感じることがたびたびありました。

 

そのような場合に、同性で同年齢層かつ同じ病気の方の成功例のお話をさせていただくと、

 

一転して熱心に耳を傾けてくださることがありました。

 

こうした数々の例を通して、患者さん同士のもつ影響力が大きいことを学びました。

 

それが、ピア・カウンセリングとの出会いの端緒となりました。

 

 

皆様は、ピア・カウンセラーとか、ファシリテーターいう言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

 

今回はまずピア・カウンセリングとはどういうものなのかご紹介します。

 

 

ピアカウンセリングの「ピア」とは「仲間」「対等な立場の人」という意味です。

 

 

ピアカウンセリングとは、同じような立場や悩みを抱えた人たちが集まって、

 

同じ仲間としておこなうカウンセリングのことです。

 

以前は医療や福祉の分野で、障害を持った人たちの間で実践されていました。

 

現在は思春期の悩みやこころのケアが必要な人たちの間でも行われています。

 

しかし、これからは、慢性的な病気から難病に至るまで、

 

多くのことで困っている多くの患者さんの間でも

 

有効な取り組みになるのではないかと思います。

 

 

なぜか、というと、高円寺南診療所の患者の皆様同志が、

 

すでに自然発生的な、初歩的ピア・カウンセリングをはじめていたからです。

 

高円寺南診療所では、体と心の症状ばかりでなく

 

家庭や職場での社会適応が困難で苦しんでおられる方が少なからず通院されております。

 

そうした方々が、待合室など、ふとした切っ掛けで、

 

互いに同じ立場や体験をした仲間であったことに気づくことがあります。

 

このように同じ立場だからこそ分かり合える、

 

あるいは、こころの支えになることができるという

 

ピア・カウンセリングの基本に添う形でのご縁が自然に形成されていっています。

 

 

しかしながら、外来での待ち時間が長くならないよう、

 

一層配慮するようになってきてからは、自然発生的ピア・カウンセリングの場は、

 

水氣道の稽古や聖楽院でのレッスンなどに移行しつつあるようです。

 

そこでは、待合室より、一層、仲間意識が育まれやすい環境にあります。

 

このように、「同じ仲間」という意識を持つだけで、

 

解決に向けて開かずの門であると思い込んでいた関所の門を

 

スムーズに開くことができます。

 

 

また、ピア・カウンセリングで私たちは、

 

「機会があれば自分の問題を解決できる能力を持っている」と考えます。

 

そのためその人が自分の力で問題を解決できるように、

 

グループを通してサポートしていくことが目的になります。

 

専門家であるカウンセラーでさえ、来談者に代わって問題を解決するのではなく、

 

その支援を行っているのです。

 

 

したがって、望ましいピア・カウンセリングとは、

 

共感はするけれど個人的なアドバイスを与えない、

 

自分の思い込みで解釈をしない、その人の問題の結果責任は取らない

 

(つまり、その人の問題はその人の個人的な責任)

 

などの基本ルールについて十分に理解して実践できることが大切です。

 

 

ピア・カウンセリングの担当者をピア・カウンセラーといいますが、

 

職業的カウンセラーではないので、

 

専門家であるカウンセラー等の指導を受けておく必要があります。

 

いずれ、そのための環境整備をしたいと考えております。

血液・造血器の病気

 

テーマ:後天性血友病

 

(循環抗凝固因子による出血傾向)

 

 

血友病とは、血液中の凝固因子の異常により出血傾向を来すものです。

 

 

第Ⅷ因子または第Ⅸ因子の先天的な活性低下によるものがそれぞれ、血友病Aまたは血友病Bです。

 

いずれも遺伝性疾患で先天性の病気なので小児科疾患と考えがちですが、

 

成人になってから後天的に発症するものがあるため、

 

内科医もこの病態を把握しておかなければなりません。

 

アレルギー専門医は、たとえ血液病の専門医ではなくとも、

 

自己抗体による病気の診断と治療のエキスパートであるため、

 

これを見逃すことがないよう心がけています。

 

 

これは特定の凝固因子に対する阻害物質(インヒビター)が

 

後天的に形成されて出血傾向を来す病態が知られています。

 

 

血友病Aの患者に輸血や第Ⅷ因子製剤を補充(補充療法)して

 

同種抗体による第Ⅷ因子インヒビターが出現することがある一方で、

 

輸血や補充療法とは無関係に自己免疫疾患(関節リウマチ、SLEなど)、

 

妊娠、悪性腫瘍、薬剤投与後などに出現することや、

 

全くの健常者に突然出現することもあります。

 

 

第Ⅷ因子活性の低下から全身の出血傾向を呈するものを特に後天性血友病Aと呼びます。

 

 

これは成人期以降に第Ⅷ因子に対するインヒビター抗体の出現が最も多く、

 

70歳代を中心に高齢者に好発し、

 

広範な斑状紫斑や皮下出血・筋肉内出血など全身の出血傾向を来たします。

 

活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長します。

 

 

採取した血液に外因系血液凝固因子を活性化させる部分トロンボプラスチンと

 

内因系の始まりである第Ⅶ因子を活性化させる薬剤(ヘパリンやカオリンなど)を加え、

 

血液が凝固するまでの時間(APTT)を調べます。

 

この検査で凝固時間の延長(時間がかかる)が見られたら、

 

内因系の異常が疑われ、血友病をまず疑います。

 

 

凝固第Ⅷ因子活性と出血の重篤度は相関しません。

 

凝固第Ⅷ因子活性が残存していても、タイプⅡのインヒビターが多く、

 

このインヒビターは希釈されるほど力価が高くなるという特性をもっているため、

 

重篤な出血を認めることがあります。

 

 

診断後は直ちに副腎皮質ステロイドなど免疫療法を開始し、

 

インヒビター力価を速やかに低下させることが必須です。

 

 

フォン・ビルブラント因子に対するインヒビターが発生しると、

 

後天性フォン・ビルブラント病を発症します。

 

 

抗リン脂質抗体症候群のループスアンチコアグラントは

 

リン脂質またはリン脂質に結合したタンパク質に対する自己抗体であるため、

 

特定の因子でなく多くの凝固因子(第Ⅷ、Ⅸ、Ⅺ、Ⅻ因子)の活性を阻害する。

 

この場合、出血傾向はみられず、血栓形成が問題になります。

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

テーマ:薬物相互作用(1)

 

<喫煙継続を勧める困った精神科医の話>

 

 

精神科受診(困ったことに本人は99%、「心療内科受診」と申告しますし、

 

精神科医はほとんどが内科医でないのに心療内科を標榜しています。

 

また、精神科でなく神経科・心療内科のみを標榜する例が多数に登ります)の中断者で、

 

高円寺南診療所を受診される方は、昔も今も少なくありません。

 

その多くは喫煙者です。そして、さらにそのほとんどの方が

 

精神科医から禁煙を勧められたことが無いとの報告を受けます。

 

その中には困ったケースが紛れています。

 

喫煙を勧める精神科医が少なからず存在しているのです。

 

それには医学的な理由があります。

 

 

それは禁煙すると中毒症状が出る薬を内服させているケースです。

 

 

高円寺南診療所は、禁煙を積極的に推進していますが、

 

その理由は、喫煙が多くの病気の回復を根底から揺るがす元凶だからです。

 

そこで問題になるのが、精神科でオすでにオランザピン(シプレキサ®)

 

の処方を受けている喫煙者の方への対処です。

 

オランザピンは、統合失調症や双極性障害の治療に用いる非定型抗精神病薬です。

 

オランザピンは薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)のCYP1A2などで

 

主に代謝分解されます。

 

 

この事実を把握しないまま、単純に禁煙を勧めると、

 

オランザピンの中毒症状(錐体外路症状など)が出現する可能性があります。

 

 

ここで、錐体外路症状についてごく簡単に説明を加えます。

 

パーキンソン病に似た一連の症状です。

 

主に、手足がふるえる(振戦)、動きが遅くなる(無動)、筋肉が硬くなる(固縮)、

 

体のバランスが悪くなる(姿勢反射障害)、といった症状がみられます。

 

これらによって、顔の表情の乏しさ、小声、小書字、屈曲姿勢、小股・突進歩行など、

 

いわゆるパーキンソン症状といわれる運動症状が生じます。

 

 

なぜ禁煙すると中毒症状がでるのかというと、

 

喫煙がオランザピンを分解するCYP1A2を誘導するからなのです。

 

わかりやすく言えば、喫煙はオランザピンの効き目を弱めてしまうのです。

 

そして禁煙によりCYP1A2が誘導されなくなると、

 

結果的に過剰に投与され続けていたオランザピンが

 

分解されなくなるため血中濃度が急上昇数するからです。

 

 

逆に言えば、まず、禁煙を成功させていれば、

 

オランザピンの処方は少量で済んだ可能性があります。

 

高円寺南診療所でもオランザピンを使用することがありますが、

 

喫煙しない患者さんに限定して処方しているためか少量で効果が発現します。

 

 

いずれにしても、相互作用の可能性を十分に説明し、

 

頻脈、激越 / 攻撃性、構語障害、種々の錐体外路症状、

 

および意識障害(鎮静から昏睡に至るまで程度は様々)などの症状が生じた場合には、

 

速やかに来院していただく必要があります。

 

Do you have a Japanese insurance card ?

(日本の保険証を持っていますか?)

 

このフレーズを電話の受け答えの際、得意に使い

 

患者さんや、ドクトル飯嶋にご迷惑をかけました。

 

 

さて、みなさん何処が問題だと思いますか?

 

 

<答え>

「insurance」は「保険」という意味です。

 

つまり、「健康保険」以外も含みます。

 

健康保険証を正確に伝えるには「Health insurance card」です。

 

 

お問い合わせの方は、医療保険には加入していましたが、

 

健康保険証は持っていませんでした。

 

 

こちらは「健康保険」で聞いたつもりが、

 

「医療保険」と解釈されていたわけです。

 

 

すったもんだしているところに、ドクトル飯嶋が助け舟を出してくれました。

 

 

次回は間違いの無いように。

 

 

Do you have a Japanese health insurance card ?

日本の【健康保険証】は持ってますか?

 

 

を使います。