第一部では、聖楽療法の理論の背景としての心身医学について概説し、そのうえで新しい心身医学の考え方を明確にします。

 

第二部は、聖楽院とは何かについて、その起源を述べ、いくつかの心身医学的アプローチをどのように応用して発展してきたかを省察します。

 

第三部は、心身医学の理論に根ざした聖楽院の哲学的な基礎概念を示し、心身医学療法の領域において水氣道の考えが心身医学療法の一般的な理論となりうるかを論じます。

 

第四部では、聖楽療法理論の一般的理論としての側面について、その概略を述べます。

 

 

本稿全体の焦点は、現在の臨床実践の概念的枠組みおよび聖楽療法の理論を考えていくために、新しい心身医学療法の一般的な理論的枠組みを提供することです。

 

そのため聖楽療法の実践例を十分に示しながら、聖楽療法とはどのようなものかを描写します。

 

 

新しい心身医学療法の理論的概念の骨組みを通して、統合的視野を持って参加者のニーズを満たすような実践を行う姿勢を示すことで、聖楽療法実践者にとって常に望ましい臨床的姿勢とは何か、ということについての説明を試みます。

 

 

聖楽院への参加やレッスンプログラムの作成や指導活動から得られる喜びのすべてが、聖楽療法のプロセスの本質です。

 

この本質は、多様な臨床場面に応用でき、効果的な療法の基礎を形成するものです。レッスン生が意味のある体験を創造するために、こうした観点が重要な役割を果たしてきました。

 

できるだけ多くの心身医学療法の実践領域に伝えていくことを目的としたいと思います。

 

本書は、聖楽院の考えを心身医学療法理論の基礎と考える、という議論を通してその目的を果たそうとするものです。

 

B組定例稽古

 

2020年2月6日(木)

時間帯:10:00~11:30am

レッスン場所:東高円寺<音海>会場

進行:聖楽院主宰 飯嶋正広

ファシリテーター:松田要

ピアノ伴奏:A組担任・B組協力ピアニスト中村達郎

参加者:レッスン生2名(ファシリテーター1名、体験生1名)

 

 

プログラム

 

1) 体慣らし

水氣道体操前編(第1節:首体操、第2節:肩体操、第3節:体幹体操)

ファシリテーターにより提示。

 

2) 声慣らし

聖楽院式発声練習:スケールエクササイズ(ハミング+実声)

音高上昇に伴い段階的に共鳴焦点を移動させる聖楽院式共鳴増強法:<迎香穴>を共鳴の焦点とする歌唱レッスン

 

3)コンコーネ50番で歌う小倉百人一首No1(中声用)

初回参加者の声域点検

五線譜の中のドからオクターブ上のドまで、次いでオクターブ上のドからレ・ミまで上昇し、最後に順次に下降するスケールとしてコンコーネ50番のNo1を用いた。

 

Step1:「ア」による母音唱法

 

Step2:階名唱法

 

Step3:小倉百人一首の歌詞による唱法

 

  
レッスン生の気づきのコメント

〇 ファシリテーターを務めることによって、譜面上のすべての音を無理なく発生することができた。


〇体験生はファルセット様発声を常とするために、ファシリテーターより1オクターブ高い声での発声であったが、協調してレッスンすることができた。

 

〇体験生は、高いドから始まり、1オクターブ低いドまで発声することができた。

ファルセットの高音部分のみならず低音の発声の際にも、喉頭周辺部位に激しい痛みを感じた。

 

 

主宰によるまとめ:
  

体験生は、五線譜内の中間音の発声を苦手としている。

またファルセットのときだけでなく、低音を発生するときにも必要とされる声帯の伸張に伴って局所の疼痛が生じるパターンを観察することができた。

第一部 心身医学療法における聖楽療法理論のコンテクスト(その2)

 

第2章 心身医学療法における理論

 

 

従来の心身医学療法における理論の役割

 

心身医学療法の適応は、心身症とされています。心身症とは「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。

ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」(“心身医学の新しい診療指針”日本心身医学会教育研修委員会編、1991)と規定されています。

 

 

心身症とは独立した疾患単位を指すのではなく、身体疾患の中で心身相関の病態が認められる場合をいいます。つまり、心身症というのは病態であって病名ではないということです。

 

心身症には、現実的なストレス環境に由来する「現実心身症」と、むしろストレスの受け止め方、対処の仕方など、本人の性格特性に由来する「性格心身症」に大別されます。両者に共通するのは病気の発症や、その経過に種々のストレッサーが大きく関与していることです。

こうした疾患はストレス関連疾患と呼ばれ、以下のような広範な器官系統に病状が現れます。

 

〇 消化器疾患:

急性胃粘膜病変、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、発作性腹部膨満症、慢性膵炎

 

〇 呼吸器疾患:

気管支喘息、過換気症候群

 

〇 循環器疾患:

不整脈、本態性高血圧症

 

〇 代謝疾患:

特発性低血糖症

 

〇 アレルギー性疾患:

コリン性蕁麻疹

 

〇 膠原病:

全身性エリテマトーデス、関節リウマチ

 

〇 神経系疾患:

片頭痛、自律神経失調症

 

〇 骨筋肉系疾患:

顎関節症、頚肩腕症候群

 

〇 全身疾患:

慢性疲労症候群、線維筋痛症

 

〇 婦人科疾患:

更年期障害、月経痛、骨盤内うっ血症候群、月経異常、無月経、卵巣機能不全

 

 

いかがでしょうか。ストレス関連疾患は上記のリストの他に、ほとんどの生活習慣病とも重なり合っています。

 

これらの病気と全く無関係に過ごしているような方に巡り合うことはむしろ少ないです。
 
 

聖楽院における聖楽療法も、こうした病気の治療に役立てることを目的としていますが、聖楽療法の特記すべき特色は、レッスン生はレッスン中に自分自身が患者であるという意識をもつ必要はなく、むしろ聖楽院のレッスン生であるという認識の上で楽しくレッスンを続けて芸術的に開花していただくことを目標としていただければ治療目的を達成することができることにあります。

2月3日(月)

平成元年度(第56回)の修士課程学位審査公開演奏会は、

1月14日(火)11:00から始まり、2月3日(月)14:30頃に終了しました。

 

最終日の最終演奏が、聖楽院協力アーティストの小松奈津子さんの発表にあたるため本日は、聖楽院基礎科A組の特別課外体験レッスンという名目で、藝大の奏楽堂に向かいました。

 


小松奈津子さんは、藝大大学院で古楽を専攻し、バロック声楽を専門とするソプラノ歌手です。

学位審査というアカデミックな演奏会に相応しく、プログラムに記載されている学位のテーマは「A.スカルラッティのソプラノ独唱のための世俗作品-手稿譜に基づいた演奏解釈を中心にー」とありました。

 

藝大内の奏楽堂で演奏される専攻は独唱、オルガン、オペラそして古楽のみであす。

 

そして、小松さんの声楽のための伴奏を担当する古楽器は、リコーダー、ヴァイオリン、チェロそしてチェンバロが揃うなど、とても贅沢なひと時を過ごすことができました。

 

ホール後方が教員席、中ほどが一般席、前方はクローズドにされていました。予想以上の数の聴衆が一般席に陣取っていました。

 

演奏曲を紹介します。

Jean-Baptiste Drouart de Bousset (1662‐1725)

<Pourquoy, doux Rossignol>

 

Jean-Baptiste Drouart de Bousset

<Quel’angelica bocca ≻

 

Alessandro Scarlatti (1660-1725)

  Cantata 《Solitudini amene》

 

Alessandro Scarlatti

 <Son tutta duolo> Opera 《La donna ancora è fedele》

 

Alessandro Scarlatti

 Cantata 《La Fenice》

 

 

プログラムはJean-Baptiste Drouart de BoussetとAlessandro Scarlattiという同時代を生きた2人の作曲家の作品です。

後者のA.スカルラッティはイタリア古典声楽曲集などでも必ず収載されている名曲も多く、小松さんはこの作曲家の作品を研究して演奏発表に臨んだものと思われます。

 

本日、小松奈津子さんの演奏を聴くことができた方は幸運だったと思います。

 

小松さんの生の演奏の様子をお届けできないのは残念ですが、その代わり、youtubeで検索できたA.スカルラッティの <Son tutta duolo>「私は悩みに満ちて」を他の演奏者による音源をご紹介します。

 

この曲は、聖楽院基礎科の皆様と勉強してみたい曲の一つです。すべての声種(カウンターテナーも含む)で歌うことができます。

 

 <Son tutta duolo>


イタリア語歌詞および日本語訳つき

テノール 井原義則 「私は悩みに満ちて」


メゾソプラノ Cecilia Bartoli


María José Burguillos del Valle

C組定例稽古

 

2020年2月2日(日)

時間帯:11:00~12:00am

レッスン場所:高円寺<ボンジュール>会場

進行:聖楽院主宰 飯嶋正広

ピアノ伴奏:C組協力ピアニスト吉田奈津子

参加者:レッスン生3名

 

 

プログラム

 

1) 体慣らし

水氣道体操第一部(第1節:首体操、第2節:肩体操、第3節:体幹体操)

 

第3節:体幹体操の新しい追加動作の紹介と実践

 

2) 声慣らし

聖楽院式発声練習:

スケールエクササイズ(ハミング+実声)

 

音高上昇に伴い段階的に共鳴焦点を移動させる聖楽院式共鳴増強法:迎香穴⇒四白穴⇒攅竹穴⇒百会穴

 

3) 歌唱レッスン

❶シューマンの歌曲「女の愛と生涯」から4曲

(No1.No4.No6.No7)

 ステップ1:全員でハミングで歌う

 ステップ2:全員で子音(m)と母音(あ)で歌う

 ステップ3:独唱者が飯嶋訳の歌詞で独唱し、他はmaで歌う

 

❷コンコーネ50番で歌う小倉百人一首No1(中声用)から

計5曲(No3.No8.No11.No12.No19)独唱レッスン

 

  
レッスン生の気づきのコメント

 

〇 喉の不調が気になっていたが、いつもより、むしろ声の響き良く歌えた。

 

〇 緊張していたけれども、しっかり最後まで歌うことができた。

 

〇 独唱するとき、他のメンバーがメロディーラインをハミングしてくれると心強い。

 

〇 今日のレッスンを受けて、声の響きが良くなるのを感じた。

聖楽療法は治療法(セラピー)の体系です。

聖楽院でのレッスンは、レッスン中に創造されるものに出会い、人間的に成長していくために存在します。

しかし、聖楽院でのレッスンは特定の病気の治療のためのものではなく、声楽の有意義な体験そのもののために行われます。

このことと聖楽院でのレッスンが治療法(セラピー)の体系であるということは、全く矛盾しません。

 

セラピーにおける聖楽療法の究極の価値は、レッスン生がレッスンに取り組んでいる間に、レッスン生自身や、他のレッスン生、伴奏・共演ピアニスト、指導者やゲストの演奏家、また周囲を取り巻く環境や世界をどう感じて、どう表現できるかによって決まってきます。

 

聖楽院ではレッスン生を「今」という瞬間にいかに引き込むかということ、それが心身医学療法としての聖楽療法の臨床価値を左右します。この価値観は、可能な限り「今に在る」という人の在り方の概念に通じるものです。

 

さて声楽を味わうための方法として、聖楽療法の手引きや教則本などのオリジナル楽譜等を希望する内外の声が常に挙がってきました。

それにもかかわらず、これまであえて成書を作成することは差し控えてきました。

 

その理由は、

第一に、本を読むことによって聖楽療法を理解することには限界があること、

第二に、書物という教育媒体は聖楽療法の正しい理解と懸け離れた大きな誤りに導いてしまう惧(おそれ)があること、

第三に、あえて書物にまとめるにしても、聖楽療法は絶えず成長を遂げているため、着手時期を慎重に選択することが重要であり、聖楽院での実践の成果が一定の水準に達している必要があったためです。

 

そこで、これまでの間、聖楽院では実際のレッスンを通しての「口伝伝承(くでんでんしょう)」という教授方法をとってきました。

この方法はレッスン体験を伴わない書物のみによる学習法よりはるかに優れています。

しかし、それでも聖楽院での価値ある体験の状況を表現するのに用いられる言葉には限界があります。

 

聖楽療法の在り方を習得するために、書物に表した教則本を読んだり、指導者が語ることを直接聞いたりすることよってのみ伝えることが困難な本質があります。

聖楽療法には特有の理論と他の方法では得られない固有の効果がもたらされるため、禅の修行でいう「不立文字(ふりゅうもんじ)」という考え方にも通じる本質が聖楽院にも確かに存在します。

それは聖楽院の方式に則ったレッスンの実践を継続していかなければ修得できないものです。

 

心身医学療法としての聖楽療法理論についても、同様に言葉による記述を超越する要素があります。

そのためにかえって聖楽療法の実践における心身医学的な側面が見落とされていたり、過小評価されたり、歪められかねないという問題があります。

ですから、心身医学療法としての聖楽療法が人々にもたらしうる体験を広めるために、こうした言葉と実践の間に難解な関係が存在するからといって、本を書くことが無意味であることにはなりません。

 

聖楽療法には固有の理論があり、それは聖楽院での実践に起源をもつ理論です。

 

心身医学療法としての聖楽院におけるレッスン中心の考え方および実践の在り方の性質と起源を論じることに加えて、心身医学療法の様々な治療領域や実践方法に応用できる聖楽療法理論のアウトラインを示していきます。

 

9:30~11:30(ピアノ吉田奈津子) レッスン会場:東高円寺・音海

 

開始時間が10:00となったため30分の短縮稽古となった。

ヴァッカイの声楽教本

#1.Vaccaj metodo pratico di canto (Soprano o Tenore),RICORDI

#2.ヴァッカイ声楽教本(ソプラノ・テノール用)編集・上浪明子
   全音楽譜出版社

 

第14課 レチタティーヴォ 

歌唱言語:イタリア語⇒上浪訳日本語⇒飯嶋私訳

 

第15課 まとめ 

歌唱言語:イタリア語⇒上浪訳日本語⇒飯嶋私訳

 

 

まとめ:
リコルディ版のバッカイの楽譜には、イタリア語と英語の対訳での解説が充実している。

とくに作曲者バッカイ自身による注意書きが興味深い。今回は第14課の註を読んでみると音節とアクセントの処理法について有益なヒントが得られる。

 

ここでAとは何か?楽譜上にAという記号(おそらくAccento:アクセントの頭文字であろう)が音符の上に示されていることに気づいた。

 

全音の楽譜(上浪版)では、これらの解説が省かれているのでリコルディ版の楽譜はとても貴重である。次回は、この指示に従って稽古を進めることにする。

 

以下、飯嶋試訳

LEZIONE XIV Il Recitativo

第14課 レチタティーヴォ 
     Scrive Vaccaj:

 

ヴァッカイの註
≪Nel Recitativo è necessaria una sillabazione distinta e decisa, e senza una perfetta accentazione non se ne potra ottenere un buon effetto.

レチタティーヴォでは音節の区分を明瞭にはっきりと発音する必要があるのだが、アクセントを完璧にしないと、優れた効果は発揮できない。

 

 

Allorché s'incontrano due note simili nel mezzo, quella ove cade l'accento della parola dev'essere intieramente convertitia in appoggiatura della seguente: il che più chiarezza viene indicato con una A sopra la nota dell’accento.≫

一つの単語の中に同じ音が含まれている場合には、単語のアクセントがくる音は、それに続く音の長前打音にすべて変換しなければならない。アクセントがくる音の上に表示したAで、その箇所が分かるようにした。

B組定例稽古


時間帯:10:30~11:30
レッスン場所:東高円寺<音海>会場
進行:聖楽院主宰 飯嶋正広
ピアノ伴奏:B組主任ピアニスト吉田奈津子
参加者:レッスン生4名

 

プログラム

 

1) 体慣らし
水氣道体操第一部(第1節:首体操、第2節:肩体操、第3節:体幹体操)
第3節:体幹体操の新しい追加動作の紹介と実践

 

2) 声慣らし
聖楽院式発声練習:スケールエクササイズ(ハミング+実声)

 

3) 歌唱レッスン
コンコーネ50番で歌う小倉百人一首No1(中声用)第1~第25曲から

❶ 合唱+独唱

第1~3曲、第7曲、第8曲、第10曲

❷ 独唱

第11~13曲、第18曲、第19曲、第23曲

 

 

 

レッスン生の気づきのコメント

 

〇 楽譜を高く持つように意識する

他の人達は高く持つと全体的に声が大きく安定していた。自分自身は新しく教わった発声法を試みていた為、高く持つと喉仏が上がる感覚があり上手く出来なかった。

 

〇 ブレスの場所を意識する

全体的には声の伸びが安定したが、今までブレスしていなかった所にブレスを入れた歌詞は慣れてない。だからそこだけは歌いづらかった。

 

〇 歌詞と音との配置を意識する

教材のCDを何度か聞き直して配置を覚え直していきたい。

 

〇 新しく教わった発声法で歌う

すると自分では半音程低くなっていると感じる。
しかし、ピアニストの先生に聞いてもらっても音程は合っていることを確認できた。
「声が出し易くなったので低く感じるのではないか」とのコメントをもらえた。

 

今まで自分なりのやり方で歌っていたので、新しく教わった発声法を理解し体得するのが難しいが、先生に聞いてもらう事で自分の感覚のズレは間違っていて、音程は合っていると客観的に判断してもらえて良かった。

 

新しく教わった発声法の全部は出来なくても一部についてはやり方が間違っていないと教えてもらえたので地道に少しずつ練習していきたい。

1月27日(月)13:00~15:00(ピアノ黒木洋平) 

レッスン会場:東高円寺・音海

ドイツ・リート

 

#1.ベートーベンの歌曲から3曲
      

・Ich liebe dich(君を愛す)

・An den ferne Geliebte(遥かなる恋人に)    

・Andenken(想い)
     

 

#2.シューベルト「冬の旅」から

第1部  

第7曲 Wasserflut(流れの上で)

第9曲 Irrlicht(鬼火)
  

第2部  

第16曲 Letzte Hoffnung(最後の望み)

 

 

まとめ:
今年はベートーヴェン(1770年~1827年)の生誕250年にあたるので、各地でベートーベンの音楽が流れることであろう。3月26日が命日、今年のこの日は木曜日なので、聖楽院基礎科B組のレッスンの予定。Ich liebe dichかAndenkenを教材に選択するのも一考であろう。

本日のレッスンで、An den ferne Geliebte(遥かなるひとに)は、何故か違和感を覚えて、あっさりと諦め、研究課題とした。その理由は、本日の稽古の後に判明。この曲はSechs Gesänge(6つの歌)のうちの第5曲。11節構成で歌詞は6回繰り返しの有節歌曲。これも御縁なので第1曲目をさらう予定。

An den fernen Geliebtenで検索すると、楽譜付きでスペイン語字幕付きのyoutubeがある。

 

ちなみに、全音の楽譜「ベートーヴェン歌曲集(中声用)川村英司編、改訂版」には、An den fernen Geliebten(遥かないとしい方に)とAn die ferne Geliebte(遥かなるひとに)が収載されている。昨日、吉田教授に紹介していただいたのは後者であり、こちらはLieder Zyklusとして最初の作品で、ベートーヴェンの歌曲中でとくに傑出した歌。作詞者ヤイテレス(Alois Jaitteles)はウィーン大学医学部一年生で、自筆のこの詩をベートーヴェンに送ったものとされる。
シューベルトは「冬の旅」の難曲を集中的に稽古した。
第7曲 Wasserflut(流れの上で)は4分の2拍子で、3拍子とは違った独特な難しさがあり、黒木氏が、最も難しい曲の一つであるというのも頷ける。TempoはLangsamだが、シューベルトの自筆譜ではMäßig(中庸に)となっているため、いずれは、そのテンポで歌うことになろう。


第9曲 Irrlicht(鬼火)は8分の3拍子である。リズムがとりにくいことこの上ない。都合6回以上繰り返して歌ってみた。黒木氏が根気強くリズムとりのサポートをしてくれたのが役立った。その難しさは、ドイツ語の単語の一音節の音価が拍の整数倍でない箇所にっ顕著であった。休符のあとの歌い出しも、リズムにかかってくる。

第16曲 Letzte Hoffnung(最後の望み)の難しさも、4分の3拍子にある。これも第9曲の難しさに通じるものを感じる。