最新の臨床医学 6月10日(月)内科Ⅰ(消化器・肝臓)

便秘症の非薬物療法

 

便秘症の薬物療法について解説する予定でしたが、基本となるのは非約物療法であるため、今回は便秘症の非薬物療法について解説します。

 

便秘症に対する治療は、便秘の原因と種類に基づいて行われます。

 

前回の繰り返しになりますが、まず便秘とは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」(慢性便秘症診療ガイドライン2017)と定義されます。

 

ただし、便秘症は単なる便秘とは区別して慢性的な便秘として扱われることが多いです。

 

慢性便秘症には、常習性便秘、弛緩性便秘、直腸性便秘(排便困難)、痙攣性便秘があります。

 

常習性便秘には、まず食事時間や内容の改善、運動療法(水氣道®などの有酸素運動)、排便習慣を是正することで排便リズムの回復が図られます。

 

弛緩性便秘には、食物繊維の多い食品(玄米などの精製されていない穀物や野菜、海藻、きのこ、豆類など)を摂取し、適度な運動(水氣道®などの有酸素運動)を勧めます。

 

 

直腸性便秘(排便困難)では、朝食後の排便習慣を励行し、腹式呼吸や毎日30分以上の歩行運動が効果的です。

とくに決まった曜日に決まった時間で周期的に実施する水氣道®は、意識せずとも腹式呼吸が身につく水中歩行であるため直腸性便秘解消に必要な要素を兼備しています。そして、食事療法としては、食物繊維を1日平均20~25g摂取することが望ましいとされます。腸内のビフィズス菌が重要な役割をもっているため、腸内のビフィズス菌の減少につながる脂肪を過剰に摂取は控えます。これに対して、乳酸菌発酵食品、ビタミンB₁・B₂、オリゴ糖、パントテン酸、ビオチンなどを摂取するとビフィズス菌の増殖を増やすことができます。

 

 

痙攣性便秘では、心理的ストレスが背景となっている場合が多く、規則正しい生活、朝食後の排便、運動などの習慣を身に着けることができるようにアドヴァイスします。そして、超粘膜を直接刺激することは避けるべきなので、カレー、からし、ワサビなど刺激物は制限します。

 

また、痙攣性便秘には過敏性腸症候群のうち便秘型や混合型も含まれますが、これらに関しては、日本消化器病学会のガイドラインで治療フローチャートが示されていますが、心身症としての特徴をもっているため、いずれ日曜日の心療内科のテーマの一つとして取り上げてみたいと思います。