テーマ:診療所の看板

 

-何と!現職員すら理解していなかった高円寺南診療所の専門性-

 

 

皆様は、高円寺南診療所の看板をご覧になったことはあるでしょうか。

 

平成元年開設以来、駅や通りなどには、高円寺南診療所の看板は存在しません。

 

 

最近では、情報ツールの急速な発展と普及により、

 

インターネット、とりわけスマート・フォンによるアクセスが増えて参りました。

 

 

そこで、ホンネトークを耳にする機会も徐々に増えてきました。

 

 

「高円寺南診療所は、初めての受診の時、入り口の手前でたじろぎました。

 

こんなところが、本当に医学博士の飯嶋先生のクリニックなのだろうか。」

 

 

建物が古臭くて、少し難解で、ミステリアスな印象を受けるらしいです。

 

そこで、「踵(きびす)を返して、受診を断念してしまう方も少なくないだろう」

 

とのことです。

 

 

そうした中で、

 

 

「勇気をもって、入ってみて良かった。」

 

 

「初診で、診察室に入るまでは不安でいっぱいでした。

 

出るときは、何かホッとできました。」

 

 

「通い始めて、次第になじんできました。

 

他とはやっぱりどこか違っています。

 

私の頼りとするのはそこなので、違っているままでいてください。」

 

 

「今では、当たり前のように通院しています。

 

この診療所の専門性とその広がりの意味がやっとわかってきました。」

 

とおっしゃる方も少なくありません。

 

 

診療所入口右手の看板について、お気づきでしょうか。

 

お気づきの方も、お気づきでない方もいらっしゃるものと思います。

 

少しだけですが、看板に工夫を加えてみました。

 

これは通院患者の皆様と診療所職員のための看板です。

 

 

毎回、看板を見ていただくことによって、

 

高円寺南診療所の存在意義と役割を再発見していただければ、

 

何かしらお役に立てることが増えてくるのではないかと思います。

 

高円寺南診療所は、新しい時代の多忙な皆様のための総合クリニックです。

 

率直なご意見を期待いたしております。

血液・造血器の病気

 

テーマ:原発性マクログロブリン血症

 

 

初診時にリンパ節腫大、肝脾腫のみを身体症状として認める患者さんがときおり来院されます。

 

発熱を伴うことも、伴わないこともありますが、

 

発熱を伴わない場合が、むしろ要注意です。

 

それは慢性リンパ性白血病(CLL)悪性リンパ腫

 

疑わせる症状を呈していないかどうかを確認する必要があるからです。

 

 

本日、ご紹介する原発性マクログロブリン血症は、

 

約半数の症例で、初発時にリンパ節腫大、肝脾腫を認めることが多い他、

 

貧血を認めることがあります。

 

 

その場合、患者の20~40%に過粘稠性症候群

 

(出血傾向、視力障害、精神神経症状など)の確認のために、

 

内科医も眼底検査をします。

 

眼底静脈が怒張しソーセージ様変化を呈していれば、

 

赤血球連銭形成を来たしているはずであり、

 

過粘稠性症候群ひいては原発性マクログロブリン血症を強く疑います。  

 

 

>過粘稠性症候群:血清の相対的粘稠度(ねばつき度)が3以上になると出現する諸症状です。

 

出血傾向・凝固異常(異常なM蛋白が血液の凝固因子と結合するため)、

 

視力障害(眼圧変化、眼底出血)、

 

精神・神経症状(頭痛、めまい、意識障害、脳波異常、しびれなどの末梢神経症状)の他、

 

レイノー症状(IgM著増によるクリオグロブリン増加のため)

 

 

 

原発性マクログロブリン血症では、

 

骨髄中の特定の形質細胞(成熟B細胞と形質細胞の中間段階にあるリンパ形質細胞)が

 

腫瘍性に増殖して他の血球系統を抑制するため貧血がみられます。

 

ただし、増殖の場は骨髄よりリンパ組織が中心であるため、リンパ節が腫れてくるのです。

 

この異常増殖細胞は単クローン性の免疫グロブリン蛋白であるIgMを産生します。

 

 

原発性マクログロブリン血症で問題になるのは、

 

過粘稠性症候群の他に、免疫力低下による易感染性です。

 

正常な免疫グロブリンが低下するために起こります。

 

 

 

診断:同様に高γ-グロブリン血症を呈する多発性骨髄腫との鑑別が重要です。

 

 

マクログロブリン血症は骨髄腫の1割程度の頻度ですが

 

40~70歳代(男女比2:1)に多く発生します。

 

マクログロブリン血症の特徴は、リンパ組織の病変が主体で、

 

M蛋白がIgMであり、赤血球の連銭形成、過粘稠性症候群、眼底変化を示すことです。

 

これらに対して、骨破壊が少ないことも多発性骨髄腫との鑑別上有意義です。

 

 

治療:軽症例(IgM上昇や貧血が軽度)では無治療で経過観察とします。

 

中等症以上では以下の化学療法を用います。

 

アルキル化薬(シクロホスファミド、メルファラン)、

 

プリン拮抗薬(フルダラビン、クラドリビン)、分子標的薬(抗CD20抗体であるリツキシマブ)

 

過粘稠性症候群を認める場合は血漿交換が適応となります。

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

テーマ:歯科医からのSOS

 

    <ただちに歯科治療してはいけない疾患>

 

 

高血圧症、狭心症、慢性肝炎、甲状腺機能亢進症、自己免疫疾患、抗凝固薬服薬中などでは、

 

抜歯などの歯科治療を直ちにおこなってはいけません。

 

本日は、高血圧が未治療のまま狭心症に発展していた患者の抜歯の例をご紹介いたしましょう。

 

 

コントロール不良の高血圧患者では、痛みや歯科治療に対する不安や恐怖心により、

 

内因性カテコーラミンの分泌が亢進しやすいです。

 

これは急激な血圧上昇をもたらし、

 

高血圧性脳症や頭蓋内出血を誘発するリスクが高いです。

 

治療前に血圧のコントロールを行うべきです。

 

 

治療中の血圧変動をモニターし、変動が激しければ抜歯を中止すべきなのですが、

 

なかなかそこまで管理できる歯科医院は少ないようです。

 

せめて、治療前の血圧測定だけでも実施していただきたいものです。

 

治療を途中で中止しづらい、とのご意見も少なくありませんが、

 

多数歯を一度に抜歯しないようにするなど慎重な対応が必要だと思います。

 

重篤な事故を直接・間接に経験した歯科医は、より慎重になるようです。

 

 

もっと注意しなければならないのは、狭心症です。

 

狭心症は心臓死の危険が大きいことを知らない歯科医はいないと信じたいところですが、

 

発作がほぼ収まっている状態の患者さんは自分で申告しない限り、

 

歯科医はそれを知りようもありません。

 

 

いずれも抜歯により狭心症発作をおこしたり、

 

その狭心症に心筋梗塞が併発して心停止したりすることがあるので注意を要します。

 

 

以前、海外出張を目前に控えて抜歯をしなければならない患者さんが

 

胸痛発作をしばしば起こすことが判明して、急遽相談を受けたことがあります。

 

 

患者さんに高円寺南診療所を受診していただき、労作性狭心症と診断しました。

 

そこで、疲労の回復と外用硝酸薬による対処を指導しました。

 

歯科治療の2日前から睡眠導入剤にて十分な睡眠を確保していただき、

 

半日前からフランドルテープ(持続性亜硝酸外用薬)40mg®を腹部の皮膚に貼付し、

 

さらに、万が一発作が出現した時に備えて、

 

ニトロール・スプレー(速効性硝酸薬)を持参していただきました。

 

 

無事に抜歯できましたが、米国への出張に向かう機中で狭心症発作を起こしました。

 

幸い、持参していたニトロール・スプレーで事なきを得たとの報告を受けました。

 

神経・精神・運動器

 

テーマ:片頭痛(その1)

 

 

片頭痛という名称の由来は頭の片側が痛むこととされています。

 

しかし、実際には4割近くの片頭痛患者さんが両側性の頭痛を経験しておられます。

 

ただし、高円寺南診療所を受診される片頭痛患者さんの7割以上は、

 

片側ですが、左右のいずれが痛むかは、発作のたびごとに異なります。

 

 

片頭痛は前兆の有無により「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」などに分けます。

 

前兆は、頭痛の前におこる症状でキラキラした光、

 

ギザギザの光(閃輝暗点)といった視覚性の症状が多くみられます。

 

その他、半身の脱力や感覚障害(しびれ感)、言語障害などの前兆もあります。

 

通常は60分以内に前兆が終わり、その後頭痛が始まります。

 

漠然とした頭痛の予感や、眠気、気分の変調などは前兆と区別して予兆といいます。

 

 

高円寺南診療所では、前兆・予兆について詳しく問診しています。

 

すると頭痛が起こる前に、首のあたりが凝ってくる、という訴えをしばしば確認します。

 

これは前兆というより予兆に近く、片頭痛特有ではなく、

 

筋緊張性頭痛の要素も加わっているのではないか、と考えています。

 

 

片頭痛発作は通常4~72時間続き、片側の拍動性頭痛が特徴です。

 

ただし非拍動性の片頭痛、両側性の片頭痛もあります。

 

頭痛のために日常生活に支障をきたします。

 

また、階段の昇降など日常的な動作によって頭痛が増強することも特徴です。

 

吐き気や嘔吐を伴うことが多く、頭痛発作中は感覚過敏となって、

 

ふだんは気にならないような光、音、臭いを不快と感じる方が多いようです。

 

 

片頭痛の診断は国際頭痛学会の診断基準を確認して行います。

 

日本では成人の8.4%、約840万人が片頭痛にかかっていると報告されています。

 

 

前兆のない片頭痛の診断基準(国際頭痛分類第2版、2004年)

 

A. B~D を満たす頭痛発作が5 回以上ある

 

B. 頭痛の持続時間は4~72 時間(未治療もしくは治療が無効の場合)

 

C. 頭痛は以下の特徴の少なくとも2 項目を満たす

1.片側性

2.拍動性

3.中等度~重度の頭痛

4.日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける

 

D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1 項目を満たす

1.悪心または嘔吐(あるいはその両方)

2.光過敏および音過敏

 

E. その他の疾患によらない

 

 

高円寺南診療所では、E.その他の疾患によらない、という条件を重視しています。

 

頭痛診療に当たっては重大疾患の見落としを避けるように努めるのは、言うまでもありません。

 

心身両面にわたる丁寧な系統的診療が必要ですが、

 

血圧をはじめとするバイタルサインのチェックや、簡単な尿検査、

 

さらに頸椎のエックス線検査などは必ず実施するようにしています。

 

 

来週は、治療のお話をいたします。

 

 

 

 


レポーター(第4週先任、聖楽院ピアノ伴奏科主幹 吉田奈津子)

 

先日のコンサートは新しいお客様にもお越しいただき、

 

とても暖かい雰囲気の中で、演奏することができました。

 


富永綾香さんの華麗で力強いフルートの音色と共に、

 

<カルメンファンタジー>を演奏しまし た。

 

富永さんのこれからのご活躍がとても楽しみです。

 


私のピアノ・ソロ、ドビュッシーの<沈める寺>は、

 

これまでも何度か演奏して参りました。

 

今回は納得のいく演奏が出来たかな、と思いました。

 

幸い、お客様から暖かいお言葉をいただくこともできました。

 

新しい試みも含めて、より良い演奏をお届け出来るように

 

頑張って参りたいと思います。

 

これからもどうぞよろしくお願い致します。

今後ともよろしくお願いいたします。

 

聖楽院コンサートの初出演は7月19日となります。

 

 

この度イタリアのアコーディオン奏者、Ezio Ghibaudo氏と

 

10月25日のコンサートでの共演が叶うこととなり、

 

ご縁にとても感謝しております。

 

 

最近、周りでは様々なジャンルでアコーディオンに対する関心が高まっており、

 

私も共演を望んでおりました。

 

 

そんな折に、Ghibaudo氏の来日、聖楽院コンサート出演を知り、

 

飯嶋先生やイタリア語文化顧問のMarco Agnoletti氏のご助力により実現いたしました。

 

 

現在、曲目を調整中ですが、2曲ほど氏のコンサートにゲスト出演させていただく予定です。

 

 

なかなか無い機会を楽しんで演奏したいと思いますので、皆様もぜひ足をお運びくださいませ。

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「隠白(いんぱく)」です。

 

IMG_1872

 

足の親指、爪の根元の内側の角から2ミリのところにあります。

 

 

 

「過多月経」「機能性不正出血」「鼻血」「不眠症」「消化器出血」「急性腸炎」等に効果があります。

 

 

 

専門学校時代にこのツボを使って「過多月経」の治療をしている先生の授業を受けたことを思い出します。

 

 

 

<参考文献>

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

内分泌・代謝・栄養の病気

 

テーマ:出産後甲状腺機能異常

 

   <無痛性甲状腺炎について>

 

 

高円寺南診療所は、妊娠可能世代の女性の受診比率が高いためか、

 

月経前緊張症、月経困難症のみならず、

 

しばしば不妊の悩みや妊娠期・産褥期の体調管理および

 

他科から処方されている薬剤について相談を受けることが多いです。

 

 

甲状腺は単位体積当たりの血流が一番多い臓器です。

 

この甲状腺の病気は女性に多いので特に気を付けて勉強していますが、

 

産後女性の約5%で出産後に甲状腺機能異常が起こります。

 

20人に1人ですから、無視できる頻度ではありません。

 

つまり、甲状腺病の専門医だけにお任せしておけば良いというものではありません。

 

皮肉なことですが、甲状腺病専門医はご多忙のためか、

 

妊娠期の女性のデリケートな心身の状況に対して、

 

十分な対応が困難である場合も少なくないようです。

 

甲状腺専門医は、甲状腺疾患に関する心身医学に

 

もっと開眼してくださったらと思うことがしばしばあります。

 

 

臨床の現場では、とくに、甲状腺中毒症がみられた場合、

 

無痛性甲状腺炎亜急性甲状腺炎、バセドウ病の発症・増悪の鑑別が重要になります。

 

無痛性甲状腺炎は出産後1~3か月、バセドウ病の増悪は3~6か月で明らかになることが多いです。

 

多くは自然経過にて6~8か月で甲状腺機能は正常化します。

 

鑑別は必ずしも容易でないので、その場合は対症療法で経過を見守ることも有意義です。

 

 

無痛性甲状腺炎

 

外来を受診する甲状腺中毒症患者の約1割がこの無痛性甲状腺炎です。

 

一過性の甲状腺中毒症で慢性甲状腺炎の一型と考えられています。

 

複数回のエピソードをもつ方が多く、

 

出産後数か月に発症するタイプでは、出産の度に繰り返すことがあります。

 

妊娠中は免疫抑制状態が持続しているため発症しにくいのですが、

 

その状態が消失するのが出産数か月後頃です。

 

 

バセドウ病と誤診し易いので注意しています。

 

もしバセドウ病と誤診して抗甲状腺薬を誤投与すると重篤な甲状腺機能低下を来たしてしまいます。

 

橋本病や寛解期のバセドウ病の経過中に、甲状腺の濾胞細胞が崩壊することにより、

 

甲状腺ホルモンが血中に流出することで発症します。

 

 

誘因:

1.出産(出産後に一過性の甲状腺機能異常症として発症することがあります。)

   

2.ステロイド治療の急速中止後、クッシング症候群の治療後

   

3.INF⁻α、LHRH、分子標的抗腫瘍薬の投与

 

 

臨床像:

① 臨床経過として、1ないし3か月におよぶ一過性の比較的軽度の甲状腺中毒症を呈した後、

 

引き続き一過性の甲状腺機能低下症を呈します。

 

(急性期には 123I 甲状腺接取率が低下し、回復期には高値となります。

 

その後、甲状腺組織の破壊後に回復期に入ります。

 

回復期には甲状腺ホルモンは低下し、TSHが基準値以上になることが多いです。

 

さらにその後は、甲状腺機能が正常化するか、永続的甲状腺機能低下症になるようです。)

 

    

② 眼症状(バセドウ病)なし、疼痛・炎症所見(亜急性甲状腺炎)なし

 

診断:

まず甲状腺中毒症であること。次に甲状腺痛を伴わないこと。

 

さらに、甲状腺中毒症が自然に3か月程度で改善すれば、

 

臨床的に無痛性甲状腺炎と見立てることは可能です。

 

しかし、診断確定のためには、以下の検査①~④のすべてが該当します。

 

 

検査:

①甲状腺ホルモンFT4高値、②甲状腺刺激ホルモンTSH低値(0.1μU/mL以下)

   

③TSH受容体抗体(TRAb)陰性、④123I(ヨード)または99mTc(テクネシウム)の集積低下

 

鑑別:

まず、バセドー病との鑑別が必要です。

 

そのための検査として、123I 甲状腺接取率、TSH受容体抗体、頸部ドプラーエコーが有効です。

 

バセドウ病との鑑別は、甲状腺エコーでの血流や123I(ヨード)接取率が高値で、

TRAb陽性あればバセドウ病を疑います。

 

亜急性甲状腺炎との鑑別は、疼痛や炎症所見が存在し、

 

疼痛部が低エコーであれば亜急性甲状腺炎を疑います。

 

 

治療:

頻脈に対してβ遮断薬、また甲状腺ホルモン不足期には補充療法を行います。