悪性貧血

 

最近、疲れやすく、頭痛息切れ動悸がする、という症状で来院される方は、とくに女性で多いです。

 

婦人科で更年期障害と診断されていたり、脳神経外科で緊張性頭痛と診断されていたり、整形外科で五十肩と診断されていたり、多数の医療機関を受診してから来院する方が少なくありません。

 

いわゆるドクターショッピングと化しているケースです。複数の身体科の医療機関を受診しても納得がいかないと、心療内科の受診を勧められることが多いようです。

 

注意していただきたいのは、医師が患者さんに心療内科の受診を勧める場合は、「精神科医に診てもらってほしい」と考えている場合がほとんどだということです。

 

 

そこで、患者さんが心療内科の看板(標榜)のある医療機関を受診した場合、どのような顛末になるでしょうか。実際には99%は精神科医が担当することになります。

 

残念ながらほとんどが心療内科専門医ではありません。そこでは、しばしば、自律神経失調症あるいは身体表現性障害、あるいは、うつ病などの診断のもとに薬物療法が開始されることがあり、そうなると良い結果が期待できなくなります。

 

 

検診や人間ドックを受けている方でも、検査データの血色素量(血中ヘモグロビン値)だけで貧血を除外されてしまうと、なかなか正確な診断にたどり着けません。

 

更に、循環器内科を受診して軽度の心不全、とのみ診断された方も過去に拝見したことがあります。

 

更年期障害緊張性頭痛五十肩軽度の心不全、これらの診断は必ずしも誤りではありませんが、本質的な解決に結びつく診断名ではありません。

 

ましてや、身体疾患を見逃して自律神経失調症身体表現性障害うつ病などの見立てを軽々に行うことは、解決を遅らせるだけで有害ですらあります。

 

 

私が経験したケースでは、自覚症状として、しびれ感、軽度の感覚鈍麻があることを問診にて確認しました。

 

診察室の椅子に座るまでの動作で不安定感があることを観察できたので、改めてお尋ねすると、動作時のふらつきが増えてきた、という返事を得ました。

 

毎日のように水氣道®を実践指導していると、こうした異常がたちどころに発見できるようになってきます。

 

次に診察すると、眼瞼結膜(白目の部分)が軽度に黄染していて、舌の表面が赤く、舌苔がまったくみられない(舌乳頭の萎縮)という所見を得ました。

 

問診や診察の過程で、この方の応答が若干鈍く、表情に乏しいため、たしかに、認知症抑うつは認められました。

 

この段階で、貧血とりわけ巨赤芽球性貧血を疑ったのですが、治療のためにはビタミンB₁₂欠乏性(悪性貧血など)なのか葉酸欠乏性なのかの鑑別が必要です。

 

とくに可能性が高い悪性貧血の診断のためにはシリング試験は現在行われておらず、また特異抗体検査(抗内因子抗体、抗壁細胞抗体)の検出は保険適応になっていないために日常診療で実施することが困難です。

 

結局のところ、末梢血検査にて大球性貧血であることから巨赤芽球性貧血であることを確認し、さらに血清ビタミンB₁₂の低下によりビタミンB₁₂欠乏性貧血であることを強く疑いました。

 

そこで、消化器内視鏡専門医に紹介し、胃内視鏡検査を実施したところ、自己免疫性萎縮性胃炎が母体となり、同時に早期の胃がんが発見されました。

 

悪性貧血については、他の自己免疫疾患の合併がしばしば認められますが、特に貧血の原因に直結する胃内視鏡検査は重要です。

 

また、注意すべき合併症として胃がんが挙げられ、巨赤芽球性貧血の診療において、胃がんは常に念頭におくべきとされています。

 

この患者さんは、胃全摘手術を受け、現在では別人のように活発に大きな事業に従事しておられるとのことです。

<聖楽院全体稽古および発表活動>

1)1月26日(日)第2回聖楽院合同稽古
   場所:セシオン杉並第1音楽室
   時間:11:00~13:00
   指導:ソプラノ野上結美、飯嶋正広(聖楽院主宰)

 

2)2月9日(日)第3回聖楽院合同稽古
   場所:セシオン杉並第2音楽室
   時間:10:00~13:00
   指導:ソプラノ野上結美、飯嶋正広(聖楽院主宰)

 

3)5月17日(日)第2回杉並令和音楽祭(ゲネプロ)
        場所:杉並区立方南会館
        時間:18:00~20:00
  指導:バリトン東浩市(杉並オペラ協会理事)、飯嶋正広(聖楽院主宰)
  伴奏ピアニスト:A組中村達郎、B組吉田奈津子、C組菊池眞理子

 

4)  5月31日(日)第2回杉並令和音楽祭(本番)
  場所:杉並区立方南会館
  開場15:00、開演15:30、終演19:30
  出演者:聖楽院レッスン生、ソプラノ野上結美、ピアノ宮坂貴子
  ピアノ伴奏(中村達郎、吉田奈津子、菊池眞理子、和田浩子)

 

5 ) 11月(日曜日開催予定)第1回中野令和音楽祭
  場所・時間帯(未定) 

 

 

<A/B/C組別レッスン生稽古日程(1~3月)>

1月6日(月)14:00~15:00 

A組(ピアノ和田浩子)

 

1月12日(日)11:00~12:00

C組(ピアノ吉田奈津子)

 

1月16日(木)9:30~10:30 

B組(ピアノ吉田奈津子)

 

1月20日(月)14:00~15:00

A組(ピアノ和田浩子)

 

1月30日(木)10:30~11:30

B組(ピアノ吉田奈津子)

 

2月2日(日)11:00~12:00

C組(ピアノ吉田奈津子)

 

2月3日(月)14:00~15:00 

A組(ピアノ和田浩子)

 

2月6日(木)9:30~10:30 

B組(ピアノ中村達郎)

 

2月16日(日)10:30~11:30

C組(ピアノ吉田奈津子)

 

2月27日(木)9:30~10:30

B組(ピアノ吉田奈津子)

 

3月1日(日)11:00~12:00

C組(ピアノ吉田奈津子)

 

3月2日(月)14:00~15:00

A組(ピアノ中村達郎)

 

3月12日(木)10:30~11:30

B組(ピアノ吉田奈津子)

 

3月15日(日)10:30~11:30

C組(ピアノ菊池眞理子)

 

3月16日(月)14:00~15:00

A組(ピアノ和田浩子)

 

3月26日(木)9:30~10:30

B組(ピアノ吉田奈津子)

 

3月30日(月)14:00~15:00

A組(ピアノ和田浩子)

 

 

 

<専門稽古日程(1~3月)>
1月6日(月)

13:00~14:00(ピアノ和田浩子)       

エチュード:芸術歌曲集小倉百人一首No2トスティ50(高声で歌う)       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅰ      

アリア:リムスキー・コルサコフ作曲オペラ「サトコ」第4場からインドの歌

 

1月9日(木)

9:30~11:30(ピアノ黒木洋平)
       

エチュード:パノフカ芸術練習曲集Op81a
       

歌曲:シューベルト「冬の旅」、シューマン「詩人の恋」
       

アリア:モーツアルト作曲オペラ「後宮からの誘拐」第1幕からコンスタンツェよ、また会えるとは

 


1月12日(日)

10:00~11:00 (ピアノ吉田奈津子)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から青春の甘く清らかな夢よ

 

1月16日(木)

10:30~11:30(ピアノ吉田奈津子)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から青春の甘く清らかな夢よ

 


1月20日(月)

13:00~14:00(ピアノ和田浩子)
       

エチュード:芸術歌曲集小倉百人一首No2トスティ50(高声で歌う)
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅰ
       

アリア:リムスキー・コルサコフ作曲オペラ「サトコ」第4場からインドの歌

 


1月23日(木)

9:30~11:30(ピアノ荻原由実)
       

エチュード:マチルデ・マルケージ歌唱技術Op21
       

歌曲:シューマン「女の愛と生涯」
       

アリア:チャイコフスキー作曲オペラ「エフゲニー・オネーギン」からレンスキーのアリア「青春は遠く過ぎ去り」

 


1月27日(月)

1:00~3:00(ピアノ黒木洋平)

エチュード:パノフカ芸術練習曲集Op81a
       

歌曲:シューベルト「冬の旅」、シューマン「詩人の恋」
       

アリア:モーツアルト作曲オペラ「後宮からの誘拐」第1幕からコンスタンツェよ、また会えるとは

 


1月30日(木)

9:30~10:30(ピアノ吉田奈津子)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から青春の甘く清らかな夢よ

 

 


2月2日(日)

10:00~11:00(ピアノ吉田奈津子)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から青春の甘く清らかな夢よ

 


2月3日(月)

13:00~14:00(ピアノ和田浩子)
       

エチュード:芸術歌曲集小倉百人一首No2トスティ50(高声で歌う)
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅰ
       

アリア:リムスキー・コルサコフ作曲オペラ「サトコ」第4場からインドの歌

 

2月6日(木)9:30~10:30(ピアノ中村達郎)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から

青春の甘く清らかな夢よ

 

2月16日(日)

9:30~10:30(ピアノ吉田奈津子)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から
青春の甘く清らかな夢よ

 

2月17日(月)

13:00~15:00(ピアノ黒木洋平)

エチュード:パノフカ芸術練習曲集Op81a
       

歌曲:シューベルト「冬の旅」、シューマン「詩人の恋」
       

アリア:モーツアルト作曲オペラ「後宮からの誘拐」第1幕から
コンスタンツェよ、また会えるとは

 

2月20日(木)

9:30~11:30(ピアノ荻原由実)

エチュード:マチルデ・マルケージ歌唱技術Op21
       

歌曲:シューマン「女の愛と生涯」
       

アリア:チャイコフスキー作曲オペラ「エフゲニー・オネーギン」から     

レンスキーのアリア「青春は遠く過ぎ去り」

 

2月27日(木)

9:30~10:30 (ピアノ吉田奈津子)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から
青春の甘く清らかな夢よ

 

 

3月1日(日)

10:00~11:00(ピアノ吉田奈津子)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から       

青春の甘く清らかな夢よ

 


3月2日(月)

13:00~14:00(ピアノ中村達郎)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から    

青春の甘く清らかな夢よ

 

3月12日(木)

9:30~10:30(ピアノ吉田奈津子)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から       

青春の甘く清らかな夢よ

 

3月15日(日)

9:30~10:30(ピアノ菊池眞理子)
       

エチュード:芸術歌曲集小倉百人一首No2トスティ50(高声で歌う)
       

歌曲:日本歌曲名歌集(音楽の友社)
       

オペレッタ:レハール作曲オペレッタ「ほほえみの国」第2幕から

君はわが心のすべて

 

3月16日(月)

13:00~14:00(ピアノ和田浩子)
       

エチュード:芸術歌曲集小倉百人一首No2トスティ50(高声で歌う)
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅰ
       

アリア:リムスキー・コルサコフ作曲オペラ「サトコ」第4場から

インドの歌

 

3月19日(木)9:30~11:30(ピアノ荻原由実)

エチュード:マチルデ・マルケージ歌唱技術Op21
       

歌曲:シューマン「女の愛と生涯」
       

アリア:チャイコフスキー作曲オペラ「エフゲニー・オネーギン」から

レンスキーのアリア「青春は遠く過ぎ去り」

 

3月26日(木)

10:30~11:30(ピアノ吉田奈津子)
       

エチュード:ヴァッカイ声楽教本
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅱ(カウンターテナー稽古用)
       

アリア:ドニゼッティ作曲オペラ「ドン・パスクアーレ」第1幕から      

青春の甘く清らかな夢よ

 

3月30日(月)

13:00~14:00(ピアノ和田浩子)
      

エチュード:芸術歌曲集小倉百人一首No2トスティ50(高声で歌う)
       

歌曲:イタリア古典声楽曲集Ⅰ
       

アリア:リムスキー・コルサコフ作曲オペラ「サトコ」第4場から

インドの歌

 

稽古目標 

1)水氣道稽古の流れ(表1)に沿った本稽古に習熟する

 

2)水氣道独自の対番制度を基礎としてファシリテーター能力の養成に続き、インストラクター育成の展開をはかる

 

3)水氣道の段級位に対応した伝位(表2)に基づく名宣り(なのり)による各航法の実践を通して、各人の技量に応じたリーダーシップの養成(表3)をはかるため月別の重点テーマに沿って稽古する

 

 

 

(表1)水氣道稽古の流れと名称および国際的呼称

 

親水航法(求憐)キリエKyrie

 

準備体操(栄光)グロリアGloriaイキイキ体操

 

五航法(信経)クレドCredo

 

各種航法(三聖)サンクトゥスSanctus:三聖(気・血・水)

 

整理体操(神小羊)アニュスデイAgnus Deiのびのび体操

 

 

 

(表2)伝位と段級位

 

極伝7枚目以降(正九段)    

 

皆伝6枚目まで(従七段以上) 

 

奥伝5枚目まで(従4段下以上) 

 

直伝4枚目まで(少初段下以上)

 

中伝3枚目まで(准3級以上) 

 

脇伝2枚目まで(6級以上) 

 

初伝(7級)

 

 

 

(表3)技法名(よみかた)        

               伝位 担当リーダー   

 

1月  理気航法(りきこうほう)  

    直伝 金澤克彦、中伝<育成中>

 

2月  調血航法(ちょうけつこうほう)

       中伝 加藤博文、脇伝<養成中>

 

3月  活水航法(かっすいこうほう)

    直伝 林亮博、中伝<育成中>

 

4月  水拳航法(すいけんこうほう)

     特任脇伝 木村英一

 

5月  舞踊航法(ぶようこうほう)

    中伝 高橋千晴、脇伝<養成中>

 

6月  将成航法(しょうせいこうほう)

         特任脇伝 野口将成

 

7月  太極法(たいきょくほう)  

     直伝 中川良子、中伝<育成中>

 

8月  横隊航法(おうたいこうほう)

    中伝 細谷健太<育成予定>

 

9月  九品仏法(くほんぶっぽう) 

     <育成予定>

 

10月  経絡航法(けいらくこうほう)

      中伝 坂本光昭

 

11月   舞踏航法(ぶとうこうほう) 

    <育成予定>

 

12月  無名航法(むめいこうほう)

    奥伝<研鑽中>村上健介

 

結核性髄膜炎

50代女性。1カ月前より微熱と頭痛がありました。かかりつけ医で感冒の診断を受け、感冒の治療を続けていたが一向に改善しないため当クリニックをはじめて受診されました。

 

初診時、意識は清明でしたが、体温37.7℃の発熱(平熱36.2℃)、右の顔面神経麻痺も明らかであったため、神経学的検査を行ったところ、項部硬直とケルニッヒ徴候を認めましたが、他には異常を認めませんでした。

 

ケルニッヒ徴候とは、項部硬直と同様に髄膜刺激症状の1つであり、髄膜炎を疑う手掛かりとなります。患者を仰臥位にさせ、一側股関節および同側の膝関節を直角に曲げた状態で膝を押さえながら下肢を他動的に伸展すると伸展制限が出る場合、あるいは下肢を伸展させたまま挙上すると膝関節が屈曲してしまう徴候で、大腿屈筋が攣縮するために起こる現象です。痛みは伴いません。

 

この時点で、亜急性の経過をとる髄膜炎を疑いました。クリプトコッカス髄膜炎や結核性髄膜炎の可能性がありました。とくに、結核性髄膜炎では治療の遅れが死亡に直結するので、疑い次第、早急に結核治療剤を投与することになっています。

 

念のためβ-D-グルカンを含む血液検査を実施し、頭部のMRI検査や脳脊髄液の検査も必要であることを伝えてはじめて午前中に別の病院で頭部のMRI検査を済ませてきたという報告を受けました。結核性髄膜炎の診断は、CTやMRIなどの脳画像検査ではなく、脳脊髄液検査によってなされるため、その病院の担当医宛に脳脊髄液検査の追加を依頼するための紹介状を書きました。

 

後日の報告でβ-D-グルカンの異常は認めませんでした。また細胞性免疫が低下する病態ではHIV(エイズ)感染を疑わなければなりませんが、すでに受診している基幹病院の医師の判断に任せることにしました。幸いHIV(エイズ)感染はなく、結核の治療とともに、脳浮腫の軽減や血管炎の抑制、髄膜の癒着・線維化に伴う脳神経障害や閉塞性水頭症の予防のため副腎皮質ステロイド薬の併用を行なったとのことでした。

 

微熱を伴う頭痛は、ありきたりの症状ですが、本人が気付いていない症状が生命にかかわる重大な病気の手がかりになることがあることがあります。この症例は、その一つの例にすぎません。俗に、『風邪は万病の本』といわれますが、単なる風邪として扱ってはならない重要な病気がたくさんある、ということの戒めでもあるような気がいたします。

発作性片側頭痛(片頭痛や群発頭痛との鑑別が困難であった症例)

 

20代女性。右眼窩部(右目の奥)の痛みがあり、目玉をえぐられるような激しい痛みの発作が出現し、今朝の症状が特に強かったため、片頭痛の治療目的で当クリニックを来院されました。

 

すでに、右目の流涙もあるため眼科を受診したところ、異常は見出されず、右鼻閉もあったため耳鼻咽喉科を紹介されましたが、やはり異常はないとの判断だったとのことです。

 

そこで、さらに脳神経外科を紹介され、頭部・眼窩・副鼻腔のMRI検査を行ないましたが、いずれにも異常はみつからず、おそらく片頭痛であろう、との疑い診断とともに片頭痛の治療薬を処方されたが、かえって症状が悪化したとのことです。

 

症状は半年前から出現し、発作の持続時間は5分程度、発作の頻度は毎日数回であることを確認しました。今期が初発ではなく、1年前にも同様の痛みが1カ月程続いたとのことでした。

 

一見して右の眼瞼下垂があり、観察すると右結膜の縮瞳と結膜充血を認めました。

 

眼瞼下垂、結膜充血と縮瞳は、自律神経の症状です。自律神経症状を伴う発作性の激しい頭痛ということで、一日数回の発作があることから考えて、まず想起されるのは群発頭痛です。

 

しかしながら、典型的な群発頭痛では、男性に多く、発作の持続も1時間ほどに及ぶのが普通です。これに対して、女性に多いのが発作性片側頭痛です。

 

発作性片側頭痛は、このように群発頭痛に似た臨床的特徴をもちますが、発作時間はより短く(2~30分)、発作頻度はより高く、女性に多い疾患です。発作はきわめて限定的に片側性であり、眼窩部を中心に生じます。

 

群発頭痛同様、診断は頭痛が以下の他覚的兆候や自覚的症状(流涙、結膜充血、鼻漏、鼻閉、前頭部または顔面の発汗、縮瞳、眼瞼下垂、眼瞼浮腫)の1つ以上を随伴する場合に確定されます。

 

7日から1年持続する発作が1か月以上にわたる緩解期を挟んで生じる場合に反復性発作性片側頭痛と診断され、慢性発作性片側頭痛は、1年間を超えて発作が繰り返され、緩解期がないもの、または緩解期があっても1か月未満の場合に診断されます。

 

この症例は、群発頭痛でも片頭痛でもなく、片側頭痛であると考えると説明が容易です。

 

しかも、今回は1年間を超えての再発例ですが、寛解期があるため、慢性発作性片側頭痛ではなく、反復性発作性片側頭痛ではないかと考えました。

 

 

上記の診断に基づき、インドメタシンの座薬を予防薬として処方したところ、それ以降の発作頻度は徐々に減少して、症状も軽微になり、3か月後には気にならなくなったとのことでした。

 

12月12日(木)

インフルエンザの推定患者数が、昨年の同時期に比べて、5倍となっています。

 

詳しくは下記リンクから。

 

産経新聞

 

 

11月15日(金)

NHKニュースより

インフルエンザが全国的な流行期に入ったと、国立感染症研究所が発表しました。

 

流行期に入るのは、例年より数週間から1か月ほど早く、

統計を取り始めて以降、2番目に早くなっていて、専門家は早めのワクチン接種などの対策を呼びかけています。

 

 

 

10月31日(木)

今年はどのようなインフルエンザ対策を講じればよいのでしょうか?

 

杉並国際クリニックでは、10月末日で、定期通院者の皆様の75%以上にインフルエンザワクチン接種を完了しました。11月1日以降は、定期通院者以外の皆様のうち、他で接種を受けていない未接種者を受付します。ただし、ワクチンの在庫は20人分なので、本年は11月9日以前に終了する可能性が高いです。早めにご連絡ください。

 

 

さて、人間に影響を及ぼすインフルエンザウイルスにはA型(亜型としてH1N1[ソ連型]、H1N1pdm、H3N2[香港型]など)とB型があります。

 

そのうちどちらが流行するかで流行時期は毎年異なります。ただし、通例では基本的には1月下旬~2月上旬にA型が、それに遅れてB型がピークを迎えます。

 

インフルエンザ疫学や薬剤耐性の現況についての報告が一定の手がかりになります。

 

 

1)今年のインフルエンザの流行時期は?

 

今季インフルエンザは沖縄県での発生を皮切りに早くも流行が始まりました。今年は例年より流行が早いです。ただし、流行のピークが年明けになるかどうかはわかりません。気温や気候による研究もたくさん実施されていますが、それらは明確な予測指標に至っていません。

 

 

2)今年流行するインフルエンザ型は?

 

流行の予測は困難です。

2008~09年は新型インフルエンザのH275Y変異株H1N1(ソ連型)が大流行したものの翌年には消失しました。それ以降はH1N1とH3N2が交互に、同様にA型とB型も交互に流行しました。

 

これまでの流行を参照にすると、今年は2010~11年、もしくは2012~13年のパターンではないかと推定する向きもあります。

 

そのパターンとは、B型が流行、A型はH1N1が多く発生する、というものです。

 

 

3)今年のインフルエンザの注意点は?

 

臨床現場における抗インフルエンザウイルス剤投与による成人での発熱や症状の改善やウイルスの残存率に関する調査が参考になるかもしれません。ウイルス残存率や耐性株の動向が重要な手がかりとなります。

 

昨年はバロキサビル(ゾフルーザ®)が発売されました。多くの医師がゾフルーザ®を処方し、その後、耐性株出現などの研究報告が世間を賑わせました。このことから、今年はバロキサビル(ゾフルーザ®)耐性株に対する治療薬選択への懸念が広がっています。

 

ゾフルーザ®の処方比率が高かった理由は、比較的容易に推定できます。その第一は、日本人の新しい物好きの傾向です。これは患者さんばかりでなく、医師も例外ではないようです。しかし、新しい薬に飛びつくことが賢明な行動であるとは限らず、むしろ慎重であるべきだと考えます。理由の第二は、便利と根拠の乏しいお得感に人々は騙されやすい、ということです。『1回の投与で治療が完了』という触れ込みの恐ろしさにはなかなか気づけないようです。その根拠は、1回の投与でインフルエンザ増殖を抑制できる実験結果からです。ただし、注意を要するべきなのは、インフルエンザ増殖抑制がただちに治癒を意味しないことです。インフルエンザ感染による復調には、最低でも5日以上は要すると私は考えます。

 

他院でゾフルーザ®の処方を受けて、休まずに仕事を続けた挙句に、持病の気管支炎増悪・喘息発作・肺炎併発で入院を余儀なくされたケースもありました。ゾフルーザ®の使用に当たっては、「本剤の必要性を慎重に検討」という警告がなされています。薬を内服した直後に治ったと早合点して体調を悪化させたり、周囲に迷惑をかけ、流行を蔓延させたりしてしまうことがないように、医師は患者を教育すべき立場にあります。薬は薬理学的効果だけで処方すべきでなく、患者さんの心理社会的な行動パターンをも考慮して処方すべきだと考えます。しかし、残念ながら、世間様は、そこまで考慮しないのが相場のようなので、私の懸念材料の一つになっております。

 

バロキサビルでは治験時と同様の成績;バロキサビル(ゾフルーザ®)とオセルタミビル(タミフル®)では前者のほうが早くウイルスが消失、が得られたと報告されています。

「治験成績が臨床現場と相違なかったことから、バロキサビルの治験時データは信頼できる」とするバロキサビル(ゾフルーザ®)を開発した塩野義製薬の研究者の発表がありますが、これはただちに、バロキサビルの優位性を意味するものではないと考えます。

 

 

②5種類のインフルエンザ治療薬での平均解熱時間に差がなかったとの報告があります。

 

「成人の場合、どの薬剤を選択するかは各医師の患者に適切と思われる薬剤の選択で良い」との見解が発表されています。その通りだと思います。

 

杉並国際クリニックでは、何よりもインフルエンザワクチン接種を含めた予防対策を徹底し、抗ウイルス剤の選択に際しては、いずれの型のインフルエンザにも有効なオセルタミビル(タミフル®)の5日間投与を基本戦略としています。5日間の内服の間、患者の皆様には出勤・登校を禁じ、自宅でしっかり養生していただくことが、確かな健康回復に繋がっているからです。内服という行為が自己養生の必要性を再認識させ、適切な休養をとるという健康行動を強化するという心理社会的効果は再評価されるべきではないか、と考えます。

 

③オセルタミビル(タミフル®)治療後の成人にて感受性低下ウイルスが分離された例でも重症化や周囲への蔓延はなかったとの報告があります。

「今後、バロキサビル耐性ウイルスが“治療前”にどれだけ広がるか、バロキサビルの治療にどれくらい影響があるのかは、注意深く見ていく必要がある」との見解があります。

 

バロキサビルは、ウイルス量を早く消失させることができるので、価値が見いだせるのではないかという意見がありますが、それはウイルス量を早く減らすことで重症化を防げるという仮説が正しいことが前提になるので、推定に過ぎないと考えます。

 

 

ただし、耐性に関しては、「小児ばかりでなく、高齢者でも変異ウイルスが一定の頻度で出ているので、高齢者に対しても今後注意を払っていく必要がある」との意見は、尊重したいと考えています。

 

 

④耐性株がどの程度伝播していくか?

臨床的影響に対しては不明点が多いです。したがって、インフルエンザウイルスが免疫機構を免れる新たな手段を手に入れる気配を見せるならば耐性株には十分注意が必要です。

受診が遅れた重症患者(鳥インフルエンザなどを含む)のウイルス量低下のためには、バロキサビルは有効かもしれませんが、残念ながら確かな根拠となるデータはありません。

 

 

10月26日(土)

インフルエンザワクチン緊急情報No2

今シーズンのインフルエンザワクチン接種の重要性と有用性の根拠について

 

1)日本でのインフルエンザ流行に大きな影響を与えることになる、南半球で圧倒的に流行している季節性インフルエンザは、

influenza A(H3)

をはじめ、

influenza A(H1N1)pdm09

および

influenza B

です。

 

In the Southern Hemisphere seasonal influenza viruses circulated widely, with influenza A(H3) predominating in many regions; however, influenza A(H1N1)pdm09 and influenza B viruses were predominant in some countries.

 

 

2)今年の9月の下旬から世界保健機関(WHO)が目下推奨しているワクチン成分は、A(H3N2) および B/Victoria系統です。

 

In late September, the World Health Organization (WHO) recommended components for the 2020 Southern Hemisphere influenza vaccine and included an update to the A(H3N2) and B/Victoria-lineage components.

 

 

3)現在、杉並国際クリニックで使用しているインフルエンザ・ワクチンの製造株は、1回のワクチン接種で、同時に4種のインフルエンザウイルス感染に対応できます。WHOの推奨するワクチン組成とほぼ一致していることを御確認ください。

 

A型株2種

  A型・ブリスベン/02/2018(H1N1pdm09

  A型・カンザス/14/2017(H3N2

 

B型株2種

  B型・プーケット/3073/2013(山形系統)

  B型・メリーランド/15/2016(ビクトリア系統

 

 

4)WHOはインフルエンザの蔓延と合併症を予防する最善の方法は、インフルエンザワクチンを毎年接種すること、流行期の前に早めに摂取することであるとしています。

 

Annual influenza vaccination is the best means for preventing influenza illness and its complications, and vaccination before influenza activity increases is optimal.

 

 

 

10月25日(金)

インフルエンザワクチン緊急情報No1.

 

『今シーズンは北半球でもインフルエンザの流行が早まると考えられ、直ちに予防接種を受けるべきである』とする警告を、米疾病対策センター(CDC)が発信しました。

 

CDCは、インフルエンザの流行時期は予測不可能として、流行に備え、生後6カ月以上の全ての人がワクチンを接種することを推奨しており、流行が始まる直前の10月が、ワクチン接種に最も適した時期としています。これは、杉並国際クリニックが従来から実施してきたワクチン接種計画に一致した見解です。

 

 

<流行の原因>

これは南半球での状況を鑑みた予測であり、CDC発行の「Morbidity and Mortality Weekly Report」10月11日号において発表しました。この半年の間に南半球でインフルエンザが大流行した主な原因は、流行の開始が早かったことと、症例の報告率が向上したことによるものであると説明しています。

 

 

<ワクチン接種の推奨>

執筆者であるCDCのScott Epperson氏は、インフルエンザウイルスは1年中存在しており、流行期にどの株が優勢となるかを正確に予測することは困難だが、どの株がワクチン含まれているかにかかわらず、「今シーズンのインフルエンザワクチンの接種は身を守るための要となるだろう」と述べています。

 

特に5歳未満の幼児、65歳以上の高齢者、妊娠中の女性のほか、糖尿病、心疾患、喘息等の慢性疾患がある人など、インフルエンザの合併症リスクが高い人にはワクチン接種が重要であることが指摘されています。

 

また、生後6カ月未満の乳児にワクチンを接種することはできないため、両親をはじめとする周囲の人がワクチンを接種して乳児への感染を防ぐ必要があります。「インフルエンザワクチンの接種により 得られるベネフィットの1つは、自分自身だけでなく、周りの人を守ることにもつながることだ」(Scott Epperson)

 


<ワクチン接種のメリット>

「米国では毎年数十万人がインフルエンザで入院し、数千人が合併症で死亡している。死亡率が高いのは高齢者と乳幼児だが、若者や中高年者が死亡することもある。ワクチンを接種していれば、入院の確率を大幅に低減することができるし、万一インフルエンザにかかったとしても、症状が軽く済む。また、インフルエンザにかかった際は、医師の診察を受けて抗ウイルス薬を処方してもらえば、回復までの時間が短くなる」(Scott Epperson)。

 


<誰にでもできる感染予防対策>

「例えば、インフルエンザの可能性がある人とは接触しないようにする、こまめに手を洗う、インフルエンザにかかっているとき、あるいは咳やくしゃみが出ているときは鼻と口を覆う。そのような簡単な対策でも、インフルエンザへの感染、あるいは感染拡大を防ぐのに役立つ」(Scott Epperson)。

 

 

Journal

MMWR. Morbidity and mortality weekly report. 2019 Oct 11;68(40);880-884. doi: 10.15585/mmwr.mm6840a3.

Author

Scott Epperson, C Todd Davis, Lynnette Brammer, Anwar Isa Abd Elal, Noreen Ajayi, John Barnes, Alicia P Budd, Erin Burns, Peter Daly, Vivien G Dugan, Alicia M Fry, Yunho Jang, Sara Jo Johnson, Krista Kniss, Rebecca Kondor, Lisa A Grohskopf, Larisa Gubareva, Angiezel Merced-Morales, Wendy Sessions, James Stevens, David E Wentworth, Xiyan Xu, Daniel Jernigan

 

 

 

東京都のインフルエンザ情報です(10月11日現在)

 

インフルエンザの流行はまだ収まっていないようです。

ワクチン接種を早めに済ませてください。

 

 

<毎日新聞の記事より>

厚生労働省は27日、九州や沖縄県を中心に10都県でインフルエンザの患者数が流行入りの目安を超えたと発表した。

沖縄県では警報レベルに達している。

例年は12月上旬に全国的に流行入りするが、今年は2カ月ほど早い可能性がある。

 

 

 

<東京都のHPより>

 

「都内でインフルエンザの流行開始」

 

都内のインフルエンザ定点医療機関からの第38週(9月16日から9月22日)の患者報告数が、流行開始の目安となる定点当たり1.0人を超えました。
インフルエンザは例年12月から3月にかけて流行しますが、今シーズンは早めの注意が必要です。

今後、本格的な流行が予想されるため、インフルエンザにかからない、感染を広げないための対策を一人ひとりが心がけてください。

 

 

今年はインフルエンザの流行が早まっているようです。

 

当院では、10月1日より予防接種を実施いたします。

 

予防接種の効果を十分に得るためには10日~2週間ほどかかります。

 

ワクチンの効果は5か月以上持続します。

 

早めの予防接種をお勧めいたします。

 

 

片頭痛?(妊娠希望)

 

30代女性。左眼の奥から広がる頭痛を訴えて受診されました。

 

頭痛は発作的に生じ、肩こりや悪心を伴ない、肩こりがひどくなるときには嘔吐することがあるということでした。

 

その頭痛発作はピークに達するまでに数十分経過し、翌日まで続くことがあるとのことでした。

 

最近の半年間は、同様のパターンの発作が、月に10日位発生し、この他に、後頭部の頭重感を伴う痛みも、月に10日程あるという報告でした。

 

ほぼ連日、頭痛薬を服用していました。

神経学的所見に異常は認められず、すでに脳外科を受診し、画像検査では異常を認めませんでした。

 

妊娠を希望しているのにもかかわらず、希望していたトリプタン製剤ではなく、前医の脳外科医にバルプロ酸を処方されたことに不信感を抱き、当クリニック受診となりました。不妊外来でお金を使い果たしたので、可能な限り低コストで診療してほしいという一方的な要求をされました。

 

たしかに、片頭痛の予防薬の中で、バルプロ酸は胎児に対する危険性が最も高いので内服を避けるべきであることは誤りではありません。しかし、トリプタン製剤も安全性が確立されていないことを説明しました。

 

また、この患者さんは、高血圧治療のため内科循環器科でアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とカルシウム拮抗薬ロメリジンを処方されていました。この点について、本人に質問すると、降圧剤が胎児循環障害を来すものがあることや、また、妊娠中ばかりでなく授乳中も避けるべき薬があることなどは、かつて想像したこともなかった、といって驚いていました。

 

 

このケースは薬物乱用頭痛の疑いがあります。薬物乱用というと誤解がありますが、いわゆる違法薬物ではありません。

 

この場合は主として鎮痛薬です。

薬物乱用頭痛とは典型的には1 ヶ月に 15 日以上起こる片頭痛様頭痛や 1 ヶ月に 15 日以上起こる片頭痛様頭痛と緊張型頭痛様頭痛の混合した状況ですが、その主要原因は,片頭痛の対症療法薬または鎮痛薬もしくはその両方の乱用によるものです。

 

この私の見立てを直接本人に伝えても感情を害するばかりであることが予測されたため、この判断は伏せたまま、別のアプローチによる診療を続けることにしました。

 

本人は不妊外来にも通院中であり、挙児希望は切実な要求であるため、妊娠中にでも投与が可能な発作予防薬を検討してみました。

 

プロプラノロールなどの降圧剤は経験的にではありますが、比較的安心して使用でき血圧コントロールと同時に頭痛発作の予防にも有益であろう、ということで処方しました。

また、同時に、発作頓挫薬としては、「慢性頭痛の診療ガイドライン」でも推奨されているアセトアミノフェンを処方しました。

 

とても早口でヒステリックな印象を与える方であったため、そのことには直接触れずに、抑肝散や加味逍遙散という、いわゆる漢方の精神安定剤を併せて処方したところ、後日、気分が安定して、頭痛の発作回数が顕著に減少した、という報告を受けました。

 

あれほどまでにこだわっていた不妊治療も終了し、水氣道®を開始し、こだわりを捨てて夫と自然体の生活に戻ったところ3カ月後に無事に妊娠されたとの報告を受けました。

 

最初の印象とはまったく異なり、別人のように穏やかで上品な表情になっていました。

 

そこで、漢方薬を安胎薬(胎児の健康な発育を促し、流産を予防する薬)とされる当帰芍薬散を処方したところ、心身共に落ち着いたといって喜んでくれました。

 

水氣道は、妊娠のため中止となり、鎮痛剤も使用しないで済むようになりましたが、その後の消息は不明です。

抗NMDA受容体脳炎

 

20代女性。3週間前に感冒にかかってから頭痛が続きふらつきを感じるようになり、不眠にも悩まされ、心配になった母親に伴われて受診となりました。

 

近所の精神科医にはストレスによる自律神経失調症で、うつ病の初期症状であるとの診断を受けました。しかし、その後、流涎(止めどないよだれ)が出現し、食事も摂取しなくなったとのことでした。

 

不安になっている母親がすべてを説明しようとして譲らないため、やむを得ず、母親からの情報を得ることにしました。

 

杉並国際クリニックとなってから、初診の受付は、原則として患者さん本人の自主的なネット予約によるシステムとなりましたが、前身の高円寺南診療所の時代は、目の前の二人の患者(しかも、二人とも自分自身についての病識がなく、互いに相手を心配している!)を相手にすることは珍しくはありませんでした。

 

母親によると患者は1週間前から話し方が変化し、急に笑ったり騒いだりするようになったとのことで、これは有益な情報でした。

 

本人との対話を確保する必要性を伝え、会話を試みると、会話中に語尾が上がるなど茨城訛の特徴あるイントネーションが出現しました。

 

茨城訛で話す母親に尋ねると、患者は東京育ちで標準語を話し、元来のイントネーションではないことが確認されました。

 

ご本人は、少しぼんやりとした表情で、会話中の様子を観察すると、口舌ジスキネジアを認めました。これは、口腔周囲の顔面表情筋ならびに、あごの運動に関与する筋の異常収縮により円滑な開口・閉口に支障をきたす病状を呈するものをいいます。

 

薬物が原因となることがあり、薬物誘発性ジスキネジアとして、抗精神病薬や抗パーキンソン病薬などの長期服用による遅発性ジスキネジアが広く知られています。

 

ご本人は精神科から睡眠薬と抗うつ剤のみを処方されていましたが、短期間の少量のみの処方であったため、薬剤以外の病気を鑑別する必要性を感じました。

 

 

項部硬直など髄膜炎を疑う所見がなかったため、血液検査のみを実施しました。

 

白血球17,650/μL(総好中球81.8%)、ヘモグロビン12.7g/dL、血小板17.3万/μL、

 

その他、肝・腎機能および電解質に異常なし、甲状腺ホルモンや膠原病の自己抗体なども陰性でした。血液中の好中球数が異常高値であるために何らかの炎症の存在を歌がいました。

 

 

再診時に、意識がぼんやりするとの報告、婦人科で卵巣腫瘍を指摘されているという母親からの情報、前回より項部が硬くなっている印象を受けました。

 

そこで、髄膜炎や脳炎を疑い、脳髄液検査や脳MRI検査のため、婦人科の手術も可能な病院を紹介しました。

 

紹介先の病院から受けた報告によると、この症例は抗NMDA受容体脳炎という診断に至るまでに1カ月を要した模様でした。

 

この病気は傍腫瘍性神経症候群として発症する脳炎です。傍腫瘍性神経症候群とは、担癌者(癌を患っている患者)に自己免疫学的機序により生じる多様な神経症候群です。

 

通常は神経症状出現が腫瘍の発見に先行し、発症初期から病型に特徴的な自己抗体が検出されます。腫瘍原発巣、神経症候、抗体の種類の間に比較的一定の関連があり、抗体検出が本症の診断および腫瘍早期発見に有用とされます。

 

この患者さんは、入院中に痙攣重積発作を起こしたことも、確定診断に繋がったようです。

 

卵巣奇形腫を切除後、副腎皮質ホルモン、血液浄化療法などを経て、経過良好とのことでした。

緊張型頭痛(抗うつ剤と水氣道のイキイキ体操が有効であった症例)

 

緊張型頭痛とは、片頭痛とともによくみられる一次性頭痛の代表です。これは頭の周りや首の後ろから肩、背中にかけての筋肉が緊張するために起こる頭痛です。 痛みは後頭部を中心に頭の両側や首筋にかけて起こり、「頭をバンドで締め付けられているよう」とか、「頭に大きな荷重がかかっているような感じ」などと表現されます。

 

緊張型頭痛に対する治療は、①急性期(頭痛発作時)の頓挫療法と、②発作間欠期も含めた予防療法に分けられます。

 

① の頓挫療法としては、鎮痛薬あるいは非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の頓用が行われます。ただし、これだけを続けていくと、鎮痛剤の使用方による頭痛である薬物依存性頭痛をもたらすおそれがあるため、①単独での対応はお勧めできません。そこで、

 

② の予防療法が意味をもってきます。予防療法には、薬物療法と非薬物療法とがあります。
杉並国際クリニック受診中の緊張型頭痛の患者さんに多いタイプは、すでに過労状態に陥っていて頭部ばかりではなく全身におよぶ慢性の筋緊張を伴い、本人も自覚していない程度の抑うつ傾向があり、入眠困難などの不眠症を伴うものです。

 

 

そのようなケースでは、まず、薬物療法をはじめます。三環系抗うつ薬であるトリプタノール®(アミトリプチリン)からはじめると奏功することが多いです。

この処方で、うつ傾向や不眠症が解消すると頭痛が軽減します。

 

筋緊張が持続する場合は、筋弛緩剤としてテルネリン®(チザニジン)の処方を加えると効果的です。

 

抗うつ薬から筋弛緩剤単独で症状が軽快するようであれば、漢方薬とビタミン剤の組み合わせに変更することが多いです。頭痛の漢方薬としては、五苓散、釣藤散が有効であり、虚弱で冷え性の方には、呉茱萸湯、さらにめまいを伴う場合には半夏白朮天麻湯が使いやすいです。

 

ビタミン剤としてはビタミンB群を併用すると、慢性的な疲労感が軽減し易いです。そして、薬物療法の治療評価には3カ月(最大6カ月)を目安に判断し、投薬の続行か中止あるいは変更などを考慮することが一般的です。

 

しかし、実際のところ3カ月も待ってくれるような患者さんはほとんどいません。そこで、大きな助けになるのが非薬物療法です。

 

 

非薬物療法としては、筋電図バイオフィードバック療法(推奨度A)、頭痛体操(推奨度B)があります。杉並国際クリニックで現在も実践中の水氣道®の準備体操であるイキイキ体操は頭痛体操のスキルも盛り込んでいるためか、筋緊張性頭痛には著効をしめします。

 

また、鍼灸療法と併用すると効果出現までの時間が短縮できます。

 

水氣道は陸上でのエクササイズとは異なり、水中で行うため様々な感覚を刺激し、フィードバックを容易にすること、集団で行うため、対人緊張に伴う緊張性頭痛の寛解・治癒にとても役に立ちます。

 

半年ほど定期的に継続参加することによって、抗うつ薬や筋弛緩剤を減らしたり、終了したりすることも難しくはありません。

 

 

緊張性頭痛の非薬物療法としては、水氣道®、鍼灸療法の他に自律訓練法もお勧めです。いずれも杉並国際クリニックにおいて経験と実績のある統合的メソッドです。