最新の臨床医学 4月29日(月)内科Ⅰ(消化器・肝臓)

日本肝臓病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、日本肝臓学会ガイドラインとして、8件が掲載されていました。

その中で、杉並国際クリニックの患者さんに情報提供すべき優先順位から考えて、

NASH・NAFLDの診療ガイド2010、を採り上げることにしました。

 

そこで、Q&Aをご紹介した後、杉並国際クリニックの立場からにて、解説を加えてみます。

 

 

Q5

NAFLD/NASHはどのように診断しますか?

 

A5 

NAFLDは単なる脂肪肝(NAFL)ではなくNASHになっていてもまったく症状がないことが多いので、健康診断のときやかかりつけの先生から「脂肪肝の疑いがあります」といわれたら、一度は専門の医療機関を受診して、詳しい検査をうけていただくことをお勧めします。

 

NAFLDを正しく診断するためには、これまでの飲酒状況や体重の変化、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の有無、サプリメントを含めた普段服用しているお薬などの詳しい情報がとても重要です。さらに、血液検査や超音波・CT・MRIなどの画像検査で、肝障害を引き起こすほかの病気がないか、NASHの疑いがあるかを詳しく調べます。NASHであることをはっきりと確かめて(確定診断)、どの程度肝臓の病気が進行しているかを正確に把握するためには、肝臓の組織を調べる肝生検を受ける必要があります。肝生検を安全に行うためには、検査中だけでなく検査の後も安静にする必要があるので、通常は1~2泊の入院が必要です。

 

NAFLDあるいはNASHと診断された後も、定期的に採血や画像診断を受け手、しっかりと経過を追って対処することが大切です。

 

 

杉並国際クリニックの立場から

 

よくある言い回しで、このQ&Aでもうんざりさせられる一文があります。それは<健康診断のときやかかりつけの先生から「脂肪肝の疑いがあります」といわれたら、一度は専門の医療機関を受診して、詳しい検査をうけていただくことをお勧めします。>です。

 

かかりつけの先生に「脂肪肝の疑いがあります」といわれて、専門の医療機関を受診するためには、かかりつけの先生から「診療情報提供書」を書いて貰うことになるはずです。ですから、<かかりつけの先生に「専門の医療機関を受診したいので紹介状をお願いします」とお願いすることをお勧めします。>ということになります。

 

これは、きわめてナンセンスです。膨大な人数の脂肪肝の疑いのある患者さんをすべて肝臓病専門医がいる病院へ紹介したら、受け手の病院もすぐに対応困難に陥ることは明らかだからです。

 

かかりつけの先生が「脂肪肝の疑いがあります」といった場合には、何を根拠にしているのかを、今一度考えていただきたいところです。そもそもNAFLDのうち80~90%は長い経過をみても脂肪肝のままで、病気はほとんど進行しません。これをNAFLDの病気を意味する「D(Disease)」を除いてNAFL(ナッフル)といいます。

 

<NAFLDを正しく診断するためには、これまでの飲酒状況や体重の変化、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の有無、サプリメントを含めた普段服用しているお薬などの詳しい情報がとても重要です。>その通りですが、このあたりの詳しい情報を最も良く把握しているのが、初対面の肝臓専門医ではなく、かかりつけの先生なのではないでしょうか。

 

また<血液検査や超音波・CT・MRIなどの画像検査で、肝障害を引き起こすほかの病気がないか、NASHの疑いがあるかを詳しく調べます。>とありますが、これは診断の段階的プロセスを弁えない大雑把な説明だと思います。まず、血液検査を行えないかかりつけの先生は、日本のどこにいらっしゃるのでしょうか。次に超音波検査ですが、これはかかりつけ医でも実施できるところが増えています。詳しい病歴に加えて血液検査と超音波検査が実施できれば、その段階でNASHを疑う可能性の少ないNAFLDであるのかどうかの検討がつきます。NASHのリスクが高いケースのみを肝臓病専門医に紹介するのが、常識のあるかかりつけ医だと思います。

 

杉並国際クリニックの方針としては、「脂肪肝の疑いがある」と判断した段階で、上記のような基本的診察や検査を院内ですべて行ったうえで、早期に脂肪肝の傾向を緩和するための手立てを講じることにあると思います。脂肪肝という病態を解消することができればNAFLDやNASH予防にとってとても有用だからです。仮にボーダーラインのケースであっても、たとえば3か月後、あるいは半年後の経過観察や検査の再検の結果、悪化の兆しが見られた段階で肝臓専門医に精査目的で紹介することで十分な対応が可能であると考えています。