日々の臨床 6月29日木曜日<成人予防接種のガイダンス>

 

呼吸器 / 感染症 / 免疫・アレルギー・膠原病

 

テーマ:成人予防接種のガイダンス

 

 

<2016年改訂版>

 

【1】一般に推奨される予防接種

 

1)肺炎球菌ワクチン

 

対象者:65歳以上の高齢者

 

PPSV23(ニューモバックスNP):2歳以上65歳未満のハイリスク者

 

PCV13(プレべナー13):2カ月以上6歳未満の小児

 

 

2)インフルエンザワクチン

 

対象者:任意接種

 

一般には、インフルエンザワクチンは接種後2週目から効果がみられ、

 

半年程度は効果が持続するとされていますので、

 

高円寺南診療所では11月末までに接種を完了するようにしています。

 

 

3)麻疹(はしか)・風疹ワクチン

 

<風疹>風疹は20~40歳代の男性が60%(2012年)を占めたという報告や、

 

30~50歳前半の男性の20%は風疹に対する抗体がないことから、

 

これまでに風疹の罹患歴のない、あるいは風疹の予防接種を受けたことがない成人では、

 

MRワクチンの摂取が推奨されます。

 

なお、成人女性の場合は、妊娠していない時期にワクチン接種を行いますが、

 

その後、2カ月間の避妊が必要です。

 

 

<麻疹>最近の成人麻疹患者の大半は、

 

麻疹ワクチン未接種、麻疹の既往がなかったとされ、

 

小児例と比較して、脳炎、ADEMなどの中枢神経合併症が多く報告されています。

 

麻疹の罹患歴がなく、麻疹ワクチンの接種歴がない成人には

 

MRワクチンの接種が進められます。

 

ただし、妊娠している人、免疫機能に異常がある人、

 

免疫抑制薬による治療を受けている人などは摂取禁忌です。

 

 

【2】特定の集団、機会に推奨される予防接種

 

1)高齢者への予防接種

 

実際に、平成26(2014)年10月から、

 

高齢者の肺炎球菌感染症が定期の予防接種を行うB類疾病として

 

予防接種法により定められました。

 

それに基づき、成人用のPPSV23(ニューモバックスNP)

 

65歳以上の高齢者を対象に5歳刻みで公費助成のもと接種される体制が整いました。

 

高齢者ではインフルエンザワクチンの接種とともに、

 

肺炎球菌ワクチンを併用摂取することが推奨されます。

 

2)職業感染対策としての予防接種

 

医療関係者に主唱されるワクチンは、B型肝炎、

 

インフルエンザ、麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎などがあります。

 

また、救急救命士、消防士、警察官、高齢者施設職員、

 

小学校・幼稚園教員、保育士などは

 

職業感染対策としての予防接種が望ましいとされています。

 

 

3)海外渡航時の予防接種

 

以下の3群に分類できます。

 

①麻疹や水痘などみずからの感染予防のみならず、周囲への感染を防止するため、主に小児期より定期接種するもの

 

②黄熱のように、入国時などに予防接種証明書を要求されることがあるもの

 

③A型肝炎、狂犬病など渡航先で流行している感染症で、我が国では存在しないか、感染する危険性が少ない病気を予防するという個人防衛によって接種回数、効果の持続期間が異なるので、常に記録は怠らず、次回の接種はいつ行うかをしっておくことが必要です。

 

 

【3】最近臨床応用された予防接種

 

帯状疱疹ワクチン

米国では、水痘ワクチン(VARIVAX®)と帯状疱疹ワクチン(ZOSTAVAX®)が使い分けられ、

 

50歳を超えたらZOSTAVAX®を定期的に予防接種します。

 

そのZOSTAVAX®は、水疱瘡ワクチンを元にして製造されています。

 

海外の大規模な臨床試験では、ZOSTAVAX®は帯状疱疹の予防効果を認めています。

 

なお、日本ではZOSTAVAX®は発売されていません。

 

そのかわりに子供用の水疱瘡ワクチン<乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」®>

 

帯状疱疹ワクチンとして予防接種することが、

 

2016年3月18日から認められています。