最新の臨床医学 4月8日(月)内科Ⅰ(消化器・肝臓)

日本肝臓病学会ホームページを検索してみました。

 

すると、日本肝臓学会ガイドラインとして、8件が掲載されていました。

 

その中で、杉並国際クリニックの患者さんに情報提供すべき優先順位から考えて、

NASH・NAFLDの診療ガイド2010

を採り上げることにしました。

 

 

Q&Aをご紹介した後、杉並国際クリニックの立場から、解説を加えてみます。

 

Q2

NAFLD/NASHの患者さんはどれくらいますか?

 

A2 

NAFLDの有病率は、日本では9~30%と報告されており、患者さんは全国で1,000万人以上いると考えられています。肥満の人やメタボリックシンドロームの患者さんの増加に伴って患者数は増えており、とくに肥満男性の増加が社会問題となるなかでNAFLDの男性も増えていることが懸念されています。また、日本におけるNAFLDの年齢分布は、男性は中年層、女性は高齢層に多い傾向であることが報告されています。

 

NASHの有病率は3~5%と推定されています。全国の肝硬変患者さん約33,000人の原因を調査した報告では、約3/4はウイルス性肝炎が原因で、NASHは2.1%でした。NASHの年齢分布については明確なデータはありません。

 

小児のNAFLDの有病率は少なくとも3%と報告されていますが、年齢の上昇とともにNAFLDの有病率は上昇します。小児のNASHの有病率については明確なデータはありません。

 

メタボリックシンドロームがあるとNAFLDやNASHを発症しやすく、とくに肥満(ウェスト周囲径の増大)はNAFLDやNASHの強い危険因子であり、また高血糖や脂質異常も主要な危険因子です。NAFLDの人がメタボリックシンドロームを合併している場合は、NAFLではなくNASHの可能性が高くなります。

 

 

杉並国際クリニックの立場から

NAFLD(あるいはNASH)とかNASHの略号が使われているので、とっつきにくく難しく感じられそうです。そこで、まずおさらいです。

 

イニシャルのNAは英語表記のnon alcoholicの頭文字で、“非アルコール性”を意味します。‘肝臓’という名詞は英語でLiver、形容詞である‘肝臓の’は英語でhepaticと表記するので、少し複雑ですが、要するに、お酒をあまり飲まない人に生じる肝臓病です。この肝臓病の原因は肝臓の組織に蓄積する脂肪です。‘脂肪’は英語でFatといいますが、‘脂肪の’という形容詞になるとfattyになり、さらに‘脂肪性肝炎’などの場合には、steatohepatitisという表現になり英語のネーティブでも難しい表現になります。ちなみにhepatitisとは肝炎を表します。

 

さて、ここで再確認しておきたいことは、お酒をあまりのまなくてもおこってしまう肝臓病であるNAFLDの患者さんが日本全国で1,000万人以上もいて、ざっと10人に1人がかかっている、いわば国民病であるということです。とくに肥満傾向の中年男性や高齢の女性に対しては、これまで以上に慎重に肝機能検査を実施したり、超音波検査で確認したりする必要があると思われます。