日本肝臓病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、日本肝臓学会ガイドラインとして、8件が掲載されていました。

 

その中で、杉並国際クリニックの患者さんに情報提供すべき優先順位から考えて、

NASH・NAFLDの診療ガイド2010

を採り上げることにしました。

 

 

Q&Aをご紹介した後、杉並国際クリニックの立場から、解説を加えてみます。

 

Q2

NAFLD/NASHの患者さんはどれくらいますか?

 

A2 

NAFLDの有病率は、日本では9~30%と報告されており、患者さんは全国で1,000万人以上いると考えられています。肥満の人やメタボリックシンドロームの患者さんの増加に伴って患者数は増えており、とくに肥満男性の増加が社会問題となるなかでNAFLDの男性も増えていることが懸念されています。また、日本におけるNAFLDの年齢分布は、男性は中年層、女性は高齢層に多い傾向であることが報告されています。

 

NASHの有病率は3~5%と推定されています。全国の肝硬変患者さん約33,000人の原因を調査した報告では、約3/4はウイルス性肝炎が原因で、NASHは2.1%でした。NASHの年齢分布については明確なデータはありません。

 

小児のNAFLDの有病率は少なくとも3%と報告されていますが、年齢の上昇とともにNAFLDの有病率は上昇します。小児のNASHの有病率については明確なデータはありません。

 

メタボリックシンドロームがあるとNAFLDやNASHを発症しやすく、とくに肥満(ウェスト周囲径の増大)はNAFLDやNASHの強い危険因子であり、また高血糖や脂質異常も主要な危険因子です。NAFLDの人がメタボリックシンドロームを合併している場合は、NAFLではなくNASHの可能性が高くなります。

 

 

杉並国際クリニックの立場から

NAFLD(あるいはNASH)とかNASHの略号が使われているので、とっつきにくく難しく感じられそうです。そこで、まずおさらいです。

 

イニシャルのNAは英語表記のnon alcoholicの頭文字で、“非アルコール性”を意味します。‘肝臓’という名詞は英語でLiver、形容詞である‘肝臓の’は英語でhepaticと表記するので、少し複雑ですが、要するに、お酒をあまり飲まない人に生じる肝臓病です。この肝臓病の原因は肝臓の組織に蓄積する脂肪です。‘脂肪’は英語でFatといいますが、‘脂肪の’という形容詞になるとfattyになり、さらに‘脂肪性肝炎’などの場合には、steatohepatitisという表現になり英語のネーティブでも難しい表現になります。ちなみにhepatitisとは肝炎を表します。

 

さて、ここで再確認しておきたいことは、お酒をあまりのまなくてもおこってしまう肝臓病であるNAFLDの患者さんが日本全国で1,000万人以上もいて、ざっと10人に1人がかかっている、いわば国民病であるということです。とくに肥満傾向の中年男性や高齢の女性に対しては、これまで以上に慎重に肝機能検査を実施したり、超音波検査で確認したりする必要があると思われます。

日本肝臓病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、日本肝臓学会ガイドラインとして、8件が掲載されていました。

 

その中で、杉並国際クリニックの患者さんに情報提供すべき優先順位から考えて、NASH・NAFLDの診療ガイド2010

 を採り上げることにしました。

 

Q&Aをご紹介した後、杉並国際クリニックの立場からにて、解説を加えてみます。

 

 

Q1

NAFLDやNASHってどんな病気ですか?

 

A1 

肝臓に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝です。脂肪肝には、お酒を飲み過ぎた人がなるアルコール性脂肪肝と、お酒をあまり飲んでいないのに肝臓に脂肪がたまってしまう非アルコール性の脂肪肝があります。

 

お酒の飲み過ぎは脂肪肝に留まらず、肝炎や肝硬変になることがよく知られていますが、お酒をあまり飲んでいない非アルコール性の脂肪肝の人でも同じように肝臓の病気が進行してしまうことがあります。

 

このように非アルコール性の脂肪肝から脂肪肝炎や肝硬変に進行した状態までを含む一連の肝臓病のことを「非アルコール性脂肪性肝疾患」(英語表記non alcoholic fatty liver diseaseから「NAFLD(ナッフルディー)」)といいます。

 

つまり、NAFLDはアルコールを除くいろいろな原因で起こる脂肪肝の総称です。その多くは、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を伴っていて、メタボリックシンドロームの肝臓病と考えられています。

 

“非アルコール性”とはいえ、一滴もお酒を飲まない人だけではなく、少量の飲酒をしている人にみられる脂肪肝もNAFLDに含まれます。1日あたり純エタノールとして男性で30g以上、女性では20g以上のお酒を毎日飲み続けるとアルコール性肝障害を起こすことがあるといわれており、これはビールならば男性で1日あたり750mL(大瓶1本強)、日本酒なら1合半、ワインはグラス2杯半、ウィスキーではダブルで1杯半に相当します。つまり、此れよりも1日の飲酒量が少ない人(女性ではその2/3より少ない人)にみられる脂肪肝がNAFLDということになります。

 

NAFLDのうち80~90%は長い経過をみても脂肪肝のままで、病気はほとんど進行しません。これをNAFLDの病気を意味する「D(Disease)」を除いてNAFL(ナッフル)といいます。しかし、残りの10~20%の人は徐々に悪化して、肝硬変に進行したり、なかには肝がんを発症したりすることもあります。

 

この脂肪肝から徐々に進行する肝臓病のことを「非アルコール性脂肪肝炎」(英語表記non alcoholic steatohepatitisから「NASH(ナッシュ)」といいます。

 

NAFLDは、非アルコール性で超音波検査やCT検査などの画像検査で脂肪肝の所見があって、他の肝臓の病気がないことを確認すれば、診断することができます。一方、NASHは肝臓の組織を調べる肝生検をしないと確実に診断することができません。

 

 

杉並国際クリニックの立場から

解り易い解説だったと思いますが、いかがでしょうか。

ポイントを列記して、コメントを述べます。

 

1)メタボリックシンドロームは肝臓病を引き起こすことがある

⇒メタボリックシンドロームでは肝機能検査や腹部超音波検査が有用です

 

2)お酒をあまり飲まない人でも脂肪肝や肝炎、肝硬変、肝癌になることがある ⇐ お酒をあまり飲まない方にとって、肝臓病は盲点です

 

3)女性では男性の3分の2のアルコール摂取量でアルコール性肝障害をおこすことがある ⇒ お酒の好きな女性は要注意です

 

4)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、非アルコール性であることを確認し、超音波検査などの画像検査で脂肪肝の所見があって、他の肝臓の病気がないことを確認すれば診断できる

⇒ 杉並国際クリニックで診断することができます。

 

5)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝生検をしないと確定診断ができない ⇒ 杉並国際クリニックでは肝生検を実施していないので、確定診断が必要な場合は、肝臓病専門病院に紹介することになります。

 

しかし、高円寺南診療所時代の30年間では、ほとんどが脂肪肝どまりであり、例外的に肝硬変や肝癌を発見することがありました。脂肪肝の段階で原因となる飲酒習慣やメタボリックシンドロームの是正にむけての介入を行うことによって改善もしくは現状維持をはかることができました。肝生検をしなければならない状態まで放置しないことが肝要だと思います。

日本肝臓病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、日本肝臓学会ガイドラインとして、8件が掲載されていました。

 

その中で、杉並国際クリニックの患者さんに情報提供すべき優先順位から考えて、

NASH・NAFLDの診療ガイド2010

 

 を採り上げることにしました。

 

 

そこで、以下のメッセージが書かれていましたので、ご紹介した後、杉並国際クリニックの立場から、解説を加えてみます。

 

NASH・NAFLDの診療ガイド2010要約版の公開について

 

※    NASH・NAFLDの診療ガイド2010 

 

わが国の肝癌はC型肝炎などウイルス性肝疾患が大部分を占めていましたが,最近では非ウイルス性の症例が増加しており,その多くはNASHなど脂肪性肝炎に起因すると考えられています。

 

特に,2014年以降はC型肝炎に対するdirect-acting antiviral agent(DAA)が次々と登場する見込みで,肝癌対策におけるNASH,NAFLDの重要性が増しています。

 

日本肝臓学会は2010年に「NASH・NAFLDの診療ガイド」を発表し,今後はその改訂作業を進める予定です。そこで,同改訂版を発表するまでの期間,診療ガイド2010年の要約版を公開することにしました。日ごろの診療にご利用いただくとともに,改訂版の作成に向けて,ご意見をいただければ幸いです。

 

平成26年10月15日

 

 

 

杉並国際クリニックの立場から

NASH・NAFLDの診療ガイド2010要約版の公開についての巻頭文の主旨は、

<わが国の肝癌は・・・最近では非ウイルス性の症例が増加しており,その多くはNASHなど脂肪性肝炎に起因すると考えられています。>

ということと、

<肝癌対策におけるNASH,NAFLDの重要性が増しています。>

 

これを言い換えると、ウイルスではなく脂肪性肝炎に起因するNASH,NAFLDという疾病が増加していて、これが肝癌の原因になるため、肝癌の予防対策のために、日常の診療に役立つ、脂肪肝炎、NASH,NAFLDの対応のための診療ガイドを公表するということになるでしょう。

 

肝臓に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝ですが、お酒をあまり飲んでいなくても脂肪肝は発生し、これが進行すると脂肪肝炎や肝硬変になります。この間の一連の肝臓病のことをNASHやNAFLDと呼びます。これらの病態からもウイルス性肝炎のように肝癌発生しやすくなるという事実があります。

 

次回から、しばらくの間、NASH・NAFLDの勉強を続けてみたいと思います。

日本消化器病学会ホームページ

 

を検索してみました。

すると、

患者さんとご家族のためのガイド

が公開されていますので、ご参考になさってください。

 

 

規定により直ちに転載できませんので、「消化性潰瘍」の概要を紹介し、コメントを加えることにしました。

 

Q10 

消化性潰瘍の予防は、どのようにするのでしょうか?

 

Q10-1

消化性潰瘍の予防は、どうするのでしょうか?

 

 

消化性潰瘍の多くは、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症が原因です。

ですから、原因菌であるピロリ菌の除菌治療が再発予防のためには有効です。

除菌療法のメリットは、除菌に成功すれば、その後は長期間にわたる潰瘍治療の必要がなくなると考えられているからです。

 

 

Q10-2 

消化性潰瘍の再発を予防するには、どうしたらよいでしょうか?

  

脳卒中や心筋梗塞の再発予防のために少量のアスピリンを長期間処方されている患者さんの場合、以前に消化性潰瘍を発症したことのある人では、アスピリンによる潰瘍再発のリスクが高いといわれています。アスピリンは非ステロイド性抗炎症薬の一種です。このような人にもプロトンポンプ阻害薬もしくはP-CABを併用することが潰瘍の再発予防に有効とされています。

 

なお、変形性関節症や関節リウマチなどで非ステロイド性抗炎症薬の服用を続ける必要がある場合は、なるべくCOX-2選択的阻害薬に変更することを試みます。そして、酸分泌抑制薬(プロトンポンプ阻害薬、P-CAB)により胃酸の分泌を抑えたり、プロスタグランディン製剤により粘膜を保護したりすることによって潰瘍の再発を予防します。

 

潰瘍発症の原因は、他に喫煙やストレスが依然として重要です。ヘリコバクター・ピロリ菌や非ステロイド性抗炎症薬ばかりが注目されていますが、禁煙指導は臨床医としては基本的任務であり、ストレス・マネジメントの重要性は軽視されてはならないものと認識すべきだと思います。

 

 

日本消化器病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、「患者さんとご家族のためのガイド」が公開されていますので、ご参考になさってください。

 

規定により直ちに転載できませんので、「消化性潰瘍」の概要を紹介し、コメントを加えることにしました。

 

 

Q7 

ピロリ菌の除菌治療は、どうするのでしょうか?

 

Q7-1

ピロリ菌の除菌治療は、どんなお薬を使うのですか?

 

A7-1

最初の治療は、胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬またはカルシウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)と2種類の抗生物質(アモキシシリン、クラリスロマイシン)を7日間内服します。これらの3種類の薬がパックになった製剤があり、内服を忘れないために便利です。

 

ただし、除菌の成功率は70~90%程度で、失敗の理由としては、①きちんと薬を服用できていなかった場合、②抗生物質が効かない場合(近年では、クラリスロマイシンが効かない耐性菌が増えていることが懸念されています。)

 

なお、除菌治療がある程度成功したように自覚できる場合であっても、ピロリ菌が残っていると、いずれ潰瘍が再発するおそれがあります。そのため、除菌の成否を確認することが重要です。もっとも正確な除菌判定法は尿素呼気試験ですが、プロトンポンプ阻害薬の影響を受けるために、この方法での除菌判定は、プロトンポンプ阻害薬の内服終了から4週間以降に行います。

 

杉並国際クリニック(高円寺南診療所改め)では、ピロリ菌感染の診断には、プロトンポンプ阻害薬の影響を受けず、検査法も煩雑ではない血中抗体検査でピロリ菌除菌後の評価を行っています。検査の結果、1回目の治療で除菌できない場合は、お薬を少し変更して二次除菌を行います。

 

Q7-2

ピロリ菌の二次除菌とは、どんな治療ですか?

 

A7-2 

1回目の除菌が成功しなかった場合に、お薬を替えて行う2回目の除菌療法を二次除菌と呼びます。二次除菌は、プロトンポンプ阻害薬またはP-CAB・アモキシシリン・メトロニダゾールを7日間服用します。

 

二次除菌の際に気をつけるべきこととして、メトロニダゾールの服用時はお酒を飲むことが禁じられています。

 

二次除菌の成功率は約90%であるため、2回の除菌により約97%の人は除菌に成功します。

 

 

Q7-3

二次除菌に失敗した後にも治療できるのですか?

 

A7-3 

二次除菌に失敗しても三次除菌を行うことはできます。しかし、三次除菌は保険診療では行えないため、自費での治療となります。除菌治療による副作用の多くは軽い軟便程度ですが、薬疹や重い下痢が見られた場合は、速やかに主治医に相談するようにしましょう。一度、除菌が成功すれば、ピロリ菌の再感染はまれであり、除菌後にピロリ菌が再陽性となるのは、年間0~2%程度とされています。

日本消化器病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、「患者さんとご家族のためのガイド」が公開されていますので、ご参考になさってください。

 

規定により直ちに転載できませんので、「消化性潰瘍」の概要を紹介し、コメントを加えることにしました。

 

 

Q6 

消化性潰瘍の治療は、どうするのでしょうか?

 

Q6-1

消化性潰瘍は、お薬でなおせるのですか?

 

A6-1 

基本的には内服薬による治療を行います。

胃酸の分泌を抑える薬、胃粘膜の防御機能を高める薬など、

 

 

Q6-2 

消化性潰瘍は、治療をはじめてどのくらいの期間で治せますか?

 

A6-2

通常、薬を始めてから6~8週間で潰瘍は治癒します。

しかし、日常生活全般の改善を図らないと、再発します。

 

Q6-3 

消化性潰瘍は、再発することがあるとのことですが、再発を防ぐにはどのようなことに注意したらよいですか?

 

A6-3

暴飲暴食を避けるなどの食事上の注意や、喫煙やアルコールを控える、ストレス解消に努める、などはよく心がけてください。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していると消化性潰瘍がいったん治っても再発し易いこと、がんの原因になり易いことなどが知られています。

このため、ピロリ菌が見つかった場合には、適切なタイミングで除菌治療を受けることをお勧めします。

 

また、他の病気の治療のために投与される非ステロイド性抗炎症薬やアスピリンなどは、消化性潰瘍の原因になりえます。主治医とともに、なるべく、これらの薬物を減量できるような工夫をはじめましょう。

 

最近はかなり減りましたが、消化性潰瘍の合併症として穿孔(潰瘍が深くなって胃や十二指腸の壁に穴が開いてしまうことで、腹膜炎を発症します)や吐血などがあります。消化性潰瘍の再発防止はとても大切です。

内科2

 

日本消化器病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、「患者さんとご家族のためのガイド」が公開されていますので、ご参考になさってください。

 

規定により直ちに転載できませんので、「消化性潰瘍」の概要を紹介し、コメントを加えることにしました。

 

Q5ピロリ菌感染や除菌効果の診断は、どのようにすればよいのですか?

 

Q5-1ピロリ菌感染はどうすれば診断できるのでしょうか?

 

A

ヘリコバクター・ピロリ菌の感染による「ピロリ感染胃炎」の診断には、

①内視鏡検査、②バリウム検査(エックス線造影検査)のいずれかを行います。

 

通常は①によりピロリ感染胃炎であることを診断し、その後、ピロリ菌感染の診断を行うのが一般的です。

 

ただし、杉並国際クリニック(高円寺南診療所改め)では、胃全体像を捉えることができ、しかも頻度の多い機能性上部消化管障害を評価し易い②バリウム検査(エックス線造影検査)で行っています。

 

 

ピロリ菌感染の診断には複数の方法があります。

 

①抗体検査、

②尿素呼気検査、

③便中抗原検査、

④ウレア―ゼ試験、

⑤培養検査、

⑥顕微鏡検査、

⑦血液中ペプシノゲン検査

 

 

これらのうち、非侵襲的検査法といって患者さんにとって負担が軽い方法は、

 

①抗体検査(尿または血液中のピロリ菌に対する抗体を測る検査)

②尿素呼気検査(ピロリ菌が持つウレア―ゼという酵素の働きを呼気で調べる検査)

③便中抗原検査、です。

 

 

これらに対して、侵襲的検査法として胃粘膜の組織を採取する内視鏡検査での診断法として、

 

④ウレア―ゼ試験(ウレア―ゼの働きを生検組織の入った試験液の変化で判断)

 

⑤培養検査

 

⑥顕微鏡検査

 

 

以上の他に、保険診療の適用外(保険が使えず、自費の検査)にも有用な検査法があります。

⑦血液中ペプシノゲン検査(蛋白質を分解する消化酵素であるペプシンの前駆物質を調べる)

 

 

除菌前の感染診断には、①抗体検査、④ウレア―ゼ試験、が便利です。

 

ただし、④ウレア―ゼ試験、は内視鏡による組織採取を行うため、採取する部位によっては正確な診断が得られない場合があります。

 

また、②尿素呼気検査、③便中抗原検査は、より正しく診断可能な検査ですが、検査方法が煩雑という実際上の難点があります。

 

 

そこで、杉並国際クリニック(高円寺南診療所改め)では、①抗体検査、採用していますが、年内に、②尿素呼気検査の導入を検討中です。

 

なお、胃潰瘍の治療中の患者さんに対しても感染診断検査は適用できますが、治療薬のプロトンポンプ阻害薬(PPI)には静菌作用があるため、PPI投与中止後2週間以上を空けて検査します。PPIは保険適応上、胃潰瘍は8週間、十二指腸潰瘍は6週間という制限があるため、投与終了後2週間以降も検査のタイミングとして活用できます。

 

 

Q5-2ピロリ菌の除菌がうまくいったことを診断するにはどうすればよいのですか?

 

A5-2ピロリ菌除菌後の評価を行う方法は3つあります。

①尿素呼気試験、

②便中抗原検査、

③血中抗体検査

 

これらのうち、①と②は除菌治療から4週以上(2~3か月が望ましいです)経ってから行います。

    

これらに対して、③は除菌治療から6ヵ月以上経ってから行いますが、除菌前のデータ数値と比較することで除菌が成功したかを判定します。

     

杉並国際クリニック(高円寺南診療所改め)では、ピロリ菌感染の診断に血中抗体検査を採用しているため、ピロリ菌除菌後の評価も血中抗体検査を行っています。

内科2

 

日本消化器病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、「患者さんとご家族のためのガイド」が公開されていますので、ご参考になさってください。

 

規定により直ちに転載できませんので、「消化性潰瘍」の概要を紹介し、コメントを加えることにしました。

 

 

Q4 

どのようにして消化性潰瘍の診断をするのですか?

 

A4 

消化性潰瘍が疑われたら、まず内視鏡検査やバリウム検査(エックス線造影検査)により潰瘍があるかを確認します。

 

 

最近では、内視鏡検査を行う方が多いです。これには、口から入れる内視鏡(経口内視鏡)のほか、近年は鼻から入れる径の小さい内視鏡(経鼻内視鏡)が普及しています。内視鏡のメリットの1つ目は、とくに出血が疑われる場合は緊急に検査を行い、必要に応じて止血処置を行うことができることです。

 

メリットの2つ目は、生検といって、病変部位から組織の一部を採取し、顕微鏡による病理診断を行って良性・悪性(がん)の確認ができるというメリットがあります。ただし、経鼻内視鏡では止血処置はできません。

 

また、アレルギー性鼻炎の方、鼻中隔湾曲症のある方、その他、鼻づまりの傾向にあり、ふだんから口呼吸をしている方には余りお勧めできません。いずれの方法とも内視鏡検査では、構造や粘膜の色調など局所の表面に異常しか確認できません。胃の全体像や胃の位置はおろか、周辺臓器との位置関係も不明です。症例数の多い胃下垂や食道裂孔ヘルニアなどの診断にも不向きです。

 

粘膜表面に異常が認められなければ、患者さんが症状を訴えているにもかかわらず、異常なし、あるいは機能性ディスペプシアと診断するのみで、有効な治療選択には繋がりにくいことが多いことが残念です。

 

ですから、内視鏡検査が普及・発達してきた現在でも、消化管造影は有用です。消化管を広い範囲で観察でき、病変の大きさや存在する部位を客観的に評価できる点で優れています。これらの情報は、外科手術の術前検査や、化学療法の治療効果判定に不可欠な検査となっています。また消化管に穴が開くなどの合併症のリスクがなく、内視鏡挿入困難例でも施行可能で、スクリーニング検査としても有用です。

 

高円寺南診療所は杉並国際クリニックに移行しても、バリウム検査(エックス線造影検査)を継続する予定です。

 

その理由は、第1は空間的な広がり:胃の全体像が見られるからです。これは、形の異常だけではなく胃の機能異常の有無を確認するためにも必要な条件です。また線状の微細な変化などは色調変化を伴う内視鏡よりわかりやすいです。

 

第2に時間的な連続性:エックス線テレビ透視撮影装置を備えているため、これを駆使してリアルタイムに連続的に体内情報が得られるからです。第3に生理的機能との整合性:検査で使用するバリウムは、X線を透過しないので、バリウムが口から食道、胃、十二指腸へと流れていく様子を動画で見ることができます。バリウムの流れは、そのまま、私たちの食事の流れということになりますので、食後の胃の形や位置、食物が食道や胃、十二指腸を通過する際に通過しにくくなっていないか、狭くなっていないかどうかを見ることができます。

 

その他のメリットとしては、胃潰瘍の他にポリープや胃がんも発見でき、治療に結びつけられます。胃X線による胃がん検診については、検査の感度(がんがある人を正しく診断できる精度)は70~80%といわれていますが、減少効果を示す相応の証拠があり、対策型検診として実施することが勧められています。胃潰瘍を否定する結果だとしても、消化管の病態や機能を理解する手掛かりが得られることは重要です。

 

この検査は、まず、空気を出して胃を膨らませる発泡剤を飲みます。その後、X線を反射するバリウム(造影剤)を飲んで撮影したいところにバリウムがうまく付着するように体を動かすことによって胃壁にバリウムを付着させます。そして胃壁の凹凸をエックス線により描出することで調べる検査です。潰瘍により粘膜が欠損して窪んだ部位にバリウムが入りこむことで、潰瘍の大きさや深さ、拡がりを確認できます。

 

 

胃X線検査のデメリット

X線による放射線の被曝(ひばく)があります。自然のなかで浴びる放射線と同程度なので、健康に大きな影響を及ぼすことはありません。ただし、消化管造影はX線を用いた検査であるため、妊娠可能な年齢の女性では、妊娠の可能性が無い時に受けてください。

 

ただし消化管造影検査後に妊娠が判明した場合でも、広島の原爆の追跡調査から、基本的には消化管検査の被曝量では胎児に奇形等の影響を及ぼさないことが判明していますので、通常は心配ありません。さらにバリウムの誤飲や便秘などの偶発症が起きることがありますが、予め下剤を内服することで便秘になった方は幸い経験していません。

日本消化器病学会ホームページを検索してみました。

すると、「患者さんとご家族のためのガイド」が公開されていますので、ご参考になさってください。

 

規定により直ちに転載できませんので、「消化性潰瘍」の概要を紹介し、コメントを加えることにしました。

 

 

Q3 

どうして消化性潰瘍になるのですか?

 

A3 

私たちの胃の中では、食べたものを消化したり侵入してきた細菌を殺したりするために、胃酸や消化酵素を含んだ胃液が分泌されます。このとき、正常な状態では胃酸から粘液も同時に分泌されることによって自分の胃粘膜が消化されずに保護することができます。つまり、胃粘膜の攻撃因子(胃酸、消化酵素など)と胃粘膜の防御因子(粘液)とのバランスが崩れると潰瘍ができやすい状態になります。この考え方を「Shayの天秤説」といい、1980年(昭和の終わり)くらいまでは主流の考え方でした。

 

 

Q3-1 

消化性潰瘍の主な原因は?

 

A3-1 

原因の多くがヘリコバクター・ピロリ菌の感染によるものです。

次が、痛み止めの薬(非ステロイド性抗炎症薬)です。

 

 

Q3-2 

喫煙やストレスが原因でも消化性潰瘍になりますか?

 

A3-2 

ピロリ菌に感染している人では喫煙やストレスにより潰瘍になり易いことがわかっています。ただし、喫煙やストレスだけでは潰瘍の原因にはならないとガイドラインには書かれています。

   

胃粘膜の攻撃因子(胃酸、消化酵素など)と胃粘膜の防御因子(粘液)とのバランスが崩れると潰瘍ができると考える「Shayの天秤説」に基づき攻撃因子を抑制する薬剤と防御因子を高める薬剤を併用しても潰瘍が治癒するかどうかの予測は困難で、3分の1くらいが外科手術に回っていた時代がありました。やがてH2ブロッカーの登場によって消化性潰瘍の8-9割が治るようになり、平成3年(1991年)にPPIが開発され、ランソプラゾール(タケプロン®)30mgを1日1錠服用するだけで、難治性を含めた胃・十二指腸潰瘍の9割が8週間以内に治るなど、攻撃因子を抑制するだけで消化性潰瘍が治り、「Shayの天秤説」が否定されました。  

 

やがて平成に入る前にピロリ菌が発見され、消化性潰瘍発生との関係が明らかになり、国内外の消化性潰瘍ガイドラインで推奨されるようになりました。そしてピロリ菌除菌による消化性潰瘍治療が保険適用されたことで、消化性潰瘍は完治する病気と考えられるようになりました。

    

しかし、高円寺南診療所での30年間の臨床経験からいえば、ガイドライン通りではないケースもあり、鵜呑みにはできないと考えています。

   

むしろ大学病院でのガイドライン通りの治療では治らなかった患者さんが高円寺南診療所に集中しました。その多くがストレスフルな毎日を過ごす喫煙者でした。

    

喫煙やストレスは胃潰瘍のリスクであり、増悪因子である可能性については、しっかりと言及すべきではないかと思います。また胃潰瘍との鑑別が問題になる胃がんの発生については多くの研究が行われています。

 

胃癌も正常な胃粘膜からは直接発生しません。ピロリ菌が慢性胃炎を引き起こし、長い経過を経て一部が癌化することが明らかになってきました。ピロリ菌の除菌療法が普及すると慢性胃炎がなくなり、胃癌も発生しにくくなります。若年者に多く見られる未分化型胃癌もなので、中学生など若年者を対象にしたピロリ菌除菌を普及させようという試みがさまざまな自治体で始まっています。

    

胃がんも胃潰瘍と同様にヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染などの他に喫煙や食生活などの生活習慣が胃がん発生のリスクを高めると評価されています。仮に喫煙が潰瘍の原因にはならないとしても、より恐ろしい胃がんの原因になっているということに言及しない一般向けガイドラインは検討不足であると考えます。

 

これに関する情報をもっと読みたい方は、国立がん研究センターがん情報センターの一般の方向けサイトをご参照ください。

 

 

Q3-3 

なぜピロリ菌に感染している人は潰瘍が発症しやすくなるのですか?

 

A3-3 

ピロリ菌に感染している人では、胃粘膜を守る粘液の分泌が低下しやすいからです。そのため胃酸や消化酵素などの粘膜攻撃因子により胃粘膜 に炎症が起こりやすくなることで潰瘍が発症しやすくなります。

 

また十二指腸潰瘍は、胃に比べると胃酸に対する抵抗力が弱いです。ピロリ菌感染により、防御力が低下すると胃酸の分泌が高くなり、十二指腸の粘膜が傷つけられやすくなることで生じやすくなります。

 

感染していることがわかれば除菌療法が推奨され、定期的な胃の検診 を受けることが勧められます。感染の有無に関わらず、禁煙する、塩や高塩分食品のとり過ぎに注意する、野菜、果物が不足しないようにするなどの配慮が重要となります。

日本消化器病学会ホームページを検索してみました。

すると、「患者さんとご家族のためのガイド」

 

が公開されていますので、ご参考になさってください。

 

規定により直ちに転載できませんので、「消化性潰瘍」の概要を紹介し、コメントを加えることにしました。

 

Q2

消化性潰瘍の患者さんはどれくらいいるのでしょうか?

放っておくとどうなるのでしょうか?

 

Q2-1

消化性潰瘍の患者数は?

 

 

A2-1 

消化性潰瘍には胃潰瘍と十二指腸潰瘍があります。

 

厚生労働省の平成26年度調査によると、胃潰瘍はおよそ29.2万人、十二指腸潰瘍はおよそ4.4万人と推定されます。

 

 

 

Q2-2 

今後、消化性潰瘍は増えるのでしょうか?

 

A2-2 

いずれも最盛期を超えて年々減少しているので、杉並国際クリニックの見解としては、当面の間はこの傾向が続くが、長期的には底を打つのではないか、と推定しています。

 

胃潰瘍の最盛期は平成5年ごろで110万人強、現在はその約4分の1

 

十二指腸潰瘍の最盛期は昭和59年頃で50万人弱、現在は約10分の1

 

その理由は、

1)消化性潰瘍の主因であるピロリ菌感染者が減少してきた

2)消化性潰瘍の治療に有効な薬剤が処方されるようになった

3)ピロリ菌の除菌治療が普及した

 

ただし、わが国では現在も高齢化が進行しています。

 

それに伴い運動器系の疼痛を訴える患者さんは増え、実際に非ステロイド性抗炎症薬の服用者は増えています。

 

つまり、現時点ですでに薬剤性潰瘍の割合が高まっていると考えられています。

 

 

杉並国際クリニックは、リウマチ科として非ステロイド性抗炎症薬を処方を要することが多い、変形性関節症、骨粗鬆症、関節リウマチの患者さんを多数診療しています。これらのうちで最も頻度が少ない関節リウマチの患者さんは、わが国では約70万人と、消化性潰瘍の患者さんのおよそ2倍の数です。

 

水氣道の継続会員は変形性関節症、骨粗鬆症、関節リウマチの患者さんが多数を占めていますが、非ステロイド性抗炎症薬の処方量は顕著に減少しています。痛み止めである非ステロイド性抗炎症薬を全く内服しないで済むようになった方が増えています。

 

水氣道の継続会員は、まだ70名を超える程度にすぎませんが、水氣道が普及することによって、変形性関節症、骨粗鬆症、関節リウマチの患者さんの治療に役立てるのみならず、非ステロイド性抗炎症薬の減量、ひいては薬剤性潰瘍の減少に貢献できると考えています。