診察室から 6月27日

第114回日本内科学会講演会に参加して(その5)

 

(4月14~16日:東京国際フォーラム)

 

テーマ:超世代の内科学-GeneraltyとSpecialtyの先へ-

 

招請講演<呼吸不全:病態生理学から分子病態学へ>

 

巽 浩一郎(千葉大医学研究院・呼吸器内科学)氏の公演を聴いて(その1)

 

 

高円寺南診療所では、さまざまな呼吸不全を扱っていますが、在宅酸素療法の経験は僅かです。

 

その理由は、呼吸不全にならないように患者の皆様と共に工夫と努力を続けているからだと思います。

 

 

そもそも呼吸不全とは、多くの慢性呼吸器疾患ばかりでなく、

 

心臓や血管の病気、神経や筋肉の病気などの終末像であるという理解が大切です。

 

高円寺南診療所では、禁煙の重要性を強調し続けています。

 

その他、概ね3か月に1回、定期的にフィットネス・チェック(体組成・体力テスト)を行い、

 

症状出現に至るより前に、リスクを明確にして、患者の皆様にフィードバックしております。

 

その結果を上手に活用して、日常生活の見直しやトレーニングに役立てていただいております。

 

 

それでは、呼吸不全とは、どのような状態を指すのでしょうか。

 

在宅酸素療法は保険適用となる治療法ですが、保険が使えるための諸条件があります。

 

1)高度慢性呼吸不全

動脈血酸素分圧が55mmHg以下、あるいは睡眠時または運動負荷時に

 

著しい低酸素血症を来す場合は動脈血酸素分圧が60mmHg以下

 

 

2)肺高血圧症

 

 

3)慢性心不全:ニューヨーク心臓協会(NYHA)の基準でⅢ度以上、

 

睡眠ポリグラフィーで睡眠時のチェイン・ストークス呼吸がみられ、

 

無呼吸低呼吸指数が20以上であること。

 

高度な身体活動の制限がある。安静時には無症状。

 

NYHA基準でⅢ度の慢性心不全とは、日常的な身体活動以下の労作で

 

疲労、動悸、呼吸困難あるいは狭心痛を生じるレベルです。

 

4)チアノーゼ型先天性心疾患

 

 

高円寺南診療所の診察室で、

 

指でチェックできるパルスオキシメーター®による

 

経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2%)チェックを受けたことのある方は

 

少なくないと思います。

 

これは超音波の原理で計測するので痛くないのがメリットです。

 

動脈血酸素飽和度(SpO2)のデータは飽和度ですから%表示です。

 

外来でふつう観察できるのは90~98%の間がほとんどです。

 

慢性呼吸不全が疑われる動脈血酸素分圧(PaO₂)60mmHgは、

 

SpO₂では90%に相当します。動脈血酸素分圧(PaO₂)55mmHgは, SpO₂では88%です。

 

 

呼吸の状態が不自然なので打・聴診し、呼吸雑音を調巣したので、

 

まずパルスオキシメーター®でチェックしたところSpO₂90%という初診の方を最近経験しました。

 

胸部のレントゲン検査をして肺の陰影があり、東京警察病院の呼吸器科に紹介しました。

 

それまで、ご本人は呼吸苦を訴えておりませんでした。

 

患者さんの自覚症状は重要ですが、それだけでは病気を見落としてしまいがちです。

 

とくに、慢性の病気、とくに慢性呼吸不全の患者さんにはその傾向があり、

 

注意を要します。