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先週は、ムッシュGPTに漢方薬の治療効果についての質問を試みました。


余り肯定的な回答ではありませんでしたが、それでも総論部分で

「当帰芍薬散や加味逍遙散は、伝統的な漢方薬で、特に女性の生理調整やストレス対策に使われています。これらの漢方薬に含まれる様々な植物成分が、体の調和を促進し、特定の症状の緩和に寄与するとされています。」

と述べています。

 

また「個人差があり、全ての人に同じような効果があるわけではありません。」とも回答しています。この回答は事実です。


しかし、患者さんは同じ病名でも「個人差」があるのは当然であり、漢方薬は「全ての人に同じような効果」をもたらすことを目的としてはいません。むしろ、患者さんの体質的個別性を鑑別して、それに見合った処方選択をするのが漢方医学の方法だからです。

 

もっとも、西洋医学の薬剤でも「全ての人に同じような効果」をもたらすことは期待できません。

 

 

質問者:Yさん(ドクター飯嶋のアドヴァイスにより改訂版)

 

私は20代の女性ですが、かかりつけの内科の先生から2週間ごとに当帰芍薬散と加味逍遙散というお薬を月経周期に併せて交互に交互に処方されていただくようになってから、体調も気分も良くなって久しいです。

 

これらの薬は以前、それぞれ単独で継続して内服しても効果が表れなかったので不思議です。どのような理由が考えられるでしょうか?

 



ChatGPT
当帰芍薬散や加味逍遙散が単独では効果が表れなかったが、交互に処方されることで良くなった理由はいくつか考えられます。ただし、これらはあくまで仮説であり、具体的な理由は患者の個別の状態や症状により異なる可能性があります。


1. 相乗効果:

当帰芍薬散と加味逍遙散は、それぞれ異なる成分を含んでいます。これらの成分が相乗効果を示し、お互いに補完しあって体調の改善に寄与している可能性があります。


2. 月経周期への調整:

月経周期に合わせて交互に処方されていることが、女性ホルモンの変動や生理的なリズムに合致しているため、より効果的に働いている可能性があります。特に女性の場合、生理周期によってホルモンバランスが変化することがあり、それに対応する漢方薬の変更が効果をもたらすことがあります。


3. 個別の体質への適応:

患者ごとに体質や症状のパターンは異なります。交互に処方されることで、その時点での体調や症状により適した漢方薬を使用でき、より効果が現れる可能性があります。


4. 症状の変化:

期間を変えることで、症状が変化しやすくなります。そのため、一定期間で薬を変えることで、症状の変化に柔軟に対応できる可能性があります。


これらの理由は一般的な観点からの考察であり、具体的な効果のメカニズムについては医師が詳細な情報をもとに判断する必要があります。医師とのコミュニケーションを大切にし、お互いに信頼関係を築いていくことが重要です。

 

 

ドクター飯嶋のコメント:
ムッシュGPTは、あくまで「仮説」であるとしながら、「当帰芍薬散や加味逍遙散が単独では効果が表れなかったが、交互に処方されることで良くなった理由はいくつか考えられます」と答えて、4つの理由を列挙しています。漢方専門医としては、そのすべてを支持します。

 

しかも、私は「患者(Yさん)の個別の状態や症状により」処方を決定したことに間違いありません。


私としては、とくに月経周期による症状の変化への調整が困難な状態であったYさんの心身の変調の波の振幅を少しでも小さくすることを目標にしました。

 

私は、同じ人でも季節による外部環境の変化やホルモン周期などの内部条件の変動や、場合によっては概日リズム(例えば、日中と夜間のコンディションの違い)などにも留意して処方を組み合わせることで優れた治療成績を挙げることに成功してきました。

 

このように個人差や環境の変動を考慮した個体別、さらに、刻々と変化する個体の生理的心理的状況に合わせた治療方法は、西洋医学では十分に顧みられていないと考えています。

 

漢方の質問ですので中国語でも質問をしました。

そうすると思わぬトラブルが…

顛末は2月12日(月)にて。

 

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<水氣道の段級制について>

水氣道は創始以来、段級制を採っています。


日本の武道の中には段級制を採っているものがあります。

 

他の武道の段級制については、ムッシュGPTは、私以上に分かりやすい解説ができるのではないかと考えました。

 

Dr.飯嶋自身が質問を試みることにします。

 

Dr.飯嶋

日本の武道の中には、段級制を採っているものがあります。段級制の意義と目的、制度の長所と欠点について教えてください。

 

ChatGPT

日本の武道において段級制は一般的であり、多くの武道で採用されています。段級制は、武道修行者が進歩し、技術や精神面での成熟を評価し、達成度を示すための制度です。以下に、段級制の意義と目的、制度の長所と欠点をいくつか挙げてみましょう。


意義と目的:

1. 進歩の評価: 段級制は、武道修行者が自身の進歩を定量的かつ目に見える形で評価できるようにします。段位が上がることで、修行者は自身の技術や理解力が向上していることを実感できます。


2. 目標の設定: 段位が目標となることで、修行者は着実な進歩を求める励みとなります。新しい技術や概念を学び、段位を上げることが目標としてクリアになります。


3. 教育の手段: 段位は、教育の一環としても機能します。師範や上級者が弟子や初心者に対して段位を通じて適切な指導を行い、技術や心構えを教えることができます。

 


制度の長所:

1. モチベーションの向上: 段位の取得は修行者にとって大きなモチベーションとなります。目標がクリアに定義され、段位が与えられることで、練習へのコミットメントが強化されます。

 

2. 階層構造の確立: 段位によって、武道団体内での階層構造が明確になります。これにより、上級者と初心者といった異なる経験レベルの者たちが適切に指導され、安全に稽古が行われる環境が整います。


3. 武道の伝統継承: 段位制度は武道の伝統や価値観を継承する手段となります。歴史的な文脈や武道の精神が段位に反映され、伝統が守られることが期待されます。


制度の欠点:

1. 実力とのギャップ: 段位が必ずしも実力を正確に反映しないことがあります。時には単なる段位取得のために合格することもあり、実力と段位のギャップが生じることがあります。


2. 競争心の過度な強調: 段位をめぐる競争が激化し、そのために修行者が競技の側面を強調しすぎることがあります。武道は本来、協力と向上心が重要ですが、段位制度がこれを損なうことがあるかもしれません。


3. 個々のペースに合わない場合: 一律の段位制度は、個々の修行者の進歩ペースに合わないことがあります。ある人が早く段位を進める一方で、他の人が同じ段位に到達するのに時間がかかる場合があります。

総じて、段級制度は武道の指導や進歩のモチベーションに寄与しますが、その運用にはバランスと慎重な配慮が必要です。

 

 

ドクター飯嶋のコメント:

私自身が、ムッシュGPTの回答を読んで驚嘆しています。私の考えとほとんど一致しているばかりでなく、段級制度によってもたらされる欠点についての本質を突いているからです。

 

そこで、私は彼の回答の重要なエッセンス部分に下線を施してみました。水氣道は、武道特有の危うい側面や、段級制に潜む諸問題を克服する工夫を凝らしながら今日の稽古体系を築いてきました。

 

なお、ムッシュGPTが例示している「武道の伝統継承」ですが、水氣道にとっても来年で創始後四半世紀を迎え、ささやかな伝統ともいうべき歴史を辿ってきました。

 

しかし、他の伝統的武道とは異なり、新しいタイプの武道である水氣道は、伝統継承の段階ではなく、伝統の礎を創出していこうとする途上にあるといえるでしょう。

 

そこで、考察の焦点を水氣道に当てて、改めてムッシュGPTに質問を投げかけてみました。彼は、武道としての水氣道に対して、どのような評価を与えれくれるのでしょうか?

 

 

Dr.飯嶋

私たちは2000年に日本で誕生した水氣道という水中での武道を続けています。武道といっても競技ではなく、試合も行わない集団での心身鍛錬法なのですが、段級制を採用しています。段級制の長所を生かし、かつ、欠点が出現しないようにするためには、どのような配慮と工夫が必要でしょうか?

 


ChatGPT
水氣道が競技を行わずに心身鍛錬を重視する武道である場合、段級制度を採用することは依然として有益です。以下に、段級制を長所を生かし、かつ欠点を最小限にするための配慮と工夫をいくつか挙げてみましょう。


1. 目標設定と進歩の評価:

個別目標の設定: 修行者ごとに個別の目標を設定し、段位を通じて進歩を評価します。これにより、各人の成長ペースに合わせた目標が明確になります。


技術と精神面のバランス: 段位試験で技術だけでなく、武道の精神面も評価することで、心身の両面での鍛錬が重視されます。

 


2. 競争を避けた環境構築:

協力と励ましの文化: 競技を行わないことで、協力と励ましの文化を強調します。段位があくまで個人の成長を示すものであると認識させることが重要です。


共通の目的意識: 集団での心身鍛錬を共通の目的とし、段位はその過程での個人の向上を支える手段と位置付けます。

 


3. 継続的な指導とフィードバック:

個別指導: 師範や上級者が修行者一人ひとりに対して個別の指導とフィードバックを提供します。これにより、個人の強みや課題に対処しやすくなります。


継続的なアセスメント: 段位試験以外にも、継続的なアセスメントを行い、修行者の成長を定期的に評価します。これにより、段位試験以外でも進捗が確認できます。

 

 

4. 武道の哲学と結びつける:
武道の理念の共有: 水氣道の修行者に対して、武道の哲学や精神面に焦点を当て、それが段位制度とどう結びついているかを理解させます。これにより、単なる技術向上だけでなく、精神的な成長も重視されます。

 


5. コミュニケーションの促進:
集団でのディスカッション: 定期的な集団でのディスカッションやワークショップを通じて、修行者同士のコミュニケーションを促進します。これにより、相互の理解や助け合いが生まれやすくなります。


段級制度を活かすためには、個々の修行者の特性や目的、武道の性格を考慮し、柔軟なアプローチが必要です。それによって、水氣道は集団での心身鍛錬を深め、段級制度が修行者の継続的な成長を支えるものとなります。

 

 

ドクター飯嶋のコメント:

ムッシュGPTの回答を読んで、なぜ彼が私の水氣道哲学の概要を把握しているのか不思議に思いました。水氣道の創始者として、彼以上の回答を示せる会員に遭遇したことは、これまでなかったことも告白しておかなければならないでしょう。


ただし、彼が指摘してくれたポイントの中で、5つ目のコミュニケーションの促進については、今後、さらなる前向きで創造的な取り組みが必要であると考えます。


そのためには、従来の会員に加えて、新たなるメンバーの積極的な参加が望まれます。それ以前に、私たちが水氣道の魅力について、積極的にアピールしてきたかというと、残念ながら、不徹底であったことは大きな反省材料であると思います。

 

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<問いの質が変われば、答えの質も変わる>の巻

 

今回の話題は、2月2日の金曜日のシリーズに関連するテーマです。

 

ムッシュGPTは、ちょっとした質問の仕方の違いによって、内容や質が大きく異なる回答を寄越してくれます。要は質問の仕方が肝要だということです。

 

それでは、次に二つの質問と、それに対するムッシュGPTの回答を掲載してみます。

 

まずは、オリジナルの質疑応答を再掲します。

 

質問者(オリジナル質問文)

私は60代の高血圧の男性患者ですが、いろいろな病院で、いろいろな薬を飲んでも血圧は下がらないばかりか、イライラして眠れず、夜間頻尿となり困っていました。


最後に内科を受診したら前立腺肥大症と診断され、その治療を始めたところ、夜間頻尿は軽快し、以前より熟睡できるようになり、イライラが収まってきただけでなく、血圧も正常化してきたので不思議です。


それには医学的な根拠があるのでしょうか、それとも自然治癒でしょうか?

 


ChatGPT

おっしゃるような症状が改善されたことは素晴らしいことです。前立腺肥大症の治療がこれらの症状に対して改善をもたらすことは、医学的な根拠があります。


前立腺肥大症は、男性の前立腺が拡大し、尿路症状を引き起こす状態です。これには、頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、尿の勢いの低下などが含まれます。また、この症状が睡眠障害やイライラを引き起こすこともあります。


前立腺肥大症が進行すると、尿の通り道が圧迫され、尿が十分に排泄されなくなります。これが夜間頻尿や睡眠障害につながります。また、尿が膀胱に滞留することで、膀胱の圧力が上昇し、血圧にも影響を与える可能性があります。


前立腺肥大症の治療は、症状の程度により異なりますが、一般的には薬物療法や手術が行われます。治療により尿路症状が改善され、それに伴って睡眠障害やイライラも緩和されることがあります。


したがって、おそらく前立腺肥大症の治療が、夜間頻尿や睡眠障害、イライラの改善に寄与したと考えられます。

ただし、具体的な状況により個人差があるため、治療の効果は個々の症状や体質により異なる可能性があります。治療が効果的であるかどうかについては、担当医との定期的な相談が重要です。

 

 

Dr.飯嶋のコメント
この質問文の本人には、前立腺肥大症に対して内科的な療法である薬物療法を試みました。しかし、前立腺肥大症の治療法としては、外科的な療法である手術療法が必要になるケースもありますが、専門家ではない質問者としては、そこまでは考えが及ばないのは当然です。


ましてや、質問の仕方のちょっとした工夫によって、ChatGPTの回答が、より具体的に焦点が絞り込まれた、したがって、より有益な回答が得られる可能性については認識されていなかったようです。


そのちょっとした工夫とは何かというと、

それは、「その治療」という質問文の一部を「薬物療法」に変更するだけの操作を加えてみました。

 


質問者(改訂質問文)
私は60代の高血圧の男性患者ですが、いろいろな病院で、いろいろな薬を飲んでも血圧は下がらないばかりか、イライラして眠れず、夜間頻尿となり困っていました。

 

最後に内科を受診したら前立腺肥大症と診断され、そのため薬物療法を始めたところ、夜間頻尿は軽快し、以前より熟睡できるようになり、イライラが収まってきただけでなく、血圧も正常化してきたので不思議です。

 

それには医学的な根拠があるのでしょうか、それとも自然治癒でしょうか?

 


ChatGPT
前立腺肥大症の治療が血圧の正常化やその他の症状の改善に寄与したと考えられる医学的な根拠があります。以下はその主な要因です:


1. 交感神経の影響:

前立腺肥大症は、尿路の圧迫や排尿の困難を引き起こす可能性があります。これにより、交感神経活動が増加し、血圧が上昇することがあります。前立腺肥大症の治療が症状を改善すると、交感神経の活動が緩和され、血圧が正常化する可能性があります。


2. 睡眠とストレスの関連:

夜間頻尿や睡眠障害は、心身のストレスや不快感を引き起こし、それが血圧に影響を与えることがあります。前立腺肥大症の治療により夜間頻尿が改善され、睡眠の質が向上することで、ストレスが軽減され、それが血圧の正常化に寄与する可能性があります。


3. 薬物療法の影響:

前立腺肥大症の治療に使われる薬物が、血圧にも一定の影響を与える可能性があります。一部の薬物は血圧を降下させる効果があり、それが治療開始後の正常化に寄与することが考えられます。


自然治癒ではなく、前立腺肥大症の適切な治療が症状の改善に貢献したと考えられます。ただし、具体的な状況や個々の患者によって結果は異なる可能性があります。

定期的な医師のフォローアップと相談が重要です。

 

 

Dr.飯嶋のコメント
オリジナル質問文と改訂質問文のメッセージの内容は、一見してほぼ同じ内容です。
しかし、ほんのわずかな文言の違いが、回答内容に大きな違いを生み出していることがお判りになるはずです。


改定質問文に対して、ムッシュGPTは、薬物療法の影響についても適切なコメントしています。

 

前立腺肥大症の適切な治療が症状の改善に貢献した、と歯切れよく答えています。たしかに、私が使用した薬剤はミニプレス®というα₁遮断薬で、この薬剤は❶本態性高血圧症、腎性高血圧症、❷前立腺肥大症に伴う排尿障害、この両者の治療薬です。

 

私は一般の高血圧症や前立腺肥大症のそれぞれ単独の治療のために、この薬剤を使用することはほとんどありませんが、排尿障害を伴う高血圧のケースでは好んで用いて大いに効果を挙げています。

 

 

それでは、このような回答文に大きな違いが生じる原因は何なのでしょうか?

 

まず、質問者の用いる重要情報であるキーワードがどれだけ明確で限定的か、いいかえれば、質問者自身が知りたいと考えている対象にどれだけ密接な具体性を備えているか、ということがとても大きく働いている可能性があります。


前者の文言「その(前立腺肥大症)治療」と後者の「前立腺肥大症のための薬物療法」という記述の意味する内容は重なりますが、前者はすべての標準的な治療法を意味するものとムッシュGPTは理解します。

 

すなわち、質問者が暗黙のうちに想定している内科的薬物療法ばかりではなく、おそらくは想定外であると思われる外科的な手術療法も含まれることになります。

 

これに対して、後者は、より限定的で、質問者にとって直接関心の対象となっている薬物療法に焦点が当てられます。

 

ついで、ムッシュGPTの回答文の形式について比較してみると、序文、本文、結論の三段階の構成になっていることが分かります。

 

また、より比較が容易な数値化データとして使用単語数を確認してみると、前者は504、後者は508です。

つまり、ムッシュGPTの回答文は、質問の内容にかかわらず概ね500語程度になっています。


この結果から考えられることは、質問の的を十分に絞って、可能な限り、知りたいことを特定して焦点を定めておくと、回答文も、より内容の濃い、密度の高い、必要な情報がより多い有益なメッセージを生成しやすくなるということです。

つまり、質問者にとって関心が少ない対象についての無駄な情報を省いた分だけ、興味深い関心の対象に関する情報が確保されるということになるのだと思います。


 
こうした事例をつぶさに検討することで改めて気づかされることは、小学校からすでに始まっている教育の課程で、徐々にスキルアップしていくことが望ましいのは、「質問の技術」なのではないか、ということです。そうはいっても、先生に質問をすることも、得手不得手があります。

 

しかし、質問を繰り返さなければ、上手な質問をする能力は身につきません。

 

そのためもあってか、ときには先生が質問者になって、生徒に回答させる授業進行の方法が採られることがあります。

 

これなども、相手の立場や役割を経験することによって、円滑なコミュニケーションを促す手助けになると思います。

 

そうして、授業に参加して、先生に質問できること自体が有意義な学びの成果なのではないだろうか、と私は考えます。

 

質問と回答を繰り返す中で、質の高い問いによる、質の高い回答が容易されやすくなっていくのではないでしょうか。

 

 

日常の診療においても、質問上手な患者さんに恵まれた医師は必ず名医になれるのではないかという気がします。

 

これも一長一短ではなく、医師(ドクターの語源は教師)が患者さんに適切な質問を繰り返したり、質問を促したりする日々の心掛けが不可欠であるように感じます。

 

日常の健康管理において、主治医の役割は、一方的に診断して治療を始めることではなく、互いに学び合って、スキルアップしていくことによって、より望ましい成果を挙げることが可能になっていくことを私は経験してきました。


ですから、これからも私に対して、遠慮せず質問してください。わたしの勉強にもなるばかりでなく、このシリーズのテーマの生きた材料にもなり、ひいては多くの読者の皆様に対して有益なメッセージをお届けすることが可能になると思います。

 

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ChatGPTに東洋医学に関する質問をする場合は注意が必要です。


なぜなら、ChatGPTの情報源の大半は、ムッシュGPTの回答によれば英語主体の情報です。そして英語圏の医学すなわち西洋医学的な思想では、平均値や基準値を基に健康状態を判断するため、大規模データを収集し易く、エヴィデンスも集めやすい強みがあります。

 

しかし、そのエヴィデンスはあくまでも多くの標準的な体質の方には良く適合しても、少数の特別な体質の方のためには役に立たないことがあります。

 

したがって、そのような発想では、個別性を尊重する東洋医学、とりわけ漢方薬について的確に判断することは難しいと私は考えています。


YさんがムッシュGPTに質問をされたので、その点に注意しながら、検討してみましょう! 

 

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質問者:Yさん(オリジナル版)

漢方薬についての質問ですが、よろしいでしょうか?

 

私は20代の女性ですが、かかりつけの内科の先生から2週間ごとに当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)と加味逍遙散(かみしょうようさん)というお薬を交互に処方されていただくようになってから、体調も気分も共によくなっています。

 

私は不思議に思うのですが、医学的な根拠があるのでしょうか?

 

 

ChatGPT
漢方薬に対する医学的な根拠は、研究が進んでいるものの、西洋医学のように確立された臨床試験や科学的なエビデンスが十分に揃っているわけではありません。

 

ただし、一部の漢方薬は特定の症状に対して一定の効果があるとされ、その使用は一部の医師によって支持されています。


当帰芍薬散や加味逍遙散は、伝統的な漢方薬で、特に女性の生理調整やストレス対策に使われています。これらの漢方薬に含まれる様々な植物成分が、体の調和を促進し、特定の症状の緩和に寄与するとされています。

ただし、個人差があり、全ての人に同じような効果があるわけではありません。


医師がこれらの漢方薬を処方した理由は、あなたの症状や体調に合わせて、伝統的な漢方医学の観点から効果が期待できると判断されたためかもしれません。

ただし、これらの漢方薬の効果については科学的に確定された情報が不足しているため、医学的根拠を求めるのは難しい場合があります。


大切なのは、漢方薬を使用する際にかかりつけの医師と十分にコミュニケーションをとり、体調や効果、副作用について報告し合うことです。医師は適切な治療法を提供するために、患者との信頼関係を築くことが重要です。

 


ドクター飯嶋のコメント:

ムッシュGPTは、自分の能力の範囲で誠実に回答しています。


ニュアンスの違いかもしれませんが、『確立された臨床試験や科学的なエビデンスが十分に揃っているわけではありません。』というのは若干言い過ぎのような気がします。

 

ここでいう科学的なエビデンスというのは、いわゆる西洋医学的なエビデンスであって、東洋医学には東洋医学のエビデンスがあるということをムッシュGPTは、十分には理解できていないように思われます。


もしくは、彼は漢方薬を民間療法薬と同列に位置付けている可能性があります。現代においては漢方薬ですら、動物実験によるデータが収集されています。

 

一部の漢方薬が特定の症状に対して一定の効果があり、一部の医師によって支持されている、という限定的な表現にも注意していただきたいと思います。

一部の漢方薬といっても、保険診療で処方可能な漢方薬は100種類を遥かに超えています。

 

また、一部の医師というのは、英語圏においては妥当する事実ですが、日本の医師は、私の様に漢方専門医の資格をもつ医師ばかりでなく、広く使われ役立てられています。

 

なお日本の医師の数少ない特権の一つとして、西洋薬と漢方薬の両方の処方権が与えられていることが大切です。

 

英語圏だけでなく中国や韓国などでも西洋医学の医師と伝統医学の医師(中医や韓医)では資格制度からして明確に区別されています。

 

ですから、日本の医師でなければ、両者の長所と短所を認識したうえで上手に使い分けることはできません。

私は日本の医師が東西両医学を併用した統合医学の旗手になるべきではないかと考えています。

 

ムッシュGPTは、医師ではないので、彼の能力を十分に引き出すためには質問の工夫が必要です。来週の金曜日は、私が質問の仕方を工夫して、改めて彼の回答を確認してみたいと思います。