新シリーズ<喘息のオペラ歌手たちから学ぶホリスティック健康医学>


<喘息のオペラ歌手たちから学ぶホリスティック健康医学>

 

武蔵野音楽大学大学院修士課程声楽専攻の1年生最後の締めくくりは、1月29日(月)の声楽実技試験でした。私の受験曲は全てロシア語の歌で、チャイコフスキー2曲、ラフマニノフ4曲でした。これをブラームスホールという学内のホールで歌ったのでした。


翌1月30日(火)からが春休み、そして4月からは2年目に突入です。

 

音大の声楽専攻というと呼吸器系統がタフな方ばかりか、というと必ずしもそうではないようです。たとえば、一流の声楽家のなかにも、しばしば喘息の方がいらっしゃいます。


もっとも、私自身がアレルギー内科専門医であり、その中心的な対象疾患が気管支喘息であるためか、そうした情報に敏感であるせいかもしれません。

 

意外に思われるかもしれませんが、喘息は、声楽家にとって必ずしも不利な病気だとは、私は考えていません。むしろ、天与の御恵みかもしれません。それには医学的な根拠があります。

 

ですから喘息でも歌うのが好きな方は、むしろ、これからも是非、歌をお続けになったらよいと思います。

ただし、花粉症などのアレルギー性鼻炎を未治療のまま放置していたり、たびたび風邪をひいてしまう状態を長引かせたりすることはご法度です。

 

この件に関して、私はムッシュGPTとの対話を試みることを思いつきました。

 

ただし、彼は専門家ではないので、予め信頼性をテストしたうえ、質問の仕方に工夫が必要であり、なお回答に対しては妥当性を検討したうえで、皆様にフィードバックさせていただく方法を考案しました。

 

入門編5回、本編6回および発展編4回、計15回のシリーズをまとめました。

 

 

<入門編:その1>

喘息の患者に特有な姿勢があるでしょうか。もしあれば、その特徴と矯正法を教えてください。

 


ChatGPT

喘息患者には、喘息発作時や症状が悪化した際に、呼吸をしやすくするために特有の姿勢を取ることがあります。

 

これは、呼吸困難を和らげるための自然な反応であり、以下にその特徴と、矯正法をいくつか挙げてみます:

 

特有の姿勢: 

1. 前かがみの姿勢:

患者が前かがみになり、手でテーブルや壁をつかむような姿勢をとることがあります。この姿勢は、腹式呼吸を助け、気道の開放を促進することを意図しています。


2. 座位での前かがみ:

座位の際にも前かがみになり、手を膝に置いて呼吸をしやすくすることがあります。この姿勢も同様に腹式呼吸を助けるためのものです。


3. 上半身を支える姿勢:

寝ている際に上半身を多少起こして寝ることで、気道の圧迫を軽減し、呼吸しやすくなることがあります。

 


矯正法:

1. 正しい呼吸法の学習:

患者には正しい呼吸法(腹式呼吸)を学習させ、発作時や症状が悪化した際にも適切な呼吸を心がけるよう指導することが重要です。


2. 姿勢の改善:

前かがみの姿勢が喘息の症状を和らげる場合でも、その姿勢が続く場合は、適切な呼吸法を妨げないようにするなど、姿勢の改善に取り組むことが重要です。


3. リラックス法の導入:

ストレスが喘息のトリガーになることがあるため、リラックス法やストレス管理のテクニックを導入して、患者が冷静になり、呼吸が楽になるようサポートします。


4. 体力の向上:

適切な運動や体力向上のプログラムを組むことで、呼吸筋の強化や全身の健康を促進し、喘息の症状の軽減に寄与します。


これらのアプローチは、患者ごとの状態に合わせて専門家によって評価され、個別化されるべきです。

 

患者が適切な姿勢や呼吸法を習得し、症状を管理できるようサポートすることが喘息のケアにおいて重要です。

 


ドクター飯嶋のコメント 
入門編の5回のシリーズでの質問の内容は、奇異に感じられるかもしれません。

 

この質問は、ドクター飯嶋がムッシュGPTとどの程度までの対話が可能か?ということの見通しを事前に評価することを第一の目的としたものだからです。

 

まず喘息の方が自分自身の姿勢をどの程度意識しているでしょうか?

 

喘息の診療を30年以上続けてきましたが、姿勢の悪さに気付いている方は滅多に遭遇できるものではありませんでした。

 

何事にも例外があります。それは、モデル、俳優、声楽家、ダンサーなど人前で身体表現をする職業についている方々です。

しかし、プロである彼らでさえ、自分自身で姿勢の悪さに気付いたというケースよりも、指導者から厳しい指摘を受けて気付かされた、というケースの方が圧倒的に多かったです。

 

ただし、その姿勢の悪さが喘息に由来していることに気付いている方は、ほぼ皆無です。

 

残念ながら、医師、とりわけ耳鼻咽喉科医や喘息を専門とする内科医ですら、喘息患者の姿勢について評価し、適切なアドバイスをする機会には、ほとんど恵まれていないのが現状です。

入門編の最初に「姿勢」を取り上げたのは、上記のような背景があるからです。ムッシュGPTは、一般的な喘息専門医より、喘息と「姿勢」との関係を深く<認識>していることを確認することができました。

それから、ムッシュGPTは正しい呼吸法(腹式呼吸)とまとめていますが、この点については、呼吸筋強化のための具体的な方法を含め、いっそうの解明が必要だと思います。そして彼は、
「発作時や症状が悪化した際にも適切な呼吸を心がける

と述べ、また、喘息発作とストレスとの関係までは言及していますが、「発作時や症状が悪化した際」の喘息患者の心理状態についてまでは言及していません。実は、このあたりをしっかりと検討しておかないと効果的な指導はできません。

ムッシュGPTは、「前かがみの姿勢」を冒頭からズバリと指摘しています。この姿勢は、喘息発作の際には観察しやすいですが、発作間欠時(非発作時)には目立たなくなることもあります。しかし、長年にわたって発作を繰り返してきたような方は、呼吸苦がないときでさえ、「前かがみの姿勢」になっていることが少なくありません。

それでは、喘息をもつプロの声楽家は「前かがみの姿勢」になっていないか、というと、どうやらそうとは限りません。これは、観客席からは判別しにくいのですが、ステージの袖から側面を見守っているとわかりやすいです。この姿勢は、喘息患者が腹式呼吸を維持するために有利に働くことがあるからなのかもしれません。ただし、「前かがみの姿勢」と「前傾姿勢」は明確に区別しておく必要はあるでしょう。

この「姿勢」の基礎の上に「歩行」や「動作」、さらには「呼吸」が構築され、または大きな影響を受けることになります。

これらの論点については、全15回の本シリーズに続く「研究編」で検討する予定です。