臨床産業医オフィス
<高円寺南労働衛生コンサルタント事務所>
産業医・労働衛生コンサルタント・第一種作業環境測定士・衛生工学衛生管理者
飯嶋正広
産業医講話シリーズNo5:産業医による長時間労働者の面接指導(前半)
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はじめに
皆さん、こんにちは。今日は「産業医によるっ長時間労働者の面接指導」についてお話しします。面接指導は、労働者の健康を守るために非常に重要な役割を果たしている制度です。今回は、その基本的な部分と、長時間労働者への対応についてお話しします。
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面接指導の重要性
まず、面接指導の目的についてお話しします。面接指導の主な目的は、長時間労働による疲労の蓄積からくる心身の不調を未然に防ぐことです。事業者には、この面接指導を行う義務があり、これは全ての事業場に共通して求められています。労働者の健康を守るために、企業全体で取り組むべき重要な制度です。
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長時間労働者に対する面接指導
では、具体的に誰が面接指導の対象になるのかを説明します。面接指導の対象となるのは、時間外労働や休日労働が1ヶ月あたり80時間を超え、かつ疲労が蓄積していると認められる労働者です。ここで重要なのは、時間外労働が45時間を超えると心身に悪影響を及ぼす可能性が高まり、80時間を超えるとその影響が特に顕著になるとされている点です。
このため、80時間を超えた場合には、特に注意深く健康状態を確認する必要があります。なお、面接指導を行う医師は必ずしも事業場の産業医である必要はなく、外部の医師が行うことも可能です。適切な判断ができる医師に担当してもらうことが大切です。
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労働時間数の算定と通知
事業者は、毎月1回以上、従業員の労働時間数を計算しなければなりません。そして、もし1ヶ月あたり80時間を超える時間外労働をした従業員がいた場合、その従業員の名前と労働時間に関する情報を「速やかに」産業医に提供する義務があります。
ここで言う「速やかに」ですが、具体的には可能な限り早急に、通常はその月の報告が行われた直後の週内、もしくは2週間以内には提供されるべきです。このタイミングで情報が提供されることで、産業医が早期に問題を発見し、必要な対応を迅速に行うことができます。
また、事業者はこの情報を労働者本人にも通知しなければなりません。これにより、労働者自身が自分の状況を把握し、必要ならば面接指導を申し出ることができます。
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面接指導の実施方法
次に、面接指導をどのように実施するかについてお話しします。休憩時間を除いた労働時間が1週間に40時間を超える場合、その超過分が1ヶ月あたり80時間を超えていると、労働者は疲労が蓄積している可能性が高いと考えられます。このような場合、労働者が申し出れば、産業医による面接指導を受けることができます。
ここで「遅滞なく」という言葉が出てきますが、実務的にはこれをおおよそ1ヶ月以内に対応することが求められます。これは、迅速に対応することで、労働者の健康リスクを早期に軽減するためです。また、産業医は必要に応じて、労働者に面接指導の申し出を促すこともできます。
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まとめ(前半)
今日は、面接指導の基本と、長時間労働者に対する面接指導についてお話ししました。これらの取り組みは、すべて労働者の健康を守るために行われるものです。次回は、面接指導の実施後にどのような措置が必要か、そして研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度の対象労働者について詳しくお話ししますので、引き続きご参加ください。
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