最新の臨床医学 7月15日(月)内科Ⅰ(消化器・肝臓)

抗菌薬関連腸炎

日本化学療法学会/日本感染症学会合同で作成されたClostridioides(Clostridium)difficile (CD)感染症診療ガイドラインが2018年10月に発表されています。

Clostridium difficileの学術名はClostridioides difficileに変更されました。CDは芽胞を形成するグラム陽性偏性嫌気性桿菌で、抗菌薬投与で正常な腸内細菌叢が抑制され、CD毒性産生株が異常増殖することにより腸炎・下痢症を発症させ抗菌薬関連腸炎の主要な原因菌です。

とくに偽膜性大腸炎の起炎菌として知られますが、偽膜を形成しない場合もあるため、近年ではCD感染症(CDI)と呼ばれます。CDの芽胞は熱、消毒薬への抵抗性が強く、アルコールは無効であり、院内感染が問題となっています。

 

 

CD関連腸炎のリスク因子は、抗菌薬投与、プロトンポンプ阻害薬投与、高齢者、重篤な基礎疾患、免疫抑制状態、手術後、炎症性腸疾患、長期入院などである。 

本邦で増加を続ける医療費が考慮され、海外と本邦で治療に関しての推奨が異なっています。原因抗菌薬を中止するのは共通で、わが国でもCD関連腸炎の再発率が高いことも共通です。わが国では10~20%です。

 

日本では無症状の保菌者も多く、また、軽症例では原因抗菌薬の中止で軽快することもあるため、CD検出症例のすべてが抗菌薬治療の適応となるわけではありません。

バンコマイシンまたはメトロニダゾールの経口投与が基本であり、非重症の初発CDI患者にはメトロニダゾールが推奨されています。塩酸バンコマイシンは通常、0.5~2.0g/日、分4にて1~2週間経口投与します。これらの薬剤は海外では推奨されていません。

なお、欧米では初発CDI 患者の初期治療薬として日本では推奨されていないフィダキソマイシンが推奨されています。欧米では強毒株によるCDIが問題になっていて、また、抗菌薬治療中止後の再発率が高いことも大きな課題です。

近年、難治性CDIに対する糞便移植の高い奏効率が報告され注目されています。