最新の臨床医学 4月1日(月)内科Ⅰ(消化器・肝臓)

日本肝臓病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、日本肝臓学会ガイドラインとして、8件が掲載されていました。

 

その中で、杉並国際クリニックの患者さんに情報提供すべき優先順位から考えて、NASH・NAFLDの診療ガイド2010

 を採り上げることにしました。

 

Q&Aをご紹介した後、杉並国際クリニックの立場からにて、解説を加えてみます。

 

 

Q1

NAFLDやNASHってどんな病気ですか?

 

A1 

肝臓に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝です。脂肪肝には、お酒を飲み過ぎた人がなるアルコール性脂肪肝と、お酒をあまり飲んでいないのに肝臓に脂肪がたまってしまう非アルコール性の脂肪肝があります。

 

お酒の飲み過ぎは脂肪肝に留まらず、肝炎や肝硬変になることがよく知られていますが、お酒をあまり飲んでいない非アルコール性の脂肪肝の人でも同じように肝臓の病気が進行してしまうことがあります。

 

このように非アルコール性の脂肪肝から脂肪肝炎や肝硬変に進行した状態までを含む一連の肝臓病のことを「非アルコール性脂肪性肝疾患」(英語表記non alcoholic fatty liver diseaseから「NAFLD(ナッフルディー)」)といいます。

 

つまり、NAFLDはアルコールを除くいろいろな原因で起こる脂肪肝の総称です。その多くは、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧を伴っていて、メタボリックシンドロームの肝臓病と考えられています。

 

“非アルコール性”とはいえ、一滴もお酒を飲まない人だけではなく、少量の飲酒をしている人にみられる脂肪肝もNAFLDに含まれます。1日あたり純エタノールとして男性で30g以上、女性では20g以上のお酒を毎日飲み続けるとアルコール性肝障害を起こすことがあるといわれており、これはビールならば男性で1日あたり750mL(大瓶1本強)、日本酒なら1合半、ワインはグラス2杯半、ウィスキーではダブルで1杯半に相当します。つまり、此れよりも1日の飲酒量が少ない人(女性ではその2/3より少ない人)にみられる脂肪肝がNAFLDということになります。

 

NAFLDのうち80~90%は長い経過をみても脂肪肝のままで、病気はほとんど進行しません。これをNAFLDの病気を意味する「D(Disease)」を除いてNAFL(ナッフル)といいます。しかし、残りの10~20%の人は徐々に悪化して、肝硬変に進行したり、なかには肝がんを発症したりすることもあります。

 

この脂肪肝から徐々に進行する肝臓病のことを「非アルコール性脂肪肝炎」(英語表記non alcoholic steatohepatitisから「NASH(ナッシュ)」といいます。

 

NAFLDは、非アルコール性で超音波検査やCT検査などの画像検査で脂肪肝の所見があって、他の肝臓の病気がないことを確認すれば、診断することができます。一方、NASHは肝臓の組織を調べる肝生検をしないと確実に診断することができません。

 

 

杉並国際クリニックの立場から

解り易い解説だったと思いますが、いかがでしょうか。

ポイントを列記して、コメントを述べます。

 

1)メタボリックシンドロームは肝臓病を引き起こすことがある

⇒メタボリックシンドロームでは肝機能検査や腹部超音波検査が有用です

 

2)お酒をあまり飲まない人でも脂肪肝や肝炎、肝硬変、肝癌になることがある ⇐ お酒をあまり飲まない方にとって、肝臓病は盲点です

 

3)女性では男性の3分の2のアルコール摂取量でアルコール性肝障害をおこすことがある ⇒ お酒の好きな女性は要注意です

 

4)非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、非アルコール性であることを確認し、超音波検査などの画像検査で脂肪肝の所見があって、他の肝臓の病気がないことを確認すれば診断できる

⇒ 杉並国際クリニックで診断することができます。

 

5)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝生検をしないと確定診断ができない ⇒ 杉並国際クリニックでは肝生検を実施していないので、確定診断が必要な場合は、肝臓病専門病院に紹介することになります。

 

しかし、高円寺南診療所時代の30年間では、ほとんどが脂肪肝どまりであり、例外的に肝硬変や肝癌を発見することがありました。脂肪肝の段階で原因となる飲酒習慣やメタボリックシンドロームの是正にむけての介入を行うことによって改善もしくは現状維持をはかることができました。肝生検をしなければならない状態まで放置しないことが肝要だと思います。