カテゴリー: 医療
<第2ステップ>
もし自身の問題に気づくことができたら、
次のステップは「問題の重大性」を判断する段階になります。
緊急性があれば、<即座に対処しよう>、<助けを求めよう>と判断されるでしょう。
それほど問題が重大でなければ、先送りしたり、<時間をかけて解決しよう>と判断したりするでしょう。
また、時間が解決してくれるかもしれません。
しかし、<このままにしておくと、この先まずいぞ>と判断されれば、次の段階へ進みます。
実はここでも「否認」が働くことがあります。
問題が重大であって、<この先まずいぞ>という状況判断が、
その人にとってあまりにも不安で脅威的であると、
「大したことないさ」とか「何とかなるさ」と、事の重大性を否認してしまうのです。
また、他者の指摘や忠告も素直に受け入れられず、対人関係にまで問題が生じるかもしれません。
まとめ: 第1ステップにしても第2ステップにしても、
「否認」という防衛機制に陥りやすいことが問題になります。
ひとたび「否認」に陥ると、その先、問題がさらに大きく膨らんだり、
深刻になったりする可能性が大きくなります。
先に述べたように、人間関係が既にこじれてしまっていたら、
たとえ現状を正しく受け止められても、問題の重大性に気づくのが遅れ、
人に助けを求めることすら難しくなってくるでしょう。
臨床心理士は、皆様を取り巻く大切な人間関係がこじれないように、
なるべく早い段階で、現状を整理して、問題の重大性に気づけるようにサポートしていまきす。
* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房
ストレス対処 MIYAJI 心理相談室 (高円寺南診療所内)
主任 臨床心理士 宮仕 聖子
第114回日本内科学会講演会に参加して(その1)
(4月14~16日:東京国際フォーラム)
テーマ:超世代の内科学-GeneraltyとSpecialtyの先へ-
招請講演<がん幹細胞研究の進歩と治療開発>
赤司浩一(九大研究院・病態修復内科)氏の公演を聴いて(その1)
私は毎日<がん>の患者さんを診ています。
このように言うと、
『高円寺南診療所は、すごくハイレベルなクリニックなんですね』、
という反応が返ってきます。
しかし、日本の国民の過半数は<がん>で亡くなります。
ですから、<がん>患者の診療は、
ごく普通の診療所の普通の医者にとっても日常的なことなのです。
正常な組織を構成する細胞は、自己複製する能力がありますが、
幹細胞でない多くの正常細胞は、他の種類の細胞に変化する能力(分化能)を持ちません。
これに対して、悪性腫瘍である<がん>組織の中にも、
自己複製する能力を持ち合わせた細胞が少数ながら混じっています。
これが<がん>幹細胞(ステム・セル)です。
そのため、正常組織は分化能のない細胞集団なので、細胞レベルで均一なのですが、
《 悪性腫瘍の組織は、分化能をもつ<がん>幹細胞が
正常とは異なる分化能を示すことにより、細胞レベルで不均一となる。》
というモデルが提唱されているそうです。
がん幹細胞とは、2006年の米国癌学会で、
「腫瘍内に存在し、自己複製能と主要組織を構成するさまざまな系統のがん細胞を生み出す能力を併せ持つ細胞」
と定義されました。
医学用語の定義は、今後の研究の方向性を明確にするうえで大きな役割を果たします。
この定義により、
がん化とは・・・正常細胞ががん幹細胞化すること
がんの治療とは・・・治療抵抗性が高いがん幹細胞を根絶すること
がんの再発とは・・・残存がん幹細胞が再活性化すること
がんの転移とは・・・がん幹細胞の移動と局所への定着
そして、がん治療の標的は、がん幹細胞にある、
ということが明確になってきました。
治療抵抗性については、次回【来週】で採り上げます。
今回は「人が助けを求めるまでのプロセス」について考えていこうと思います。
<第1段階>
まずは、「自分の身の上に問題が起こった」、「自分は問題を抱えている」、と気づくことです。
目の前で問題が起これば、あるいは「しんどいな」と感じれば、「問題」に気づくはずだと思うかもしれません。
しかし、実はそう簡単な話ではありません。
人は自分を守るために、「否認」という防衛機制を用いることがあります。
「防衛機制」とはフロイトの精神分析の用語です。
簡単に言うと、「強い不安や受け入れがたい衝動が生じた時に、
不安定にならないよう、自分(自我)を守るために、無意識的に行われる心理的な働き」です。
また「否認」とは防衛機制の一つで、
「不安や苦痛を生み出すような問題から目をそらし、認めないこと」です。
問題が起こった時に、自分にとってあまりにも不安や脅威だったりすると、
その感情から自分を守ろうと、無意識的に問題自体を「否認」してしまうことがあるのです。
心の中で、問題がそもそも無かったことのように処理されてしまうと、
問題自体に気づくことができなくなってしまいます。
自分(自我)を守るためには、まず問題を意識的に受け止めることが大切です。
なぜなら、問題は取り残されたまま、原因がわからぬまま、
心身に変調をきたしてしまうからです。
そこで臨床心理士は、まずどんなにしんどいのか、ご本人の心身の変調を受け止めます。
そして、クライアントさんの自我を守りつつ、問題(困難)に気づけるようにサポートしていきます。
* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房
ストレス対処 MIYAJI 心理相談室 (高円寺南診療所内)
主任 臨床心理士 宮仕 聖子
(18の続き)
臨床心理士といった心理の専門家は、
「苦しい、辛い」という訴えしか言えない状態、混乱した状態でも、
まず情緒的なサポートによって、クライアントさんの気持ちの下支えをいたします。
どんなことが辛いのか、お話ができるまで、待っています。
また、その人が話しやすいように気持ちを引き出すサポートもします。
そして、必要であればより専門的な、手段的・情報的サポートも提供します。
例えば、認知行動療法といった手法を使って、クライアントさんと問題の解決に向けて、
物事のより良い受け止め方や考え方、ふるまい方のトレーニングを提供します。
心理の専門家というと、ちょっと相談に躊躇するところがあるかもしれませんが、心配はいりません。
その人が今訴えたいことを、ありのまま受け止める姿勢でお話をお聞きします。
ただ、相談する人から「HELP!」が来ないと、
カウンセラーは十分なサポートをすることができません。
もし悩んで、周りの人に話しづらかったり、うまくいかなかったりするときは、
カウンセラーに一言、「HELP!」と伝えに来てくださいね。
ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)
主任 臨床心理士 宮仕 聖子
(17の続き:サポートを得るための求め方や求めるタイミングについて)
次に、自分が今どんな状態かを相手に説明する必要があります。
前回の例で言うと、歯医者さんのところに行ったら、どこがどんなふうに痛むのか説明できると、
歯科医はどんな処置が必要なのかを判断することができます。
それから、どこまでなら自力でできそうか、どこからサポートが必要なのかを話せると、
相手にもわかりやすく、要点をおさえたサポートを得ることができます。
しかし、体の調子が悪いときには、健康なときとは違って精神的に余裕がないので、
なかなかそこまで要領よく話すことができないものですね。
一方、サポートを求めるタイミングも大事になってきます。
それは相手のことを考えて求めることです。
相手が忙しかったり、相手も深刻な悩みを抱えている状態だったりという状況では、
相手も良いサポートを提供できないでしょうし、相手まで苦しめてしまう結果になってしまいます。
素人である相手方に期待できることの限界を認識していないと、
互いに、失望もしくは怒りの感情が生まれ好ましくない結果をまねきかねません。
「心の専門家」が必要になるのは、こうした場合です。(次回へ続く)
ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)
主任 臨床心理士 宮仕 聖子
消化器系の病気
テーマ:過敏性腸症候群
高円寺南診療所の新患は、比較的若い世代が多いという特徴があります。
若い方たちの中には、体調不良が生じてもすぐに来院せず、
3ヶ月以上も経過して、やっと来られる方も少なくありません。
症状で多いものの代表は腹痛です。
腹痛が3ヶ月間続いている場合に、まず確認するのは腹痛の頻度です。
過去3カ月間、平均して少なくとも週に1回以上起こしている場合には、
その段階で過敏性腸症候群(IBS)を疑います。
次に、①腹痛と排便が関係するか、②腹痛により排便頻度に変化があったか、
③腹痛により便形状(外観)に変化を伴ったかどうかを尋ねます。
この3項目のうち2項目以上が認められれば、過敏性腸症候群(IBS)と診断します。
以上は、Rome Ⅳ基準(2016)という過敏性腸症候群の診断基準の骨子です。
腹痛の他、下痢、便秘、腹鳴などの機能的障害がみられることがあります。
治療は第1段階から第3段階まであります。
第1段階は、過敏性腸症候群(IBS)の患者さんを日常的に診療する
一般医や消化器内科専門医が担当しています。
このIBSを便の形状(硬便・兎糞状便~軟便・水様便)の割合から
下痢型、便秘型、混合型/分類不能型に分類します。
もし、便の形状について問診を受けなかったとしたら、そのドクターはIBSに関して、
余り専門的な知識を持っていないのではないかと思います。
この分類がIBS診療で重要なのは、便性状が、排便回数より、大腸通過時間を良く反映するからです。
第2段階は、消化器内科専門医等による消化管主体の治療が無効だったことを踏まえて、
中枢機能の調整を含む治療経験のある総合病院の消化器科、心療内科、総合内科での治療とされます。
ここでは、第1段階の薬物治療との併用も可能です。
第3段階では、薬物治療が無効であることを踏まえ、心理療法を行います。
消化管機能あるいは心身医学の専門医がいる施設での治療戦略です。
心理療法には弛緩法、催眠療法、認知行動療法などがあります。
高円寺南診療所では、第1段階から第3段階に至るまでの一切を担当しています。
心身医学や心療内科の最大の欠点は、薬物療法で治療効果を発揮できない場合に、
ただちに心理療法を検討することにあります。
これは、心身医療や心療内科の発祥であるドイツでも同じです。
<神経症や精神病でない心身症の患者に、心理療法を施すのは誤り>であると、
心身医学専門医であり心療内科専門医である医学博士が指摘することは、問題があるでしょうか。
私はそうではないと考えています。非薬物療法すなわち心理療法ではないからです。
心身症の患者さんには心身医学療法こそが進められるべきです。
真の心身医学療法とは、身体活動や運動訓練を伴うものであると考えているからです。
しかし、実際に心理療法もどきの技法を心身医学療法にすり替えていることこそが、
心身医学の矛盾であり弱点であると考えています。
心身医学療法は心身医学の専門医みずから新たにデザインすべきではないかと考えます。
その考えを実践したのが水氣道®であり臨床声楽法(聖楽院)なのです。
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