呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

テーマ:成人予防接種のガイダンス

 

 

<2016年改訂版>

 

【1】一般に推奨される予防接種

 

1)肺炎球菌ワクチン

 

対象者:65歳以上の高齢者

 

PPSV23(ニューモバックスNP):2歳以上65歳未満のハイリスク者

 

PCV13(プレべナー13):2カ月以上6歳未満の小児

 

 

2)インフルエンザワクチン

 

対象者:任意接種

 

一般には、インフルエンザワクチンは接種後2週目から効果がみられ、

 

半年程度は効果が持続するとされていますので、

 

高円寺南診療所では11月末までに接種を完了するようにしています。

 

 

3)麻疹(はしか)・風疹ワクチン

 

<風疹>風疹は20~40歳代の男性が60%(2012年)を占めたという報告や、

 

30~50歳前半の男性の20%は風疹に対する抗体がないことから、

 

これまでに風疹の罹患歴のない、あるいは風疹の予防接種を受けたことがない成人では、

 

MRワクチンの摂取が推奨されます。

 

なお、成人女性の場合は、妊娠していない時期にワクチン接種を行いますが、

 

その後、2カ月間の避妊が必要です。

 

 

<麻疹>最近の成人麻疹患者の大半は、

 

麻疹ワクチン未接種、麻疹の既往がなかったとされ、

 

小児例と比較して、脳炎、ADEMなどの中枢神経合併症が多く報告されています。

 

麻疹の罹患歴がなく、麻疹ワクチンの接種歴がない成人には

 

MRワクチンの接種が進められます。

 

ただし、妊娠している人、免疫機能に異常がある人、

 

免疫抑制薬による治療を受けている人などは摂取禁忌です。

 

 

【2】特定の集団、機会に推奨される予防接種

 

1)高齢者への予防接種

 

実際に、平成26(2014)年10月から、

 

高齢者の肺炎球菌感染症が定期の予防接種を行うB類疾病として

 

予防接種法により定められました。

 

それに基づき、成人用のPPSV23(ニューモバックスNP)

 

65歳以上の高齢者を対象に5歳刻みで公費助成のもと接種される体制が整いました。

 

高齢者ではインフルエンザワクチンの接種とともに、

 

肺炎球菌ワクチンを併用摂取することが推奨されます。

 

2)職業感染対策としての予防接種

 

医療関係者に主唱されるワクチンは、B型肝炎、

 

インフルエンザ、麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎などがあります。

 

また、救急救命士、消防士、警察官、高齢者施設職員、

 

小学校・幼稚園教員、保育士などは

 

職業感染対策としての予防接種が望ましいとされています。

 

 

3)海外渡航時の予防接種

 

以下の3群に分類できます。

 

①麻疹や水痘などみずからの感染予防のみならず、周囲への感染を防止するため、主に小児期より定期接種するもの

 

②黄熱のように、入国時などに予防接種証明書を要求されることがあるもの

 

③A型肝炎、狂犬病など渡航先で流行している感染症で、我が国では存在しないか、感染する危険性が少ない病気を予防するという個人防衛によって接種回数、効果の持続期間が異なるので、常に記録は怠らず、次回の接種はいつ行うかをしっておくことが必要です。

 

 

【3】最近臨床応用された予防接種

 

帯状疱疹ワクチン

米国では、水痘ワクチン(VARIVAX®)と帯状疱疹ワクチン(ZOSTAVAX®)が使い分けられ、

 

50歳を超えたらZOSTAVAX®を定期的に予防接種します。

 

そのZOSTAVAX®は、水疱瘡ワクチンを元にして製造されています。

 

海外の大規模な臨床試験では、ZOSTAVAX®は帯状疱疹の予防効果を認めています。

 

なお、日本ではZOSTAVAX®は発売されていません。

 

そのかわりに子供用の水疱瘡ワクチン<乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」®>

 

帯状疱疹ワクチンとして予防接種することが、

 

2016年3月18日から認められています。

 

消化器系の病気

 

テーマ:口内炎

 

口内炎(こうないえん)とは、口の中や舌の粘膜に起きる炎症症候の一つです。

 

見た目からは「カタル性口内炎」、「アフタ性口内炎」、「潰瘍性口内炎」に分類される。

 

また痛みの有無から有痛性口内炎無痛性口内炎に分類されます。

 

 

症状:代表的な「アフタ性口内炎」は口内粘膜に直径5ミリ程度の灰白色斑(アフタ)をつくり痛みを伴います。

 

通常は一週間程度で自然に完治するが、複数箇所に口内炎が発症する重度のものでは

 

痛みのため摂食不能になりやすいです。

 

また、口の中が清潔でない場合は口内炎の発症時に口臭を伴うことがあり、

 

悪化すると滲み出るように出血します。

 

 

診断:鑑別診断が必要です。基礎疾患が疑われる場合はその検査が必要です。

 

アレルギー内科やリウマチ(膠原病)内科の専門医のように、

 

全身を診る内科医であれば、無痛性口内炎は全身性エリテマトーデスを疑います。

 

有痛性口内炎ではベーチェット病の可能性があり、

 

専門医でなければ、アフタ性口内炎等との区別は難しいです。

 

 

原因

① アラキドン酸代謝作用亢進・・・再発性アフタ性口内炎(最も多い)

 

② 細菌・ウイルス感染・・・感染性口内炎

 

現在のところメカニズムについては正確には分かっていない。

 

免疫学的異常が関わっているのではないかという有力説もあります。

 

免疫が関与するということは、自律神経やホルモンバランスも

 

重要な因子であることが示唆されます。

 

高円寺南診療所では、再発性の口内炎に対しては、

 

栄養食事管理、運動指導、ストレスマネジメントが必要だと考えています。

 

〇偏食による鉄分やビタミンの不足

 

〇ストレスや睡眠不足

 

〇不正咬合や、歯ブラシなどによる粘膜への物理的刺激(口内を噛むなど)

 

〇唾液の不足、口腔の乾燥

 

〇口腔内の不衛生、プラーク(入れ歯かす)の付着した入れ歯の装着

 

歯磨き粉成分による粘膜の損傷(ラウリル硫酸ナトリウムなど)

 

また、口内炎になりやすい体質の人(食物アレルギーの人や粘膜の薄い人)もいる。

 

さらに、ビタミン欠乏症の症状として口内炎が現れることもある。

 

 

 

治療:歯科・口腔外科・耳鼻咽喉科・皮膚科の他に一般内科を受診する方が多いものと思われます。

 

ただし、口内炎は、全身的疾患に起因することがあるので、

 

アレルギー内科・リウマチ膠原病内科などの専門科による治療が必要です。

 

 

高円寺南診療所では、まず生活リズムや生活習慣を確認することからはじめます。

 

ストレスに過敏に反応する方、アレルギー体質の方、食生活に偏りがある方に多く見出されます。

 

 

高円寺南診療所では、再発性の口内炎の相談が多いので、

 

生活・食事指導のあと、①ビタミン剤、②漢方薬、③その他の局所治療(軟膏・パッチ)の順に治療を重ねていきます。

 

全身管理をアドバイスしないと、再発しがちだからです。

 

 

ビタミン剤:ビタミンBの不足が原因の口内炎を治療するときに用いられます。

 

主に内服薬として処方するが、注射や点滴などを用いて投与する場合もあります。

 

アフタ性口内炎の場合、ビタミンB12療法がシンプルで安価で低リスクであるというエビデンスがあります。

 

 

漢方薬:安中散、半夏瀉心湯、立効酸、黄連湯などが用いられます。

 

 

軟膏:ステロイド、もしくは抗炎症薬を含む軟膏を患部に塗布する方法。

 

アフタの部分を物理的刺激から軟膏の基剤で保護する意味もあります。

 

 

パッチ(貼り薬):患部に、軟膏と同じく抗炎症薬を含んだパッチを貼る方法。

 

軟膏と同様、アフタの保護も期待できます。

 

 

その他:上記にあげた治療法以外にも患部の洗浄やトローチなどを用いた治療法

第114回日本内科学会講演会に参加して(その5)

 

(4月14~16日:東京国際フォーラム)

 

テーマ:超世代の内科学-GeneraltyとSpecialtyの先へ-

 

招請講演<呼吸不全:病態生理学から分子病態学へ>

 

巽 浩一郎(千葉大医学研究院・呼吸器内科学)氏の公演を聴いて(その1)

 

 

高円寺南診療所では、さまざまな呼吸不全を扱っていますが、在宅酸素療法の経験は僅かです。

 

その理由は、呼吸不全にならないように患者の皆様と共に工夫と努力を続けているからだと思います。

 

 

そもそも呼吸不全とは、多くの慢性呼吸器疾患ばかりでなく、

 

心臓や血管の病気、神経や筋肉の病気などの終末像であるという理解が大切です。

 

高円寺南診療所では、禁煙の重要性を強調し続けています。

 

その他、概ね3か月に1回、定期的にフィットネス・チェック(体組成・体力テスト)を行い、

 

症状出現に至るより前に、リスクを明確にして、患者の皆様にフィードバックしております。

 

その結果を上手に活用して、日常生活の見直しやトレーニングに役立てていただいております。

 

 

それでは、呼吸不全とは、どのような状態を指すのでしょうか。

 

在宅酸素療法は保険適用となる治療法ですが、保険が使えるための諸条件があります。

 

1)高度慢性呼吸不全

動脈血酸素分圧が55mmHg以下、あるいは睡眠時または運動負荷時に

 

著しい低酸素血症を来す場合は動脈血酸素分圧が60mmHg以下

 

 

2)肺高血圧症

 

 

3)慢性心不全:ニューヨーク心臓協会(NYHA)の基準でⅢ度以上、

 

睡眠ポリグラフィーで睡眠時のチェイン・ストークス呼吸がみられ、

 

無呼吸低呼吸指数が20以上であること。

 

高度な身体活動の制限がある。安静時には無症状。

 

NYHA基準でⅢ度の慢性心不全とは、日常的な身体活動以下の労作で

 

疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じるレベルです。

 

4)チアノーゼ型先天性心疾患

 

 

高円寺南診療所の診察室で、

 

指でチェックできるパルスオキシメーター®による

 

経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2%)チェックを受けたことのある方は

 

少なくないと思います。

 

これは超音波の原理で計測するので痛くないのがメリットです。

 

動脈血酸素飽和度(SpO2)のデータは飽和度ですから%表示です。

 

外来でふつう観察できるのは90~98%の間がほとんどです。

 

慢性呼吸不全が疑われる動脈血酸素分圧(PaO₂)60mmHgは、

 

SpO₂では90%に相当します。動脈血酸素分圧(PaO₂)55mmHgは, SpO₂では88%です。

 

 

呼吸の状態が不自然なので打・聴診し、呼吸雑音を調巣したので、

 

まずパルスオキシメーター®でチェックしたところSpO₂90%という初診の方を最近経験しました。

 

胸部のレントゲン検査をして肺の陰影があり、東京警察病院の呼吸器科に紹介しました。

 

それまで、ご本人は呼吸苦を訴えておりませんでした。

 

患者さんの自覚症状は重要ですが、それだけでは病気を見落としてしまいがちです。

 

とくに、慢性の病気、とくに慢性呼吸不全の患者さんにはその傾向があり、

 

注意を要します。

血液・造血器の病気

 

テーマ:鉄欠乏性貧血

 

<見落とされやすい鉄欠乏性貧血>

 

わが国では、妊娠可能女性の約25%で鉄欠乏性貧血がみられると推測されます。

 

原因の約80%は、鉄の過剰喪失によります。

 

重要なのは子宮筋腫、過多月経、消化器がん、痔など慢性失血を見落とさず、しっかり治療することです。

 

 

鉄欠乏性貧血は、鉄欠乏により骨髄でのヘモグロビン合成が障害される小球性低色素性貧血です。

 

ヘモグロビン不足を補うため骨髄は過形成になります。

 

 

鉄欠乏性貧血では、小球性低色素性貧血で、網状赤血球も減少します。

 

顕微鏡で観察すると、赤血球の大小不同で赤味が薄い赤血球を認めます。

 

画像1

図1.鉄欠乏性貧血の赤血球像

赤い円盤状の細胞が赤血球です

楕円形や涙の形、変形した赤血球

もみられます。赤みの程度も様々です。

 

 

画像2

図2.いろいろな形の赤血球像

   正常赤血球と小球性赤血球を比べてみましょう。

   鉄欠乏性貧血の患者さんの赤血球は小球性です。

 

 

小球性低色素性貧血に、舌炎、口角炎、嚥下障害が合併することがあります。

 

そのような場合は、プランマー・ヴィンソン症候群といいます。

 

 

検査:

鉄欠乏性貧血では、血清鉄(Fe)は低値となり、総鉄結合能(TIBC)が上昇し、血清フェリチンは低下します。

 

ただし、鉄欠乏性貧血であっても、悪性腫瘍や慢性膵炎、感染などが合併していると、

 

それだけでフェリチンは上昇するので、しっかりと鑑別することが必要です。

 

血清鉄とTIBCが共に低値となるのは二次性貧血、とりわけ、慢性疾患に伴う貧血が疑われます。

 

二次性貧血では、慢性疾患による貧血でも血清鉄の低下がみられます。

 

しかし、網内系に鉄が取り込まれる結果、血清鉄は低下しますが、

 

貯蔵鉄は増えるのでフェリチンが増加します。

 

 

治療:

貧血の程度が強い時は無症状でも鉄剤投与を行います。

 

経口投与では吸収されやすい反面、胃腸症状の副作用が生じる場合があります。

 

その場合は静脈注射を行いますが、赤血球輸血は、特別な場合が無ければ行いません。

 

 

ただし見落とされやすい慢性炎症による貧血では、血清鉄は低下しているが、

 

鉄の利用障害なので、鉄剤を投与しても効果は期待できません。

 

その場合は、原因となる炎症そのものに対する治療が優先されます。

 

 

 

高円寺南診療所での実際の症例を提示します。

 

 

症例:A.K 46歳女 (鉄欠乏性貧血に対して経口鉄剤投与中)

 

治療前は、全身倦怠感、めまい、易疲労感、頭痛、顔色不良、動悸、息切れがありましたが、

 

婦人科治療の他に、鉄剤補給、プラセンタ注射、水氣道®参加などにより、現在はすべて解決しました。

 

 

基本データの推移(2008年⒓月9日⇒2017年6月5日)

 

○血清ヘモグロビン(Hb)8.8 ⇒ 12.2g/ dL(基準値:≧12g/ dL)

…高度の貧血からであり、ギリギリ正常へ

 

MCV(平均赤血球容積)77 ⇒ 100fL(基準値:80~100fL)

…小球性から正常上限、ギリギリ正球性、大球性の傾向

 

MCHC(平均赤血球血色素濃度)28.1 ⇒ 32.2%(基準値:31~35%)

…低色素性から正色素性へ

 

赤血球形態 大小不同あり、奇形赤血球あり、低色素 ⇒ 大小不同なし

網状赤血球28.1 ⇒ 26 0/oo…(基準値:2~27 0/oo)

…骨髄過形成傾向

 

血清鉄 ⒓ ⇒ 353μg / dL(基準値:90~150μg / dL)

… 極端な低値から高値へ

 

○総鉄結合能TIBC 498 ⇒ 398μg / dL (基準値:<360μg /dL)

… 貧血のない鉄欠乏状態

 

○血清フェリチン 1.5 ⇒13.0 ng / mL(基準値:≧12 ng / mL)

… 極端な低値からギリギリ正常へ

 

分析:貧血そのものは顕著に改善しています。

 

これは、経口鉄剤の効果というよりは、婦人科疾患に対する治療による効果であると考えます。

 

まだ若干ながら鉄欠乏状態傾向です。

 

 

  MCVが高値傾向なのは赤血球より大きなサイズである

 

網状赤血球の数が増えているためだと考えられます。

 

慢性炎症による貧血の所見(血清鉄低下、血清フェリチン増加など)にも該当していません。

 

 

鉄剤はいつまで続ければよいのか?

 

鉄剤の投与で血色素(ヘモグロビン:Hb)が正常化した時点で中止してはいけません!

 

その理由は、貧血の改善経過を理解しておくとわかりやすいです。

 

鉄剤を投与してから、貧血が改善していく過程では、

 

血清鉄⇒網赤血球⇒血清Hb⇒血清フェリチン

 

の順に回復します。

 

つまり、最終的には血清フェリチンの回復を確認する必要があります。

 

 

この症例では、血清フェリチンが正常に達したので、

 

鉄剤の補給は終了できる段階になってきたといえるでしょう。

 

ただし、子宮病変とともに過多月経があり、

 

月経過多などによる失血性の貧血では網状赤血球が増加します。

 

 

鉄剤投与中止後の鉄分は、肉、魚、内臓【レバー】、穀類、緑黄色野菜に多いです。

 

特に、肉、魚から接種できる動物性の鉄分がヘム鉄であり、

 

植物性の成分である非ヘム鉄よりも吸収率が5倍ほど高いです。

 

中毒・物理的原因による疾患、救急医学

 

テーマ:口の乾き

 

口腔乾燥症状改善薬サラジェン®(ピロカルピン塩酸塩)の功罪

 

高円寺南診療所の日々の臨床の課題は、特異体質の方のサポートをどうすべきか、ということです。

 

特異体質の方は、一般に症状が多彩で、あらゆる症状に対して過剰な反応が現れやすいです。

 

アレルギー体質やリウマチ体質の皆様を多数診させていただいているのは

 

、専門の関係で当然ではあります。

 

しかし、アレルギー体質やリウマチ体質、線維筋痛症などの病気は、

 

症状が全身におよび、心理的、気候や環境的要因が複雑にかかわってきます。

 

しかも、使用するお薬にとても敏感であるため、さじ加減が難しいことが悩みの種です。

 

 

それでも、これらの患者の皆様に、効果的なケアを提供しないと、

 

予期せぬ他科受診による事故を引き起こしかねません。

 

紹介状を持参して受診していただければ良いのですが、

 

中には<お薬手帳>も持参せずに他科を自身した結果、

 

検査薬を含めて薬剤の相互作用が生じることもめずらしくありません。

 

 

本日のテーマであるサラジェン®、この薬は、唾液の分泌を増やすお薬です。

 

シェーグレン症候群などにおける口腔乾燥症状を改善します。

 

このお薬は、唾液分泌促進薬です。唾液腺に働いて唾液の分泌を増やします。

 

この薬のメリットとしては、唾液の分泌がよくなり口内が潤えば、

 

口の違和感や痛み、摂食・会話障害などの口腔乾燥症状も改善されることです。

 

気管支喘息を始めアレルギー体質の方等には禁忌とされる薬ではありますが、

 

現場では、あえて慎重に使用せざるを得ないことがあります。

 

気管支喘息の治療薬ではM3受容体遮断薬

(M3受容体を阻害して気管支ぜんそくに用いる吸入抗コリン薬の総称)

 

の副作用には口渇、散瞳、排尿困難などがあります。

 

気管支喘息の方で口渇がある方は、まず、この薬の処方医と相談することが大切です。

 

 

この病気を治療しないままでおくデメリットは、

 

唾液が減少を続け、口の乾燥感や痛みを生じ、

 

食事や会話など日常生活にも支障があらわれる点です。

 

この状態がさらに長く続けば、カンジダ症虫歯にもなりやすくなります。

 

これは免疫力の低下を意味します。肺炎などの感染症や、諸々の癌に罹り易くなると考えられます。

 

 

以下に、補足的な説明を加えます。

 

 

【薬理】 作用機序からは副交感神経刺激薬 (コリン作動薬)に分類されます。

 

副交感神経系の唾液腺内ムスカリンM3受容体を刺激することにより、唾液の分泌を促進させます。

 

この薬には神経伝達物質のアセチルコリンに近い性質があり、

 

唾液腺以外のいろいろ臓器に影響をおよぼします。

 

そのため、心臓の悪い人、胃腸や膵臓など消化器系あるいは泌尿器系に病気のある人、

 

また、未治療の気管支喘息、てんかん、パーキンソン症状のある人など使用できないことがあります。

 

 

同類のコリン作動薬との併用は、互いに作用を増強します。

 

逆に、抗コリン作用を持つ一部の胃腸薬や安定薬、抗うつ薬と併用すると、

 

効果が打ち消されるおそれがあります。

 

 

【副作用】 重い副作用はまずありません。

 

しかし、以下のような症状で、つらいときは、医師とよく相談してください。

 

一番多いのは、汗が出やすくなることです。

 

ほかに、鼻炎、吐き気、下痢、頻尿、頭痛、ほてり、などもみられます。

 

 

【使用上の注意】

 

〇指示された用法用量どおりに、正しくお飲みください。

 

ふつう、1日3回、毎食後に飲みます。空腹時は避け、食後30分以内に服用しましょう。

 

〇高円寺南診療所の方針としては、安全性確保のため、

 

この薬を最初から1日3回ではなく、1日2回以下から開始しています。

 

期待する効果より、不快な症状が優っていれば、早期に中止していただきます。

 

なお、この種の薬は、すぐによい効果がでるとは限りません。

 

3か月程度続けて効果が無ければ中止しています。

 

神経・精神・運動器

 

テーマ:抗てんかん薬の処方について

 

<抗てんかん薬はどのように使われているか?>

 

高円寺南診療所で、抗てんかん薬を処方している患者さんのほとんどは、

 

双極性障害、線維筋痛症、片頭痛、三叉神経痛の方であり、

 

てんかんの治療目的のみの方は少ないです。

 

 

ただし、双極性障害の方でてんかん気質の方は少なくありません。

 

そのような場合は、てんかんと双極性障害の双方に有効な抗てんかん薬を使用しています。

 

その代表が、バルプロ酸(デパケン®)、カルバマゼピン、ラモトリギン(ラミクタール®)です。

 

また、バルプロ酸はてんかんと片頭痛の両方の予防薬ですが、

 

体重増加を来すことがあります。

 

 

これに対してトピラマート(トピナ®)は

 

体重減少を来す傾向があるため、肥満の方にはこれを使います。

 

 

 

てんかんとは、慢性脳疾患の一つです。

 

大脳神経細胞の過剰発射(神経生理学的な興奮)の結果

 

生じる反復性発作(てんかん発作)を主徴とします。

 

 

てんかん発作は、慢性反復性の発作であり、

 

慢性非誘発性発作とも呼ばれることがあり、病因として急性疾患は除外されています。

 

これに対して、中枢神経系を侵襲する急性疾患あるいは代謝障害によって生じる発作は

 

急性症候性発作と呼ばれますがてんかんには含まれません。

 

 

てんかんの症状はてんかんの発作によって、

 

意識障害、痙攣(けいれん)、神経症状、自律神経症状、精神症状などが一過性に生じます。

 

 

 

<発作型の分類>

 

発作は部分発作と全般発作に二大別します。

 

部分発作とは、発作が一側大脳半球の一部から始まるものです。

 

〇単純部分発作:内側側頭葉由来の前兆として、未視感・既視感

 

〇複雑部分発作:側頭葉を中心に発作間歇期にspike & waveを認めます。

 

側頭葉てんかんは、意識障害を伴う自動症を呈することが多い複雑部分発作の一病型です。

 

やはり側頭葉を中心にspike & waveがみられます。

 

〇二次性全般化発作:カルバマゼピン

 

 

全般発作:バルプロ酸、クロナゼパムが推奨されています。

 

〇欠神発作:脳波は全般性の3Hz棘徐波複合です。

 

バルプロ酸、エトスクシミドを処方します。

 

〇強直間代性発作:口腔内泡沫、流延。フェニトイン、バルプロ酸が用いられます。

 

 

てんかんの約70%は抗てんかん薬で発作が抑制され、

 

難治(薬剤抵抗性)てんかんは10~20%とされます。

 

注意しなければならない抗てんかん薬は、前述のバルプロ酸です。

 

これはカルバペネム系抗生物質との併用は禁忌です。

 

また女性で挙児希望があればバルプロ酸は避け、

 

ラモトリギン、レベチラセタム(イーケプラ®)に変更し、葉酸の投与が推奨されます。

 

さらに高齢者の有病率1%とされる高齢者てんかんは、

 

高齢で初発するてんかんで、その90%以上は部分てんかんです。

 

これには発作型は複雑部分発作、二次性全般化強直間代発作が多いです。

 

てんかん分類では、側頭葉てんかんが最多です。

 

側頭葉てんかんの前兆としては、上腹部不快感や既視感が知られています。

 

部分発作であれば、ラモトリギン、レベチラセタム、ガバペンチン(ガバペン®)を用います。

 

もう少しツボの世界を見ていきましょう。

 

 

今回は「足の三里(あしのさんり)」です。

 

IMG_1871

 

場所は膝の骨と靭帯との間の外側の窪みを探しそこから指4本下にあります。

 

 

 

「胃腸炎」「胃下垂」「消化不良」「高血圧」「気管支炎」「気管支喘息」等に効果があります。

 

 

 

このツボを刺激すると胃の動きが確認できるそうです。

 

 

 

胃の調子が良くない人はこのツボを刺激してみてください。

 

 

 

<参考文献>

このツボが効く 先人に学ぶ75名穴       谷田伸治 

 

 

経穴マップ イラストで学ぶ十四経穴・奇穴・耳穴・頭鍼      監修  森 和

                                      著者  王 暁明・金原正幸・中澤寛元 

 

 

 

高円寺南診療所 統合医療部 漢方鍼灸医学科 鍼灸師 坂本光昭

内分泌・代謝・栄養の病気

 

テーマ:潜在性甲状腺機能低下症

 

<内科医も精神科医も、ともに見落としやすい病気?>

 

甲状腺機能低下症は、体内臓器・組織での甲状腺ホルモン作用が需要に満たない状態です。

 

甲状腺機能低下は、一般臨床において見逃されやすい病態の一つです。

 

高円寺南診療所では、身体と精神の両面にわたる診療を行っていて、

 

院長自らが声楽家活動も続けているためか、甲状腺機能低下症にとどまらず、

 

潜在性甲状腺機能低下症の患者さんを多数発見しています。

 

<それでは、甲状腺機能低下症から説明します。>

 

まずは、全身症状としての、寒がり・低体温、嗄声(かすれ声)について、

 

患者さん本人が病気の症状として、どれだけ意識しているか、ということが最初のカギになります。

 

 

次に、易疲労感(疲れやすく、根気がない)、全身倦怠感、体重増加などを身体症状と受け止めるのか、

 

精神症状と受け止めるかということも重要です。

 

体重増加は、蛋白異化が低下し、皮下組織に多糖体が沈着し、水を引き込むために生じます。

 

心身医学的な立場から診療する医師にとっては、大切な課題になっています。

 

精神症状として、無気力、精神活動の鈍麻、

 

動作緩慢・活動性低下、記憶力・計算力の低下、眠気を来すことがあります。

 

一般の内科医は、こうした症状をどれだけきちんと評価できるでしょうか、難しい問題です。

 

 

以上の情報を部分的に得るだけだと、内科では「冷え性」、

 

高齢者では「認知症」、精神科では「うつ状態、うつ病」あるいは

 

「統合失調症の初期」という診断を受けてしまうことがあります。

 

 

もっとも、「冷え性」と「うつ状態」はあながち全くの誤診とは言えませんが、

 

原因を見逃していることには変わりありません。

 

 

皮膚症状をきちんと診察する内科医であれば、

 

顔面、四肢に圧痕を残さない浮腫(粘液水腫)がみられ、

 

発汗減少、皮膚乾燥・粗造(乾燥して肥厚して荒れる)、

 

頭髪脱毛、カロテンの沈着による皮膚の黄染などは見逃しません。

 

また、鼻粘膜の浮腫により口呼吸となり、風邪をひきやすく、

 

また声帯の浮腫により声が枯れやすくなることもあります。

 

アレルギーの専門医は皮膚や粘膜をきちんと診察する習慣があるので見落としは少ないはずです。

 

 

その他、正しい診断のためには、

 

消化器症状(食欲低下、腸管運動は弛緩性を示し、

 

便秘を来す、ただし、緊張が続くと下痢;舌肥大)、

 

循環器症状(息切れ;低血圧、徐脈、粘液水腫心;心音は減弱し、

 

心電図では、低電位、T波の平低・陰性化がみられる。

 

心嚢水貯留などにより、胸部エックス線では左右に心拡大し、

 

粘液水腫心を示す。)、

 

 

神経筋症状(筋肉痛、こむら返り;筋力低下、筋肥大、反射運動は遅延する。

 

特にアキレス腱反射の弛緩相が延長する;筋細胞の破壊により、

 

血清CK、LDH,ASTの上昇がみられる)。

 

 

骨代謝が滞り、骨年齢が遅延する。

 

代謝系:胆汁排泄遅延により、高コレステロール血症となる。

 

腎臓系:水利尿不全により、低ナトリウム血症をきたす。

 

血液系:成人では大球性正色素性貧血を呈することが多い。

 

 

検査:T4の低値とTSHの上昇があれば、診断は確定します。

 

原発性の甲状腺期の低下症は、TSHの軽度上昇からはじまる。

 

 

合併症:

甲状腺機能低下では、TRH増加に伴い、

 

プロラクチン分泌が刺激されるために、高プロラクチン血症がみられます。

 

甲状腺自己抗体がしばしば証明されます。

 

 

原因が橋本病であれば、抗ミクロゾーム抗体が高率に高値で検出されます。

 

 

治療:薬物治療を開始する前に心電図検査を行う。

 

甲状腺ホルモンは心機能亢進に働くため少量より開始する。

 

 

 

潜在性甲状腺機能低下症

 

F4が基準範囲内であるが、TSHが基準値上限を超えるものです。

 

症状の乏しい無症候性のものが多いとされていますが、

 

患者さん本人が気にしていない、あるいは気にしないようにしているケースも多数経験します。

 

しかし、甲状腺ホルモン不足は軽微であっても将来様々な障害を伴う可能性があります。

 

そこで、TSHが10μU /mlを超える持続性の潜在性甲状腺機能低下症では、

 

甲状腺ホルモン補充療法を行うことが推奨されています。

 

<第4ステップ> その1

 

「自分にどれだけの解決能力があるか」が判断できたら、

 

次は「人に助けを求めるかを決める」段階に入ります。

 

この段階での前提として大切なことは、気づきです。

 

たとえば、以下のような気づきです。

 

〇「自分は問題を抱えている」

 

〇「しんどいな」

 

〇「これは重大だな」

 

〇「一人では解決が難しいな」

 

しかし、人はそれでも助けを求めない場合があります。

 

それは<HELP!力>第3回~第9回で上げた数々の理由が存在するからです。

 

 

私が行った研究(宮仕, 2010)では、悩みが深刻である時に、

 

助けを求めよう(あるいは、求めまい)という意思決定が起こるのではない、ということがわかりました。

 

 

そうではなく、「自己スティグマ」が助けを求める妨げとなるというものでした。

 

つまり、「こんな自分は周囲に受け入れられないというレッテルを自分自身に貼ってしまうこと」が

 

「自尊心や自己評価が下がること」に繋がります。

 

その時こそが助けを求めることをためらってしまうプロセスを形成し始める、

 

という結果が得られました。

 

 

この研究結果は、臨床心理士として、

 

とりわけ認知行動療法を専門とする私の考え方を支える大きな柱の一つになったように思います。

 

 

* 参考文献: 太田仁,2005,「たすけを求める心と行動」,金子書房

 

ストレス対処 MIYAJI 心理相談室(高円寺南診療所内)

 

主任 臨床心理士 宮仕 聖子