金曜シリーズ < よくある問い合わせ ⑱ >

 

前回はこちら

 

 

今月のテーマは「空気の嚥下」と「腹満」についてです。


腹痛を訴える杉並国際クリニックの受診者の中で最も多い原因は、無意識に空気を嚥下してしまうことによるものでした。

 

これは、過敏性腸症候群のガス型(腹部膨満型)と呼ぶべき病態であると私は考えているのですが、便の形状による過敏性腸症候群のローマ分類Ⅳにはガス型がありません。

 

大学病院の消化器内科から私のクリニックへ紹介を受けることが多かったのは、一般の消化器内科専門医が、あまりにもローマ分類Ⅳに忠実であったために、分類不能となり、診断未確定のまま適切な治療が選択できなかったせいではないかと考えていました。

 

そこで、試みに、ムッシュGPTに、このような病態の患者さんがどの程度認知されているのかどうかについての問いかけを試みました。

 

 

質問者:ドクター飯嶋

無意識に空気を嚥下して腹部が膨満して腹痛を来すことを経験したことがある人々の頻度について教えてください。

 


ChatGPT
そのような経験をした人々の頻度については、具体的な統計情報が利用可能であるかどうかによって異なります。一般的に、無意識に空気を嚥下して腹部が膨満して腹痛を引き起こす現象は、特定の医学的条件や疾患に関連している場合があります。


例えば、過剰な空気を嚥下することによって引き起こされることがあるのは、過剰気腸症候群(過敏性腸症候群の一形態)です。この症候群では、腹部膨満感や腹痛、消化器症状が現れることがあります。


また、無意識のうちに空気を嚥下することが病気の症状として現れることもあります。例えば、過剰気腸症候群だけでなく、胃食道逆流症や消化器系の他の問題も関連している可能性があります。


一般的な人口全体でこのような経験をした人々の頻度についての統計情報は限られており、個々の医学的状況や個人の健康状態に基づいて異なります。したがって、具体的な統計情報を提供することはできませんが、医師や専門家に相談して個々の症状や状況について詳細を知ることが重要です。

 


ドクター飯嶋のコメント:
ムッシュGPTの悪い癖の一つは勝手な翻訳による造語です。医学分野においてこの傾向が顕著なので、我々医師は十分に警戒し慎重に吟味しておかなければなりません。

 

「過剰気腸症候群」という病名は聞いたことがありません。

ましてや、過剰気腸症候群(過敏性腸症候群の一形態)などと記述されるもっともらしく聞こえるだけに恐ろしいです。


このような疑問が生じた場合には、適切な質問を謙虚に試みることが良いと思います。

 

 

質問者:ドクター飯嶋
過剰気腸症候群という病名を初めて知りました。これは英語の病名の翻訳なのですか?

 


ChatGPT
はい、その通りです。"過剰気腸症候群"という日本語の病名は、英語で言うところの "Irritable Bowel Syndrome (IBS)" の翻訳です。IBSは、消化器系の疾患の一つで、腸の動きが異常に活発または不規則になり、腹痛、腹部膨満感、便秘、下痢などの症状が現れる病気です。IBSは、症状の程度や出現頻度が個人によって異なることがあり、その症状が生活や日常活動に影響を及ぼすことがあります。

 


ドクター飯嶋のコメント:
これで判明しました。ムッシュGPTは、英語で言うところの "Irritable Bowel Syndrome (IBS)" の翻訳として"過剰気腸症候群"という日本語の病名を捏造するという過ちを犯しています。

 

私たちは、「過敏性腸症候群」という病名を用いています。これは、大腸および小腸に潰瘍や腫瘍などの器質的異常がないにもかかわらず、下痢あるいは便秘などの便通異常と腹痛、腹部膨満感などのおなかの症状がある病気です。


このまま引き下がるわけにはいきません。さらに質問を続けてみます。

 

 

質問者:ドクター飯嶋
過剰気腸症候群という病名は、日本語の病名として適切でしょうか?医学用語集に収載された病名でしょうか?

 


ChatGPT
申し訳ありませんが、私のデータには日本の医学用語集が含まれていないため、特定の用語が医学用語集に収載されているかどうかを確認することはできません。しかし、一般的に、医学用語は医学的な正確さと理解しやすさの両方を考慮して選ばれます。


"過剰気腸症候群"という表現は、一般的に日本の医学界で使用されている用語であり、過剰気腸症候群は特定の疾患を指す日本語の名称です。ただし、この用語が医学用語集に収載されているかどうかは、その医学用語集の内容に依存します。


医学用語が広く受け入れられ、一般的に使用されるかどうかは、専門家や学術機関、関連する医学団体などがその用語を使用し、支持するかどうかによって決まります。

 

ドクター飯嶋のコメント:
「私のデータには日本の医学用語集が含まれていない」という回答も残念ではありますが、正直な所でしょう。

 

ただし、<"過剰気腸症候群"という表現は、一般的に日本の医学界で使用されている用語であり、過剰気腸症候群は特定の疾患を指す日本語の名称です。>という回答は、明らかにこれと矛盾しています。

 

そのあとのムッシュGPTの透かしたような説明は、いかにOpen-AIとはいえ看過できません。

 

このような、議論は、本来であれば月曜日のシリーズで行うべきでありましたが、4月1日(月)から産業医学に関するシリーズを開始するため、已むをえず、ここで採りあげることにしました。
 

この議論の決着は来週に持ち込むことに致します。