抗菌薬関連腸炎

日本化学療法学会/日本感染症学会合同で作成されたClostridioides(Clostridium)difficile (CD)感染症診療ガイドラインが2018年10月に発表されています。

Clostridium difficileの学術名はClostridioides difficileに変更されました。CDは芽胞を形成するグラム陽性偏性嫌気性桿菌で、抗菌薬投与で正常な腸内細菌叢が抑制され、CD毒性産生株が異常増殖することにより腸炎・下痢症を発症させ抗菌薬関連腸炎の主要な原因菌です。

とくに偽膜性大腸炎の起炎菌として知られますが、偽膜を形成しない場合もあるため、近年ではCD感染症(CDI)と呼ばれます。CDの芽胞は熱、消毒薬への抵抗性が強く、アルコールは無効であり、院内感染が問題となっています。

 

 

CD関連腸炎のリスク因子は、抗菌薬投与、プロトンポンプ阻害薬投与、高齢者、重篤な基礎疾患、免疫抑制状態、手術後、炎症性腸疾患、長期入院などである。 

本邦で増加を続ける医療費が考慮され、海外と本邦で治療に関しての推奨が異なっています。原因抗菌薬を中止するのは共通で、わが国でもCD関連腸炎の再発率が高いことも共通です。わが国では10~20%です。

 

日本では無症状の保菌者も多く、また、軽症例では原因抗菌薬の中止で軽快することもあるため、CD検出症例のすべてが抗菌薬治療の適応となるわけではありません。

バンコマイシンまたはメトロニダゾールの経口投与が基本であり、非重症の初発CDI患者にはメトロニダゾールが推奨されています。塩酸バンコマイシンは通常、0.5~2.0g/日、分4にて1~2週間経口投与します。これらの薬剤は海外では推奨されていません。

なお、欧米では初発CDI 患者の初期治療薬として日本では推奨されていないフィダキソマイシンが推奨されています。欧米では強毒株によるCDIが問題になっていて、また、抗菌薬治療中止後の再発率が高いことも大きな課題です。

近年、難治性CDIに対する糞便移植の高い奏効率が報告され注目されています。

アルコール性肝障害

アルコール性肝障害は、常習飲酒家(エタノール60g/日以上)に発生する肝障害です。これは日本酒換算で3合/日に相当します。わが国の肝硬変の18%を占めます。

男性に多いが、女性はより少量(男性の2/3)で短期間の飲酒で重症化し、肝硬変への進展も早いことが知られています。

 

なおC型慢性肝炎の患者は少量の飲酒でも肝障害が進展しやすくなります。


飲酒に伴う低栄養だけでなく、肥満もアルコール性肝障害進展の危険因子であるため、過栄養に対する注意が必要です。

重症アルコール性肝炎は、連続飲酒発作など過度の飲酒をきっかけに発症し致死率は70%と高率です。

 

アルコールによる肝障害の原因の一つに、アルコールの代謝産物である、肝毒性をもつアセトアルデヒドの蓄積があります。

アセトアルデヒドはアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)により酸化されて無害な酢酸になりますが、日本人の約40%は代謝能の弱いALDH2*2の遺伝子多型を持っています。

この遺伝子をもつひとは、代謝能の高いALDH2*1/*1ホモと比較すると、より少ない飲酒量でも肝障害を呈します。

 

アルコール代謝酵素であるアルコール脱水素酵素(ADH)、チトクロームP450(CYP)2E1は、このALDHとともに、いずれも肝小葉の中心部(Zone3)に優位に存在するため、この領域での肝障害が強く現れます。

この領域は、元来、低酸素状態になりやすいため、微小循環障害や酸素消費の増大によって障害が起こりやすいことが知られています。

 

なお、アルコール性肝障害では、肝臓に過剰な鉄沈着がみられます。その機序は、トランスフェリン受容体の発現亢進およびヘプシジンの発現低下によると考えられています。

血清鉄の結合蛋白であるトランスフェリンとへプシジンは、いずれも肝臓で合成されます。トランスフェリンはトランスフェリン受容体を介して、肝細胞内に鉄を供給、蓄積する一方、へプシジンは腸管細胞における鉄取り込み蛋白であるフェロボルチンの発現を低下させることによって鉄蓄積には抑制的に作用するため、へプシジンの発現低下が鉄蓄積を促進する作用を強めることになります。

 

肝病変のそれぞれの段階に対する治療はウイルス性肝炎の治療と違いはありません。ただし、断酒を含めた生活指導を最優先にします。

便秘症の薬物療法(2)

 

慢性便秘(症)は、大腸がんなどによる器質性狭窄性の原因を鑑別した後、症状のみによって、排便回数減少型と排便困難型に分類します。

 

排便回数減少型において排便回数を厳密に定義する必要がある場合は、週に3回未満です。

しかし、日常臨床では、その数値はあくまで目安であり、排便回数や排便量が少ないために結腸に便が過剰に貯留して腹部膨満感や腹痛などの便秘症状が生じていると思われる場合は、週3回以上の排便回数でも排便回数減少型に分類してよいことになっています。

排便困難型は、排便回数や排便量が十分であるにもかかわらず、排便時に直腸内の糞便量を十分量かつ快適に排出できず、排便困難や不完全排便による残便感を生じる便秘です。

ただし、複数の病態を併せ持つ症例も存在することに留意する必要があります。

 

機能性便秘で腸管弛緩を疑うときには、副交感神経刺激薬のパンテチン、ネオスティグミンなどを用います。

腸管痙攣を疑うときには副交感神経遮断薬のメペンゾラートやチキジウムなどを用います。

 

便秘と下痢を繰り返す過敏性腸症候群(IBS)には、消化管運動調整作用のあるトリメプチンも使いやすい薬です。IBSに伴う便秘は不定愁訴を伴う場合も多く、自律神経調整薬(グランダキシン®)、抗不安薬(セディール®)、抗うつ薬などを併用します。

 

毎回の診察時に、快食・快便・・・ですか?と質問しますが、その場合には、便秘について十分意識してご回答ください。一口に便秘といっても、いろいろな原因があることを説明しましたが、本当に<快便>であるためには、いろいろな条件をクリアしていなければならないことをご理解いただけたでしょうか。

一般的な便秘症の薬物療法の目的と問題点

 

慢性便秘症に用いる下剤には、その機序から、腸管内容の容量を増加させ軟らかくし排泄を容易にするなど物理的に働く機械的下剤と、腸の蠕動を亢進させる刺激性下剤の二つに分けられます。

 

機械性下剤のうち、塩類下剤は習慣性が少なく、長期間の投与も可能であるとされてきました。非吸収性塩類下剤は腸管内に水分を移行させることによって腸管内容を軟化膨大させ、その刺激により便通促進効果を現します。大量の水分とともに服用すると、より効果的です。

 

ただし、塩類下剤も刺激性下剤と同様に長期投与は奨められません。塩類下剤は習慣性が少ないため長期使用されがちですが、マグネシウムを含むものでは高マグネシウム血症を来すことがあり、特に腎障害では注意を要します。また、大腸刺激薬は骨盤内充血を来すので痔疾患患者、骨盤内臓器の炎症、月経、妊娠時には通常禁忌です。授乳中は大黄、アロエ、センノシド(プルゼニド)も慎重に投与されます。

 

また、同じく機械性下剤のうち、膨張性下剤も習慣性はなく、作用が緩徐であり、これは高齢者、痔疾患患者にも使用できます。多量の水分を含んで膨張するため、機能性便秘に有効です。最大効果は2~3日連用後に出現します。ただし、狭窄のある腸疾患では用いません。妊婦には流早産を起こす恐れがあるため慎重投与とされます。

 

 

一般的に、慢性便秘症の第一選択薬としては、酸化マグネシウム、上皮機能変容薬であるルビプロストン(アミティーザ®)などが用いられています。上皮機能変容薬のルビプロストンは、腸役分泌促進という新たな機序の緩下剤です。

 

第二選択薬としては、第一選択薬が無効な時に、大腸刺激薬 (プルゼニド、アローゼンなど)を加えるが、その際には、痔や骨盤内炎症が無いことを確認しなければなりません。アントラキノン系誘導体は、大腸刺激性下剤のうち、センナ、ダイオウ、アロエなどの生薬類に含まれる配糖体であり、小腸より吸収されて血行性に、または直接大腸粘膜を刺激します。アルカリ尿で赤色を呈し、連用すると大腸黒皮症を来すので注意を要します。これらの薬剤は、短期間の使用を原則とします。同一薬剤の長期連用は習慣性を生ずるため種類を変えるか、または作用機序の異なるものを併用します。

 

高齢者や長期臥床者に多い腸管弛緩が疑われる場合は、膨張性下剤、刺激性下剤を用います。また、高齢者、全身衰弱患者、貧血患者、腹部手術後1週間程度の患者には、強力な下剤は控えます。

 

逆に、痙攣性便秘のように大腸の緊張が高まっている腸管痙攣が疑われる場合には、塩類下剤、膨張性下剤、浸潤性下剤のような非刺激性のものがよく、これにオピアド作動薬であり、慢性胃炎における消化器症状や過敏性腸症候群にも適応があるセレキノン®や過敏性腸症候群における便通異常(下痢、便秘)及び消化器症状に適応のあるポリカルボフィルCa(ポリフル®)などを併用します。

 

その他、便秘患者には食後にルビプロストン(アミティーザ®)の他にリナクロチド(リンゼス®)などの懲役分泌を促す薬剤が奨められます。リナクロチドは腸管上皮の表面のグアニル酸シクラーゼC受容体作動薬であり、腸管内への水分分泌を促進して排便を促します。また、大腸の痛覚過敏を改善することにより、腹痛・腹部不快感を改善するため、便秘型過敏性腸症候群に限らず器質性疾患によらない慢性便秘症にも用いられています。

 

胆汁酸トランスポーター阻害薬のエロビキシバット(グーフィス®)は、食前投与薬で、回腸末端上皮の胆汁酸トランスポーターを阻害し、胆汁酸再吸収を抑制し、大腸内の胆汁酸を増加させます。それによって、水分分泌や消化管運動が促進され、便秘治療効果が示されます。腸閉塞またはその疑いがある場合には禁忌となります。

 

直腸性便秘に対して、直腸内で徐々にCO₂を発生して、腸運動を亢進させる新レシカルボンが用いられます。

 

排便リズムの回復を図り、それによって薬剤は漸減、中止します。心因性が強い場合には、自律神経作用薬、抗不安薬、心理療法なども併用します。こうした治療法については、次回で取り上げたいと思います。

便秘症の非薬物療法

 

便秘症の薬物療法について解説する予定でしたが、基本となるのは非約物療法であるため、今回は便秘症の非薬物療法について解説します。

 

便秘症に対する治療は、便秘の原因と種類に基づいて行われます。

 

前回の繰り返しになりますが、まず便秘とは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」(慢性便秘症診療ガイドライン2017)と定義されます。

 

ただし、便秘症は単なる便秘とは区別して慢性的な便秘として扱われることが多いです。

 

慢性便秘症には、常習性便秘、弛緩性便秘、直腸性便秘(排便困難)、痙攣性便秘があります。

 

常習性便秘には、まず食事時間や内容の改善、運動療法(水氣道®などの有酸素運動)、排便習慣を是正することで排便リズムの回復が図られます。

 

弛緩性便秘には、食物繊維の多い食品(玄米などの精製されていない穀物や野菜、海藻、きのこ、豆類など)を摂取し、適度な運動(水氣道®などの有酸素運動)を勧めます。

 

 

直腸性便秘(排便困難)では、朝食後の排便習慣を励行し、腹式呼吸や毎日30分以上の歩行運動が効果的です。

とくに決まった曜日に決まった時間で周期的に実施する水氣道®は、意識せずとも腹式呼吸が身につく水中歩行であるため直腸性便秘解消に必要な要素を兼備しています。そして、食事療法としては、食物繊維を1日平均20~25g摂取することが望ましいとされます。腸内のビフィズス菌が重要な役割をもっているため、腸内のビフィズス菌の減少につながる脂肪を過剰に摂取は控えます。これに対して、乳酸菌発酵食品、ビタミンB₁・B₂、オリゴ糖、パントテン酸、ビオチンなどを摂取するとビフィズス菌の増殖を増やすことができます。

 

 

痙攣性便秘では、心理的ストレスが背景となっている場合が多く、規則正しい生活、朝食後の排便、運動などの習慣を身に着けることができるようにアドヴァイスします。そして、超粘膜を直接刺激することは避けるべきなので、カレー、からし、ワサビなど刺激物は制限します。

 

また、痙攣性便秘には過敏性腸症候群のうち便秘型や混合型も含まれますが、これらに関しては、日本消化器病学会のガイドラインで治療フローチャートが示されていますが、心身症としての特徴をもっているため、いずれ日曜日の心療内科のテーマの一つとして取り上げてみたいと思います。

 

杉並国際クリニックの問診は、構造化されていることを御存知でしょうか?

 

これを杉並国際クリニック方式のホリスティック・チェックと呼ぶことにしました。

 

第一弾は快(食・便・眠・勤・遊)です。誤解のないように説明しておきますが、

 

これは誤解でなく「五快」です。皆勤賞の皆勤でなく快勤です。欠勤せずに無理して働くよりも、ときには休暇をとって快適に仕事を続けることが快勤です。また、快遊は豪遊することとは無関係です。

 

さて、本日の話題は「快便」についてです。とくに問題なのは慢性の便秘です。

 

便秘とは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」(慢性便秘症診療ガイドライン2017)と定義されます。

 

食生活の欧米化や高齢者の増加とともに、わが国でも大腸癌が増加しており、便秘症状が現れたときには大腸癌の除外診断が重要です。大腸癌はクローン病や虚血性大腸炎などとともに狭窄性の器質性便秘をもたらします。急性の便秘は、腫瘍などの器質的疾患の除外や併用薬の確認が必要です。

 

薬剤により二次的に生じる便秘も少なくありません。薬剤性の便秘は排便回数減少型の機能性便秘をもたらします。急性の便秘の場合は、鎮痛薬、鎮咳薬抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬などが挙げられます。慢性の便秘でしばしば発見するのは、血圧降下薬(Ca拮抗薬)、抗不整脈薬、麻薬、利尿薬、気管支拡張薬(β₂遮断薬)、筋弛緩薬、パーキンソン病治療薬や抗コリン薬、制酸剤などがあり、注意を要します。麻薬、利尿薬は低K血症を来しやすく、それが便秘の原因になります。

 

便秘のケアのポイントは、まず生活習慣の改善です。水分を多めにとり、規則正しい時間に食物繊維の多い食事を心がけ、朝食はきちんととることだけで改善することが多いです。

 

特別な支障がなければ、運動についても積極的に奨めます。散歩もお勧めですが、水氣道®に参加できるのであれば、それに越したことはありません。

 

便秘症の薬物療法を実施するにあたって、下剤使用時に腸閉塞がないことを確認します。

 

次回(来週6月10日は、便秘症の薬物療法について解説する予定です。)

 

 

第116回日本内科学会総会・講演会(ポートメッセ名古屋)

 

シンポジウム2:<GFR免疫チェックポイント>から

第2日目

2019年4月27日(土)9:00am~

 

2018年のノーベル医学生理学賞に、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)の開発につながった京都大学の本庶佑名誉教授が選ばれ、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬に関心が集まっています。「夢の新薬」という言葉で形容されるケースさえ見受けられます。

 

ヒトの免疫システムには、免疫応答を活性化するアクセル(共刺激分子)と抑制するブレーキ(共抑制分子)が存在します。新しい抗がん剤として注目されている免疫チェックポイント阻害薬ですが、実際の奏効率は約20%です。そのため有効例を見分ける診断法や無効例に対する治療法の開発が急がれています。副作用の発生が問題になっていますが、副作用が発現する症例の方が、かえって抗腫瘍効果が得られやすい

というデータもあります。

 

1)

免疫チェックポイントの機能とがん治療への応用

 

CTLA-4やPD-1等の共抑制分子は「免疫チェックポイント」として機能し、自己への不適切な免疫応答や過剰な炎症反応を抑制します。

 

CTLA-4はT細胞活性化初期に働く免疫チェックポイント分子で、主にリンパ組織における抗原提示を抑制し、T細胞活性化を抑制します。

 

CTLA-4抗体は抗腫瘍効果を発揮し、T細胞のブレーキ解除によりがん治療が可能になり、悪性黒色腫の治療薬として承認されました。

 

しかし、CTLA-4抗体では治らない病気があり、副作用が大きいという問題があります。また、転移を抑制できなければ、抗腫瘍薬としては役に立たないと考えられます。

 

PD-1はT細胞活性化後期に働く免疫チェックポイント分子で、主に炎症局所でキラーT細胞が標的細胞を攻撃する場面で作用します。がん細胞が標的なのではなくキラーT細胞が標的であるため、がんが変異しても効果が持続するという利点があります。PD-1抗体は、がん転移を抑制して、CTLA-4抗体よりも強力な抗腫瘍効果を示し、副作用が小さいという特徴が観察された。

 

 

2)

消化器がんに対する免疫チェックポイント阻害薬

 

免疫感受性が低いという問題を抱えたまま臨床試験トライアル中です。

 

食道がん:

扁平上皮癌(乞食タイプ)、腺癌(ブルジョワタイプ)

日本人の扁平上皮癌への奏効率17%、PD-L1陽性例では奏効率が高くなります。

 

胃がん:

標準治療の確立が困難な状況です。ニボリズマブ(PD-1阻害薬)、ペムブロリズマブいずれも奏効率11%です。EBウイルス関連のマーカーが注目されています。

 

隠れた治療選択バイオマーカーの発見が胃がんの治療に重要であるようです。二剤、さらに三剤の併用療法も調査中です。

 

大腸がん:

遺伝子プロファイルによって分類されています。MSI-Hタイプでのペムブロニズマブ奏効率は高く62%です。さまざまな併用療法が良好な成績を上げています。これに対してMMSタイプの大腸がんでは有効性が否定されています。

 

オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬は、現在のところ多くは再発や転移がある、手術できない例の生存率改善目的に使用される薬です。ですから、切除可能ながんを診断された人が、「オプジーボだけで治しましょう」ということはまずあり得ないということを,ぜひ知っておいてください。

ピロリ菌に感染したことのある胃のがん化に注意!

 

人間ドックなどの検査結果の相談で内視鏡検査で萎縮性胃炎を指摘される方からの質問が多いです。ただし、杉並国際クリニックが充分にカバーできていない重要な検査項目の一つに内視鏡検査があります。この検査が必要な方は、連携医療機関である東京警察病院等をご紹介いたしております。

 

胃がんはヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染と深く関わっています。逆にピロリ菌感染がない人は胃がんになることが少ないです。ピロリ菌に感染すると慢性胃炎から萎縮性胃炎になり、さらに腸上皮化生という変化が起こってくると胃がんになる危険性が高くなります。ピロリ除菌により胃がんの予防や感染の防止が期待されるため、ピロリ菌に感染している場合、除菌治療が推奨されています。

 

 

胃がんハイリスク検診(ABC検診)のご案内

令和という超高齢化時代は、日本人男性の2人にひとり、女性の3人にひとりががんになることが一般常識として定着する時代です。がんになることはもはや特別なことではありません。しかし早期に発見できれば内視鏡治療など低侵襲治療を受けられ、完治する可能性も高くなります。

 

胃がんの早期発見するためには検診を受ける必要があります。胃がんに現在なっているかどうかは胃レントゲン検査や内視鏡検査を受けなければ診断できません。しかし胃がんになりやすいかどうかは個々人で異なるので、予め自分が胃がんになるリスクが分かっていれば、内視鏡あるいは胃レントゲンなどの検診をどれくらいの間隔で受ければ良いのかの参考になります。

 

胃がんはヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染と深く関わっています。ピロリ菌感染がない人は胃がんになることが少なく、ピロリ菌に感染すると慢性胃炎から萎縮性胃炎になり、さらに腸上皮化生という変化が起こってくると胃がんになる危険性が高くなってくることが知られています。そこで簡単な血液検査でピロリ菌の感染の有無と胃粘膜萎縮の度合いを示すペプシノゲンを測定して胃がんになるリスクが高いかどうかを調べる検診(ABC検診)があります。

 

あなたも胃がんになるリスクを検査してみてはいかがでしょうか。

 

 

対象となる方

20歳以上の方(特に40歳以上の75歳未満の方にお勧めします)

 

 

対象外の方

1.明らかな上部消化器症状があり、胃や十二指腸の疾患が強く疑われる方

(保険適応ですので、消化器内科を受診してください)

 

2.食道・胃・十二指腸の疾患で治療中の方

 

3.胃酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬)服用中もしくは2ヶ月前以内に服用していた方

 

4.胃切除後の方

 

5.腎不全(目安:クレアチニン値が3mg/dl以上)の方

 

6.75歳以上の方

 

 

検診の受付・料金など

 

申し込み

担当者    申し込み受付事務担当:野口将成(事務次長)

 

検査・説明・指導担当:飯嶋正広(院長ドクター)

 

料金       (任意検診ですので全額自己負担です)

継続通院中の方:6,000(消費税別)のみ

 

初診の方:8,000円 (消費税別)<初診料、採血・検査費、報告書および再診料その他の手数料のすべて含む>

 

 

胃がんハイリスク検診(ABC検診)よくある質問と回答

 

Q.検診の申し込みは?

 

A.当院受付で「ABC検診」または「胃がんハイリスク検診」を希望する旨、申し出てください。

 

 

Q.検診方法は?

 

A.採血による簡単な血液検査です。院長ドクターみずから採血します。

 

 

Q.結果は?

 

A.2週間後に保険証をもって受診してください。

院長が直接対応いたします。

 

 

Q.内視鏡による胃がん検診を受けたい場合は?

 

A.郵送された検診結果と保険証を持って受診してください。ご希望であれば、当院の連携医療機関である東京警察病院での内視鏡検査の予約をいたします。費用は保険扱いとなります。

 

 

Q.ピロリ菌が陽性でした。除菌治療を受けたいのですが?

 

A.ピロリ除菌治療は保険診療になる場合と自費診療になる場合があります。

どちらになるかはご相談ください。どちらの場合も当院で対応いたします。

 

日本肝臓病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、日本肝臓学会ガイドラインとして、8件が掲載されていました。

その中で、杉並国際クリニックの患者さんに情報提供すべき優先順位から考えて、

NASH・NAFLDの診療ガイド2010、を採り上げることにしました。

 

そこで、Q&Aをご紹介した後、杉並国際クリニックの立場からにて、解説を加えてみます。

 

 

Q5

NAFLD/NASHはどのように診断しますか?

 

A5 

NAFLDは単なる脂肪肝(NAFL)ではなくNASHになっていてもまったく症状がないことが多いので、健康診断のときやかかりつけの先生から「脂肪肝の疑いがあります」といわれたら、一度は専門の医療機関を受診して、詳しい検査をうけていただくことをお勧めします。

 

NAFLDを正しく診断するためには、これまでの飲酒状況や体重の変化、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の有無、サプリメントを含めた普段服用しているお薬などの詳しい情報がとても重要です。さらに、血液検査や超音波・CT・MRIなどの画像検査で、肝障害を引き起こすほかの病気がないか、NASHの疑いがあるかを詳しく調べます。NASHであることをはっきりと確かめて(確定診断)、どの程度肝臓の病気が進行しているかを正確に把握するためには、肝臓の組織を調べる肝生検を受ける必要があります。肝生検を安全に行うためには、検査中だけでなく検査の後も安静にする必要があるので、通常は1~2泊の入院が必要です。

 

NAFLDあるいはNASHと診断された後も、定期的に採血や画像診断を受け手、しっかりと経過を追って対処することが大切です。

 

 

杉並国際クリニックの立場から

 

よくある言い回しで、このQ&Aでもうんざりさせられる一文があります。それは<健康診断のときやかかりつけの先生から「脂肪肝の疑いがあります」といわれたら、一度は専門の医療機関を受診して、詳しい検査をうけていただくことをお勧めします。>です。

 

かかりつけの先生に「脂肪肝の疑いがあります」といわれて、専門の医療機関を受診するためには、かかりつけの先生から「診療情報提供書」を書いて貰うことになるはずです。ですから、<かかりつけの先生に「専門の医療機関を受診したいので紹介状をお願いします」とお願いすることをお勧めします。>ということになります。

 

これは、きわめてナンセンスです。膨大な人数の脂肪肝の疑いのある患者さんをすべて肝臓病専門医がいる病院へ紹介したら、受け手の病院もすぐに対応困難に陥ることは明らかだからです。

 

かかりつけの先生が「脂肪肝の疑いがあります」といった場合には、何を根拠にしているのかを、今一度考えていただきたいところです。そもそもNAFLDのうち80~90%は長い経過をみても脂肪肝のままで、病気はほとんど進行しません。これをNAFLDの病気を意味する「D(Disease)」を除いてNAFL(ナッフル)といいます。

 

<NAFLDを正しく診断するためには、これまでの飲酒状況や体重の変化、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の有無、サプリメントを含めた普段服用しているお薬などの詳しい情報がとても重要です。>その通りですが、このあたりの詳しい情報を最も良く把握しているのが、初対面の肝臓専門医ではなく、かかりつけの先生なのではないでしょうか。

 

また<血液検査や超音波・CT・MRIなどの画像検査で、肝障害を引き起こすほかの病気がないか、NASHの疑いがあるかを詳しく調べます。>とありますが、これは診断の段階的プロセスを弁えない大雑把な説明だと思います。まず、血液検査を行えないかかりつけの先生は、日本のどこにいらっしゃるのでしょうか。次に超音波検査ですが、これはかかりつけ医でも実施できるところが増えています。詳しい病歴に加えて血液検査と超音波検査が実施できれば、その段階でNASHを疑う可能性の少ないNAFLDであるのかどうかの検討がつきます。NASHのリスクが高いケースのみを肝臓病専門医に紹介するのが、常識のあるかかりつけ医だと思います。

 

杉並国際クリニックの方針としては、「脂肪肝の疑いがある」と判断した段階で、上記のような基本的診察や検査を院内ですべて行ったうえで、早期に脂肪肝の傾向を緩和するための手立てを講じることにあると思います。脂肪肝という病態を解消することができればNAFLDやNASH予防にとってとても有用だからです。仮にボーダーラインのケースであっても、たとえば3か月後、あるいは半年後の経過観察や検査の再検の結果、悪化の兆しが見られた段階で肝臓専門医に精査目的で紹介することで十分な対応が可能であると考えています。

日本肝臓病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、日本肝臓学会ガイドラインとして、8件が掲載されていました。

 

その中で、杉並国際クリニックの患者さんに情報提供すべき優先順位から考えて、NASH・NAFLDの診療ガイド2010 を採り上げることにしました。

 

Q&Aをご紹介した後、杉並国際クリニックの立場からにて、解説を加えてみます。

 

 

Q4

NAFLD/NASHになるメカニズムは?

 

A4 

肝臓は、腸で消化・吸収したさまざまな栄養素を取り込んで分解したり新たに合成したりして、バランスよく全身に供給する大事な役割を担ってくれます。食事でとった糖分は、通常はグリコーゲンとして肝臓に一時的に貯蔵されますが、過剰な糖分は中性脂肪に変換されて肝臓にたまります。食事で余分にとった脂肪分はもちろんのこと、蛋白質が分解されてできるアミノ酸も過剰な分は脂質に変換されます。

 

食べ過ぎや運動不足などのために食事でとったカロリーが消費量を上回ると、肝臓で中性脂肪が多く作られ、脂肪肝となります。

 

また、肥満の人では血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪くなり(これを“インスリン抵抗性”といいます)、このことによっても肝臓で中性脂肪をたくさん作るように促されます。

 

一方、同じ食事や運動をきたしていても、太りやすい人とそうでない人がいるように、肝臓への脂肪のたまりやすさも体質によって異なります。最近の研究では、脂肪肝になり易い遺伝的素因として、「PNPLA3」などの遺伝子の型が関係していることがわかってきました。また、栄養障害による極度のやせや、医薬品の副作用などで生じる脂肪肝もあります。脂肪肝になると、過剰な栄養素を分解してエネルギーに変える(燃焼する)ときに、活性酸素などの有害な物質が多くできる“酸化ストレス”という状態を引き起こし、肝細胞が傷ついてしまいます。このため、NASHの患者さんでは、酸化ストレスを防ぐ抗酸化剤が治療に有効だと考えられています。

 

また、NASHには腸内細菌のバランスの変化や免疫系の反応なども影響しており、肝臓で炎症が強まって線維が増えることで肝硬変へと進行する過程だけでなく、肝癌を発症するステップにも重要な役割を果たしていることが明らかにされつつあります。

 

 

杉並国際クリニックの立場から

NAFLD/NASHとは、まず肝臓の病気であること、この病気は肝臓に中性脂肪が蓄積することによって起こる脂肪肝がスタートであることがポイントです。

そして脂肪肝になると、過剰な栄養素を分解してエネルギーに変える(燃焼する)ときに、活性酸素などの有害な物質が多くできる“酸化ストレス”という状態を引き起こし、肝細胞が傷ついてしまうことで病気が進展していきます。

 

ここで、脂肪肝について補足説明をします。脂肪肝には、肥満や糖尿病に伴う過栄養性とアルコール性があります。NAFLD/NASHは過栄養性の脂肪肝から発展したものです。脂肪肝の発症は、肝臓が発する生活習慣に対するイエローカードであり、動機付け面接法などを取り入れて患者教育と生活指導を十分に行うことが大切です。

 

なおNASHの患者さんの治療では食事と運動による体重の減量が基本なので、可能であれば水氣道®など医学的に適切に管理された有酸素運動をはじめることをお勧めします。このようなNASHの患者さんには酸化ストレスを防ぐ抗酸化剤が治療に有効なので、ビタミンEやウルソデオキシコール酸を処方して改善を図ることがあります。また、糖尿病を併発されている方には、インスリン抵抗性改善薬などの有効性が報告されています。